AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
“Uni-Vibe”系ペダル
エフェクター・ファンのバイブル『THE EFFECTOR book』(シンコーミュージック刊)の最新刊のVol.43では伝説的なマシン“Uni-Vibe”を大特集! オーガニックかつダイナミックな揺れが生み出す空間演出は、いまだからこそ斬新な効果に感じられる類いの響きと言えるでしょう。そんな現行バイブ系ペダル9機種を“奇才”ギタリスト、坂本夏樹が試奏レビュー! ぜひ購入の参考にしてください。
“Uni-Vibe”というキーワードからは、どうしてもジミ・ヘンドリックスのプレイを連想してしまいがち。もちろんジミこそが“Uni-Vibe”を伝説化した張本人であるのは間違いないが、間もなく没後50年を迎えようという昨今、そろそろその呪縛から解放されるときが来ても良いのではないだろうか。
というわけで、今回は試奏レビュアーとして80年代生まれの若手ギタリスト、坂本夏樹を招聘。ヘンドリックス云々は抜きにして、現代のギタリストが2010年代の感性で“Uni-Vibe”系ペダルをチェックしたら、そこにどんな可能性を見出すのか? をテーマに試奏レポートを構成してみた。
常日頃からギター・サウンドをストイックに研究し続け、ビンテージ・ギターからモダンなエフェクターまで多種多様な機材に精通する坂本。そのぶっ飛んだセンスを刺激することになったモデルは果たしてどれか? その入魂の試奏レポートをぜひ購入の際の参考にしてもらいたい。
[Specifications]
●コントロール:Speed、Level、Depth ●スイッチ:ON/OFF、Vibe ●端子:Input、Output ●サイズ:65mm(W)×110mm(D)×50mm(H) ●電源:006P(9V電池)/9VDC ●価格:¥23,000(税別)
(問)03-3862-5041/モリダイラ楽器
“Jimi Hendrix 70th Anniversary”シリーズのラインナップとして限定発売されたモデルをベースに、さらに現代の音楽シーンにおいて使いやすいような再チューニングを施して定番化させたのが本機。“Uni-Vibe”の商標を有しているジム・ダンロップだからこそ継承できた本物の音がここにあります。
比べると、もとになった限定バージョンよりも若干エグ味が抑えられているようで、ジミ・ヘンドリックス・サウンドに限定されない様々なシチュエーションで使用できる音色になっていますが、深めの歪みとの併用時には、“Uni-Vibe”でしか成し得ない強烈なゆらぎを再現できます。
「ジミ・ヘンドリックス」という冠が取れたこともあり、その先入観を取り払って触れてみると、ピンク・フロイド楽曲で味わえる「薄くかけてもハッキリとした存在感がある」サウンドに近いように感じました。実際、歌のある曲の伴奏で使用するにはこれくらいのバランス感がちょうど良いと思われます。そのバランスは“VIBE”モードでも健在。“SPEED”=10〜11時くらいの「揺れるか揺れないか」あたりで得られる独特なエンハンス効果のかかった響きは、一味違った伴奏を求められた時にとても効果的だと思います。
[Specifications]
●コントロール:Volume、Intensity、Speed ●スイッチ:ON/OFF ●端子:In、Out1、Out2、Exp ●サイズ:116mm(W)×139mm(D)×71mm(H) ●電源:12VDC(専用アダプター付属) ●価格:オープン・プライス
(問)info@lep-international.jp/LEP INTERNATIONAL
ブラック・キャット・ブランドの創始者であるフレッド・ボンテが90年代にボブ・ブラッドショーのために設計、カスタム・オーディオ・エレクトロニクス製品としてリリースされたオリジナル“Black Cat Vibe”。
本機は、そのオリジナル機を何台も研究し、最も甘い音色が出る個体を選んで再構築されたものです。フォトセルやライトを用いた本物の光学式センサーが使用されていたりと、こだわりの深い、そしてとても丁寧な作りから、中域にしっかりとした厚みのある、押し出しの強いサウンドに仕上がっています。レニー・クラヴィッツなど、音にうるさいアーティストに使用されているのも納得できますね。
厚みのある押し出しの強いサウンドというと、制御が難しそうに感じるかもしれませんが、本機の特筆すべき点は、そんな個性をどんなセッティング時にも、誰にでも使えるようにチューニングしてある点。とにかく全ポジションが使える音なのです。例えば“Uni-Vibe”系ペダルは使ったことがあっても、“VIBRATO”モードは未経験という方もきっと多いはず。こちらのモードも全ポジション使える音なので、是非新境地を開拓してみてください。
[Specifications]
●コントロール:Intensity、Level、Voice、Rate、Throb ●スイッチ:ON/OFF ●端子:Input、Output ●サイズ:64mm(W)×117mm(D)×57mm(H) ●電源:9-18VDC ●価格:オープン・プライス(市場想定税別価格:¥26,000前後)
(問)0570-056-808/ヤマハミュージックジャパン
アースクエイカー・デバイセスが普通のオプティカル系バイブ・エフェクターを作るはずがないでしょ! ──本機はそんな期待を軽く超えてくれました。“Uni-Vibe”系エフェクターというと、「水中サウンド」という形容がよく用いられますが、本機は水中に潜る“深度”を操作できるイメージのチューニングがなされている印象だ。
その深さは、音のキャラクターが中域寄りか低域寄りかを決める“VOICE”、低周波の調整ができる“THROB”との組み合わせによって決められます。“VOICE”と“THROB”は、右に回していけばいくほど水中を深く潜っていくような、水上の音が遠ざかって自分の鼓動の音が強くなっていくような響きを演出することができます。そしてかすかにはらむノスタルジック感がまた素晴らしい。“INTENSITY”=全開、“RATE”=10時、“VOICE”&“THROB”=13時に設定し、メジャー7thコードを鳴らすと、子供のころに海水浴に行った懐かしい記憶が蘇ってくるような感覚が得られるのではないでしょうか。
「水中サウンド」と呼ばれる中で、水中の深度を操作できるエフェクターは本機以外にありません。「人と違う」というだけでは満足できない個性派にこそオススメします!
[Specifications]
●コントロール:Volume、Intensity、Speed、Trimmer1(内部)、Trimmer2(内部)、Trimmer3(内部) ●スイッチ:ON/OFF、Modern/Vintage、Vibrato/Chorus ●端子:Input、Output ●サイズ:95mm(W)×104mm(D)×44mm(H) ●電源:18VDC ●価格:オープン・プライス
(問)info@musette-japan.com/ミュゼットジャパン
これまでにも様々なバージョンがリリースされてきた“Deja Vibe”シリーズの最新版。初期モデルから比べると半分以下の大きさを実現しています。「フルトーン製品は評判が良いけど、特に“Deja Vibe”シリーズは大きくてペダルボードに収まりきらないから……」という理由で購入を見送っていたみなさま、遂に導入する時がきました。このサイズならもう何の文句もないでしょう。筐体が小さくなっても足での操作がしやすい大型の“SPEED”コントローラーが引き継がれている点も嬉しいですね。
また、小型化が図られたことによって音色が変わってしまったのでは?と心配する方もいるかもしれませんが、心配いりません。音色はさらに進化しています。従来機でも言及されていた音の太さ、そこに扱いやすい音抜けの良さが加わっています。
内部に微調整可能なトリマーも搭載されているので、追い込んだ音色作りにも対応。裏技的な使い方として、“CHORUS”モードで“MODERN”を選択して、“INTENSITY”、“SPEED”をゼロに設定、“VOLUME”を15時以上に上げていくと、上質なブースターにもなります。これはベーシックな音色が良いからこそなせる技ですね。
[Specifications]
●コントロール: Depth、Rate、Color ●スイッチ:ON/OFF、Chorus-Vibe ●端子:Input、Output ●サイズ:65mm(W)×112mm(D)×51mm(H) ●電源:006P(9V電池)/9VDC ●価格:オープン・プライス
(問)info@lep-international.jp/LEP INTERNATIONAL
上質な音色のエフェクターをこんな安価に入手できて良いのか、と毎度驚かされてしまうアニマルズ・ペダルから歌モノに最適なモデルをご紹介。本機は“CHORUS”モードのチューニングがとても上品。歌を決して邪魔しない、伴奏に馴染みの良い音色に仕上げられていて、リバーブやディレイで馴染ませるのと同じ感覚で使用できます。
太さや音抜けが重視されることの多い“Uni-Vibe”系エフェクターだけに、かかり具合いで薄くするのではなく、本体自体の音色が儚く温かいものを探されていた方もきっといるはずですよね。伴奏に馴染ませることを念頭にチューニングされているモデルをお探しの方は、是非本機を試してみてください。上品な理由はキャラクターの儚い温かさにもありますが、波形の均一さとうねりの滑らかさもポイントかと思います。
そしてここまで説明してくると、モデル名にある「Car Crush」の要素が全くないように思われるかもしれませんが、“VIBE”モードにしてみてください。上品な“CHORUS”モードから一転、かなりエグいかかり方をします。是非全ツマミを全開にしてお楽しみください。「Car Crush」と名付けられている意味を理解してもらえると思います。
[Specifications]
●コントロール:Level、Speed、Low、Hi、Depth、Mix(内部)、Offset(内部)、Osc. Gain(内部) ●スイッチ:ON/OFF ●端子:In、Out ●サイズ:65mm(W)×110mm(D)×51mm(H) ●電源:006P(9V電池)/9VDC ●価格:オープン・プライス
(問)info@musette-japan.com/ミュゼットジャパン
プロ・ギタリストのペダルボードに組み込まれていることが多い玄人好みのブランドだけに、“Uni-Vibe”系エフェクトを単に良い音のするペダルに留めておくはずがありません。まず本機はほかの“Uni-Vibe”系ペダルでは見たことがない“LOW”、“HI”というコントローラーによって、作り出せる音色の幅がとてつもなく広く設定されているのが特徴です。
それもただ過激にトーン・コントロールが効くというものではありません。どのポジションでも破綻しない、「使える音色」にチューニングされていて、音ヌケを狙うと細くなったり、太さを強調していくとこもってしまったり、音色をツマミ1つだけでしか操作できない機種で起こりがちな問題が解決されているのです。“SPEED”の調整幅が現場で使う上で必要充分な範囲だけに設定されているのもポイントですね。そこからは、数年に一度の登場ではなく毎日使うものであるという、使い勝手を最優先に考えた設計が施されていると感じました。
インジケーターにしても、うねり速度に合わせてLEDが明滅するタイプはよくありますが、本機はうねりの速度以外にかかりの深さも明滅で示される仕様になっています。現場で欲しかった機能が全部詰め込まれていますね!
[Specifications]
●コントロール:Speed、Intensity、Volume ●スイッチ:ON/OFF、Toggle SW(Chorus/TonePrint/Vibrato)、Dip Switch(バイパス方式切り替え) ●端子: Mono In、Stereo In、Mono Out、Stereo Out、USB ●サイズ:72mm(W)×122mm(D)×50mm(H) ●電源:006P(9V電池)/9VDC ●価格:オープン・プライス(市場想定税別価格:¥12,970前後)
(問)0561-53-3007/キクタニミュージック
現代的な利便性と機能を持たせて“Uni-Vibe”サウンドを再現したのが本機。デジタルだからこそ実現できたノイズの少なさは特筆もので、それゆえに音の張りも強く、輪郭がはっきりと見える音色に仕上がっています。そして驚いたのがオリジナル“Uni-Vibe”が備えたうねり波形の再現度の高さ。“Uni-Vibe”サウンドの特徴は、均一ではない独特なうねり方にあるのですが、その独特なうねり具合を完璧と言っていいまでにシミュレートできています。
伝説的なサウンドをとても簡単に扱えるようになっているので、“Uni-Vibe”系ペダルの入門機として最適と言えるでしょう。“SPEED”コントローラーも大きいノブが採用されていて、足で速度を操作しやすいので、ライブ向きのモデルでもあるとも言えますね。そしてTCエレクトロニックのエフェクターと言えば、“TonePrint”機能に触れないわけにはいきません。世界のトップ・アーティストの音色を取り込むことができるので、扱える音色は無限大。
工場出荷時にインストールされている音色がとても良い響きなので、そのままでも充分に楽しめると思いますが、3つの音色だけでは飽き足らなくなってしまったらぜひ“TonePrint”の世界へ旅立ってみてください。
[Specifications]
●コントロール:Volume、Speed、Intensity ●スイッチ:ON/OFF、Chorus/Vibrato、Exp Speed/Exp Intensity ●端子:Input、Output、Exp ●サイズ:91mm(W)×118mm(D)×50mm(H) ●電源:9VDC(専用アダプター付属) ●価格:¥25,000(税別)
(問)support@kyoritsu-group.co.jp/キョーリツコーポレーション
「“Uni-Vibe”と同様にフォトセルを使用した温かみのあるサウンド」という触れ込みであっても、エレクトロ・ハーモニックスならきっと良い意味で謳い文句を裏切ってくれるでしょう!という大きな期待を見事に形にしてくれました。
とにもかくにも強烈なかかり具合い、そして速度選択幅の驚異的な広さ。その過激な個性に、いじり甲斐を感じずにはいられません。まずは“INTENSITY”を全開にして、低速から徐々に早めていきましょう。鼓動のような低音のうねりが9時あたりで脈拍とだいたい同じ速度。11時〜13時あたりがウッドストックの「Star Spangled Banner」で使用された速度帯に近いですね。14時の位置ですでに“Uni-Vibe”系ペダルの中でもトップ・レベルのうねり速度ですが、流石エレクトロ・ハーモニックス、全開までまだまだ余裕があり、“Uni-Vibe”系ペダルのさらに先が待ち構えています。
かかりの強さと速度帯の広さばかりに耳がいきがちですが、ヘッドルームの広さゆえに音の張りが強く、音抜けが良いのも特徴。元の音の良さがあるからこそ強烈なエフェクトでも破綻しない作りになっているのだと感心させられました。
[Specifications]
●コントロール:Volume、Speed、Ratio、Depth ●スイッチ:ON/OFF、Dry/Wet、Tap、Tap/Exp Mini Switch(内部) ●端子:Input、Output、Tap/Exp ●サイズ:55.9mm(W)×121.9mm(D)×40.6mm(H) ●電源:9VDC ●価格:オープン・プライス
(問)support@kyoritsu-group.co.jp/キョーリツコーポレーション
フル・アナログ回路の“Uni-Vibe”系ペダルにタップ・テンポを搭載したのは、間違いなく本機が初めてでしょう。速度可変ペダルや大型コントローラーにより、足で速度を操作できる機種はいくつもありますが、決められた速度/テンポにアジャストするのはなかなか困難なこと。
プロの現場では想像以上に速度やテンポに関してシビアな注文を受けることがあり、しかも瞬時に応える必要があります。そんなときに本当に役に立つのがタップ・テンポ。そしてテンポ以上に注文を受けるのが音色です。アナログ機器が備えた「心地よい」と感じるサウンドが好まれる場面が多いので、アナログ回路のペダルでテンポを完璧に合わせないといけない、という状況はよくあるのです。そうした問題を一挙に解決してくれるのが本機。
フォトセルを使用したアナログ回路特有の温かさと低音の太さを備え、テンポをタップで制御できるとなると(エクスプレッション・ペダルを繋ぐことで足元でのさらに複雑な操作も可能)、まさにプロの現場で求められる仕様と言えます。また先にも触れましたが、本機はアナログ回路特有の低音のうねりが特に強く、その強さはオリジナル“Uni-Vibe”のそれに匹敵するほどと感じました。
読者のみなさんには全く関係ないことでしょうが、競合誌の内容というのはとても気になるものでして、特に発売日が近いギター・マガジンさんの動向はこっそり注視していたりします。何と言っても相手は業界の最大手雑誌ですからね。その編集部に睨まれようものなら、弱小たるエフェクターブックなんて、あっという間に廃刊ですよ。騒がず目立たず、強い者には巻かれろ。それがしももの生きる道。
そう肝に銘じて静かに生活することを徹底していたのですが、ギター・マガジン最新号の表紙を見て驚きました。なんと鈴木茂さんの足下に“Uni-Vibe”が写っているではありませんか。筐体正面に印字された“Uni-Vibe”の文字が太く、本体に繋がれたフット・コントローラーはシングルライン。これは新映電気が製造した後期型“Uni-Vibe”であることの証です。つまり今号のエフェクターブックの表紙を飾った個体と完全に同型。「表紙が……ビミョーに被ってる……!?」。これはもしやギター・マガジンさんからの無言の圧力? しももは何か彼らの気に障るようなことをしでかしたのか?と、悶々と考え込む日々が続きました。
果たして、そこに込められたメッセージの真相は怖くて確かめる術もありませんが、表紙に“Uni-Vibe”が写っているギター誌が同タイミングで2冊も敢行されるなんて、普通ではありえないこと。とても偶然とは思えません。唯一考えられるとすれば、50年の月日を超えて“Uni-Vibe”に再び関心が集まり始めている時勢が生んだ、予期せぬ事態ということでしょうか。無理矢理にでもそう思い込まなければ、入眠誘導剤の使用が止められません。
それはそうと、茂さんが“Uni-Vibe”を使っていたとは知りませんでした。隣にはレスリー・スピーカーのコントローラーと思しきペダルも写っていますが、似たような効果のエフェクトをレコーディングでどう使い分けたのか気になります。今度、茂さんに訊いてみなきゃなーと。
(下総淳哉/THE EFFECTOR book)
本記事はシンコーミュージック刊『THE EFFECTOR book Vol.43 4TH DIMENSION SPRING 2019 ISSUE』での特集企画「“現行バイブ系ペダル”試奏分析 feat. 坂本夏樹〜Current Vibe-Pedal Analysis」を転載したものです。このほかにも新進気鋭の若手ギタリスト西田修大によるオリジナル機&名リメイク・モデルを試奏分析や、設計者三枝文夫氏インタビューなどUNI-VIBEやVibe系ペダル・エフェクトについて徹底的に特集しています。
項数:112P
定価:1,728円(税込)
問い合わせ:シンコーミュージック
『THE EFFECTOR book Vol.43』のページ・サンプル
坂本夏樹(さかもと・なつき)
チリヌルヲワカ、She Her Her Hers、Over The Topでのバンド活動を経て、スタジオ・ミュージシャン、プロデューサーとして、Creepy Nuts、DE DE MOUSE、HOME MADE 家族、たんこぶちん、酸欠少女さユり、新山詩織など、数多のライブ、レコーディングに参加。