AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
TASCAM/Model 24
TASCAM Model 24は、“Multitrack Live Recording Console”と定義される製品。22インのアナログ・ミキサー、22イン+メイン・ミックスL/Rの24trを同時に録音できるレコーダー、Mac/Windows対応のUSBオーディオI/Oを一体化し、まさにライブ・ミックスとレコーディングの両方をサポートする仕上がりだ。その有用性を検証すべく、ロック・バンドtoitoitoiとエンジニア藤木和人氏に試してもらった。
アナログ・ミキサー、デジタル・レコーダー、USBオーディオI/Oを組み合わせた製品。ミキサーは22インで、ch1~12がモノラル、ch13/14~19/20がモノラル/ステレオ両用、ch21/22は音楽プレーヤーなどに向けたステレオ入力。レコーダーはSDカード(別売)に録音する仕様で、最高24ビット/48kHzにて24trまでの同録に対応。オーディオI/OはDAWに24chの信号を入力でき、DAWからは22chを受けられる。
製品チェックを行なったのは都内のリハーサル・スタジオ。Model 24に入力したソースは全14chとなり、内訳はドラム用の8本のマイク、ギターのライン回線、ボーカル・マイク、合奏全体をとらえるペアのマイク、シンセのライン回線(L/R)であった。「3〜4人組バンドのライブPAや一発録りには、ちょうど良いチャンネル数だと思います。まだ余裕があるのでベースやコーラスがあってもいいし、ch19/20までのすべてにマイク・インが付いているから最大16本のマイクを接続可能なのもポイントが高いです」と藤木氏。「取扱説明書に頼らなくても、かなり便利に使えると思います。理由の一つに、大半のパラメーターが物理操作子として表に出ているというのがあると思う。エンジニアはもちろん、ミュージシャンもすごく扱いやすいでしょうね」。
各チャンネルにはゲインやコンプレッサー、3バンドEQ、AUX/エフェクト・センド、パンといったノブ、そして全長100mmのフェーダーなどが並ぶ。
「まずはゲイン・ノブで扱う内蔵のプリアンプ。低ノイズに設計されているようで、奇麗な音をしていると思います。素直でワイド・レンジだし、柔らかさと抜けの両方がありますね。コンプについては、扱いやすいワンノブ・タイプ。ノブを上げてコンプレッションを深めていくと出力ゲインなども自動的に変化するため、聴感上の音量はほぼ一定の印象です。効果自体もオーバーではないので、かけ録りに使ってもよいでしょう。そして100mm長のフェーダー。例えば歌などの音量は±0dBの前後5dBくらいの狭い区間で調整することが多いんですが、フェーダーそのものがこれだけ長いと微調整しやすく、操作性が非常に良いですね」。
Model 24はレコーダーを備え、SDカード(別売)へのマルチトラック録音が行なえる。ワンノブ・コンプはレコーダーへの出力にかかり、EQはかからない仕様で、これは内蔵のオーディオI/OからDAWソフトに録音する際も同様だ。
「今回は、SDカードとDAWへのマルチトラック録音を同時に行ないました。すべてのチャンネルには“MODE”というスイッチがあり、演奏中は“Live”というところに設定しておきます。これで入力端子からの信号が各チャンネルに立ち上がるんです。録り音をプレイバックしたいときは“MTR”に切り替えるとSDカードの信号が、“PC”にするとDAWの信号が各チャンネルに立ち上がります」。
「ライブに便利な機能もあります」と藤木氏は続ける。
「例えばチャンネルのSUBスイッチ。これをオンにしたチャンネルは、メイン・ミックス・バス(メイン・アウト)から切り離されサブミックス・バスに送られるため、SUBフェーダーで音量を一括調整できるようになります。今回のように小規模な空間でライブをする場合、ドラムは音が大きいのでスピーカーから出さずに、生音で聴かせたいということもあるでしょう。その際は、ドラム用マイクのチャンネルをサブミックス・バスへ送りSUBフェーダーを下げ切っておけば、“スピーカーからは出ないけどライブ録音は行なわれている”という状態になります。また、内蔵エフェクトをワンタッチでオフにできるミュート・スイッチも便利。演奏中は歌にリバーブをかけておき、MCに入ったらドライへ戻すような操作も即座に行なえます。そして、そのリバーブがものすごく奇麗。ライブで非常に映える音だと感じました」。
演奏はメイン・アウトに接続されたDB TECHNOLOGIES Opera 12から出力。高域に非対称ホーンを採用し、いかなる設置方法でも最適な出音が得られるという2ウェイ・パワード・スピーカーだ。「フラットかつ自然な音で、スタジオ・モニターに通じるクオリティを感じました」と藤木氏。
Model 24の使いやすさが功を奏し、つつがなく進行した製品チェック。toitoitoiのギタリスト=ムラコシも「普段のリハスタにあるミキサーと使い勝手が同様なので抵抗感が無いし、音も良い。これでライブを録っておいて家でミックスしてから次の会場で音源を販売する、といったことも簡単にできそうですね」と興味津々であった。
サンレコWebサイトにて、今回行なった製品チェックの録り音をご試聴いただけます。Let’s アクセス!
http://rittor-music.jp/sound/magazine/tascammodel24
本記事はリットーミュージック刊『サウンド&レコーディング・マガジン 2019年4月号』の特集記事「ヘッドフォン特集 2019!」を一部転載したものです。今号のサンレコでは約100ページの大ボリュームで、第一線で活躍する“アーティスト/クリエイター/エンジニア総勢30名の愛用モデル紹介”をメインに、約100ページに渡ってヘッドフォン/イヤフォンの“今"を切り取る大特集を展開。特集内では、ヘッドフォンの歴史を紐解いたり、注目製品の試用レポートを収録するなど、決定版と言える内容に仕上がっています。ぜひチェックしてみてください!
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toitoitoi
ボーカル岸川まきとギターのムラコシによる千葉県出身の2人組ロックバンドtoitoitoi。2人だけにしか出せない独自の空気感を持った演奏表現と高揚感を煽る剥き出しのライブ・パフォーマンスが各方面で話題を集めている。ライブハウスからカフェ、ストリートに至るまで形態にとらわれず自由自在な編成で圧倒的かつ唯一無二の空間支配を繰り広げる。3月18日、19日には渋谷WWWにて2DAYSのワンマン・ライブを行なう。