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- 2024/11/16
Martin / CTM 00-21、CTM 0-18、D-45S Authentic 1936
好評連載Martin Times。第29回目はショップ・カスタム・モデルのCTM 00-21(イケベ楽器店 Heartman Guitars)、CTM 0-18(三木楽器)、そして超豪華なD-45S Authentic 1936 Agedの3本をご紹介! 今回もお馴染み斎藤誠氏の演奏でマーティン・ギターのサウンドをお楽しみください。
今回は2本のショップ・カスタム・モデルと、超豪華なスペシャル・モデルをご紹介しよう。
ショップ・カスタムの1本目は、東京・渋谷にあるアコースティック専門のプロ・ショップ、イケベ楽器店Heartman Guitarsに入荷したCTM 00-21。2本目は創業190年の大阪の老舗、三木楽器に入荷したCTM 0-18である。マーティンと言えばドレッドノートと000が最も標準的で人気も高いが、歴史的にはどちらも大型のボディを持つモデルとして比較的後に登場したもので、よりコンパクトなボディの0や00のほうが歴史は長い。どちらもカスタムショップ製ということで、レギュラー・モデルを上回るグレードや種類の材を用いた“通な”ギターに仕上がっている。
もう1本は、取材現場に緊張感が走った超高級&超豪華なD-45S Authentic 1936 Agedで、マーティン本社併設のミュージアムに展示されていた1936年製の貴重なD-45を忠実に再現したというモデルである。考え得る最高の材を使用しているのはもちろん、超レアな仕様になっているということでも興味をそそる。
いつもより本数が少ない分、それぞれの内容をじっくりと味わっていただければ幸いだ。
00というサイズは現在の感覚ではコンパクトだが、実際には標準的なクラシック・ギターとほぼ同じで、1870年代初期に登場した時には“エキストラ・ラージ・コンサート”と呼ばれていた。このCTM 00-21も、12フレット・ジョイントのボディとスロッテッド・ヘッドが特徴の古式ゆかしいモデルである。スタイル21はローズウッド・ボディのモデルとしては最もシンプルな仕様だが、このギターでは音質の決め手となるトップ材に、VTS処理を施したプレミアム・グレードのシトカ・スプルースを採用している。
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【Specifications】
●トップ:シトカ・スプルース VTS(プレミアム・グレード) ●サイド&バック:インディアン・ローズウッド ●ネック:ジェニュイン・マホガニー ●指板:インディアン・ローズウッド ●ブリッジ:インディアン・ローズウッド ●スケール:24.9インチ(632.5mm) ●ナット幅:1 7/8インチ(47.6mm) ●トップ・ブレイシング・パターン:ノン・スキャロップド/スタンダード ●価格:オープン
僕が持っている0-21に近いモデルの最新版ですね。自分の0-21はコンパウンド弦を張ってサラサラと軽いコード弾きをする時に使うんですが、このギターはもっとほかの用途にも使えると思います。なので、デモでは単音弾きや、コンパウンド弦ではできないロックっぽいアプローチもやってみました。指弾きでも音の粒立ちがすごく良くて、安定感がある音が出るのは、ネックの太さと12フレット・ジョイントが効いているのかもしれませんね。それと指板の幅がやや広いので、弾く時には少し注意しなきゃという意識になるけれど、ちゃんと弾けばギターがそれに応えてくれて、重心を感じる太い音が出てくれます。結果としては弾きやすいですね。
1850年代初期に0が登場した時には「コンサート・モデル」と呼ばれる最も大型のマーティンだった。しかし、現在では標準的なギターの中では最もコンパクトなボディを持つモデルとなっている。このCTM 0-18は14フレット・ジョイントのボディにパフォーマンス・ネックという、現行のスタンダード・シリーズと同じ仕様だが、ナット幅は1 11/16インチと細め。サウンドのパワーアップを図るべく、トップ材にアディロンダック・スプルースを採用している。
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【Specifications】
●トップ:アディロンダック・スプルース ●サイド&バック:ジェニュイン・マホガニー ●ネック:ジェニュイン・マホガニー ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:24.9インチ(632.5mm) ●ナット幅:1 11/16インチ(42.9mm) ●トップ・ブレイシング・パターン:スキャロップド/スタンダード ●価格:¥455,000(税抜き)
これはまさに僕が持っているモデルの最新版ですよ。ネックもスッとした握り心地で、今回の中では一番弾きやすかったです。弾いている時の満足感というか、充実感というか……とにかくレスポンスが良いですね。どんなに小さい音で弾いても音のクオリティが落ちないし、強く弾いてもイケるから表現の幅が広い。トップをアディロンダックにしたのは正解ですね。デモは「Eのストローク・ブギー」っていうタイトルです。B♭maj7というコードは使えるかどうかがギターによって左右されるんですが(笑)、このギターだと軽~く押さえられるので楽に使えるのが良いですね。Amaj7とB♭maj7がまったく同じ感覚で押さえられるんですよ。このギターは欲しいです。
最初に作られた2本の14フレット・ジョイントのD-45は、当時のアーティストのための特注品だった。マーティン・ミュージアムに展示されていたD-45は、1936年に最初のレギュラー・モデルとして作られた2本のうちの1本で、ボディ幅がその後に標準となった15 5/8インチよりもわずかに大きい16 1/4インチ幅なのが特徴である。そんな貴重なモデルを再現した本器は、ブラジリアン・ローズウッドのボディにVTS処理を施したアディロンダック・スプルースを採用し、エイジド仕上げを施した逸品。
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【Specifications】
●トップ:アディロンダック・スプルース with VTS ●サイド&バック:ブラジリアン・ローズウッド ●ネック:ジェニュイン・マホガニー ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(25.4mm)●トップ・ブレイシング・パターン:オーセンティック1936フォワード・シフテッド・X・スキャロップト ●価格:¥8,800,000(税抜き)
近寄りがたいギターですね(笑)。希少なハカランダを使用しているということで、デモ曲には「無きハカランダのためのストローク」という、モーリス・ラヴェルの有名な曲に引っ掛けたタイトルを付けました(笑)。わずかに広いボディ幅は、実際に構えてみると違いを感じますね。今まで紹介したD-45は高音弦の「シャリーン」という音が特徴だと言ってきましたが、このギターはそんなに45っぽくないところが不思議ですごいと思いました。もちろん28とは違って低音域に暑苦しさがなくて、45ならではのバランスの良さがある。しかも圧倒的に落ち着いた感じがするんですよね。プレーン弦の音が太くて、巻き弦とキャラクターがそろっているのもありがたいです。
今回は3本に絞って比較するのもわかりやすかったですね。しかも、自分が持っているギターにとても近いモデルが2本と、超スペシャルなモデルが1本というバランスもおもしろかった。ただサイズが両極端なので、デモ演奏の時にはコンパクトな2本からドレッドノートに持ち替えるのが大変でしたね(笑)。
CTM 00-21は、ピーター・ポール&マリーやジョーン・バエズなど、60年代フォークの感じがありますね。ロックな感じならキース・リチャーズとか。それとプロの立場からすると、マホガニー・ボディのギターとは違った意味で印象に残るサウンドが欲しい時にあったら良いなと思いました。
CTM 0-18も材の選択が絶妙ですよね。1、2弦の音の充実感なんかは「ほんとにシングル・オー?」と思っちゃうぐらいです。オーダー主のセンスが冴えた1本だと思いますよ。ただし、0や00にアンダー・サドルのピックアップは付けないほうが良いでしょうね。生音が全然変わっちゃうから。
そして、D-45Sはもう参りました(笑)。エイジド加工もものすごく細かいところまで凝ってますね。個人的には、ポジション・マークがヘキサゴンじゃなくてシンプルなスノーフレークっていうところも好きです。おいそれと買えるようなギターじゃありませんが、実際の音が聴けただけでも収穫だったと思いますね。
斎藤誠(さいとう・まこと)
1958年東京生まれ。青山学院大学在学中の1980年、西 慎嗣にシングル曲「Don’t Worry Mama」を提供したことをきっかけに音楽界デビューを果たす。
1983年にアルバム『LA-LA-LU』を発表し、シンガー・ソング・ライターとしてデビュー。ソロ・アーティストとしての活動はもちろん、サザンオールスターズのサポート・ギターを始め、数多くのトップ・アーティストへの楽曲提供やプロデュース活動、レコーディングも精力的に行なっている。
2018年4月18日、MARTIN GUITARのラジオCMでお馴染みの「It’s A Beautiful Day」をニュー・シングルとしてリリース。また、本人名義のライブ活動のほか、マーティン・ギターの良質なアコースティック・サウンドを聴かせることを目的として開催されている“Rebirth Tour”のホスト役を長年に渡って務めており、日本を代表するマーティン・ギタリストとしてもあまりにも有名。そのマーティン・サウンドや卓越したギター・プレイを堪能できる最新ライブ情報はこちらから!