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- 2024/11/16
Fender / American Performer Stratocaster®
1946年に始まったフェンダーの歴史は輝かしいものであり、常にエレクトリック・ギター市場をリードしてきた。過去を振り返ると、時代の節目で重要なモデルを発表しており、また歴史的な名演を生み出したミュージシャンの多くがフェンダーのギター/ベースを愛用していた。さらに、昨今のビンテージ市場での評価を見てもフェンダーの楽器の重要性は明らかだろう。エレクトリック・ギターの革新、その最前線にはいつもフェンダーがある。
そのフェンダーが新しく打ち出した「American Performer」シリーズは、高価な楽器の単純なコストダウン品ではない。長年にわたって需要のある機材のスタンダードを作り上げるためにピックアップやハードウェアを見直し、加えて「フェンダーとしての楽器の美学」を再検討、再設計、再調整したという。ここではストラトキャスターの2モデルを紹介しよう。
他のギター・ブランドが伝統的なサンバースト・カラーを継承していただけの1960年代に、フェンダーは当時のアメ車に採用されていた派手でポップなカラーリングを採用していく。こういったカスタム・カラー・ギターの伝統はフェンダーが作り出したと言えるだろう。American Performerシリーズではこれを継承し、渋目のブラウン系フィニッシュのハニー・バースト、定番のアークティック・ホワイト、ステージで映える渋くて派手なペニー、そして少し前からアメリカで流行中のサテン・フィニッシュを採用したサテン・レイク・プラシッド・ブルーというカラー・バリエーションを用意。見た目からも質の良さが感じられるアメリカン・ギターならではの風合いと、品質管理の高さがうかがえる。
ネックはモダンCシェイプを基本とし、ビンテージ・ギターのようなネック・サイドの処理と合わせてフィーリングも抜群。指板ラディアスは9.5インチでビンテージ・リイシューに比べるとフラット。フレットはジャンボ・サイズとなり、このあたりからも「プレイヤーのためのギターである」という意図が見て取れるだろう。
新開発のYosemiteピックアップは、シングルコイルのサウンドはそのままに、心地良いアクセントのミッド・レンジを持つ。ネック/ミドル・ポジションにアルニコⅣを採用しており、アタックのパンチを若干控えめに仕上げながら、キレのあるストラトらしいキャラクターは失われていないのが特徴だ。ブリッジ・ポジションにはアルニコⅡを採用。コイルの巻き数を増やしパワーを加えることで、カントリー・サウンドからファットなドライブ・サウンドにもマッチするだろう。
トーン2に搭載されたGreasebucket回路は、少し絞るだけで全体のサウンドが少しだけクラシック・フェンダーをイメージするメロウな雰囲気になる。リード・サウンド時には心地良いウーマン・トーンが得られるので、ぜひ試してみてほしい。
基本スペックは3シングル・モデルと同様となるHSSモデルは、より現代的なサウンド・バリエーションと演奏スタイルにフィットしたギターに仕上がっている。American Performerシリーズのストラトキャスターのラージ・ヘッド・ストックに採用されたビンテージ・スタイルのペグは、フェンダーの外見的な美学を継承しながらも、ナット止めにすることでペグの遊びを減らし、さらにモダンな18:1というギア比を採用。なめらかな動作でチューニングの精度を上げ、微かな調整を可能にしている。
エレクトリックに関しては、ブリッジに搭載されたダブルタップ・ハムバッカー・ピックアップ用のトーン・ポットがプッシュ/プル式になっており、タップ・スイッチとして機能。このコイルスプリットは音量を大きく変化させることなく、瞬時にハムバッカーからシングルコイルのサウンドへ変化する。
Greasebucketトーン・サーキットも3シングル・モデル同様に採用されており、演奏中に少し操作するだけでブリッジ・ピックアップのゲイン感を大人しくさせたり、サウンド自体をぼかしたりせずに高音(と微妙な低域)をカットし、リード時には、さらに歌うような音色を手に入れることが可能だ。
American Performerシリーズは、フェンダーのギターに求めるすべての欲求(弾き心地とサウンド)を見事に提示してくれた。モダンCプロファイルのネックはスッキリとしたフィット感で弾きやすく、9.5インチ指板はコード・プレイからリード・プレイに切り替わった際にも違和感なく演奏できる。そしてYosemiteピックアップの絶妙なチューニング。このシリーズは間違いなく、機能、音色、そして価格というすべてにおいて、コレクターや楽器好きではなく「実際に音楽を演奏するプレイヤーやバンドマン」に楽器のコンセプトを絞り込んでいて、そこが素晴らしい。
メイド・イン・USAのギターを探していて、高いクオリティを求め、でも予算は抑えたい……というわがままな要求に、このシリーズは見事に応えてくれるだろう。
価格:¥148,000 (税別)
価格:¥148,000 (税別)
村田善行(むらた・よしゆき)
ある時は楽器店に勤務し、またある時は楽器メーカーに勤務している。その傍らデジマートや専門誌にてライター業や製品デモンストレーションを行なう職業不明のファズマニア。国産〜海外製、ビンテージ〜ニュー・モデルを問わず、ギター、エフェクト、アンプに関する圧倒的な知識と経験に基づいた楽器・機材レビューの的確さは当代随一との評価が高い。覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。