Positive Grid Spark LIVE meets Toshiki Soejima & Naho Kimama
- 2024/12/13
Fender / Mustang™️ LT25
フェンダーのデジタル・アンプ、Mustangシリーズに新しいモデルMustang LT25が加わった。以前にも製品レビューでご紹介したMustang GTと同じように、「フェンダーの歴史」を体験できるプリセットを搭載。クリーン・サウンドの代名詞であるツイン・リバーブや、小型でありながらその独特のドライブ・サウンドが人気のツイード・チャンプ、ダイナミックなオーバードライブを生み出す4x10ベースマンまで、デジタル・モデリングの質の高さを感じさせてくれる。特にクリーン・サウンドにおいては、ほかのデジタル・アンプにはないレスポンスやコンプレッション感、そしてトーン自体の質感が心地良い。このあたりから非常にフェンダーらしいこだわりが感じられた。試奏動画ではEQなど一切手を加えず、単純にプリセットを切り替えているだけなので、本来であれば使用するギターや求めるトーンに合わせてEQやゲインのアジャストも行なったほうがいいと思うが、まずは単純なプリセットのチェックだけでも、このアンプのポテンシャルがおわかりいただけることだろう。
本機は木製のキャビネットに8インチ・スピーカーを搭載。8インチ・スピーカーと聞くと「小口径で低音に物足りなさがあるのでは?」と感じるかもしれない。しかし実際に動画をチェックしていただければおわかりいただけると思うが、小さなサイズからは想像できないほど十分な低音が得られる点にも注目してほしい。
アンプ・モデリングだけでなく、エフェクトも搭載。2つのプリ・エフェクト(MOD、STOMP)と、2つのポスト・エフェクト(DELAY、REVERB)が用意されており、これらは必要最低限なコントロールで的確に欲しい音を作り出すことができる。一般的なギターのRIG(ギターからアンプまでのサウンド・システム)がMustang LT25の中で完結していると考えると使いやすいだろう。ギターからSTOMP系エフェクト(歪みやコンプレッサー)、MODULATION系のエフェクトを通過し、プリアンプ・シミュレーションのセクションへ。その後、ポスト・エフェクトと呼ばれるDELAY、そしてREVERBを通過し、パワー・アンプ+スピーカー・シミュレーションのセクションへ送られる。パラメーターは1.8インチのカラー・ディスプレイに表示され、エディットも簡単に行なえるだろう。
Mustang LT25はUSBでファームウェア・アップデートが可能であり、今後も新しい機能/サウンドが提供される。さらにUSBはオーディオ・レコーディングにも対応しているため、本機をインターフェース/サウンド・デバイスとして使用し、そのサウンドを直接PCに取り込むことも可能だ。加えてステレオAUXインとヘッドフォン・アウトを装備しているので、外部音源と合わせた演奏/練習もできる。夜間でも気軽に使用できるのもうれしいポイントだ。しかし、Mustang GTに対応していたBluetoothやアプリは非対応となっている。
ハイ・コストパフォーマンスな小型アンプ、そして多機能なモデリング・アンプといった一面に加え、やはりプラグインではなく「ハードとしてのアンプ」が弾き手に与える恩恵を感じて頂きたい。普段はヘッドフォン、もしくはモニター・スピーカーから鳴るギター・サウンド(プラグイン・エフェクト/アンプ・シミュレーター・サウンド)を楽しんでいるという皆さんは、同じようで異なる「アンプからの出音」をぜひ体験してもらいたい。特にモノラルのコンボ型アンプからの出音は、ステレオのモニター・スピーカーからのサウンドとはまったく異なるものだと思う。なかでもフェンダーらしいクラシックで輝かしいサウンドを楽しむのであれば、その差は大きいはずだ。そしてエクストリームなメタル・サウンドや、ジャンクなサウンド・プリセットにおいても手抜きのない音創りの姿勢が感じられる。カントリー・ギタリストからシュレッドなギタリストにまで愛されるフェンダー・アンプ。そのフェンダーが作った新しい小型アンプに音楽の境界線はないということだろう。初めてのギター・アンプにはもちろん、初めてのデジタル・アンプとしてもオススメしたい。
村田善行(むらた・よしゆき)
ある時は楽器店に勤務し、またある時は楽器メーカーに勤務している。その傍らデジマートや専門誌にてライター業や製品デモンストレーションを行なう職業不明のファズマニア。国産〜海外製、ビンテージ〜ニュー・モデルを問わず、ギター、エフェクト、アンプに関する圧倒的な知識と経験に基づいた楽器・機材レビューの的確さは当代随一との評価が高い。覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。