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  • 2018年のニュー・モデル4本をチェック!

斎藤誠が弾く!マーティンLX Custom S/E、000RSG、D Jr. Burst、00-17 Authentic

LX Custom S/E、000RSG、D Jr. Burst、00-17 Authentic

  • 制作:デジマート・マガジン 取材・文:坂本信 写真撮影:八島崇 動画撮影&編集:熊谷和樹 録音:嵩井翔平

好評連載Martin Times。早いもので、今回で2018年最後の更新となります。そんな27回目は2018年のニュー・モデルを4本ご紹介! 1931年の仕様を再現したAuthenticシリーズの00-17や、島村楽器とコラボしたリトル・マーティンのLX Custom S/Eなど、今回も個性的なモデルがズラリ。毎度お馴染み斎藤誠氏の演奏でお楽しみください!

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斎藤誠が弾く!
マーティン2018年ニュー・モデル
LX Custom S/E、000RSG、D Jr. Burst、00-17 Authentic 1931

Special Talk Session
斎藤誠が語る! 2018年ニュー・モデル
LX Custom S/E、000RSG、D Jr. Burst、00-17 Authentic 1931の魅力

ビギナーからベテランまでにオススメできるニュー・モデル4本

 前回まで数多くのカスタム・モデルをご紹介してきたが、今回はそれらに負けず劣らず個性的なニュー・モデル4機種を見ていこう。

 まずは、子供の入門用や気軽に手に取れる練習用として開発されながら、エド・シーランによってアーティストの使用にも堪えることが証明されたリトル・マーティンで、森林保護活動に協力する島村楽器の「Evergreen Project」とのコラボレーションによるLX Custom S/E。お次はメキシコで生産することでコストを下げながらも、通常の000サイズでオール単板仕様を実現した000RSG。それから、7/8サイズのコンパクトなボディを持つドレッドノート・ジュニアで、マーティンのドレッドノートとしては珍しいサンバースト仕上げを施したD Jr. Busrt。最後は、レギュラー・モデルとしては最上位のオーセンティック・シリーズの1本として登場した、オール・マホガニーの00-17 Authentic 1931である。

 どれもサイズや用材の点で通常のマーティンとは少し違っていて、最初から個性を狙う1本目としても、標準的なモデルに加えての2本目や3本目としても、なかなか興味深い選択肢になるのではないだろうか。

X Series Special
LX Custom S/E

LX Custom S/E(Front)


LX Custom S/E(Back)

耐候性に優れたラスト・バーチ・ラミネイト・ネック。色調はマホガニーのトップにピッタリ

ピックアップ・システムには、フィッシュマンのソニトーンを採用

ボディのエッジは丸みを大きめに仕上げてあり、腕が当たっても痛くない

 木材と関わりの深い楽器製造と地球環境の共生を目指し、森林保護活動に協力する島村楽器のEvergreen Projectの一環として企画されたリトル・マーティンのカスタム・モデル。もともと再生材を随所に採用したエコなモデルだが、このギターは売り上げの一部を公益財団法人「鎮守の森プロジェクト」に寄付することで、ギター1本の売り上げにあたり1本の植樹が行なわれるという、さらにエコなモデルとなっている。トップ材は通常のスプルース単板に代わり、エド・シーランの最初のシグネチャー・モデルと同じサペリの単板を使用している。
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【Specifications】
●トップ:サペリ ●サイド&バック:ハイ・プレッシャー・ラミネート ●ネック:ラスト・バーチ・ラミネート ●指板:FSCサーティファイド・リッチライト ●ブリッジ:FSCサーティファイド・リッチライト ●スケール:23インチ(584.2mm) ●ナット幅:1 11/16インチ(42.9mm) ●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードXブレイシング ●ピックアップ:フィッシュマン・ソニトーン ●価格:¥70,000(税抜き)

Makoto’s Impression

 リトル・マーティンは僕も家でよく弾いていて、サイズにも馴染みがありますが、このギターはまるでオール・マホのようなルックスと落ち着いた音が特徴的ですね。あまり音量は出ないんですが、ソーッと弾くとマーティンらしい響きがする。そこがリトル・マーティンの不思議なところです。デモ演奏は「ニール・ヤングにおかず」という曲名(笑)。僕が勝手に「ニール・ヤング弾き」と言っている、手のひらでミュートするコード弾きを使った曲なんですけど、このギターでもちゃんとそれっぽい効果が出るし、1弦から6弦までのバランスがとっても良い。そこにリトル・マーティンのすごさがあるんじゃないかと思います。

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Road Series
000RSG

000RSG(Front)

000RSG(Back)

ブリッジは漆黒のリッチライト。ブリッジ・ピンを白の黒ドット入りにすればスタイル28風にもなる

ボディ材のシリスはローズウッド・カラー仕上げ。杢目も高級感がある

ピックアップ・システムはフィッシュマンのソニトーンを搭載

 サイドとバックにシリスを使用。さらにメキシコで製造しているため、オール単板のモデルとしては最もお求めやすい価格のエレアコだ。とは言え、パーフリングにはマルチ・ストライプ、指板とブリッジには漆黒のリッチライトを採用することで、ローズウッドに似た杢目と色合いのシリスや、ボディ全体のグロス仕上げと相まって、正面から見ると000-28に近い雰囲気になっている。また、ネックはいわゆるパフォーマンス・ネックなので、スタンダード・シリーズと変わらない演奏性が楽しめる。ピックアップ・システムはフィッシュマンのソニトーンを搭載。
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【Specifications】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:シリス ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:FSCサーティファイド・リッチライト ●ブリッジ:FSCサーティファイド・リッチライト ●スケール:24.9インチ(632.5mm)●ナット幅:1 3/4インチ(25.4mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードXブレイシング ●価格:¥215,000(税抜き)

Makoto’s Impression

 これはもう、ネックが握りやすくてすごく弾きやすいもんだから、ポール・サイモンのアフリカンな曲みたいな感じで、ガツガツ弾いちゃいました(笑)。それでいてグロス塗装の効果かもしれませんが、意外と繊細な部分もあるんですよね。全体的に抑制の効いた鳴りで、プレーンの1、2弦の鳴りも突出していないから、その分奔放に弾ける感じがします。エレアコとして使った時にも扱いやすいですね。テンションが柔らかくてビブラートの効きも良いし、今回の4本の中では一番弾きやすいと思います。エレキと持ち替えた時の違和感も少ないでしょう。これで十分と言えるぐらいに良いギターですから、コストパフォーマンスも高いですね。

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Junior Series
D Jr. Burst

D Jr. Burst(Front)


D Jr. Burst(Back)

トップはビンテージ感のあるサンバースト仕上げ。パーフリングの白線がボディ・ラインを引き締める

ボディ材にはマホガニーによく似たサペリを採用。スタイル18の雰囲気が味わえる

7/8サイズのドレッドノートということで、ヘッドもやや小ぶりに作られている

 ドレッドノートのルックスを保ちながら、ボディを一回り小さくしてスケールも24インチに短縮した、7/8サイズのドレッドノート・ジュニア。以前にご紹介したモデルはナチュラル仕上げだったが、このギターはサンバースト。ボディのサペリ材が生み出す軽やかなサウンドも手伝って、1920~30年代のアメリカーナを演奏するにはうってつけのギターになっている。抱えやすいサイズながらドレッドノートのキャラクターはしっかり保っているので、フィンガー・スタイルの弾き語りでも余裕を持ったサウンドが得られるだろう。
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【Specifications】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:サペリ ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:FSCサーティファイド・リッチライト ●ブリッジ:FSCサーティファイド・リッチライト ●スケール:24インチ(609.6mm)●ナット幅:1 3/4インチ(25.4mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードXブレイシング・スキャロップド ●価格:¥110,000(税抜き)

Makoto’s Impression

 000RSGよりも短いスケールなのに、テンション感のしっかりした弾き心地なのがドレッドノートっぽいですね。音もドレッドノートらしい太さがあるし、音量や音圧も外観から想像する以上のものがあります。ツー・トーンのサンバースト仕上げは几帳面になりすぎていない気楽な感じで(笑)、むしろそれがこの楽器の雰囲気に合っているんじゃないかな。今回弾いたのはアコースティック・バージョンですが、エレアコ・バージョンのD Jr. Eも良さそうです。この小さなドレッドノートをライブで使えば、小柄なプレイヤーでも体が大きく見えたりして(笑)、楽しいですよね。そういう効果も含めてライブ向きの1本だと思います。

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Authentic Series
00-17 Authentic 1931

00-17 Authentic 1931(Front)


00-17 Authentic 1931(Back)

12フレット・ジョイントのボディとペアとなる仕様のスロッテッド・ヘッド。ナットはエボニー

スクエア・ブリッジにロング・サドル、黒のブリッジ・ピンがシックな雰囲気を醸し出す

バック・ストリップやエンド・ピースにもブラジリアン・ローズウッドを使用

 本来、オール・マホガニーのギターは廉価モデルとして開発されたが、オーセンティック・シリーズの1本として再現されたこのギターは、むしろ贅を尽くした1本と言えるだろう。ボディやネックは最上級のジェニュイン・マホガニーで、音の要となるトップ材とブレイシングのアディロンダック・スプルース材にはVTS処理が施されている。指板やブリッジ、ヘッド・プレートはブラジリアン・ローズウッド。00とは言え12フレット・ジョイントという余裕のあるボディと、これらの材が生み出す音は、廉価版の域をはるかに超えている。
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【Specifications】
●トップ:ジェニュイン・マホガニー with VTS ●サイド&バック:ジェニュイン・マホガニー ●ネック:ジェニュイン・マホガニー ●指板:ブラジリアン・ローズウッド ●ブリッジ:ブラジリアン・ローズウッド ●スケール:24.9インチ(632.5mm)●ナット幅:1 7/8インチ(47.6mm)●トップ・ブレイシング・パターン:オーセンティック1931 Xブレイシング・スキャロップド ●価格:¥800,000(税抜き)

Makoto’s Impression

 今日の取材現場を騒然とさせたギターです(笑)。これはもう「ホンモノ」の音がしてヤバいですよ(笑)。このギターのために「静かな時間」というメロディ重視の曲を作ってきたんですが、思ったとおりのキレイな音が出てくれましたね。凝ったボイシングのコードも澱みなく響きます。今回はやっていませんが、単音のメロディを弾くのにも良さそう。これだけ個性的で良い音なんだからルックスぐらい悪くてもいいのに、この見た目もたまらないんだよなあ(笑)。ボディのエッジの丸みや、ピカピカになる寸前で止めたグロス仕上げ、風合いのあるペグの選択も絶妙ですね。おおはた雄一君とか好きそう(笑)。

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Makoto’s Impression〜試奏を終えて

 サペリ・トップのLX Custom S/Eは、廉価版の楽器だけど大事にしたい気持ちにさせられる、温かみを感じるギターですね。あと、これとD Jr. Burstは居間のソファの上にポンッと乗っかってる感じが最高でしょう。その部屋に暖炉があったら最高だけど(笑)、コタツに当たりながら弾いても良い。どちらにしても、今の時期にはバッチリのギターなんじゃないでしょうか。000RSGはスタンダード・シリーズを買うほどの予算がないという人にはオススメだし、ピックアップ付きなので、000のすごく良いモデルを持っている人がライブ用として用意しておくにもうってつけだと思います。このシリーズを考えた人は偉いですね。D Jr. Burstもそうですが、廉価版のシリーズのクオリティが高いのはうれしいです。こうした楽器は初めてギターを買う人が選ぶことが多いはずですから、メーカーの第一印象も良くなるでしょう。00-17は今回のギターの中では別格ですが、「このぐらいのモノも普通に作っちゃうよ」っていうところから、初心者向けのモデルまで降りて来てくれるところまで、マーティンの懐の広さが再認識できたような感じがしましたね。

Martin Times〜It's a Beautiful Day バックナンバーはこちらから!

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製品情報

プロフィール

斎藤誠(さいとう・まこと)
1958年東京生まれ。青山学院大学在学中の1980年、西 慎嗣にシングル曲「Don’t Worry Mama」を提供したことをきっかけに音楽界デビューを果たす。 1983年にアルバム『LA-LA-LU』を発表し、シンガー・ソング・ライターとしてデビュー。ソロ・アーティストとしての活動はもちろん、サザンオールスターズのサポート・ギターを始め、数多くのトップ・アーティストへの楽曲提供やプロデュース活動、レコーディングも精力的に行なっている。 2018年4月18日、MARTIN GUITARのラジオCMでお馴染みの「It’s A Beautiful Day」をニュー・シングルとしてリリース。また、本人名義のライブ活動のほか、マーティン・ギターの良質なアコースティック・サウンドを聴かせることを目的として開催されている“Rebirth Tour”のホスト役を長年に渡って務めており、日本を代表するマーティン・ギタリストとしてもあまりにも有名。そのマーティン・サウンドや卓越したギター・プレイを堪能できる最新ライブ情報はこちらから!

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