ビンテージ・ツイード・アンプのサウンドにインスパイアされた
メイド・イン・ジャパンのオーバードライブ

　国内外のハイエンド・アウト・ボードや、完全プロユースのレコーディング・プロダクト、そしてガジェットに至るまで、幅広い商品を取り扱っているUmbrella Company。同社は製品の輸入や流通だけでなく、自社デザインのオリジナル機材もプロデュースしている。ギタリスト／ベーシスト、サウンド・エンジニアにも絶賛されたFusion Blenderを始め、D.I.やヘッドフォン・アンプなど、他のブランドとはひと味違う興味深いラインナップをそろえているのが魅力だ。

　そんなUmbrella Companyから、ブランド初のオーバードライブ・ペダルであるHitchhike Driveが登場した。ユニークな同ブランドらしく、巷に溢れる「何々系」とは一線を画するサウンドを持っている。

Umbrella Company / Hitchhike Drive

　開発時に目指したのは「60年代後半～70年代初頭までのアメリカのロック／ブルースで聴けるサウンド」とのこと。その時代のアメリカン・アンプと言えば、ジャズやカントリー・ミュージシャン向けの小型コンボ・アンプが主流だった。ボリュームをフルアップにした際に得られる、ブーミーでコンプレッションの強い独特のサウンドで、アメリカン・ツイード・アンプの特徴とも言える「アンプのプリ管で歪んだ音」ではなく、パワー管から生まれる自然でファットな歪みと、整流管で得られるスポンジーな質感、そして小口径のスピーカーがドライブした際のサチュレーション感などが特徴としてあげられる。

　このHitchhike Driveは、そういったビンテージ・ツイード・アンプたちのサウンドを独自の解釈でペダル化した、非常に個性的なオーバードライブだ。独特のサチュレーション感を生み出しているポイントは、筐体に設置されたSaturateスイッチでオン／オフ可能なダイナミック・フィルターや、内蔵しているScoop Filterトーン・シェイプだろう。ダイナミック・フィルターは高域のみを取り扱うリミッター的な回路で、ここでアンプ・ライクな高域を生み出している。Saturateスイッチ・オフ時はエフェクターっぽいサウンドなのだが、オンにするとエフェクターらしからぬ高域の質感が得られ、このちょっとした変化が非常にチューブ・アンプらしいサウンドを生み出す。Scoop Filterトーン・シェイプも同じくアンプ・ライクなサウンドを生み出すアナログ回路で、キャビの箱鳴り感やスピーカー・ユニットのトーンを再現するため、ここが本機の心臓部分だと言えるだろう。

メインの歪みはもちろん
アンプなどをプッシュするブースターとしても◎

　特徴的な3つのモード（D／T／B）の切り替えによる幅広いサウンドメイクは歪みペダルとしてだけでなく、クリーン・ブースターとしても使い勝手が良く、ガッツのあるミッド・レンジを見事に生み出してくれる。なめらかなイコライジング・カーブは地味だと感じるかもしれないが、使いやすく、音色のおいしいポイントを見つけやすい。

SaturateスイッチとAmp Typeスイッチを装備

　とにかく、ツイードの雰囲気を「これでもか！」と味わわせてくれるサウンドが心地良く、ピッキングの強弱やギター側のボリューム操作への追従性も素晴らしい。ロー・コードでずーっと弾き続けても飽きないというのは、ほかのペダルにはない特徴だ。そしてレスポンスのフィーリングがとにかく素晴らしいので、プレーン弦でのシングルノートでも素晴らしい存在感を生み出す。ソリッドステート・アンプが見事にツイード・サウンドに変化した実力を動画で確認してほしい。また、ピックアップを選ばないサウンドはスライド・ギターやブルース・ハープ演奏者などにもオススメできる。

　と、Hitchhike Driveを単体で使用した際はこういったイメージなのだが、本機の後段にほかのオーバードライブやディストーションをつなげて組み合わせても良いだろう。また、真空管アンプを本機でプッシュすると、期待以上のビッグなクランチ・ドライブを生み出してくれる。Umbrella Companyらしい音への解釈が非常に興味深く、おもしろい。メイド・イン・ジャパンの要注目ペダルだ。