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- 2024/11/16
RYOGA / Val-B443/ASH
2017年夏のブランド誕生からメイド・イン・ジャパンの高品質なギター/ベースを少量生産でリリースするRYOGA。今回そのラインナップに新しく加わったVal-B443/ASHは、バランスの良さとプレイアビリティに優れ、個性的なデザインが好評のDIVER-BASSとは対照的な、よりオーソドックスなデザインのロング・スケール・ベースだ。今回は、ピアノ・ロック・バンドというユニークなスタイルで活動を続けるHOWL BE QUIETに新しく加入した、松本拓郎氏のデモ演奏を交えて、このベースをご紹介しよう。
北欧神話に出てくる闘いの女神ヴァルキリー(Valkyrie)にちなんでVal-Bassと命名されたこのベースは、864mmという標準的なロング・スケールを採用し、JJスタイルのボディ・デザインと電気系統を採用したモデルだ。これまでオーソドックスなスタイルの楽器を使っていたプレイヤーでも、ほとんど違和感なく持ち替えることができるだろう。その一方、細かい部分で様々な改良や工夫が施されているのも、このVal-Bassの特徴となっている。以下、その詳細を見ていこう。
まず、全体的なデザインはJタイプを継承しているが、ヘッドは従来のインラインではなく、ペグが2個ずつ分かれた対称に近いデザインで、高音弦のペグに手が届きやすくなっている。また、ヘッドにアングルを付けてストリングス・ガイドを省略しているので、ストリングス・ガイドの摩擦が無くなり、チューニングもよりスムーズで、合わせた後の安定性も高まっている。ネックはハード・メイプルとブビンガを組み合わせた5ピースで、剛性や耐候性が向上している。指板はローズウッドで、フレット数は21。オーソドックスな楽器より1フレット多いだけだが、最高音のEが使えることで、ロックなどのシャープ系のキーが多い音楽では、フレージングの自由度が目に見えて違ってくる。
ボディもデザインはオーソドックスだが、フレット数の増加に合わせて、高音弦側のカッタウェイがより深くなっており、21フレットまで楽に手が届くばかりでなく、ハイ・ポジションのコードも無理なく押さえることができる。また、21フレット以上に相当する指板の部分はなだらかなスロープ状に仕上げられ、スラップのサムピング時に親指が入りすぎずアップダウンがやりやすくなっている。様々な奏法を駆使するモダンなスタイルへの配慮がうかがえるデザインだ。なお、ネック自体はこの指板よりもさらに長く、ボディに深く食い込むディープ・ジョイント方式を採用したボルトオン式で、弦振動のロスが少ない、しっかりした構造になっている。
ハードウェアに目を移すと、ペグはゴトー製を搭載。そのラインナップの中で最軽量のGB350を採用し、ライト・アッシュ材を使用したボディとのバランスが絶妙で、ネック落ちの問題が解消されている。演奏中にネックを下から支える必要がないので、フィンガリングに集中できるのが大きな特徴だ。一方のブリッジもゴトーの404SJ-4を採用。弦は裏通しになっており、ボディ裏の弦留めはブラスの削り出しで、サステイン・ブロックの役割も果たしている。一方でこのブリッジは一般的なビンテージJBと同様に弦を裏通しにしないトップ・ローディングにも対応可能。よりコンプレッション感の少ないストレートなサウンドがお好みの方にはこちらもお勧めしたい。
電気系統は、JJスタイルのRYOGA RJ-4オリジナル・ピックアップを採用している。ブリッジ側はいわゆる70年代の位置にマウントされているので、両方のピックアップをミックスした時には、よりブライトなサウンドが得られる。コントロールもシンプルな2ボリューム1トーン方式だが、トーンのノブを引っ張ると両方のピックアップがシリーズ接続になり、通常のJJタイプでは出せない、ハイパワーのハムバッキング・サウンドが得られるようになっている。ワイルドなソロを取ったり、アンプをオーバードライブさせたりする時などには便利だろう。
最後に、動画ではわかりにくいかもしれないが、ボディの仕上げはただのナチュラルではなく、トランスパール・シルバーという、クリアーの塗料に少量のパールを混ぜたものになっている。スポットが当たると、美しく滲んだ光を放つので、ステージ効果も抜群だ。全体として、長時間のステージやリハーサルでも負担の少ない軽量かつバランスの良い設計で、操作性やステージ映えにも配慮が行き届いたベースと言えるだろう。
実を言うと、このモデルのプロトタイプをしばらく使っているんですが、ヘッドはアングルの付いていない、ストリングス・ガイド付きのタイプでした。それに比べて、このプロダクション・モデルはテンション感がやや強く、タッチに対する追従性も良くなっている印象です。僕はHOWL BE QUIET以外にサポートの仕事もよくやっていて、JJタイプのパッシブの楽器を使うことが多いですが、Val-Bassはそういったクライアントさんの受けもすごく良くて、しかも演奏性や体へのフィット感も優れているので、とても気に入っています。コードを弾く時や、今どきの音楽でよく聴かれる派手なベース・ラインを弾く時に、カッタウェイの存在を気にすることなくハイ・ポジションが使えるのも良いですね。あと、指板エンドの部分がスロープになっているのでスラップの演奏性も良いですし、フィンガーレストのように親指を置いて、よりネック寄りのポジションでフィンガーピッキングするのも楽です。
また、このベースはピッチ感が良いのも特徴です。ピッチ感の良い楽器には、コンプレッション感が強くて、ラインの音はきれいでも、アンプで鳴らすと音圧感が物足りないものも多いんですが、これはポップスでちゃんと使える音圧感とピッチの良さが両立しているので、音圧感を取るかピッチ感を取るかで楽器の選択に悩む必要もありません。ピックアップのシリーズ接続も、現場に行ったら思っていたよりもゴリゴリのサウンドが必要だった、なんていう時などに重宝しています。
それから、特に仕事で長時間使う上でものすごくありがたいのが、軽量かつバランスの良いところですね。20歳ぐらいの頃には重さが5kg前後もあるベースを2本メインで使っていて、毎日銭湯へ行っては湿布を貼り替える生活をしていたんです(苦笑)。でも、この楽器に替えた瞬間からどんどん体も楽になっていったし、重い楽器では無理だったストレッチが必要なフィンガリングも出来るようになりました。長く音楽活動を続けていくことを考えると、楽器の重量、バランスというのも大問題なんですよね。
価格:¥241,920 (税込)