AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
SABIAN / Lightning Strikes
1981年に創業し、その高い技術を生かしたハイ・クオリティなシンバル作りで、瞬く間にトップ・ブランドへと駆け上がったセイビアン。リズム&ドラム・マガジン2019年1月号では、楽器フェア2018のタイミングで来日したアンディ社長のインタビューと、LOUDNESSの樋口宗孝氏が生前にプロデュースを手がけたシンバル=Lightning Strikesの試奏レポートの2本立てで、セイビアンの魅力に迫っている。ここでは12月24日の販売スタートまで1ヵ月を切ったLightning Strikesにフォーカス。樋口氏がひとつの答えとして辿り着いた“幻のシンバル”の実力を掘り下げていく。
今回完全限定生産でリリースされるシグネチャー・シンバル=“Lightning Strikes”の開発に樋口氏が取り組み始めたのは、シグネチャー・スネア“EXHAUST QUAD”が発売された2005年頃。瞬く間に完売となったことをきっかけに、“次はシンバルや!”という号令が飛んだそうだ。
Lightning Strikesのベースとなっているのは、ヘヴィな仕様が特徴のAAXメタル・シリーズ。LOUDNESS再結成後にメインで愛用していたシンバルで、そのサウンドを軸に樋口氏とパールのスタッフがアイディアを交換し、形にしていったという。その開発にあたって最初に目をつけたのがライド・シンバルのカップ。よりワイルドな倍音を出すことを目的に、レイジングを施さない仕様に決定。そしてその際に“エッジもレイジングしないのはどうですか?”という提案があったという。レイジングを施さない仕様は現在では当たり前と言えるが、当時はまだ画期的なスペックで、シンバル各社を見渡しても、採用されていたのは一部のモデルのみ。それを自身のシグネチャーとして発表しようとしていたことに、あらためて驚かされる。
こうしてアイディアの原型が揃い、試作を繰り返し、そのプロトタイプが2006年に行なわれたLOUDNESSの25周年記念ライブで初お披露目。完成した製品について本人は“アタックが強烈でインパクトも大きい。それでいて繊細に叩いたときにはソフトな音が出る”っと絶賛。しかし、そのサウンドに満足しながらも、“見た目をもっとピカピカにできないか?”、“厚みを変えたらどうなる?”などさまざまな要望を出していたという。
あらためてスペックに目を向けると、20"&21"クラッシュに、23"ライド、24"チャイニーズという超ビッグ・サイズ仕様という点が大きな特徴。そしてその頃はまだ、今ほど認知されていなかった奇数インチのシンバルにいち早く目をつけていた点も、新しいものが好きだった樋口氏ならではと言える。
“Lightning Strikes”というネーミングや、それに伴うロゴ・デザインも本人からOKをもらい、開発が進む中、樋口氏は肝細胞癌を患い、2008年11月30日に49歳という若さで急逝。今年で10周忌の節目を迎え、世に出せなかったこのモデルを形に残しておきたいという関係者の想いから、遺族の了承も得て、今回発売が決定。ドラムと真剣に向き合い、常に新しいサウンドを追い求めていた樋口氏が、ひとつの答えとして辿り着いたこのLightning Strikesにぜひ触れてみてほしい。オーダーは2018年12月27日(木)までとなっている。詳細はセイビアン取り扱いの楽器店まで!!
さっそくLightning Strikesの試奏レポートをお届けしていこう。まずチェックしていただくのは、生前の氏と縁の深かったJanne Da ArcのshujiとLa'cryma ChristiのLEVINの2人だ。
●2人とも、今日初めてLightning Strikesに触ったということですが、まずファースト・インプレッションから教えていただけますか?
shuji 最初に見たときは、樋口さんらしくないルックスのシンバルだなと思いましたね。樋口さんはずっとAAXメタル・シリーズを使っていて、ブリリアント加工のイメージが強いので、エッジとカップがレイジングされていないところが意外でしたね。
LEVIN 確かにブリリアントのイメージが強い人でしたけど、樋口さんは常に先を行っていたので、“次はこういう路線だろう”と考えて、手がけていたのかもしれないですね。シンバルに限らず、“こういう楽器を作った方がええ”っていうことを、流行する4〜5年前にいつも言っていた人で、このLightning Strikesも10年前の企画ですけど、今、流行っている剥き出しの(ノンレイジング)加工を取り入れたり、すごく現代的なスペックですよね。今の方が受け入れられやすいんじゃないかと思います。
●実際に叩いてみた感触は?
shuji 元になっているAAXメタル(シリーズ)の要素をちゃんと引き継いでいるなと思いました。ロックで男らしいサウンドなんですけど、(ノンレイジング仕様の)エッジの影響なのか、AAXメタルにはない繊細さがありますね。そこがすごく良いなと思いました。例えば、20"、21"クラッシュは“ゴーン”っていう独特の響きがあって、僕が今使っている口径が小さいタイコには合わないんですけど、同じサイズでもLightning Strikesはその響きがうまく抑えられているので、これは使えるなと思いました。
LEVIN パッと見の印象やスペックから、ジャンルを選ぶ、扱いにくいシンバルなんだろうなと思っていたんですけど、品のある音で、すごくバランスが良いです。大口径シンバルにありがちなローの成分だけが強調されることもなく、きらびやかなハイの成分との混ざり具合いも良くて、いろんなドラマーが使えるシンバルだと思います。今は音楽、特にロックのテンポが上がっていて、レスポンス重視の時代だと思うんです。それに応じて小口径を選ぶ人が増えているように思うんですけど、Lightning Strikesは大口径なのに立ち上がりが速いので、現代的な音楽にも対応できると思います。
●今年は樋口さんの10周忌ということもあり、このLightning Strikesに興味を持つドラマーも多いかと思いますが、そういった人へ、メッセージをお願いします!
LEVIN スペック的にここまで大きい口径のシンバルを叩いたことのないドラマーって多いと思うんです。先入観があるかもしれないですけど、まず楽器店で試奏してもらいたいですね。叩いてもらえれば、今話したことがわかると思うし、樋口さんを知らない世代にも、きっかけとしてぜひ触ってみてほしいですね。
shuji ロックを叩くドラマーなら一度は触れてほしいですね。この間、試奏している動画を観たんですけど、このシンバルの魅力は実際に叩いてみないと伝わらないな、と今日試奏してあらためて思いました。
続いてLightning Strikesを試してもらったのは、樋口氏の後任としてLOUDNESSを支えてきた鈴木“あんぱん”政行。“LOUDNESSのドラム”を受け継いだ彼にはLightning Strikesはどのように映ったのだろうか。
すごく濃厚な音色ですね。レンジが広くて、特に低音が引き締まっているように感じました。とにかく叩いていて気持ちが良いですね。中でもクラッシュは、今使っているメタル・シリーズとの違いがわかりやすくて、(メタル・シリーズの方が)ハイの成分が多いように感じます。Lightning Strikesは音に品があるというか、高貴な感じがしますね。僕も使っている(AAXの)メタル・シリーズがベースになっているということですが、音の印象はやっぱり違うように思います。
ライブで試してないので断言できないですけど、今日叩いてみて思ったのは、レコーディングで使ってみたいなということですね。音がブワーっと塊のように広がるので、マイク乗りも良さそうです。あと樋口さんのシグネチャー・モデルということで、メタルやハード・ロック向きと思われるかもしれないですけど、音量のバランスが良くて、音色も上品なので、幅広いジャンルで使えると思います。フュージョンやジャズを叩ける、テクニカルな人が叩いても面白そうですね。
今回の特集はリットーミュージック刊『リズム&ドラム・マガジン 2019年1月号』掲載記事を再編集したものです。誌面では「SABIAN Cymbalsの現在」と題して、セイビアン社の社長であるアンディ氏の独占インタビューを掲載。Lightning Strikesのより詳細な試奏レポートにも注目です。表紙を飾るのは[ALEXANDROS]の庄村聡泰と川上洋平。2人のスペシャル対談を含む特集は「歌い手が語るドラムの話」。高橋幸宏、野口五郎、織田哲郎×神田リョウ、磯貝サイモンがドラムについてディープに語る内容です。ぜひチェックしてみてください!
価格:¥430,000 (税別)
LEVIN
La'cryma Christiのドラマー。さまざまなアーティストのサポート・ドラマーとしても活動中。ドラムに特化したレコーディング・スタジオlab.L(ラボエル)も運営している。
shuji
ロック・バンド、Janne Da Arc のドラマーとして1999 年にデビュー。以降、26 枚のシングルと6 枚のオリジナル・アルバムを発表。アニメ「ブラックジャック」の主題歌として起用された「月光花」は30 万枚以上のセールスを記録。ライブでも30 万人を動員するなど、日本を代表するロック・バンドへと成長する。2007 年、バンド活動と並行してソロ活動を開始。安定感とパワフルなドラムに定評のあるshuji は、現在までに、ゴールデンボンバー、KAT-TUN、LAZY など、さまざまなアーティストのサポートドラマーとしても活躍し、数々の作品のレコーディングにも参加している。
鈴木政行
2008年にSABER TIGERに加入。故・樋口宗孝の追悼ライブのサポート・ドラマーとしてLOUDNESSに参加し、2009年末、樋口の後任ドラマーとして正式加入。18年2月に脳梗塞を発症するも、闘病生活を経て、9月24日のMETAL WEEKENDで復活。12月29&30日にEXシアター六本木で行われるライブへの参加も決定している。