Positive Grid Spark LIVE meets Toshiki Soejima & Naho Kimama
- 2024/12/13
Line 6 / HX Stomp
最も進化したギター・プロセッサーと言えるLine 6のHelixシリーズ。Helix Floor/Rack、Helix LT、そしてエフェクト機能に特化したHX Effectsとラインナップを重ねたこのファミリーに、新たにHX Stompが加わった。
HX Stompは非常にコンパクトながら、アンプ/キャビネット/エフェクトなどを事細かにエディット可能で、Helixと同等のサウンドを得ることができる。まさにプロフェッショナル・グレードと呼べるギター・プロセッサーだ。さらに、その小型な筐体を活かすことでさまざまな拡張性をフォローする。
レビューでは、まず一般的なアンプとペダルによるセットアップにHX Stompを組み込んで使用する方法をチェックしてみた。お気に入りのストンプ・ボックスを並べたペダル・ボードに本機を組み込むだけで、最新のサウンドメイキング・メソッドを手に入れることができる。エフェクトやアンプなどのサウンド・ライブラリーは、Helixでお馴染みの高品質なエフェクトはもちろん、Mシリーズなど歴代のLine 6を代表する「レガシー・サウンド」を含む300種類以上で、その中から自由な組み合わせでパッチを組み上げることが可能。例えばディレイだけを3台チョイスする、というクリエイティブなサウンドメイクにも対応する。
さらに、HX Stompのエフェクト・ループにコンパクト・エフェクターを組み込んで、それらを一体型のエフェクト・システムとして取り扱うことも簡単にできる(Helix LTのレビューを参照してほしい)。また、センド/リターンを搭載したアンプと接続する際には「4ケーブル・メソッド」を採用することで、真空管アンプのプリアンプ部分をHX Stompの中に組み込んでしまう使用法も可能だ。プリセット・パッチごとにエフェクト・ルーティング(接続順番)が自由に設定できるので、アナログ・ペダル・オンリーのシステムでは味わえない、ダイナミックで高品質なサウンドメイクの世界の自由度を体験してほしい。
HX StompはHelixと同じアンプ・モデリングも搭載しているため、HX Stomp内でステレオのアンプ・シミュレーション・アウトを含む、すべてのサウンドメイクを完結することも可能だ。ライブハウスやスタジオ練習の際、ダイレクトにPAシステムに信号を出力するだけで、この小さなサイズからは想像もできないような完璧なサウンドを楽しむことができるだろう。HX Stompはさまざまな環境や目的にシームレスに対応するため、前述したように4ケーブル・メソッドやアンプのセンド/リターンを駆使すれば、リアル・アンプ・サウンドとライン出力サウンドの同時を操る/鳴らすなど、アグレッシブな音作りも思いどおりになる。サウンドメイクにこだわるミュージシャンには必須のギアになってくるだろう。これだけの機能がギグ・バッグのポケットに納まるサイズにまとめられているのは驚愕に値する。
HX Stompはサブ・システムとしてはもちろん、ほかのモデラーと組み合わせて使用するアドオン・システムとして、ツアーやセッション現場などあらゆる場面で活躍する。例えばペダル・タイプの真空管プリアンプや、他ブランドのアンプ・モデラー、プロファイル・アンプ、スピーカー・シミュレーターなどと一緒に、このHX Stompを使う方法はどうだろうか? HX Stompとほかのプリアンプ/モデリング・アンプなどの機材をMIDIケーブルでつなぐだけで、コントロールやサウンドの変更など、ほぼすべての情報を共有し同期させることも可能になる。パッチの切り替えをワンアクションで行なったりするなどの実例は、Helix LTのレビューを参照してほしい。ほかにもアンプ・サウンドはプロファイラーで仕上げておき、エフェクト・サウンドはHX Stompが担当する、という役割分担を持たせることで、機材やPCのメモリーに負担をかけず、あなただけのオリジナルRIGを作り出すことも可能だ。
ほかにも、素晴らしいラック・タイプのチューブ・プリアンプとHX Stompを組み合わせるだけで、大型ラックに匹敵するサウンドが得られたり、MIDI対応機材であれば、さらに簡単にパッチの切り替えなども行なえる。これまでに多くの機材を所有してきた/現在所有しているミュージシャンのみなさんは絶対に見逃さないでほしい。
さらにオーディオ・インターフェースとしても機能するので、自宅ではもちろん、ツアーへの持ち出しにも重宝するだろう。ツアーではライブで使用し、そのままホテルでデモ・テープを制作しなくては!という場合には、超シンプルで高品質なオーディオ・インターフェース/レコーディング・ツールとしても活躍する。モバイルPCとHX Stompがあれば、デスクトップがいつでもハイクオリティなレコーディング・スタジオに早変わり。もちろん、HX Stompにはヘッドフォン・アウトも装備しているので、ライブ本番前のウォーミングアップや、ステージ上でのライン・サウンド・チェックなどにも最適だ。
また、ファクトリー・プリセットにベース用のパッチも組み込まれている。ベーシストに向けてもアピールしているポイントとして、パラレル・シグナルパスをうまく使って「芯のあるエフェクト・サウンド」を作り上げたり、ライン・アウト用のサウンドメイクをHX Stompで行ない、ステージ上のリアル・アンプとのサウンドをミックスするという使い方もアリだろう。シンプルでありながら、こだわったサウンド・システムの構築にも大いに役立つハズだ。もちろん、ギタリストがベースラインを録音する際にも最適なサウンドを生み出してくることは言うまでもないだろう。
HX Stompの基本的な操作方法やパッチ・チェンジの方法、サウンドメイクなどは、これまでの製品レビューを見返していただければ良いと思う(なぜなら本当にシンプルで、簡単だから!)。とにかくこのサイズ、この価格でHelixと同等のプロセッサーが手に入ると思ってもらえれば、HX Stompのすごさがご理解いただけるのではないだろうか。メイン・システムからサブ・システムにまで、サイズを超えた最高のパフォーマンスとサウンドは「ちょい足し機材」として使っても、サウンドメイクの最重要機材として使っても、オーディオ・インターフェイスとして使っても……あなたの想像を超えるほど「自由な表現力」を与えてくれることだろう。
価格:オープン
村田善行(むらた・よしゆき)
ある時は楽器店に勤務し、またある時は楽器メーカーに勤務している。その傍らデジマートや専門誌にてライター業や製品デモンストレーションを行なう職業不明のファズマニア。国産〜海外製、ビンテージ〜ニュー・モデルを問わず、ギター、エフェクト、アンプに関する圧倒的な知識と経験に基づいた楽器・機材レビューの的確さは当代随一との評価が高い。覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。
【使用機材】
使用ギター:Crews Maniac Sound / Aristoteles V2.
使用アンプ:Marshall / JVM210H
使用キャビネット:Marshall / 1960A
使用ペダル:FREE THE TONE / STRING SLINGER
使用ペダル:Ibanez / TS808
使用ペダル:D.A.M / DOPE PRIEST