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- 2024/11/16
電子楽器
こんにちは、Yebisu303です! 暑さが厳しい夏も終わり、じっくり腰をすえて制作に打ち込める季節になってきましたね。それでは今回もハードウェア機材を用いたライブ・パフォーマンスの可能性を探求していきましょう!
純粋な音楽ジャンルというよりは、1980年代のニューウェーブやエレポップ、SF映画サウンド・トラックなどの要素を内包したムーヴメントで、bandcampやYouTubeなどのインターネット・メディアを介して2000年代半ばから徐々に拡大していきました。
Roland TR-707やLinnDrumに代表されるようなPCMドラムマシン、クラップに付加された強めのゲート・リバーブ、8分音符のリズムで刻まれるMoog系アナログ(あるいはFM)シンセのベース、シネマティックな雰囲気のシンセ・パッド、レゾナンスの効いたシンセ・リード……といったレトロな音色を全面に押し出しつつ、1980年代のSFやサイバーパンクへの郷愁を感じさせるメロディやハーモニーが特徴的です。代表的なアーティストは、Mitch Murder、Lazerhawk、Kavinskyなど。30代以降にとってはニューウェーブの派生ジャンルとして、またそれ以前の若い世代にとっては全く新しいジャンルとして捉えられる傾向があるようです。
そのほかのオススメをSpotifyプレイリストにまとめてみましたので、興味がある方は是非こちらもチェックしてみて下さいね。
MatrixBruteは、ARTURIAが培ってきたソフトウェア/ハードウェア開発技術の粋を集めて作られたアナログ・シンセです。minimoogの影響を感じさせる3VCOとラダー・フィルターに、MiniBrute/MicroBruteでも好評を博したSteiner Parkerフィルターを組み合わせ、重厚で多彩な音色を作り出せます。
リアの豊富な入出力端子にはCV入出力がそれぞれ12系統も用意されており、モジュラー・シンセの膨大なモジュレーション・ソースとしても重宝します。さらに画期的なマトリクス・モジュレーション、5種類のアナログ・エフェクトを装備し、クラシックなアナログ・シンセにとどまらない自由な音作り・パフォーマンスの楽しさを提供してくれます。
シンプルで使いやすく、とても奥の深いビデオ・シンセです。音声信号を入力するだけでオーディオのレベルに応じて様々なモーション・グラフィックが生物のように動き始めます。また、MIDI入力端子を備えているのも大きな特徴で、主要なパラメーターをDAWやハードウェアのシーケンサーでコントロールできます。さらにPythonプログラミングによって独自の映像アルゴリズムを作成・カスタマイズできるなど、使い込めば使い込むほどポテンシャルを引き出せます。
とてもコンパクトながら、さまざまなアイデアがバランス良く詰め込まれているサンプル・ベースのリズム・マシンです。オーディオ入力端子からシンプルにサンプリングが行なえ、作業の流れを止めずにトラック・メイクを進められます。8トラックのサンプル・セクションは非常にクリアな音質で、高品質なサンプリング音源からローファイなレコード音源まで、あますことなくその質感を鳴らし切ることができます。また、8トラックのMIDIシーケンサーを搭載しているのも大きな特徴です。和音の入力やMIDI CC・プログラム・チェンジの送信も可能で、さまざな音源モジュールを組み合わせて使うことでそのポテンシャルを増分に発揮することができます。「オールラウンドに使えるリズム・マシンやサンプラーが欲しいけど、何を選べばいいか分からない…」という人に安心してオススメできます。
FM音源を採用した3ボイスのポリフォニック・デジタル・シンセサイザーです。リーズナブルな価格でありながらフル・プログラマブル、そしてYAMAHAの名機DX7と完全な互換性を持ち、同機の音色フォーマットであるSysExファイルをインポート可能。また、モジュレータ/キャリアそれぞれのアタックとリリース調整ノブを操作することによって、従来のFM音源では考えられない直感的な音色変化も実現しています。volcaシリーズではおなじみのモーション・シーケンス(各パラメータ・ノブのリアルタイム操作を記録する機能)も搭載しているほか、同シリーズ初となるアルペジエーター機能も非常に楽しく、これらを組み合わせることで単体でも複雑なシーケンスを作り出せます。プリセット音色もバリエーション豊かで実用的なものが多く、マシン・ライブのお供として最適です。
12種類ものアルゴリズムを搭載したリバーブ・エフェクター。そのシルキーで柔らかな音質は特筆すべき美しさで、ギターはもちろんシンセを通すだけで夢のような音空間を演出してくれます。
MIDIイン/スルー端子を搭載しているので、テンポに同期したディレイ・タイムの設定やプログラム・チェンジによるパッチ切り替え、MIDI CCによるパラメータのコントロール等もお手の物です。同社のディレイ、TIMELINEとともに、オールラウンドで使える究極の空間系エフェクトとして揺るぎない地位を誇っています
MatrixBruteの最大の特徴でもある16x16のマトリクス・パネル。モード切り替えによってプリセット選択ボタンやステップ・シーケンサーとして使用できるほか、「マトリクス・モジュレーション・パッチ・ベイ」という機能を使った音作りが可能です。各パラメーターの変調元を横軸、変調先を縦軸とし、ボタンを使って擬似的に結線できるので、パッチングの状態を一目で把握しやすく、非常に合理的なUIになっています。また、鍵盤の左に配置されているマクロ・ノブを活用すれば、複数のパラメーターを1アクションでコントロール可能。手数が不足しがちなマシンライブがより魅力的なものになることでしょう。
例えば、Ladder FilterのLPF(ローパス・フィルター)のカットオフを開く際、フォルターの発振音が付加され音量が大きくなってしまう場合でもマトリックス・パネルとマクロ・ノブを使えば解消できます。下記の手順通りに設定を行ってみてください。
[手順1] マクロ・ノブ1(変調元)とLadder FilterのCutoff(変調先)をパッチング
→マクロ・ノブ1(マトリクスのM行)とLadder Cutoff(列10)を結ぶ位置のボタンを押し、モジュレーション量を+99に設定
[手順2] 13個目の変調先としてLadder Out(ラダーフィルターの音量)を設定
→デスティネーション13ボタンを押したまま、Ladder Outノブを動かす(設定成功時、本体右上のLCDに「13: Ladder Out」と表示されます)
[手順3] マクロ・ノブ1(変調元)とLadder Out(変調先)をパッチング
→マクロ・ノブ1(マトリクスのM行)とLadder Cutoff(列13)を結ぶ位置のボタンを押し、モジュレーション量を-30に設定
このように設定すれば、マクロ・ノブ1を回すことで、意図したフィルターの質感を保ったまま、音量のばらつきをなくすことができます。さらに、残る変調先にアナログ・エフェクトのDelay TimeやDry/Wetを設定すれば、よりドラマチックに音色変化させることができます。
BigSkyに内蔵されている12個の多彩なアルゴリズムはどれも魅力的ですが、今回の動画では「SWELL(スウェル)」というアルゴリズムを使用しました。このアルゴリズムはエフェクトの音量が時間経過と共にゆるやかに上昇し、また減退していく……という、一風変わった特徴を持っています。これをvolca fmと組み合わせると、最初に原音が鳴った後、柔らかなエフェクト音が徐々に戻ってくるという、面白い効果を生み出すことができます。
その効果は冒頭のピアノ、3:12辺りのストリングスの音色で確認できますよ。また、1:15付近では徐々にDECAY(エフェクト音の長さ)とMIX(原音とエフェクト音を混ぜる割合)の値を変化させ、曲の展開をよりドラマチックに演出しています。
倍音が豊かな音源とリバーブとの相性の良さは昔から知られているとおりですが、FM音源のvolca fmとリッチなリバーブのBigSkyは、まさに美味しい黄金コンビと言えるのではないでしょうか?
ETCのノブを使って背景色やモーション・グラフィックのパラメータをリアルタイムに操作しているだけでも充分楽しいですが、この機材の本当の魅力は外部からのMIDIコントロールによって引き出されます!
ETCには気に入ったセッティングを保存できるシーン・セーブという機能がありますが、外部からMIDIのプログラム・チェンジを送信することで、複数保存したお気に入りのシーンを瞬時に切り替えることができるんです。今回使用しているDigitaktではSTEP単位にプログラム・チェンジを送信できるので、例えば「スネアが鳴るタイミングでシーンを切り替える」、「フィルインの時だけ高速でシーンを切り替える」といった表現が可能になります。
さらにDigitaktからMIDI CCを送って、シーン切り替えと平行して下記のパラメータを変化させたりと、かなり複雑な映像表現を行うことができます。
・MIDI CC 21〜24:パラメータノブ 1〜4(変化の内容は各モード(プリセット)に依存)
・MIDI CC 25:背景色の変更
また、上記の仕込みを行った上でETC本体のパラメータ・ノブをリアルタイムに操作するとより楽しめます。動画の中では3:42付近でETCのパラメータノブを回し、アドリブ的に映像を変化させていますよ。
ライブ出演する際に自分なりの映像表現を行ないたい、VJをする際の映像ソースとしてもうひとネタ欲しいという時など、きっとETCは強い味方になってくれるでしょう。
Digitaktのシーケンサー(具体的にはTRIGページの中)には「COND(条件付きロック)」という画期的な機能が搭載されています。これは、Digitaktで打ち込んだそれぞれのTRIGに対して「特定の条件を満たした場合だけ有効にする/しない」という効果を与えてくれます。
主な条件としては……
などがあります。これだけ見ても「何に使うのかわからない…」という方が多いかと思いますが、単調・手数不足になってしまいがちなマシン・ライブにおいて、とても強力な機能なんです!
今回の動画の中では、この機能を下記のように活用しています。
動画の中では2:50あたりからストリングスの音色を使って8小節ループの白玉コードを演奏しています。これは通常のやり方ではDigitaktで打ち込めないフレーズです。しかし、前述の「条件付きロック」と、打ち込んだステップの発音タイミングをずらすことができる「マイクロ・タイミング」を組み合わせると実現できてしまいます。
早速、下記の手順で試してみましょう!
[手順1] 8小節でループする白玉コードのフレーズを、4小節の中にずらして打ち込む(1小節目のコードはTRIG1、5小節目のコードはTRIG2…という要領で、1TRIGずつずらす)
[手順2] 手順1で打ち込んだTRIGの内、1~4小節に該当するTRIGをそれぞれ押したままTRIGページのDノブを回し「条件付きロック」のパラメータを「1:2」に設定する
[手順3] 手順2と同じ要領で、5~8小節に該当するTRIGをそれぞれ押したままTRIGページのDノブを回し「条件付きロック」のパラメータを「2:2」に設定する
[手順4] 手順1で打ち込んだ5~8小節目に該当するTRIGをそれぞれ押したまま、カーソルボタンの左を、液晶ディスプレイに「-23/384」と表示されるまで押し続ける
上記のように設定すると、4小節のパターンが一度走行する度に1~4小節・5~8小節として打ち込んだフレーズが入れ替わり、擬似的に8小節のフレーズを1つのパターンに収められます。
DigitaktのMIDIトラックは、ノート信号のほかにコントロール・チェンジやプログラム・チェンジなど、MIDI規格で扱えるパラメータ情報の大半を扱うことができてとても便利ですが、これらはパターンが繰り返し再生される度に情報が送信される仕様になっています。
当然といえば当然の挙動ではありますが、例えば「パターン切り替えと同時にDigitaktと繋いだシンセの音色を切り替えたい(プログラム・チェンジを送信したい)」という場合、シンセを演奏したり音色を変化させている間に何度も同じプリセットが呼び出されてしまっては使い勝手が悪いですよね? そんな時は「条件付きロック」の1ST(最初の1回だけTRIGを有効にする)が役に立ちます。
動画の1:25付近でDigitaktのパターンとMatrixBruteの音色が同時に切り替わっているのは、この機能を使っているからなんです。
いかがでしたでしょうか? 今回ご紹介した機材はどれも単体で楽しく・便利に使うことができるものばかりですが、仕様を理解した上でどう組み合わせればより面白いことができるかな……?と、あれこれ考えを巡らせることが、マシン・ライブで重要かつ一番楽しい所だと思います! 皆さんも、お手持ちの機材で素敵な合わせ技を編み出してみて下さいね。
それではまた次回お会いしましょう!
Yebisu303
トラックメイカー。20代後半よりトラック制作を開始。無類のハードウェア機材愛好家でもあり、日々マシンライブを行う傍らで演奏動画をYouTubeへ投稿している。アナログ・シンセサイザー"KORG monologue"のプリセット製作を担当。