AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
ERNIE BALL MUSIC MAN / StingRay Special 1H
“エレクトリック・ベースの父”レオ・フェンダーがフェンダー社を去ったあと、新たに生み出したベース、スティングレイ。当時はまだ黎明期でもあったアクティブ・サーキットやハムバッキング・ピックアップの搭載を始めとしたさまざまな新機軸を持っていたこのモデルは、以後、多くの名手たちによって奏でられ、エレクトリック・ベースのもうひとつの王道サウンドとして認知されてきた。その誕生から40年を超え、今年、スティングレイは現代的な改良が施されることで新たなフェーズへと突入した。その真価を元ZAZEN BOYSの吉田一郎不可触世界を迎えて検証していきたい。
本年1月のNAMMショウで発表された新しいスティングレイ“スティングレイ・スペシャル”は、これまでのスティングレイらしさを維持しながら、現代のプレイヤーに合うようにさまざまなリファインが施されている。
プレイアビリティに関わる部分としては、ヒールレス加工の施された5点止めのネック・ジョイント、より丸みを帯びたボディ・コンター、全体的な軽量化が挙げられる。ボディはライトウェイト・アッシュ、ネックはローステッド・メイプルと軽量なペグを搭載することで堅牢さと鳴りの良さを両立。フレット数は22フレットで、どのポジションでも弾きやすく、長時間弾いても疲れないボディ・バランスの優れた楽器となっている。
エレクトロニクス面ではネオジム・マグネットを採用したピックアップと18V駆動の新設計3バンドEQを搭載。これによりパワフルかつクリーンでクリッピングしにくい高いヘッドルームを実現し、モダンな音色からビンテージ・トーンまで幅広いサウンドメイクが可能だ。
なお、2バンドEQやミュート・パッドを搭載した初期型モデルを復刻したスティングレイ・クラシックや“オールド・スムージー”、スルーネック仕様のモデルは、“スティングレイ・コレクション”として生産が継続されるようだ。
“スティングレイ・スペシャル”には、これまで紹介してきた4弦モデルのほか、同様の改良が施された5弦モデル、ハムバッカー・ピックアップを2基搭載したHHモデルもラインナップしている。
リニューアルされた5弦モデルの“スティングレイ5スペシャル”は、従来の5弦モデルと同様に、4弦モデルとは異なるデザインのピックガードやボディ・シェイプが採用され、シリーズ/シリーズ+フィルター/パラレルを選択可能なピックアップ・セレクター・スイッチが搭載されているが、ネオジム・ピックアップ、18V駆動の3バンドEQ、5点ジョイントのローステッド・メイプル・ネックなど、リニューアルの主なポイントは4弦の“スティングレイ・スペシャル”と同様だ。
4弦、5弦モデルともピックアップをふたつ搭載するHHモデルが選べるほか、ボディとピックガードのカラー・バリエーションも豊富だ。指板はボディ・カラーによってメイプル、ローズウッド、エボニーのいずれかが組み合わされる。
サウンドは堅牢なままライトな弾き心地。
全員使ったほうがいいと思いますよ。
4弦モデルを持ってまず感じたのは、非常に軽い。ストラップでかけてみたときも、ヘッド落ちとかを気にしていたんですけど、そういうことは全然なくて安定しています。スティングレイと言えば、ズッシリと重く堅牢なイメージでしたけど、このスティングレイ・スペシャルでは、サウンドは堅牢なままライトな弾き心地で、すごく洗練されていると感じましたね。このローステッドのメイプル・ネックもすべすべしていますし、色もカッコ良くて大好きです。それと、ハードウェアもすべて作り直していてすごいですよね。カッタウェイの削り方もそうですし、ネックのジョイント・プレートも以前とは全然違う。ペグも小さいものになっていますね。ここに来て、まだ改良の余地があったんだとビックリしています。EQの効きも非常に良いですね。ポットも重くて回し心地が良く、高級感があります。
5弦モデルも4弦と同じく軽くてボディ・バランスがすごく良い。ネックも、もちろん多少は太いんですけど、握った感じは4弦とあまり変わらないです。5弦は初めてという人でもコンパクトで弾きやすいんじゃないですかね。それと、ローBがものすごく鳴りますよね。18Vのプリアンプのおかげもあって、どこまででもサステインが伸びてくれます。ピックアップは、シリーズは打ち込み音楽やトラックものに合いそうで、パラレルはバキバキのロックに合いそうだと思いました。
スティングレイは打ち込みに混ざりが良いんですよね。だから、ラインで混ざるような音を作りやすい。かと思えば、レッチリのフリーみたいなバキバキの音も作れるし、トニー・レヴィンみたいにリフ・メインで押すような音も作れる。すごくやりやすいベースですね。今回のリニューアルは、とにかく気合いが入っていると感じました。スティングレイのサウンドは継承した状態で、これだけ軽量でボディ・バランスが良くなっている。全員使ったほうがいいと思いますよ。
本記事は、リットーミュージック刊『ベース・マガジン 2018年10月号』の特集記事を転載したものです。表紙巻頭では、現在にわかに盛り上がりを見せる“コズミック・ファンク”を大特集。Pファンクの総帥ジョージ・クリントンと気鋭ベーシスト=サンダーキャットによる奇跡の2ショット対談を始め、“宇宙のファンク”の魅力を余すところなくお届けします。そのほかにも、巻頭特集と連動した奏法特集『弾いてノリノリ☆ファンク・ベース丸かじり』、機材特集『技アリ系フィルター・ペダル』などを収録した注目の1冊となっています。ぜひチェックしてみてください!
吉田一郎不可触世界
よしだいちろうふかしょくせかい●1982年12月14日生まれ、長野県出身。中学生でベースを手にし、ソウル/ファンクに傾倒したのちにプログレにも大きな影響を受ける。自身がベース・ボーカルを務める3ピース・バンド12939dbを経て、2007年にZAZEN BOYSに加入(2017年12月に脱退)。セッション・ミュージシャンとしても活動する傍ら、2015年2月より“吉田一郎不可触世界”名義で、ソロ活動を開始し、2015年に1stアルバム『あぱんだ』を発表した。