“ONE DAY GUITAR SHOW”で発表された桜モデルの注目機種を総ざらい!
- 2025/01/07
HeadRush / HeadRush Pedalboard
アンプ・シミュレーターと高品質なマルチ・エフェクトを備えたソフトウェア「HD EXPAND」を搭載した、HeadRush Pedalboardをご紹介しよう。このフロア・ボードは、かつてないほどリアルなサウンドの再現と、RIGの作成/編集の柔軟性、最新のエフェクトや機能の追加など、全体的なパフォーマンスの向上を実現している。
さらに、新しいDSPプラットフォームに適合するように基本的なDSPユニットを書き換えており、エフェクトの配置や挿入を自由に行なえるようになっている点も見逃せない。反応速度の速いユーザー・インターフェイス、プリセット切り替え時のスピルオーバーの選択、カスタムIRファイルのロード、最大20分のルーパーの採用など、現代的なプレイヤーが求める多彩な機能を備えており、大型のタッチパネル・ディスプレイのおかげで、すべての作業が非常に直感的に行なえるのも魅力だ。さらにプリセットの検索などもタイピング入力で行なえるので、タブレット端末を操る感覚ですべての操作が可能である。
PCのUSB端子に接続すれば、本機は(USBドライブなどの)大容量ストレージ・デバイスとしてコンピューターに認識され、ドラッグ&ドロップでRIGやモデルのプリセット、セットリストを簡単に転送できる。さらに新しいHeadRush Pedalboardのプリセットをダウンロードしたり、シェアしたりするフォーラムも用意されている。
本機には、33種類のアンプ・モデリング、15種類のキャビネット・モデリング、10種類のマイク・モデリングを備えたアンプ・セクションと、6つのディストーション、8つのロータリー・エフェクト、5つのダイナミクス/EQ、11のモジュレーション・エフェクト、7つのリバーブ/ディレイ・エフェクトを備えている。さらに、5つのエクスプレッション対応エフェクト(VOLUME/SHINE WAH/BLACK WAH/WHAM/HARM)に加え、外部IRデータを読み込むことも可能だ。本体には出荷時からさまざまなジャンルやスタイルをカバーする270のプリセットが搭載されているので、購入して即実践に投入できるのも魅力。ギターだけでなくベースでも使えるプリセットも用意されている。
多彩な音色(エフェクト)だけでなく、もちろん機能面も充実している。プリセット切り替え時のリバーブ/ディレイ・テイル・スピルオーバー機能はもちろん、カスタムIR(インパルス・レスポンス)やサードパーティのIRもロード可能な点など、先進的なデジタル技術が盛り込まれている。また、特定の出力のアンプ/キャビネット・モデルをオフにしたり、アンプ・モデリングを適用せずにギターの音をダイレクトに出力することもできるが、シンプルなマルチ・エフェクトとしても使用可能。もちろんMIDI対応(IN/OUT)なので、ほかの機材との連動もシンプルなセットアップで対応できる。そしてルーパーは合計で最大20分のオーディオ・データ/また最大100のオーディオ・レイヤーまで設定が可能だ。
アンプ・モデリングは、シンプルな操作で高品質なサウンドを生み出してくれる。特にクリーン/クランチ系の音の太さに注目したい。リアル・アンプでは難しい2〜4台のアンプ・ヘッドを同時に鳴らすことで作り出せる音像感は、バーチャルでありながら非常に贅沢であり、多くのレジェンド・プレイヤーが生み出してきた複雑なサウンド・レイヤーを簡単に再現することができるだろう。クリーン・アンプとクランチ・アンプ、そして12インチ・スピーカーと15インチ・スピーカーの同時使用など、その組み合わせでしか味わえない独自の音像感も楽しめる。エフェクトの配置ポイントによって微妙に変化する音色などは品質の良さだけでなく、サウンドメイクに対するマニアックな考え方もフィードバックされており、このあたりは機材マニアも納得のポイントだと言えるだろう。エフェクト・セクションも同じくマニアックな作り込みがなされているので、「アナログ機材至上主義」な方にも、ぜひお試しいただきたい。
同じリグ内で複数のエフェクトのオン/オフ・セッティングを瞬時に切り替えるシーン機能や、音色の切り替え時に音切れを起こさないディレイ/リバーブのスピルオーバー機能などは、ライブ時に非常に役立つ機能だろう。また、エクスプレッションの使い勝手も良好で、一般的なMIDI機器のセットアップよりもずいぶん簡単な印象だ。そして本体もヘビーデューティーに作られているため、ツアー・ミュージシャンのみなさんにもガンガン使ってもらいたい。
フロア・タイプのマルチ/アンプ・シミュレーターと言えば、モダン・ギタリストのために作られたかのような印象を持つかもしれないが、それは大きな間違いだ。HeadRush Peadlboardには、オーセンティックなブルースやロックに不可欠なサウンドが多く用意されており、ダイレクト感も存分に味わえる。ビンテージ・ギター・フリークも納得できるサウンド・クオリティを動画から感じ取ってほしい。この1台があなたのメイン機材となり、アナログ機材だけでは実現できないセットアップを瞬時に与えてくれるだろう。例えばスティーヴィー・レイ・ヴォーンのように、ブラック・フェイスのコンボ・アンプとスタック・アンプを同時に鳴らしたサウンドメイクや、オルタナティブ/シューゲイズには欠かせないコンボ・アンプ+スタックのミックス・サウンドなども簡単に作り出せる。内部の空間系エフェクトをうまく使いながら、外部エフェクトをルーティングしてしまえば、デジタルとアナログのハイレベルな共存も可能だ。もちろん、ステレオ・サウンドが生み出す広がりはモノラル・アンプでは絶対に味わえないもので、その音は圧倒的な説得力を持っている。
豪華なLAスタジオ系サウンドも、ツイード・アンプ・サウンドを信条とするブルース・ギタリストも、ニューウェーブなドライなサウンドも、ダウン・チューニングでゴリゴリに押しまくるラウドなバンド・サウンドも、この1台ですべて賄える。圧倒的なサウンド・クオリティとパフォーマンスを体験してほしい。
価格:オープン
村田善行(むらた・よしゆき)
ある時は楽器店に勤務し、またある時は楽器メーカーに勤務している。その傍らデジマートや専門誌にてライター業や製品デモンストレーションを行なう職業不明のファズマニア。国産〜海外製、ビンテージ〜ニュー・モデルを問わず、ギター、エフェクト、アンプに関する圧倒的な知識と経験に基づいた楽器・機材レビューの的確さは当代随一との評価が高い。覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。
【使用機材】
使用ギター:Crews Maniac Sound / Aristoteles V2.