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- 2024/11/16
1959 Les Paul Standard
東京・御茶ノ水に居を構えるクロサワ楽器 G'CLUB TOKYOに入荷した貴重なギブソン・オリジナル・バースト・レス・ポールのサウンドを体験してもらおうと、今年4月にCREATIONの竹田和夫氏を迎え、大盛況となったバースト・レス・ポール試奏イベント。7月20日(金)に、その第二弾となるイベントが開催された。今回は試奏者に稲葉政裕氏と住友俊洋氏という、ビンテージ・ギター&サザン・ロック・フリークのギタリストふたりを迎え、59年製のバーストを使用し、さながらアトランタの暑い日の如く熱いセッションでそのサウンドを吟味してもらった。今回もそのイベントの様子をレポートしよう。
非常にコンディションの良い1959年製のオリジナル・バースト。世界的に有名なバースト・コレクターであるヴィック・ダプラ氏の著作『Burst Believers Ⅱ』のP52〜53で、“Cindy”という女性の名を付けて紹介されている個体だ。名前の由来は、本器のブリッジ・ピックアップ横にある節が、ホクロがチャーミングな女優“シンディ・クロフォード”を連想させるということだ。
個体としての特徴は、重量がわずか3.9kgと非常に軽量なこと。アッセンブリーのハンダにははずされた形跡がなく、フレットもオリジナルの貴重なものだ。ペグに関しては、一度交換されたあとオリジナルに戻されている。
ピックアップはもちろんオリジナルPAFで、フロントがゼブラ、リアがダブル・ホワイトという組み合わせ。サウンドはやや甘めで、ロックやブルースはもちろん、ジャズにも使える極上のスウィート・トーンを放つ。出力もしっかりとあり、このサウンドを好む人も多いだろう。
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今ではほとんどお目にかかれない、状態の良い1959年製のオリジナル・バースト・レス・ポール。本器はボディ・トップにバーズアイ、またはブリスターなどと呼ばれる珍しい杢目を持つ材を使用した個体だ。褪色したチェリーがうっすらと残る、非常に美しいフィニッシュも印象的な1本。
重量は4.3kgと、重すぎず、軽すぎずと言ったところ。バランスが良いせいか、4.3kgという数字からイメージするよりは、はるかに軽く感じる。またネックのグリップ感も太すぎず、細すぎず、万人に好まれるグリップだろう。ピックアップはもちろんオリジナルPAFで、フロントはゼブラ、リアにはダブル・ブラックのものが搭載されている。ジャックが交換されている以外は、アッセンブリーにはずされた形跡はない。
サウンドは、パワフルでありながら色気があり、ビンテージ感を持ちつつ解像度も高いという、まさにバーストらしいサウンド。やや硬質なトーンを有しており、特にロックには最適だ。もちろんタッチに対する反応が良いので、よりブルージィなプレイにも十分にマッチする。
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著名なアーティストのサポートを数多く務め、J-POP/ロック界を支え続ける職人ギタリスト・稲葉政裕氏。そして、THE SAVOY TRUFFLE、Bluestone Companyなどのバンドを経て、自身のT.SUMITOMO BANDで活躍する住友俊洋氏。この名手ふたりが59年製のギブソン・オリジナル・バースト・レス・ポールを試奏するという贅沢なイベント、「サザン・ロック・スタイルで楽しむOriginal “Burst” 59 Les Paul feat. 稲葉政裕 & 住友俊洋」が、2018年7月20日(金)に東京・御茶ノ水のクロサワ楽器 G’CLUB TOKYOで開催された。
ふたりとも大のビンテージ・ギター・フリークで、しかもサザン・ロックに精通しているということで、イベントはあいさつ代わりに「ステイツボロ・ブルース」をモチーフにしたセッションでスタート。稲葉氏は“Cindy”という愛称が付いた個体をマーシャルの73年製1987に直結。住友氏は“Blister Top”という個体を、同じくマーシャルの90年代リイシュー1987X(イベント途中で60年代ブラック・フェイスのフェンダー・デラックス・リバーブに交換)に直結して、互いに弾きまくる。各バーストの個体差、アンプの違い、そしてもちろん弾き手のタッチの違いもあって、稲葉氏と“Cindy”のペアは極太のクリーン〜クランチで気の遠くなるほど長いサステインを生み出す一方、住友氏と“Blister Top”のペアは、ハイがしっかりと出たブライトなトーン(と言いつつも、手元のボリュームで音量、音質、歪み量をしっかりとコントロール)でスライドを決めまくる。どちらもタイプは違えど、極上のトーンであることに違いはない。
稲葉氏は「つないでいるキャビネットが新しいモデルなので、アンプ・ヘッドのツマミはベースしか上げていません。それで手元のボリュームを絞るとクリーンに、上げるとクランチに、さらにピッキングを強くすると歪んで、音が永遠に伸びる感じです」と言いつつ、“管楽器のよう”と称されるバースト独自のサステインについて説明。住友氏は「手元のボリュームの上げ下げをするだけで相当いろいろなことができるなぁという印象」と語り、カリッとしたクリーン・トーンから、咆哮のようなドライブ・トーンまで披露。さらに「デュアン・オールマンは、おそらくアンプはジャリジャリのセッティングで、バッキングでは手元のボリュームをかなり絞り、ソロでも8くらいまでしか上げていないはずなんです。曲によっては音が出なくなる寸前のカリカリの音でバッキングしていますね」と解説し、実際にボリュームを極端に落として「ストーミー・マンデイ」風のコード・ワークを弾いてみせたが、会場からは「聴いたことがある、あの音だ」と感嘆の声が漏れていた。
その後、ふたりの演奏で引き続き名器の音を堪能すべく、「サウスバウンド」、「ホットランタ」風のプレイが披露された。それぞれ東京、大阪と距離はあれ、ときどきセッションをする仲だというふたりの息の合い方は尋常ではなく、ひとりがバッキングに回るとすぐにひとりがソロを弾き出す。その時にふたりとも手元のボリュームをコントロールするのだが、その都度「良いレス・ポールのクリーン、クランチ、ドライブ」のお手本のようなトーンが飛び出す。それらはすべて、さまざまな音源で聴いたことがあるバーストのトーンそのものだった。
弾き終えた稲葉氏は「この個体は相当軽いですね。オリジナルのフレットも心地良いし、理想的です。このフレットがまた、むせび泣くんですよ。欲しいです(笑)」と語り、住友氏は「僕は子供の頃はジミー・ペイジやマイク・ブルームフィールドが大好きだったんですが、その頃に聴いた音が出ますね」と述べた。ここで改めて「ストーミー・マンデイ」の進行でプレイ。もはや会場からはため息しか出ない。
ここで来場者から、本日使用している弦のゲージや、ギターのセッティングについての質問があった。ちなみにこの日の稲葉氏のゲージは.009〜.042で、住友氏は.009.5〜.044を使用。稲葉氏は「マーシャルのスタックを鳴らす場合は、ゲージを少し細くしたほうがフィードバックをコントロールしやすい」、住友氏は「ビリー・ギボンズを見ていても、かなり弦は細くてもチューニングは狂わない。僕もどんどん細くなってきている」と回答。それでもふたりの出音は極太だったことを付け加えておく。
最後に、改めて「ステイツボロ・ブルース」スタイルのブルースを決め、イベントは終了。ふたりの見事なプレイはもちろんのこと、59年製のギブソン・バーストが持つ恐ろしいまでのポテンシャルの高さを堪能できたイベントとなった。
稲葉政裕
いなば・まさひろ。1960年生まれ。大分県出身。86年に上京し、その後は吉田拓郎、山崎まさよし、森高千里、中島美嘉らのライブ/レコーディングに参加。また、小田和正のバック・バンドFar East Club Bandでも活動している。ブルース・フィールに溢れた情熱的なプレイ・スタイルが特徴。
住友俊洋
すみとも・としひろ。1965年生まれ。スライド・ギターを武器に、90年代初頭にTHE SAVOY TRUFFLEを結成し、アメリカやヨーロッパで高い評価を得る。04年に活動を停止するも、東北の震災復興の願いをこめて11年にリユニオン。05年にはインスト中心のバンドBluestone Companyを、11年には自身のバンドT.SUMITOMO BANDを結成するなど、関西を中心に精力的に活動中。