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- 2024/11/16
YAMAHA/EAD10
自分の演奏を録音して聴き返すことは、あらゆる楽器に共通した上達への近道と言えるだろう。しかしアコースティック・ドラムを良い音でレコーディングしようと思うと、必要な機材が多く、時間も労力もかかってしまうのも事実。そんなドラマーの悩みを解決してくれるのが、ヤマハがリリースしたエレクトロニック・アコースティック・ドラム・モジュール、EAD10だ。マイクを内蔵したセンサーユニットをバス・ドラムのフープにセットし、エフェクト機能のついたメインユニットにつなぐだけでバランス良く録音でき、さらに多彩なサウンド・メイクも可能。そしてiPhone/iPadと接続すれば、動画の撮影、編集からアップロードまで簡単にできる、まさに魔法のツール! 今回は誌上ドラム・コンテストの動画制作の過程を軸に、その実践的な活用方法を紹介していこう。
今回紹介するヤマハのアコースティック・エレクトロニック・ドラム・モジュール=EAD10。この“EAD10とは何か!?”を一言で説明するのは、実は非常に難しいのです。その理由は、これまでにあった機材の“最新型”や“進化形”ではなく、まったく新しい発想から生まれた“ドラム専用システム”だからでしょう。かと言って、使い方が難しいわけではありません。簡単なセッティングを施し、ヘッドフォンをかけて目の前のドラム・セットを叩けば……誰もが驚き、思わず笑顔になれる新しい世界が広がります。まずここでは、そのEAD10の魅力や活用のヒントを解説していきましょう。
EAD10はバス・ドラムに装着して使う“センサーユニット”と、各機能をコントロールする“ メインユニット” のセットで成り立ちます。まずセンサーユニットの大きな役割は“ドラム専用マイク”。ドラム・セット全体の音をクリアに、そしてバランス良く集音できるステレオ・コンデンサー・マイクです。さらに、このセンサーユニットにはトリガー機能が搭載されていて、バス・ドラムを鳴らした瞬間、メインユニットの中にある別の音源も同時に鳴らすことができます。この機能を活用すれば、生のバス・ドラムに深みのある余韻を足したり、ドラム・マシンのようなキック・サウンドに激変させたり、さらには自分の好きな音を取り込んで鳴らすこともできるのです。
メインユニットの方は、EAD10で作り出すサウンドをコントロールする中枢部。基本的なセット・アップに始まり、リバーブの深み、各種エフェクト(コンプ、モジュレーション系、歪み系など)のかかり具合い、そしてトリガー音のブレンド量をシンプルなダイヤル操作で瞬時に調整できます。他にもエレドラでお馴染みの多機能メトロノームや、好きな音楽を聴きながら練習できる接続端子、そして生ドラムの演奏を手軽に高音質で録音できる機能も装備(音楽と合わせての録音も可能!)。さらには内蔵された757種類の音色やサンプリングした音を、DTXパッドやトリガー・マイクで鳴らし(最大6つ)、まるでエレドラのように活用できる機能もあるのです。
EAD10は“Rec’n’Shere”というiOSのアプリをインストールしたiPhoneやiPadとつなぐと、今度は音だけではなく演奏動画を作れるシステムになります。録音から編集、アップロードまでスマホ1台で完結してしまうその驚きの実力は、動画でぜひチェックしてみてください。この他にもユーザーのアイディア次第で活用法が広がるのがEAD10の大きな魅力。この“ドラマー専用”という斬新なツールの登場は、日々の演奏やトレーニングに新たな楽しみとモチベーションとを与えてくれることでしょう。
これまで、生ドラムを使ったクオリティの高い動画作りを目指すとなると、録音用、録画用、そして編集用と本当に多くの機材が必要でした。しかし、今回の動画作りで筆者が用意したものは写真にある機材だけ!! 全部をリュックの中に入れて移動しても“重い!”と感じることはありません。この機材的な手軽さも、EAD10を核とするシステムの大きな魅力でしょう。
❹のUSBケーブルは3メートルあるといろいろな位置から録画ができます。iPhone(=カメラ)の固定方法はお好みですが、❺と❻を使い、マイク・スタンドを活用するとさまざまなアングルから狙えます。ヘッドフォンはドラムの生音をなるべく遮断する❼のようなタイプ、もしくはカナル型のイヤフォンが良いでしょう。ちなみにEAD10のヘッドフォン端子は標準フォンなので、ステレオ・ミニ仕様の場合は変換プラグが必要です。
本ページ冒頭の動画では、EAD10とiPhoneを使った“お手軽&ハイクオリティ”な動画の制作方法を、2018年“誌上ドラム・コンテスト”の応募作品作りを通して解説しています。詳細はそちらを見ていただければと思いますが、動画作りの流れを簡単に記すと以下のようになります。もちろん、コンテスト作品ではなくても基本操作は同じ。“この通りに進めれば完成まで辿り着く”という構成になっているので、実際にEAD10を使える環境の方は参考にしてください。また、これから導入を考えている方には、その手軽さと魅力とを知ってもらいたいと思います。
Step.1 Setting
1 センサーユニットの取りつけ
2 メインユニットの設置
3 付属ケーブルの接続
4 メインユニットの電源を入れる
5 メインユニットにヘッドフォンを接続
6 マイクとトリガーの感度を調整
7 iPhoneとEAD10を接続
Step.2 Recording
8 iOSの“Rec’n’Share”を起動させる
9 ビデオ画質の設定
10 プリカウントの設定
11 レコーディングの設定〜準備
12 セルフタイマーの設定〜録音
Step.3 Editing
13 演奏と楽曲のミキシング
14 演奏データの保存〜書き出し
15 完成作品をアップロード
EAD10を取りつけたセットを叩いた瞬間、正直ニヤけてしまいました。アコースティック・ドラムがさまざまな音色に変化することにまず感動します。手軽にコンサート・ホールやアリーナで演奏をしているような感覚を得ることができます。本格的なレコーディングをする場合マイクを何本も立てなければいけませんが、EAD10は驚くほどクリアな音で録音することができるため、1人でも簡単にレコーディングを楽しむことができます。今年のドラム・マガジン・コンテストは動画のみの応募なので、高音質な録音と録画を同時に行えるEAD10は非常にオススメです。専門的な知識がない方でもお好みの音でハイクオリティな演奏動画を作ることができると思います。
リハーサル・スタジオで音源を聴きながら練習することがあると思いますが、僕は自分の練習方法の1つとして、録音したドラムの音と音源をパソコンの編集ソフトでミックスして聴いてみて、ヴォーカルや他の楽器とのアンサンブルを確認したりします。これが個人的にはかなり重要な練習になると思っています。EAD10はトリガーを通したエフェクティブな音と音源がミックスされた状態で手軽にレコーディングできるため、効果的な練習方法が誰でも簡単に実践できます。またチューニングに関しても、マイクを通した音を実際ヘッドフォンやイヤフォンで聴けるため、自分の耳で聴いた生音とマイクに乗った音が、チューニングによってどう変わるのかという実験をする楽しさも増えると思います。
EAD10があれば練習やライブの可能性が飛躍的に向上します。お近くのリハーサル・スタジオに持ち込んで遊んでみてください! 1日中遊べること間違いなしです!
神田リョウ
EAD10を手に入れて以来、アリーナやドームなど、イヤモニを使う現場には100%持っていきますね。僕はEAD10の回線を直接手元のミキサーにつないでドラム・モニター用に使用することが多いのですが、特に“コロガシ”が置けないステージなどで音圧感を足すために使っていて、正直ほぼEAD10の音だけで満足できるサウンドになります。あとは動画撮影や、簡単なプリプロなんかもこれでサクッとできちゃうのでめちゃくちゃ重宝してます。もう手放せないですね!!
山本真央樹[DEZOLVE]
YAMAHA EAD10の販売が世に出た頃、“とうとうこういう夢のようなアイテムが出てしまったのか……”と喜びを隠せなかった覚えがあります。というのも、ドラマーが練習だったり軽く録音したかったりする際に、最初に直面する壁が“マイキング"だと思うんです(他の楽器よりマイクの必要数が別格に多いので)。その“マイキング”を、何の専門知識もなしに取りつけるだけでこんな綺麗な音ですべてを拾ってくれて、解決してくれるのがこのアイテム。現場でもレッスンでも練習でも、手軽に素晴らしい音響でプレイすることができますよ〜!
本記事は、リットーミュージック刊『リズム&ドラム・マガジン 2018年9月号』の掲載の特集記事を再編集したものです。表紙アーティストはYasei Collectiveの松下マサナオ。付録DVDには藤掛正隆×湊雅史による迫力のパフォーマンス映像の他、アップ・ダウン奏法に焦点を当てたフット・ワークの教則映像などが収録。6月22日に54歳の若さでこの世を去ったヴィニー・ポールの追悼特集、セッティング特集の後編第二弾など、今月も盛りだくさんの内容です。本記事と併せてぜひお楽しみください。
価格:オープン
山本雄一
東京都出身。子供の頃に見た猪俣猛の演奏に感激してドラマーを志す。後にRCCドラムスクールにて猪俣猛、田中康弘に師事。10代後半よりプロ・ドラマーとしての活動をスタート。20代半ばより演奏活動と並行して母校のRCCで講師活動を始め、現代に至る。ドラム・マガジンでの執筆の他、リットーミュージック発行の教則関連物も多数手がける。実力派シンガー、葛城ユキのステージ&レコーディング活動も10数年に渡り続けている
エノマサフミ
1989年12月2日兵庫県神戸市生まれ。父は元モダンチョキチョキズのベーシスト繪野有司。父の影響で18歳の頃から本格的にドラムを始める。大学では軽音楽部に所属し、25バンドを掛け持ち。その他さまざまなバンドのLIVEやレコーディングに参加して腕を磨く。卒業後、ドラムで身を立てることを決意し上京。村石雅行氏に師事する。2015年ドラムマガジン第14回誌上コンテストにて審査員特別賞を受賞。その翌年、第15回誌上コンテストにてセミプロ、レッスン・プロを対象としたマスターコースでグランプリを受賞。【ライブ/ツアー・サポート(敬称略、順不同)】D-LITE(from BIGBANG)、有安杏果(ももいろクローバーZ)、板野友美、LEE HI、MORRIE、西内まりや、BuZZ、predia