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斎藤誠が弾く! マーティン・カスタム・モデルD-45、00-45、HD-28 Vertical

Martin / D-45、00-45、HD-28 Vertical

  • 制作:デジマート・マガジン 取材・文:坂本信 写真撮影:八島崇 動画撮影&編集:熊谷和樹 録音:大屋務、嵩井翔平

好評連載MARTIN TIMES。22回目となる今回も、前回に引き続きマーティンのショップ・カスタム・モデルを紹介します。今回は、美鈴楽器がオーダーしたD-45、イケベ楽器店 Heartman Guitarsの00-45、イシバシ楽器 御茶ノ水本店 HARVEST GUITARSのHD-28 Verticalという3本が登場! マーティン工場にて選定された上質な材と、こだわりが凝縮された贅沢なカスタム・モデルのサウンドを、お馴染み斎藤誠氏の演奏でお楽しみください。

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斎藤誠が弾く!
マーティン・カスタム・モデルD-45、00-45、HD-28 Vetrical

Special Talk Session
斎藤誠が語る! マーティン・カスタム・モデル
D-45、00-45、HD-28 Vetricalの魅力

確固たるコンセプトを持ったカスタム・モデル

 前回はレギュラー・モデルとは少し違った仕様が楽しめるカスタム・モデルの特集をお送りした。それらは日本総代理店の黒澤楽器の各店舗の注文によるモデルだったが、今回はその続編として、それぞれ一家言を持つ個性的な販売店によるカスタム・モデルを3本ご紹介しよう。

 1本目は、長野県のJR長野駅前にある「美鈴楽器」の創立55周年を記念するモデルとして注文されたギターで、マーティン社長のクリス・マーティン氏自身が鍵を管理する特別な倉庫に保管されたブラジリアン・ローズウッドをボディに使用した、究極とも呼べるD-45。2本目は東京・渋谷の専門店「イケベ楽器店 Heartman Guitars」注文の00-45で、同じスタイル45でも非常に典雅なインレイが特徴となっている。3本目は東京の「イシバシ楽器 御茶ノ水本店 HARVEST GUITARS」特注のHD-28で、これはニール・ヤングのコアなファンなら見た瞬間に思わずニヤリとするような、こだわりの仕様になっている。

 前回のモデルは楽器としての機能を追求したカスタム・モデルだったのに対して、今回のモデルは楽器としての性能もさることながら、外観面にも確固たるコンセプトを感じさせる、まさに個性的なギターだ。それだけに、マーティンのカスタム・モデルの懐の深さがよくおわかりいただけるのではないだろうか。

Custom Model
D-45(美鈴楽器オーダー品)

D-45(美鈴楽器オーダー品/Front)


D-45(美鈴楽器オーダー品/Back)

指板のポジション・マークは標準のヘキサゴンではなく、スタイル45のスノー・フレークを選択

スタイル45の装飾に負けないブラジリアン・ローズウッドの豪華な杢目

サイドとバックの変化に富んだ杢目を、じっくりとご覧いただきたい

 甲信越北陸で最大級の楽器店の創立記念モデルということで、ボディにはマーティン社秘蔵のブラジリアン・ローズウッドを使用。トップ材も最新技術によるVTS(ヴィンテージ・トーン・システム)を施したアディロンダック・スプルース、Xブレイシングもアディロンダックで、ゴールデン・エラの仕様を再現している。ネックのグリップもあえてモディファイドVを採用し、まさに究極と呼べるビンテージ再現モデルとなっている。
[美鈴楽器HPはこちらから!]

【Specifications】
●トップ:アディロンダック・スプルース with VTS ●サイド&バック:ブラジリアン・ローズウッド ●ネック:ジェニュイン・マホガニー ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm) ●ナット幅:1 11/16インチ(42.9mm) ●トップ・ブレイシング・パターン:ゴールデン・エラX・スキャロップト ●価格:¥5,500,000(税抜き)

Makoto’s Impression

 シャープなヘッドのバインディングと、細身の縦ロゴがマッチしているルックスが印象的でした。音は1弦から6弦までがフワッと全部まとまっていて、28に比べると落ち着いていますね。むしろさりげない感じがするほどでしたが、しばらく弾いているとやっぱり満足感はすごいです(笑)。Vネックは親指で6弦を上から押さえるのもやりやすいですね。できればライト・ゲージの弦も試してみたいです。用意したデモ曲は、同じメジャー・セブンスのストロークと指弾きの音を比較していただけるようになっています。Bメロの部分ではハミングも入れているので、弾き語りで歌を乗せた時の参考にもなると思いますよ。

Custom Model
00-45(イケベ楽器店 Heartman Guitarsオーダー品)

00-45(イケベ楽器店 Heartman Guitarsオーダー品/Front)

00-45(イケベ楽器店 Heartman Guitarsオーダー品/Back)

トロピカルな雰囲気を醸し出す、アバロンのトーチ・インレイとコアのバインディング

ボディ材のホンジュラス・ローズウッドは、バインディング材やネック材とうまくマッチしている

古風なピラミッド・タイプのブリッジは、優雅な視覚的アクセントにもなっている

 Heartman Guitars特注の00-45は、スタイル45標準のパーフリングはもちろん、ヘッドのトーチ・インレイや、それと統一感のある指板のインレイにもアバロンを使用。バインディングは見事な杢のコア材で、そのコア材とマッチする明るい色調のホンジュラス・ローズウッドのボディなど、全体としてトロピカルな雰囲気が感じられる典雅な装飾の逸品である。ハイエンドのウクレレにも力を入れている同店ならではのセンスがうかがえる。
[イケベ楽器店 Heartman Guitarsの詳細はこちらから!]

【Specifications】
●トップ:シトカ・スプルース with VTS ●サイド&バック:ホンジュラス・ローズウッド ●ネック:ジェニュイン・マホガニー ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:24.9インチ(632.5mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:ゴールデン・エラX・スキャロップト ●価格:¥1,480,000(税抜き)

Makoto’s Impression

 見た目のわりには、持った感じが重めなのでビックリしましたね。ホンジュラス・ローズウッドは木の密度が高いんでしょうか? 音は輪郭がハッキリしていて少し硬質な印象でしたが、この重量と関係しているかのかもしれません。あとバインディングが白くないというだけで、だいぶ趣が変わってきますね。デモは指弾きで始まる静かな曲にしましたが、途中でピック弾きのストロークを入れて変化を付けました。ショート・スケールで弦が押さえやすいので実際よりも弦高が低く感じますし、指弾きした時の表情がよりリアルに伝わると思います。弦をスライドするのもやりやすいですね。それにしても、このパワフルな音は00の常識を超えている感じです。

Custom Model
HD-28 Vertical
(イシバシ楽器 御茶ノ水本店 HARVEST GUITARSオーダー品)

HD-28 Vertical(イシバシ楽器 御茶ノ水本店 HARVEST GUITARS/Front)


HD-28 Vertical(イシバシ楽器 御茶ノ水本店 HARVEST GUITARS/Back)

スタイル40番台と同じ縦ロゴは、このモデルの最大の外見的な特徴である

70年代に流行した、エンクローズド・ギアのグローバー製ペグ

“オリジナル”を忠実に再現した、こだわりのピックガード

 旧仕様のスタンダード・シリーズHD-28をベースに、ニール・ヤング所有のD-28を再現したモデル。ヤングのギターは古いD-28を改修したもののようで、ヘッドの通称“縦ロゴ”は本来スタイル40番台にのみ使用されるものである。ピックガードも実器のものは純正ではないようで、本器もピックガードなしの形で注文し、あとから実器ソックリに作ったものを別途調達したようである。ヤングの代表作『ハーヴェスト』のタイトルを店名にしたHARVEST GUITARSの特注品らしい、この上なくマニアックな1本。
[イシバシ楽器 御茶ノ水本店 HARVEST GUITARの詳細はこちら!]

【Specifications】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:イースト・インディアン・ローズウッド ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 11/16インチ(42.9mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX・スキャロップト ●価格:¥450,000(税抜き)

Makoto’s Impression

 これはもう、僕がいつも“ニール・ヤング弾き”と言っている、手のひらでミュートしてストロークを弾いた時の“ガン!”という迫力がさすがですね。デモ曲は、このギターが来るということを知らずにニール・ヤングっぽいものを用意していたんですよ(笑)。彼はたぶん弾き方が強いんだと思いますが、バンド演奏のあとに弾き語りする時なんかには、こういう迫力があるのとないのとでは全然違うんですよ。それが彼の素晴らしい功績で、その要求に応えるのがD-28なんだと思います。そういったことに対する愛が溢れかえっているのがこのギターで、注文主の愛情とD-28が本来持っているロックのテイストが見事に合っているのが良いですね。

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Makoto’s Impression〜試奏を終えて

 今回は、まったく異なる3本が試奏できて楽しかったですね。しかも、そのうち2本はゴージャスで。美鈴楽器55周年記念のD-45は、今回のメイン・イベントかもしれないし、値段も値段だということで緊張しましたね(笑)。00-45は最初、(森山)良子さんが持っているような12フレット・ジョイントの楽器を想像していましたが、14フレット・ジョイントだとハイ・ポジションを使うソロも弾きやすいし、即戦力のモダンなギターですね。D-45もそうですが、これもひとりっきりで弾いていると、かなり自己満足の世界に浸れるギターです(笑)。以前は貝の装飾を使ったギターには少し抵抗があったんですが、最近スタイル45を試奏する機会が増えて、貝に対する偏見がなくなってきたのは確かです(笑)。D-28はもう、ニール・ヤング以外は弾いてはいけないんじゃないかっていうぐらいのこだわりがありますね。もちろん、そんなことはないんだけれども、ほかの2本もそうですが、注文した人の思い入れが伝わってくるので、その気持ちを想像しながら弾くのも楽しいと思います。お店の人と買う人のこういうコミュニケーションって、熱くてとっても素晴らしいですね。

Martin Times〜It's a Beautiful Day バックナンバーはこちらから!

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製品情報

プロフィール

斎藤誠(さいとう・まこと)
1958年東京生まれ。青山学院大学在学中の1980年、西慎嗣にシングル曲「Don’t Worry Mama」を提供したのをきっかけに音楽界デビューを果たす。 1983年にアルバム『LA-LA-LU』を発表し、シンガー・ソング・ライターとしてデビュー。ソロ・アーティストとしての活動はもちろん、サザンオールスターズのサポート・ギターを始め、数多くのトップ・アーティストの作品への楽曲提供やプロデュース活動、レコーディングも精力的に行なっている。 2018年4月18日、MARTIN GUITARのラジオCMでお馴染みの斎藤誠の新曲「It’s A Beautiful Day」がニュー・シングルとしてリリースされた。また、本人名義のライブ活動の他、マーティン・ギターの良質なアコースティック・サウンドを聴かせることを目的として開催されている“Rebirth Tour”のホスト役を長年に渡って務め、日本を代表するマーティン・ギタリストとしてもあまりにも有名。そのマーティン・サウンド、卓越したギター・プレイを堪能できる最新ライブ情報はこちらから!

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