AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
Roland / Hybrid Drums & Percussion
アコースティック・ドラムとエレクトロニック楽器を融合し、多彩なサウンド・メイクを可能にする“ハイブリッド・ドラム”。数多くのプロ・ドラマーがステージで実践し、世界的にもスタンダードになりつつあるが、2017〜18年にかけて、ローランドからその流れをさらに後押しする画期的な製品が次々と登場。簡単にハイブリッド化を実現するものから、ライブ/レコーディングの可能性を広げるプロ仕様のアイテム、電子ドラムも含めて幅広いラインナップを誇っている。ここでは同社が一押しする3つのハイブリッド・アイテムにフォーカスし、その実力を検証していこう。
最近の多様化した音楽状況の中では、ドラマーもサウンド・メイクに積極的に携わる必要性が増えてきていることを実感します。曲によってスネアの音色を使い分けたり、パーカッションや効果音をパターンに組み込んだり、さらにはCD音源に近いサウンドをライブで再現してほしいなど、さまざまな要望がアレンジャーやメンバーから求められます。そんな状況の中で、近年特にプロの現場で注目されているのが、アコースティック・ドラムと電子楽器を融合した“ハイブリッド・ドラム”というスタイル。例えば大きな会場では不鮮明になりがちなキックの輪郭を、アタックの強い音色を重ねて補強したり、レコーディング時に使った音色をパッドに割り当てて鳴らすことで、CD特有の雰囲気を忠実に再現したり、その使い方は実にさまざま。ハイブリッド化することで、ドラマーの操る音色や表現の可能性が飛躍的に広がりを見せているように感じます。
そんなプロの現場での豊富なノウハウを持つローランドは、“ハイブリッド化”の流れを加速させる革新的なアイテムを次々と開発/発売。その多くが電子楽器にあまり馴染みのないドラマーにも手軽に使えるよう操作性が考慮され、さらに生ドラムを演奏する喜びや楽しさを損なうことなく活用できるのも魅力となっています。それらの製品の特色や実際の活用例などを詳しく紹介していきたいと思います。
RT-MicSはスネアやタムに取りつけるだけで、生ドラムに音色を重ねることができる新しいハイブリッド・アイテムです。取りつけ作業はリムに装着してネジを回して固定するだけ! リハスタなどで使用する場合は、アウトプット端子からスタジオに設置されているミキサーへ、ケーブルでつなぐだけで音出しのセッティングも完了。すぐにPAから音を出すことができます。
内蔵されている音色は明るめ/重めの2種のスネアに、ハンド・クラップ、タンバリン、そしてリバーブやゲート系のエフェクトをスネアに加味する効果音など、実用的な8種類。試奏では、現場で求められることも多いハンド・クラップ音を生のスネアに重ねて演奏してみたのですが、ビートにダンサブルなテイストが加わる効果はもちろん、奏者の気分も変わるので、イマジネーションの広がりを実感しました。また、クラップ音を必要としない場面では、上面のボタンを長押しすることで内蔵音色をミュート。再び鳴らすときに再度ボタンを押すことで瞬時に復帰できるので、演奏中の切り替えも問題ありません。
RT-MicSは生音を拾うマイクを装備しているのもポイントで、これにより生音と内蔵音色を好みのバランスでミックスしたり、生音を出力するケーブルに外部エフェクターを接続するといった使い方も可能です。例えばライブで、間奏のみディレイを生スネアに深くかけるといったことも、ドラマー自身の操作で簡単に行うことができます。このあたりはワン・ランク上の活用方法と言えるでしょうが、ハイブリッド初心者から上級者まで、幅広く楽しむことができる奥の深さもRT-MicSの魅力。初心者もこれをまず手に入れて活用することで、電子楽器に精通していくことができると実感しました。
SPD::ONEは簡単に生ドラムをハイブリッド化できるコンパクトな電子パーカッション・パッド。“PERCUSSION”、“ELECTRO”、“KICK”、“WAV PAD”の4種類があり、付属のアタッチメントを使ってタム/シンバル・スタンドにセットが可能です。
まずパッドには4種類のつまみが装備され、左端が音色切り替え用。1〜11のナンバーに内蔵音色が割り当てられており、基本的にはそれを切り替えて選ぶだけで演奏が可能。また、各音色ナンバーには2種類の異なる音色が割り当てられており、“INST VARIATION”と記された小さなボタンを押すことで切り替えることができます。内蔵された22種類の音色を簡単に呼び出せます。
“PERCUSSION”にはコンガやタンバリン、シェイカーなどの音色がアサインされ、コンガやボンゴは軽く叩くとオープンな音色で、強く叩くとアタックの効いたスラップ音という具合いに、音色によっては叩く強さによって音色が変化します。持ち運びが大変なパーカッション類も、これならカバンに収納できますね。クラップやロー・ピッチのスネア・サウンド、リム・ショットなどの音色がアサインされた“ELECTRO”は、デジタル系のアプローチを考えるドラマーに最適。また、SPD::ONEは足で踏み鳴らすことも可能で、中でも低音系のサウンドに特化した“KICK”は、音色の違うツーバス的な感じで使用したり、カホンと一緒に使うなど、プレイの幅が広がるように感じました。
本体に取り込んだオーディオ・ファイルを叩いて演奏/再生することができる“WAV PAD”は、打楽器系の音色はもちろん、曲をクリックと同時再生することもできて、クリックとオケのバランスも本体のツマミで簡単に調整可能。クリック音はヘッドフォン・アウトからのみ出力されるので、同期ものを演奏する機会の多い人に重宝する1台。簡単に導入できるアイテムですが、アイディア次第で活用の幅は無限だと思います。
今年4月に発売されたTM-6 PROは、プロの現場でハイブリッド・ドラムに求められる高い次元の要求を、一般的なドラマーの知識で実現できる新型の音源モジュール。叩いた信号を感知するドラム・トリガーなどと組み合わせて使用します。
まず感動したのは、キックの輪郭を増強したときの心地良さ。アタックのタイミングが明確に感じられると同時に、ボトムの音圧が高くなるので演奏中のテンションが否応なしに上がります。またリラックスした状態でもパワフルなサウンドが得られるので、オーバー・プレイを防止する効果もあり、肉体的な負担も相当軽減できると思います。スネアに関しても深いリバーブやアタックの明確な音色、ロー・チューニングなどいろいろと試しましたが、その効果は予想以上。一度設定したものを保存すれば、楽曲ごとに特有のサウンドを簡単に選択できるので、音色にこだわるドラマーにはうれしい限りです。タム類も音色を重ねることで輪郭や太さが増強され、楽にパワフルな音色を得ることができます。
音色は、高品位な生ドラムをサンプリングしたものなど500種類ものサンプリング音色(WAV)に加えて、表現力豊かなV-Drumsの音色が268種類と大充実。さらにSDカード経由で、好みのオーディオ・ファイルを本体に取り込める機能も搭載されています。またドラム・トリガーRT-30HRはヘッド(打面)とリムの両方に音色を割り当てることが可能なので、打面にドラム系、リムにはパーカッション系などを設定することができます。
Studio Bpm
■住所:東京都千代田区神田司町2-13 神田第4アメレックスビル B1
(都営新宿線「小川町駅」東京メトロ丸ノ内線「淡路町」徒歩1分 )
■TEL:03-5244-5666
■営業時間:11:30〜24:00(平日)、9:30〜24:00(土日祝)
http://studiobpm.jp/
本記事は、リットーミュージック刊『リズム&ドラム・マガジン 2018年8月号』掲載の特集記事を再編集したものです。表紙アーティストは、ドラマーという枠を超えた世界最高峰の音楽家として、各地で心揺さぶる演奏を繰り広げるブライアン・ブレイド。特集はドラム・セッティングにおける理想のポジションを徹底的に探る“the DRUM SETTING”。後編となる今月はドラム・チューナーとしても名高い、小関"koseking"純匡をフィーチャー。そして毎年恒例のドラム・コンテストの課題曲を発表。今回のテーマである「アンサンブル」について語り合う座談会も! ぜひ本記事と併せてお楽しみください。
価格:オープン
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