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- 2024/11/16
Martin / OMC-18、00-45、D-45、D-45JM
好評連載MARTIN TIMES。21回目となる今回からは、マーティンのショップ・カスタム・モデルを数回にわたり紹介していきます。まず第一弾は、黒澤楽器店がオーダーしたOMC-18 Custom、00-45 Custom、D-45 Custom、D-45JMの4本が登場! マーティン工場にて選定された上質な材と、こだわりが凝縮された贅沢なカスタム・モデルのサウンドを、お馴染み斎藤誠氏の演奏でお楽しみください。
今年のMartin Timesは、ビンテージ風のルックスとモダンな演奏性を併せ持つ2018年仕様のスタンダード・シリーズのおもだったモデルをご紹介してきたが、今回からは趣向を変えて、スタンダード・シリーズとはある意味対極にある、ギター・ショップのスタッフたちがアイディアを凝らしてマーティン社に特注したカスタム・モデルをご紹介していこう。
初回は黒澤楽器店によるカスタム・モデルを4本用意した。OMC-18 Customはカッタウェイ付きのOM-18で、トップには「スプルースの王者」とでも言うべきアディロンダック・スプルース、ボディには通の間で話題のシンカー・マホガニーを採用したモデルである。コンパクトなボディに優雅な装飾が映える00-45 Customは、アディロンダック・スプルースのトップに、近年になって使用例が散見され始めたグァテマラン・ローズウッド・ボディの組み合わせが特徴となっている。
あとの2本はどちらもD-45だが、D-45 Customはルーマニア産のカルパチアン・スプルース・トップとグァテマラン・ローズウッド・ボディの組み合わせ。一方のD-45JMは黒澤楽器店創業60周年記念特別モデルとしてオーダーされたもので、アディロンダック・スプルース・トップにマダガスカル・ローズウッド・ボディの組み合わせとなっている。どちらもモダンとビンテージの仕様を取り混ぜた、ひと味違うドレッドノートである。
カッタウェイを持つOMは、ローレンス・ジュバーなどの名手が愛用する通なギター。それをさらに通な仕様にしたのが、このカスタム・モデルである。トップ材にはアディロンダック・スプルース、ボディ材には長い期間にわたって深い川底や湖底に沈んだまま酸素が遮断された状態で「貯蔵」され、その後に引き上げられた「シンカー・マホガニー」
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【Specifications】
●トップ:アディロンダック・スプルース ●サイド&バック:シンカー・マホガニー ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm) ●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm) ●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX・スキャロップト ●価格:¥550,000(税抜き)
僕はいつもOMを使っていますし、このモデルはパフォーマンス・ネックが弾きやすかったので、ピック弾きで動きの激しい「グルーヴもの」っぽいデモ曲を選びました。マホガニー・ボディなのにロー・コードを弾いても干し草の匂いが少なくて(笑)、よりオールマイティに使えます。サステインがキュッと締まるところはいかにもマホガニーらしいけれど、音のバランスがすごく良くて、そっちのほうに気持ち良さが出ているんだろうなぁ。これは相当良い木材なんじゃないですかね。ロング・スケールでテンションが強いからガシガシ弾けるし、それでいて弦高が低くて弾きやすい。カッタウェイがある分、音が少し損なわれるのかなと思いましたが、まったく問題ありませんね。
マーティンのダブル・オーは、おもに12フレット・ジョイントのモデルとして製作されてきたが、本器は14フレット・ジョイントで、しかもナット幅44.5mmのパフォーマンス・ネックを採用している。これにより広い音域や凝ったコードを駆使するモダンな奏法に適しているばかりでなく、カポを使用した際にも無理なく使える音域が広がるという実戦的なギターとなっている。深みのある色合いのグァテマラン・ローズウッド・ボディが、アディロンダック・スプルースのトップや装飾を浮き立たせている。
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【Specifications】
●トップ:アディロンダック・スプルース ●サイド&バック:グァテマラン・ローズウッド ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:24.9インチ(632.5mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX・スキャロップト ●価格:¥1,580,000(税抜き)
このギターは、シャラーンとコードを弾いただけで45の良い部分がコンパクトなサイズに全部入っていることがわかりますね。低音弦が鳴り過ぎないから、高音弦の響きの長さも生きてきますよ。シーンと静まり返った教会みたいなところで生音で弾いたら、ドレッドノートよりもこのギターのほうがモノを言うと思います。標準のSP弦との相性もメチャメチャ良いですね。ライト・ゲージだけどテンションも柔らかすぎないし。僕が持っていた00-18とはキレイに響く感じやバランスの良さなんかがだいぶ違っていて、最高にリッチになった気分がします。こんなのが家の居間にあったら、ずーっと弾いちゃうと思うな(笑)。
ビンテージ・シリーズのD-45Vをもとにカスタマイズしたモデル。ボディ材は00-45と同じグァテマラン・ローズウッドだが、こちらはかなり明るい色で、バインディングやエンド・ピースに使用された杢目の美しいメイプル材と相まって、全体としてウッディな雰囲気が強調されている。トップ材はピアノやバイオリンなどの弦楽器にも使用されるルーマニア産のカルパチアン・スプルースで、野太いサウンドのアディロンダックとは異なり、クラシック・ギターを思わせる張りのある中音域と艶やかなサウンドが特徴となっている。
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【Specifications】
●トップ:カルパチアン・スプルース ●サイド&バック:グァテマラン・ローズウッド ●ネック:ジェニュイン・マホガニー ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 11/16インチ(42.9mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX・スキャロップト ●価格:¥1,680,000(税抜き)
ドレッドノート用に2曲用意したデモはどちらもガシャーンと弾くものではありませんが、高音成分がたくさん欲しい人にはD-45 Customのほうが合ってると思います。パーンと花が開いたような明るさのある音で、軽く弾いても鳴らしやすいんですよ。なので現代風な音だと言えますね。比較的軽量なことや、カルパチアン・スプルースの個性も関係しているんでしょうか。D-45JMに比べて音の重心が少し高めなので、日本だと人気はこちらのほうがあるかもしれません。おしとやかなスノー・フレークのポジション・マークや、角がピンと立ったヘッドもカッコイイですね。それでいて華やかなルックスだし、女性が弾いても映えるでしょうね。
マーティンの日本総代理店である黒澤楽器店。本器は黒澤楽器店の創業60周年記念モデルの第2弾として企画された限定10本製作のモデルで、カスタム・ショップのジェネラル・マネージャーであるジェフ・アレン氏が自ら選定した材を使用している。ネックのグリップは1939年製のギターを再現したもので、ブリッジもスロッテッド・タイプだが、指板のブロック・インレイは現行のヘキサゴン、バックのブレイシングの一部は70年代頃までの太いタイプと、新旧の仕様を組み合わせたユニークなモデルになっている。
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【Specifications】
●トップ:アディロンダック・スプルース ●サイド&バック:マダガスカル・ローズウッド ●ネック:ジェニュイン・マホガニー ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 11/16インチ(42.9mm)●トップ・ブレイシング・パターン:フォワード・シフテッドX・スキャロップト ●価格:¥1,680,000(税抜き)
D-45JMは、僕が知っているD-45の中でも一段とクオリティが高いという実感がありました。D-45 Customと比べると、このギターは低音域がいかに豊かに出ているかがわかります。とは言え、音像が大きくてレンジが広いのに低音が思ったほど暴れないのは、マダガスカル・ローズウッドの特性はもちろん、粘りのあるアディロンダック・スプルースと、太いバック・ブレイシングの相乗効果でしょうね。その分、どんな弾き方をしても安定した音が出せます。鳴りが重厚なので、指弾きの時には低音弦を少ししっかりと弾くようにしたほどでした。ちょっと重たい音だと感じる人もいるかもしれないけれど、僕だったらこっちのほうを選ぶでしょうね。
今回はD-45JM以外、型番からイメージするものとは少し違うギターがそろいましたね。カスタム・オーダーというのは、それくらい自由だということなんでしょう。何をやっても間違いではないし、仕様をそれほど大きく変更しなくても、自分の趣味が反映されていれば満足できるのがカスタム・モデルの魅力でしょうね。
OMC-18は飾り気のないルックスが良いし、レスポンスがメチャクチャ速くて、買ってすぐに使える即戦力のギターだと思います。00-45は小さな面積の中に貝の装飾が集まっているので、同じ45の中でもよりキレイに見えますね。森山良子さんが00-45を使っていて、いつも見ていて素敵だなぁと感じています。D-45の2本はそれぞれの違いが微妙だと思ったので、ピック弾きと指弾きの2曲を両方のギターで弾きましたが、結果としては違いがハッキリわかりました。音像はD-45JMのほうが大きくてレンジも広く、D-45 Customはより軽く鳴る感じですね。ピック弾きの曲は『Cの干し草』というタイトルで(笑)、ドレッドノートだからCのロー・コードが出てくるように作りましたが、どちらもカントリー風のアプローチに応えてくれたのはさすがです。指弾きの曲も、共通項の中で比較できるように同じキーにして、すごく小さな音で弾いたんですが、どちらも懐が深くて全部のニュアンスをキレイに伝えてくれましたね。
斎藤誠(さいとう・まこと)
1958年東京生まれ。青山学院大学在学中の1980年、西慎嗣にシングル曲「Don’t Worry Mama」を提供したのをきっかけに音楽界デビューを果たす。
1983年にアルバム『LA-LA-LU』を発表し、シンガー・ソング・ライターとしてデビュー。ソロ・アーティストとしての活動はもちろん、サザンオールスターズのサポート・ギターを始め、数多くのトップ・アーティストの作品への楽曲提供やプロデュース活動、レコーディングも精力的に行なっている。
2018年4月18日、MARTIN GUITARのラジオCMでお馴染みの斎藤誠の新曲「It’s A Beautiful Day」がニュー・シングルとしてリリースされた。また、本人名義のライブ活動の他、マーティン・ギターの良質なアコースティック・サウンドを聴かせることを目的として開催されている“Rebirth Tour”のホスト役を長年に渡って務め、日本を代表するマーティン・ギタリストとしてもあまりにも有名。そのマーティン・サウンド、卓越したギター・プレイを堪能できる最新ライブ情報はこちらから!