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- 2024/11/16
STEINBERGER / SPIRIT GT-PRO DELUXE
STEINBERGER(スタインバーガー)は、家具デザイナーから楽器デザイナーへと進んだネッド・スタインバーガー氏によって1980年に立ち上げられたブランドだ。誕生から約40年を経て、その未来的なシェイプや楽器としての整合性、そして当時意図していたサウンドに時代がようやく追い付いた感もある。80年代当時から根強いファンを持ち、数々の凄腕ミュージシャンが愛用したことでも有名なこのギターの現行ラインナップから、SPIRIT GT-PRO DELUXEをご紹介しよう。オリジナル・スタインバーガーのデザインを継承しつつも、ボディ構造やハードウェアを一新しているので、まずは細部をチェックしていこう。
特徴的なヘッドレス・シェイプ、そしてボディ外周を削ぎ落としたソリッドでコンパクトなルックスは、一度見たら忘れられないインパクトがある。80~90年代のオリジナル・スタインバーガーはグラファイトやカーボンなどの特殊素材をボディ/ネックに使用していたため、当時の製品はサイズからイメージするよりもはるかに重量があった。また、特殊素材を採用したことが高価だった原因だと言えるだろう。しかしながら、その重量と材質ゆえに、木材で作られたギター/ベースに比べ、ワイド・レンジでクリアなサウンドを生み出していた。当時はピックアップにEMGをチョイスしたこともその音色に影響していたと言える。
現在は専門工場の管理のもと、品質基準をクリアした木材でネックとボディが作られているという。スタインバーガーは特殊素材を採用した先進的なイメージの楽器作りからスタートしたが、現在は一般的な木材で製作することでコストを抑えているのだ。
スケールは25.5インチのレギュラー・スケールを採用。一般的なギターと同じ長さなので、構えた際の違和感は見た目よりも少ないはずだ。左手の肘部分がない(ボディがない)ので、手の置き(おさまり)方に違和感を覚えるか心配だったが、ブリッジ部分の面積が広いためポジショニングは意外にも安定した。また、座って演奏する際にはボディ横のレッグ・レストを使用すれば問題なく演奏できる。ボディ下側(ストラップ・ピンが2個付いている)が平面なので、壁などに立てかけやすいという点は意外にも高ポイント。
弦交換やチューニングの詳細に関しては動画で確認してほしいが、専用のダブル・ボール・エンド弦を使用し、両側をナットとブリッジ駒に引っ掛けるだけで弦が交換できる。チューニングはブリッジ側の各弦のツマミを回すだけ。工具が必要ないので、短時間で交換できるのは非常にうれしい。また、調弦の際には弦を巻きつけるのではなく“引っ張る”ことで音程を合わせるので、弦の巻きムラが生じない。つまり、チューニングが狂いにくいのもポイントだろう。
ボディ外周がない分、サウンド的にはコンパクトなイメージだ。実音がそのまま出てくるので、スピード感がある。音数の多い楽曲やスピード感のあるプレイでの存在感は言うまでもないだろう。試奏ではブルージィなフレーズが中心となったが、ボディ鳴りがほとんどないコンパクトな鳴り感と、それでも違和感なく演奏できる点がチェックできると思う。この音ならジャンルを選ばずに使える楽器だと言える。
ピックアップはオリジナルで、フロントがクリアでフラットなサウンドのハムバッカー、センターはキレのあるシングルコイル、リアにはパワフルなハムバッカーがマウントされている。いずれのポジションでもフラットでクセが少なく、モデリング系アンプやプラグイン・アンプとの相性も良さそうなストレートなサウンド。そしてノイズが抑えらているのもポイントだろう。コントロールはシンプルな5WAYピックアップ・セレクター、マスター・ボリューム、マスター・トーンのみだ。
ラインナップにはスタンダードなブラック・フィニッシュのほか、今回使用したイエローなどのカラフルなフィニッシュや、さらに高級感漂うメイプル・トップ・モデルの上位機種など、合計7モデルが用意されている。
手軽に持ち運べる利便性とプレイアビリティ、サウンド、そして価格。全ての面で驚愕の新生スタインバーガーから目が離せない。
価格:¥39,800 (税別)
価格:¥42,500 (税別)
村田善行(むらた・よしゆき)
ある時は楽器店に勤務し、またある時は楽器メーカーに勤務している。その傍らデジマートや専門誌にてライター業や製品デモンストレーションを行なう職業不明のファズマニア。国産〜海外製、ビンテージ〜ニュー・モデルを問わず、ギター、エフェクト、アンプに関する圧倒的な知識と経験に基づいた楽器・機材レビューの的確さは当代随一との評価が高い。覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。
【使用機材】
使用アンプ:Fender / ’68 Custom Deluxe Reverb
使用ペダル:strymon / FLINT
使用ペダル:Crews Maniac Sound / G.O.D
使用ペダル:Roger Mayer / Voodoo-1 Classic
使用ペダル:DigiTech / Obscura