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- 2024/11/16
Martin / 00-28、D-35、D-45、0X2MAE
好評連載MARTIN TIMES。20回目となる今回も、前回に引き続きマーティン2018年モデルを4本(00-28、D-35、D-45、0X2MAE)紹介します。スタンダード・シリーズに加え、Xシリーズでは初となる0タイプ、0X2MAEも新登場。使い込まれたビンテージ風の渋いルックスと、現代の音楽シーンに合わせてスペックを変更した演奏性が同居する2018年モデルのサウンドを、お馴染み斎藤誠氏の演奏でお楽しみください。
毎年1月末には、世界最大の楽器見本市のひとつであるNAMM SHOWがアメリカのアナハイムで開催される。そして今年(2018)のNAMM SHOWにおけるマーティンの最大のニュースは、Martin Times内ですでにお伝えしたように、中心的なラインナップであるスタンダード・シリーズの全面的なリニューアルだった。見た目は味わい深いビンテージを追求する一方、演奏性はモダンなスタイルに対応するというのがそのコンセプトで、前回は000-28とOM-28というポピュラーなモデルと、細かい仕様やサウンドの違いを確認していただく意味もあって少しニッチなD-41とD-42をご紹介した。今回はそれに引き続き、2018年仕様のスタンダード・シリーズからコンパクトな00-28と、独特な立ち位置のドレッドノートと言えるD-35、最上位機種D-45という3モデルをご紹介しよう。
そしてもう1本ご紹介するのは、気軽に使えるマーティン・ギターとして人気のXシリーズの新製品、0X2MAEである。こちらはXシリーズ初の0(シングル・オー)サイズで、最もコンパクトなモデルとなっている。これら4本を斎藤誠氏のデモでお楽しみいただきたい。
標準的なクラシック・ギターとほぼ同じサイズの00-28が最初に登場したのは1873年ということで、型番の上では由緒あるモデルと言える。とは言え、14フレット・ジョイントの00-28が登場したのは昨年のことで、パフォーマンス・ネックやスキャロップト・ブレイシングといったサウンドや演奏性の面に関して変更はなく、外観がビンテージ・トナーやヘリンボーン・パーフリング、べっ甲柄のピックガードなどのビンテージ仕様に変更されたのみである。
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【Specifications】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:イースト・インディアン・ローズウッド ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:24.9インチ(632.5mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX・スキャロップト ●価格:¥470,000(税抜き)
僕は00-18を持っていたことがあるんですが、それとは音がずいぶん違いますね。この00-28はローズウッド・ボディならではのキラッとした部分があるので、SP弦との相性も良いと思います。000-28と比べると少し締まった感じ。巻弦の音が膨らみすぎないので、強めに弾いても良いバランスで和音が鳴ってくれます。表現力が広いので、ソロ・ギターをやる時なんかにはいろんなことができますよ。全編指弾きの静かなデモ曲を選んだのは、ドレッドノートよりもテンションが柔らかくて、生指で鳴らしやすいからです。あとは、サイズ感と弾き心地のバランスもちょうど良くて、抱えていると落ち着くんですよね。僕も欲しいけれど、女性にもピッタリだと思います。
1966年に登場したD-35の特徴は、数あるマーティン・ギターの中でも数少ない3ピースのバックが採用されていること。当時すでに稀少だったブラジリアン・ローズウッドを有効利用するための苦肉の策だったが、それが逆に個性的なサウンドを生み、70年代の一時期にはD-28よりも多く売れたという。2018年仕様ではブレイシングがフォワード・シフテッドに、ネックがパフォーマンス・シェイプにそれぞれ変更。仕上げもビンテージ・カラーに変更されたが、オリジナルの発売時期を踏まえたのか、パーフリングはマルチ・ストライプ、ペグもエンクローズド・ギアとなっている。
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【Specifications】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:イースト・インディアン・ローズウッド ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:フォワード・シフテッドX ●価格:¥455,000(税抜き)
余分な鳴りが少ないし、中高域も少し抑制されるので、ドレッドノートとしてはレコーディングに向いているモデルだと思います。70年代には吉田拓郎さんが使用して、当時フォーク・シーンにとても愛されたギターですね。その頃からどんどん進化して、やはりこのギターもバランスが素晴らしいです。ふくよかな音になったのはフォワード・シフテッドの効果もあるのかな? ずっとストロークを弾いている曲を選んだのは、例えばポップ・ソ
スタンダード・シリーズの最上位に君臨するD-45は、2018年モデルでブレイシングがフォワード・シフテッド、ネックがパフォーマンス・シェイプ、仕上げもビンテージ仕様にそれぞれ変更された。ピックガードはもともとべっ甲柄である。ペグはゴールドのエンクローズド・ギアから同じくオープン・ギアに変更されているが、ボタンが通常のバタービーンではなく、ダイヤモンド・カットのような面取りが施されており、最上位モデルの高級感を高めている。
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【Specifications】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:イースト・インディアン・ローズウッド ●ネック:ジェニュイン・マホガニー ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:フォワード・シフテッドX・スキャロップト ●価格:¥1,320,000(税抜き)
レンジがすごく広いですね。D-45は今までに何本も試してきたけれど、こんなにすごかったかなぁ……という感じです。デモ曲は、今回このギターを弾くことを知ったあとに作ったので、指弾きの4小節のあとに同じフレーズをピックで弾く構成にしました。なので、このギターのいろんな表情というか、懐の深さが見えてくるんじゃないかなと思います。展開部では、45ならではの“シャリーン”という鈴鳴りが聴こえるようなストロークのリズムを弾いて、最後にまた指弾きの音を思い出してもらえるようにしてみました。このギターを買った人は、ピック弾きだけとか指弾きだけとかじゃなくて、いろんな奏法を楽しんでほしいなと思います。
入門用にも上級者のセカンド・ギターにも最適なXシリーズの中で、最もコンパクトなシングル・オー・サイズのモデル。約632mmのショート・スケールを採用し、テンションが柔らかめなのに加えて、ネックのグリップは現在のマーティンの主流となるパフォーマンス・タイプなので、ロー・ポジションからハイ・ポジションまで弾き心地が変わらず、一段と弾きやすくなっているのが特徴。オール・マホガニー風の仕上げはコンパクトなサイズにピッタリの雰囲気を持っている。ピックアップは定評のあるフィッシュマン製ソニトーンを搭載。
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【Specifications】
●トップ:HPL ●サイド&バック:HPL ●ネック:ラスト・バーチ・ラミネート ●指板:FSCサーティファイド・リッチライト ●ブリッジ:FSCサーティファイド・リッチライト ●スケール:24.9インチ(632.5mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:XシリーズX・スキャロップト ●価格:¥120,000(税抜き)
ある意味、このギターは今回の目玉でした(笑)。デモでは同じ曲の生音ver.とアンプを通したラインver.のふたつでやっています。ハイ・プレッシャー・ラミネートのボディということで音量は小さいんですが、“よくぞここまで!”というくらいバランスが良いんですよね。弾き心地という意味では、僕はかつて某社から発売されていた、これとよく似たサイズのギターを使っていたことがあるので、とても馴染みがあります(笑)。僕のリトル・マーティンもそうですが、音量が小さいとアンプで鳴らしてもハウリングの心配があまりないので音作りも楽ですね。エレアコとして使った時に本領を発揮するので、歪ませて使うのもアリだと思います。なので、デモにも“ガツン!”と弾くブルースっぽい曲を選びました。
最近は試奏する楽器の性格が弾く前に想像できるようになってきたので、曲もそれに合わせて作れるようになったんですよ(笑)。00-28はドレッドノートとは違って強く弾いた時に音が良い感じにつぶれてくれるし、マイクの音乗りも良いので、マイクで音を拾うライブにも向いていると思います。ルックス面では“ヘリンボーンだぞ!”という喜びもあって、自分の中では特別な意識も持てました。D-35は余分な鳴りが少なくて、大きなガラス窓があるブースの中で弾いても音が反射しすぎないので、ドレッドノートの中ではレコーディングしやすいんじゃないかな。このギターで弾いたデモ曲も、D-28だったら低音が出すぎて気を遣う必要があったと思います。D-45は、前々回で高田漣君が弾いているのを見て思ったんですが、やっぱり良いギターですね(笑)。よくもまあ、こういうものを作り上げたなぁと思います。2018年モデルは総じて出来が良いですね。あと、0X2MAEはラインの音がモノを言いますね。それと何と言ってもあのルックスでしょう。白いシャツにも合うし、持った時のスケール感もスッキリしていて、お洒落だと思います。ピックガードがないのも正解ですね。D-45とはまた違った意味で“よくぞ作った!”という感じです(笑)。
斎藤誠(さいとう・まこと)
1958年東京生まれ。青山学院大学在学中の1980年、西慎嗣にシングル曲「Don’t Worry Mama」を提供したのをきっかけに音楽界デビューを果たす。
1983年にアルバム『LA-LA-LU』を発表し、シンガー・ソング・ライターとしてデビュー。ソロ・アーティストとしての活動はもちろん、サザンオールスターズのサポート・ギターを始め、数多くのトップ・アーティストの作品への楽曲提供やプロデュース活動、レコーディングも精力的に行なっている。
2018年4月18日、MARTIN GUITARのラジオCMでお馴染みの斎藤誠の新曲「It’s A Beautiful Day」がニュー・シングルとしてリリースされる。また、本人名義のライブ活動の他、マーティン・ギターの良質なアコースティック・サウンドを聴かせることを目的として開催されている“Rebirth Tour”のホスト役を長年に渡って務め、日本を代表するマーティン・ギタリストとしてもあまりにも有名。そのマーティン・サウンド、卓越したギター・プレイを堪能できる最新ライブ情報はこちらから!