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  • いっちーのデジタル・デジマート 〜第33回〜

DJ RENAスペシャル・インタビュー 〜世界大会を制覇するための極意〜

Native Instruments / TRAKTOR KONTROL Z2

DJ大会“DMC WORLD DJ CHAMPIONSHIPS FINAL 2017”においてDJ RENAが12歳という若さで日本人4人目となるシングル部門の世界チャンピオンに輝きました。DMCの史上最年少記録も大幅に更新し、同大会のバトル部門ではDJ諭吉が世界一となり、世界史上初のシングルとバトルの両部門を日本DJが制覇! さらにDJ RENAは先日ニュージーランドのDJ大会“Kame World Classic2018”でも優勝し、自身の記録を更新中です。今回のいっちーのデジタル・デジマートはDJ RENAと師匠のDJ HI-C氏をお迎えして、昨年のDMCを振り返りながら、世界チャンピオンになるための極意をテーマに話をうかがいました。

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DJ RENA & DJ HI-C プロフィール

DJ RENA

  2004年奈良県生まれ。8歳でターンテーブリズムの素晴らしさに魅了される。KIREEKのDJ HI-Cを師匠としDMC世界最年少のチャンピオンになることを目標にする。小学6年生にはDMC JAPAN FINAL 2016に出場し、中学1年生でDMC JAPAN FINAL 2017シングル部門で優勝。その約1ヶ月後、イギリス・ロンドンに開催されたDMC WORLD DJ CHAMPIONSHIPS FINAL 2017シングル部門において12歳で世界チャンピオンに輝き史上最年少記録を更新。見事に夢を叶えた。

DJ RENAオフィシャル・サイト

DJ HI-C(KIREEK)

 日本を代表するトップ・ターンテーブリスト。盟友YASA(2006、2007 DMC WORLD 2nd)とターンテーブリズム・ユニット『Kireek』を結成。DMC WORLD DJ CHAMPIONSHIPSチーム部門において前人未踏の5連覇を達成。その名をDMCの歴史に深く刻んだ。また個人でもVestax Extravaganzaなどの多くの大会で輝かしい成績を残し、DJ、ショウケース、セッション、音源制作、CM出演など世界にも活躍の場を広げている。またDJスクール“PLANT RECORDS UNIVERSITY”を主宰。DJ RENAをはじめ次世代のターンテーブリストの育成にも力を入れている。

KIREEKオフィシャル・サイト

DJ RENA、DMC WORLD FINAL 2017シングル部門優勝!
史上最年少の12歳で世界チャンピオンに輝く

── 改めましてDMC WORLD FINAL 2017チャンピオンおめでとうございます! 今回は世界チャンピオンになって初めての上京なんですね?

DJ RENA(以下、RENA) はい、そうですね。

DJ HI-C(以下、HI-C) 全国のブッキング・マネージャーたちがツアーやりたいって言ってくれたんですが、RENAはまだ未成年なので世界チャンピオンをクラブに呼びたくても呼べないという今までに無いパターンになりまして(笑)。今回Technicsさんやオタイレコードさんのお力でやっと東京に呼んでいただけたわけです。

── RENAくんには昨年のDMC JAPAN FINAL 2016の前日に、弊社のウェブ・マガジン「耳マン」の取材をさせてもらいましたが、その頃に比べてかなり大人っぽくなっていて驚きました! 体も技術も成長が凄まじいですね

HI-C すごいですね、まさにフランケンシュタインですわ(笑)。自分の手に負えん怪物作ってしまったみたいで。もうとんでもない。自分がやっているDJスクールの生徒の中で一人だけ圧倒的やから。

── RENAくん、DMCの世界大会は緊張しましたか?

RENA それはなかったです。逆にDMC JAPANの最後にコメントを言う方が緊張しました。ルーティン(ターンテーブリストがパフォーマンスする内容)はあらかじめ決まっているけど、話すことはその場で考えないといけないんで。

── 今回の大会のRENAくんのプレイはHI-Cさんが客観的に見てもダントツだったでしょうか?

HI-C そうやと思います。オンライン部門から勝ち上がってきたDJスペル(Kame World Classicの主催者でもある)のプレイを動画で見た時は、見せ方やアイデアが良かったのでひょっとしてRENAが負けるかも? と思う瞬間があったんですが、本番ではやっぱりRENAが強かったですね。今回もWorld FinalよりJapan Finalの方がレベル高かったんじゃないかな。一時期から日本のDJの方がテクニックのレベルが高くなってきてますよ、絶対。

DMC WORLD DJ FINAL 2017シングル部門のDJ RENAのパフォーマンス

── 今回のルーティンはどのぐらいHI-Cさんが手伝っていらっしゃるのですか?

HI-C 2016年のDMC JAPANに関しては結構手伝ったんですが、今回に関してはほとんどRENAです。

RENA 最初作ったルーティンを自分でプレイを撮影してビデオを見ながら修正していきます。自分で完璧やなって思ってからHI-Cさんやいろんな人に意見をもらって、良いなと思ったことは取り入れたり。

HI-C 俺の意見はたまに除外されるというね(笑)。ドクター・ドレの『ネクスト・エピソード』を使ったルーティンは、最初は自分はいらん!って言ってて。

RENA 曲がウケへんとか、いろいろ言われたんですよ。でもなんかやりたいなと思って。

HI-C 結局、長さを半分にしたんです。最初やっていることも簡単だったので少しタイトにしたら上手いことハマって。実際盛り上がってたし良かったなと。

いかにして世界大会を制したか

── HI-CさんもかつてKIREEKとしてDMC Worldチーム部門で5連覇を達成されていますが、ご自身についてはどのように分析されていますか?

DMC World DJ Final 2007 チーム部門で日本人初チャンピオンとなったKIREEKのパフォーマンス

HI-C やっぱり海外のヤツらがやっていないことをやったから優勝できたと思っています。過去にDMCチーム部門で4連覇したフランスの“C2C”という4人組は、それぞれ1台のターンテーブルとDJミキサーを使って1パートをそれぞれが演奏するスタイルで、これを目指しても絶対勝てないだろう思いました。そこで、まだ誰もやっていないジャグリング(2台のターンテーブルで同じ曲の一部を繰り返しプレイするテクニック)同士を掛け合わせるスタイルで、しかも日本らしい音ネタを使いまくろうと決めたんです。そして大会当日はオーディエンスに楽しんでもらえるように、いつも通りの自分たちのノリを大事にして超楽しそうにプレイしました。こういうところが評価されたのかなと思いますが。いかがでしょう? チャンピオン!

RENA 勝つことに集中してたら楽しめないので、まず自分が楽しんだら周りが盛り上がると思います。自分でこう言うのも何ですけど、今回のDMCの大会では僕のパフォーマンスが一番盛り上がったかなと思います。

HI-C そうやと思います(笑)。

── これから世界チャンピオンを目指す人たちに対してどのようなアドバイスをしますか?

RENA まずはYouTubeとか見ながら勉強したら良いと思います。

HI-C 自分がDJを始めた頃はスクールもなかったし情報も少なくて、フレア・スクラッチを知るのに2年かかってて。フレア・スクラッチってトランスフォーマーをただ早くやっているだけやと思ってた(笑)。今はYouTubeに教則動画がメッチャ上がっているから、それを活用することが大事やと思います。そしてほかのDJのルーティンをマネをする。この前RENAの家行ったら、2004年のDMCバトル部門の世界チャンピオンDJ AKAKABEさんのルーティンを完コピしてて。誕生日にAKAKABEさんがDMCで使ってたレコードを親に買ってもらってるわ〜って思ってたその1週間後ですよ(笑)。

RENA 完コピってテクニックの可能性が広がるし、絶対に勉強になると思うんです。コピーができるようになってから自分のオリジナルを作れば良いと思います。

HI-C まず世界チャンピオンになるためには、とにかく上手いやつの真似をしまくるってことも大事やと思います。真似を超えたところの領域にてオリジナルな発見があるかなと。自分も人のルーティンをコピーして新しい発見をすることもあるし。まさにRENAはいろんなDJのテクニックを上手いこと取り入れたスタイルやと思います。ちなみにコツは、“この人みたいになりたい”という目標の人を見つけることですね。自分もAKAKABEさんになりたいって思って完コピしましたよ。最初は人の手癖があるからとても難しいけど、やるとすごく勉強になる。技を習得するには一番早いかも。

RENA それと、練習は楽しみながらやるってことですね、遊びながらやれば練習量も増えると思います。

── RENAくんはどのぐらい練習してますか?

RENA 僕は平日の学校がある日や忙しい時は3、4時間で、休日は3度の食事と宿題する時間以外はずっと練習してます。寝る前は誰かのDJプレイの動画見て、その時これルーティンやってみようとか、このスクラッチやってみようとか思ったことを次の朝起きて練習するんです。

HI-C 朝練は大事。1日5分でも10分でもいいから毎日続けることはとても難しいことですよ。RENAがどうして世界チャンピオンになれたかというと、誰よりも練習したからだと思いますよ。遊びに出かける時も車の後部座席でずっとDMCの動画見てる。RENAが親と車で迎えにきてくれる時なんか、わざわざ俺が出てるDMCのDVDを流してるんですよ。見たくねぇ~よ!(笑)。旅行の時もずっとDMC。そういう環境にいるから常にDMC、DMC、ルーティン、ルーティンばっかりやもんな。その環境に身を置いたから世界チャンピオンになったっていうのは絶対あると思う。

── RENAくんの周りには世界レベルのターンテーブリストがたくさんいるから心強いですよね

RENA 周りにちゃんと教えてくれる人がいることは重要だと思います。

HI-C 間違いない。今の時代、我流でやっている人はスクールに通ってる人に比べて成長は遅いと思う。我流で世界に行ける人はとっくに行ってるから。それに自分がやりたいスタイルにあった先生を選ぶことも重要なポイント。例えば関東でスクラッチ習いたいなら、KEN-ONEくん、宮島くん、ジャグリングやりたいならKentaroくん、威蔵くんってみたいに世界最高峰の人達も揃ってますし、なるべく多くの先生から学ぶことも大切かなと。RENAはいろんな人に教えてもらってるよな。そして関西ならウチらPLANT RECORDSもスクールやってますので要チェック、ワンツ〜(https://plantrecords33.wixsite.com/plantrecords-pru)。

RENA あと、いろんなイベントに行ったりとかいろんな大会に出たりとか。大会に倍出まくったら学べることが倍になると思いますし。まあ飛び回ることが大事かなと。

HI-C さすがやね。親父も一緒になって飛び回っていたけどな(笑)。いろいろ経験しろと。ホンマに好きなことだったら興味持っていろんなところ行くだろうし。

── ターンテーブリストはテクニックも重要ですがルーティンで使う曲についてはどのようにお考えですか?

HI-C この数年RENAにも言ってるんですが、やっぱりDJは音楽をたくさん聴いて選曲のセンスをみがくことも重要です。KIREEKや威蔵くんの影響もあると思いますが、大会で派手な音が使われるようになってきてて。しかし普段その曲流れるようなクラブで聴いてんのかな〜?と、うわべだけで使ってる感が否めないなと、現場感がなさすぎるというか。昔はDMCに出る人達は現場で活躍してる人もたくさんいたので、その時々の空気感とかグルーヴみたいなんあったんですが、最近PCになってから特にゲームっぽくなってきたなと。DMCのジャッジにも選曲のセンスっていうのが評価基準にあるんで、いろんな曲を聴いて本当に好きな曲やジャンルを見つけるのが大事なんですよ。好きな曲/ジャンルが決まったら、今はネットでメッチャ調べられるからさらにそこから広げていける。で掘り続けたらAIが、あなたへのおすすめ!って曲をすすめてきたりもするんで(笑)。こう言うことを繰り返すだけでも選曲の幅が変わってきますから。DMC JAPAN 2017で言うとファイナリストのDJ REIKO。あの人は1番選曲センスが抜きん出てたなと。最初から最後までジェームス・ブラウン。もう鬼のファンク責め。本人もファンクがすごく好きで毎週レコード買いに行ってて、音楽に対する愛を感じます。そういう一本筋が通っているだけでもすごく評価の対象になる。

── 今は何でも試聴してから買えますからね。

HI-C 自分は田舎に住んでたんでレコードは通販で買うしかなくてレコード屋から送られてくるDMが頼りで。リストに“スタッフのイチオシ!”って書かれてるから買ってみるとハズレで「何じゃこの曲~! どのスタッフのイチオシやねん! 」って。でもレコード買う手段がそれしかないからとりあえず2万円分ぐらい買ってみて「またやってもうた~ジャケ買いミスった~! 」みたいなの繰り返しで(笑)。でも今はネットでどこでも試聴できるし。最近はクラブで気に入った曲をShazamで調べてリスト化して、休日に貯めたリストを一気にチェックするようにしています。自分が良いと思ってShazamするから、ほぼ良いみたいな(笑)。そういう時代の流れに乗ったツールを使うのもありかなと。

Shazamアプリ。中心のロゴをタップすると周囲の音楽の認識を始める(画像左)。認識すると曲の情報やYouTube関連動画などを表示する(画像右)

RENA 僕はDJのほかにダンスも習っているんですけど、ダンスでかかっている曲が気になったらShazamで調べたりダンスの先生に聞いたりしてます。

── 世界チャンピオンを目指すために押さえておいた方が良いということはありますか?

HI-C 練習してたら壁にぶつかることあると思うんですが、そんな時は利き手と反対の手で同じ技をやってみると良いかもしれません。左手でつまずいた時に右手でやってみたら、ああ、なるほどなと思うことがありました。そうやってたまには見方を変えてやってみることもした方がよいかな。

RENA 僕はまだ左手擦りなんですが右手擦りもできるように練習中で……

HI-C 大丈夫、お前は今もつまずいてないから何処までも行ってしまってもいい(笑)あと、ジャグリングする時のポイントは踊れること。俺が知っている上手いDJは全員プレイ中に踊ってる。AKAKABEさんしかり、YASAしかり。みんなジャグリングしている時ノリノリじゃない? 体が付いてきてる、これはDJ AKAKABEさんに教えられた。HI-Cもっと踊れって。乗っとらんかったら無理やん。

RENA ジャグリングはリズムキープが大事で、どれだけ簡単な技でもリズムキープしていたらすごいジャッジも高評価になるし。逆に難しい技でもリズムキープしていなかったらなんの得点にも入らないんで……

HI-C 間違いない。それ大事なこと言ったな。RENAは幼い時から1小節をキレイにずっとループさせることができていた。大体ただ1小節ループさせる事がみんなできない。だからジャグリングの練習はシンプルなループができるようにすると良い。自分でiPhoneで録音して聴いてもつなぎ目に違和感がないぐらいに。リズムキープができた上で半拍ずらしとかどんどんやっていけば良いんです。

── RENAくんの次の目標はなんですか?

RENA 英語もがんばっていきたいし、良いルーティンができたらDMCチャンピオン2連覇、3連覇をめざしたいです。それとHI-Cさんみたいに作曲の勉強して将来はアルバム出したいなあと思っています。

HI-C さっき飯食ってて電源ケーブルが欲しいとか言い出して。中学生がですよ、ウン万円する電源ケーブルを(笑)。とりあえずスピーカー変えた方がいいんじゃない?って言ったら「いや、DJの仕事があるんで電源ケーブルにしときます。」とか言われて(笑)。本人は20歳になったらスタジオ立てるぐらいな所まで考えてるんで俺らの中学生の頃とは全く違うなぁと。

── 20歳まで7年もあります。いろいろ楽しみですね!

HI-C 7年後、何になってるやろ、今は音楽しか興味がない? DJ以外にも習い事してるっしょ。

RENA えっ!? ああダンス、ダンス。忘れてた(笑)。

── DJもダンスもできて曲も作れたらすごいですね。

HI-C でも、踊れ踊れってRENAに言っても絶対踊らないんですよ。

RENA あの時はなんか踊りにくそうな曲がかかってたから……

HI-C そんなんノリでやったらいい、ダンサーなんやから。この前、DJスペルがめっちゃ踊りながらDJしてたんで、「お前もあれパクって俺でもこんなのできるしっていうところ見せたれ」って言ったら「そんなんしたらスペルがかわいそうやないですか」とか言い出して。なんやんねん!(笑)

まとめ:DJの世界大会を制するための極意

  • 誰もやっていないことに挑戦する
  • YouTubeなどの動画配信サイトや最新のツールでDJスキルや音楽センスを磨く
  • 世界レベルのDJのルーティンを完コピする
  • 誰よりも多くとことん楽しみながら練習する
  • 自分の目指すスタイルにあったDJに教えてもらう
  • 寝ても覚めてもターンテーブリストのことだけ考えられる環境下に身を置く
  • たくさんの音楽を聴いて自分の好きなジャンルを見つける
  • ジャグリングはリズム・キープが命

Native Instruments TRAKTOR KONTROL Z2

Native Instruments TRAKTOR KONTROL Z2

 DJソフトTRAKTOR SCRATCH PRO 2専用DJミキサー。スタンドアローン・ミキサーとして、ターンテーブルとCDJを接続することも可能。タイムコード・コントロール・バイナルを使用しTRAKTOR SCRATCH PRO 2をコントロール可能で、多くのターンテーブリストが愛用。DJ RENAとHI-Cともに本製品のユーザーである。


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プロフィール

いっちー(市原 泰介)
学生の頃から作曲やDJ活動、バンド活動などの経験を積む。某楽器販売店を経てリットーミュージックに入社。前職では楽天市場内の店長Blogを毎日10年以上更新し、2008年ブログ・オブ・ザ・イヤーを受賞。得意ジャンルはクラブ・ミュージック。日々試行錯誤中。

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