AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
Freedom Custom Guitar Research / ギター
荒川と隅田川の至近、下町情緒を色濃く残す町屋は、いわゆる古典酒場も多く、『巨人の星』の舞台としても知られている。Freedom Custom Guitar Research代表の深野真氏が、この地に工房をオープンしたのは1998年。約20年を経て工場も徐々に拡張し、オリジナルのギター&ベースに加え、エフェクターや各種パーツ、アクセサリー類もラインナップする人気ブランドとして、プロ/アマ問わず熱い支持を得ている。
「立ち上げた当初はリペアが中心でしたが、オリジナル・モデルの開発も始めていました。2003年の楽器フェアでRRシリーズを発表するまで5年かかりましたが、“本質的に良い楽器って何だろう?”というのが原点です」
耐久性にも強くこだわる中で、独自のステンレス・フレットも開発した。
「ステンレスは硬すぎて、作業性が悪いし道具も壊れちゃう。しかも、さんざん苦労して作っても音がパリパリのシャリシャリ(苦笑)。最初は長所が耐久性だけだと思っていたけど、演奏性がとてもスムーズなこととケアがいらないことに気づいたんです。それで柔らかいステンレスを作ろうと思い、工場の職人さんを数年かけて説得しました(笑)。現在は最高硬度のニッケル・シルバー・フレットよりも少しだけ硬い“SPEEDY”と、より柔らかい“WARM”があって、もちろんオリジナルのニッケル・シルバー・フレットも選べます」
加えてオリジナルのハムバッカーも開発したそう。
「僕はレス・ポールから始まって、次がストラト。聴いてきた音楽も必ずギブソンのハムバッカーかフェンダーのシングルコイルの音が入ってる。だから、その両方の特性を持ちつつ見た目はビンテージ、というハムバッカーがどうしても作りたかったんです。また、既存のコイルタップってどうしても疑似的な音がしますよね。そうじゃなく、パキーン、ジャリーンとしていてローもあるという、いわゆるフェンダーのシングルコイルの音をハムバッカーのコイルタップで出したかった。結果、ボビンの形状を作り直して、金型を起こすところから始めたんです。作って試しての繰り返しでしたね。そういうことは今でもやってますけど」
極めつけは、特許取得の“ARIMIZO & One Point Joint”だ。 今年アメリカで開催されたNAMMショウでは、世界中から2000社以上の楽器メーカーが出展する中、このオリジナルのネック・ジョイントがフォーカスされ、[2018NAMM BEST IN SHOW]を受賞した。
「日本の伝統的な建築技法である蟻溝(ありみぞ)を応用して、ボルト1本で必要な強度を得られるようにしました。サウンド・コントローラーとしての機能もあって、ボルトの締め具合で響きが変えられるんです。簡単に言うと、強く締めると剛性が高くなり、緩めると低くなる。それによって伝達しやすい周波数帯や倍音成分が変わるんです。緩くして倍音成分を多く含ませると気持ちいいけど、その状態でヘヴィ・ディストーションをかけると音の分離感がなくなるので、そういう時は締めたりなど、調節が一瞬で誰でも手軽に行なえるんです。ハイブリッド・ハムバッカーもそうですが、現場で何か違うって時に、ギターから先をいじったりするんじゃなくて、ギター本体でアジャストしていけるということですね」
同社にとっての“普通”は、こだわりと探求心に満ちている。それをもっと深く知ってもらおうと、ウェブ・マガジンも展開。その効果もあってか最近では若いお客さんも増えているそうだ。
「20歳くらいの子が“一生モノ”としてオーダーしてくれるのは、やっぱり嬉しいですよね。フリーダムでは“100年保証”を付けているので、使い込んでお孫さんにも渡せます(笑)。未来にビンテージになる、そんなギターを作っているんですよ。数年前から全モデルがセミ・オーダーになっていますが、今後はまたフルのカスタム・オーダーも受けられる体制を作っていきたい。少しずつでも前に進んでいきたいですね。今はまだ下町レベルかもしれないけど、ジャパン・オリジナルとしてもっともっと日本国民からも愛されて、世界中の人からも愛されるようになりたいです」
オリジナル・モデルのギターではRRやPepperといったシリーズがある中で、Hydraはフリーダムをもっとも象徴するシリーズであり、そのフラッグシップ・モデルと言える(Hydra Classicもラインナップ)。ARIMIZO & One Point Jointやステンレス・フレット、ハイブリッド・ハムバッカーといった独自のスペックをすべて備え、さらにこのボディ・シェイプで25インチ・スケールを採用しているという点が、その理由だ。また、本器は24フレット仕様だが、22フレット仕様もラインナップ(Hydra Classicも同様)。24フレットの設計にも妥協はなく、演奏性やデザインの面でもとことんまで突き詰められている。ちなみに“Hydra”に限らず、フリーダムのすべてのモデルに共通の仕様で、普段あまりクローズアップされないこだわりの部分も紹介しておこう。まずフレットの接着処理。これは振動伝達をより一定化するというのが目的だ。そしてワンウェイのトラスロッドを頑なに採用している点。昨今では、トラスロッドと言えば順反りにも逆反りにも対応できるダブル・アジャスト・タイプが定番で、製作時の仕込みもより簡単だそう。にもかかわらず、仕込みも面倒なビンテージ・スタイルにこだわるのは、“音が良い”から。芯の出方や立ち上がり、トータルでの音像といった面で譲れないそうだ。よりよいものを妥協することなく求め続け、満足することを知らないFREEDOM CUSTOM GUITAR RESEARCH。そのこだわりとクオリティをぜひとも体感してほしい。
【Specifications】
●ボディ:プレミアムグレード・フレイム・メイプル・トップ、アルダー2ピース・バック ●ネック:メイプル ●指板:ローズウッド ●フレット数:24 ●スケール:635mm ●ナット幅:42mm ●ピックアップ:F.C.G.R. Hybrid Humbucker(フロント&リア)、F.C.G.R. WTA-ST01(センター) ●コントロール:マスター・ボリューム、マスター・トーン、タップ・コントロール*(プッシュ/プッシュ方式のスイッチ・ポットで、フロントPUとリアPUそれぞれに対応)、ミニ・スイッチ(HSHモード/SSSモード切替)、5ウェイPUセレクター・スイッチ ●ブリッジ:Wilkinson VG300 ●ペグ:Gotoh SGS510-MGT ●カラー:桜 ●付属品:ハードケース、保証書、F.C.G.R.ポリッシュ・クロス ●価格:519,286円
オリジナル・モデルを作るにあたって、すごくこだわったのは耐久性です。楽器として生命が長いものを作りたい。自分自身、ビンテージ・ギターが大好きなので、50~60年代に作られたものを追いかけるには、やっぱり40~50年は持たないとスタート・ラインにも立てないので。狂わず壊れずに良い音がするものを作るには……という部分で、いろいろな取り組みをしてきました。どのメーカーさんも、木材を仕入れてギターの形に仕上げるという点では一緒じゃないですか。結局、出した答えは、最新鋭のことでも最先端のことでもなく、時間をかけて作るしか道はないってこと(笑)。それが「100年保証」の裏付けになっています。
開業当初はストラト・タイプやジャズベ・タイプのオーダーがほとんどだったんですけど、その作業は絶対に必要だなと思ってやっていました。やっぱり、これからオリジナル・モデルを作っていこうという時に、フェンダーやギブソンを知らずして、音や機能、ルックスを語れないですよね。持った感触やサウンドの部分で、フェンダー、ギブソン、グレッチ、リッケンバッカーというアメリカの四大巨頭の楽器の“何か”を感じるところを残したいというか。そこがあったうえで、さらにどうするかというのが土台としてあります。基本的にオーダーをいただいて作るんですけど、楽器店さんからのオーダーをいただく場合と、エンド・ユーザーの方から直接オーダーをいただく場合もあります。最近はHydraとHydra Classicのオーダーが増えてきていますが、スケールが25インチなので、やっぱり弾いていただかないとわからないと思うんですね。このタイプのボディ・スタイルで25インチって、世界中どこを探してもないと思うんです。ウチでしか作っていないと思うので。この弾き心地を一度味わっていただくと、まさに日本人向けだなと感じていただけると思います。(FREEDOM CUSTOM GUITAR RESEARCH代表 深野真)
Freedom Custom Guitar Research(フリーダムカスタムギターリサーチ)
〒116-0001
東京都荒川区町屋6-19-11-1F
03-5855-6277
http://fcgrtokyo.com/