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LUTHIER's HILL/L's TRUST【2018ギター工房放浪記。】

LUTHIER's HILL/L's TRUST

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楽器やペダルなど全方位に対応! ギター弾きの“駆け込み寺”

 渋谷のお隣、池尻大橋駅から徒歩3分という都心部に、ギタリストたちの“駆け込み寺”が存在する。それが、このLUTHIER's HILL(ルシアーズ・ヒル)。2017年9月、ギター工房YellowGemとの共同運営で予約制の楽器工房としてオープンし、現在は新代田工房とともに展開中だ。池尻大橋の方はギャラリーとしての機能もあってか、木の温もりあふれる居心地のいい空間である。

 同工房の魅力は、ギターに付随する、すべてのアイテムを網羅してケアしてくれる点にある。STOMPROX(エフェクター・ブランド)をはじめ、MASTER 8 JAPAN(ピック・ブランド)まで多面的に展開/寄与しているからだ。このスタイルは、代表の小田一貴氏が設立時から理想としていたものだそう。

「(自分の性格もあり)社名に○○ギターと付けると発展できないなと思って。いろんなジャンルの人が、ギターだけじゃなく何かを求めてやってくるというのが理想だったんです。そういう空気が、今の駆け込み寺的な要素になっているのかもしれない」

 その総合力は小田氏のキャリアも影響している。

「専門学校卒業後は5年ほど講師として働きつつ、ミュージシャンの楽器ケアや現場テックもやっていました。そのあと、27歳で1年間、旅に出たんです。それでこの業界の仕事は辞めようと思ったんですが、外から音楽業界を見たらやっぱり自分にしかできないことがあると思って。フリーランスで楽器の修理やテック、イベント企画を行なうようになって、2011年に法人化したんです。そこでミュージシャンと近い距離にいて意見を反映させていくうちに、カスタムメイドや一点モノが得意になったのかなと。気に入ったものがない、じゃあ改造しよう、もうイチから作ろうという形で派生していったんです」

 以降、若手バンドや有名アーティスト、スタジオ・ミュージシャンなどプロからの依頼も多く、各所から大きな信頼を得ている。

「半年前から“このツアーの前後にメンテナンスを入れましょう”といった提案や“レコーディングでどのような音が必要になるか”などのリサーチをしたり、音楽業界の流れがわかっているのは強みですね。あとは、レスポンスの速さと、多くを言わなくても(要望が)わかるという部分で、依頼していただけるのかなと思いますね」

 同記事トップの写真は、指板のアールをつけるためのオリジナル治具。作業スタッフの熟練度に関係なく一定のクオリティを保てるための工夫が、自作の治具なのだ。最終仕上げは小田氏が行なうが、迅速な対応の大きな要因になっている。また、ギター製作では斬新なデザインを依頼されることが多いという。

「13弦ベースとか、変わったオーダーが多くて。困った人はここにたどり着いてきます(笑)」

 また、楽器製作と修理に加えて木材雑貨も扱っている。小田氏がこだわり厳選した木材が多数取り揃えられていて、中には木材のみを購入する顧客もいるとか。なお、端材は置き時計などの雑貨として再利用され、店頭で購入可能だ。

「木目や特徴が1枚1枚違うので、ギターを作るときは、木を並べて何日も悩んでいますね。オーダーメイドでは、何を作るか決まってないけど、先に木材だけ買うお客様もいらっしゃいます」

 さらなる規模拡大を目指しているという同工房だが、後進の育成にも力を入れており、新代田工房はアンプ、エフェクターの修理やカスタムに特化した工房としてリニューアルされるという。規模拡大だけでなく楽器業界の将来を考えている。

「アンプ/エフェクター部門では、楽器調整もできる若いスタッフを育てています。向こう10年を考えたときに、ミュージシャンやそれを取り巻く環境としっかり会話のできる人材をもっと育てなきゃいけないと思ったんです。単なる器用貧乏にはならないよう、L’s TRUSTなりに楽器・音楽業界に対する使命感を持ち、常にチャレンジしています」

Shop Data

LUTHIER's HILL/L's TRUST(ルシアーズ・ヒル/エルズ・トラスト)

〒156-0042
東京都世田谷区羽根木1-1-14 新代田ビルB1F

HP内のメールフォームから受付
https://ls-trust.com/

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