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- 2024/11/16
Kz Guitar Works
鎌倉に隣接する逗子は、湘南の中でも閑静な地域で、石原裕次郎が若き日々を過ごした街としても知られている。今回訪ねたのは、JR横須賀線の逗子駅から徒歩15分、東逗子駅から徒歩10分の住宅街に位置するKz Guitar Works。代表の伊集院香崇尊氏が2001年に工房を立ち上げた動機は、ブライアン・メイ(クイーン)の愛器“レッド・スペシャル”を作りたいという情熱だった。当初からリペア業務は行なわず、製作に専念。そして2003年には、ブライアン・メイ本人承諾のもと(!)一般販売を開始。さらに夢のような話だが、2007~2010年にはオフィシャルのシグネチャー・モデルとして“Brian May Super”を製作! 世界中のクイーン・ファンから熱い注目を浴びるところとなった。
「レッド・スペシャルを作りたいという当初の目標は達成されたので、その次のステップとしてオリジナル・ギターを作り始めたんですよ。レッド・スペシャルには、ほかの楽器にはない独特な魅力があるので、そこを取り入れたオリジナル・モデルがあったらいいんじゃないかなって。今は3年目くらいですけど、デザイン的にもサウンド的にも変わってきて、レッド・スペシャルの良さというよりも、純粋にギターとしての良さを追求しています」
ピックアップを改良したほか、特徴のひとつであるケーラー・トレモロをチューン・オー・マティック&ストップ・テイルピースにも選択/変更できるようにしたり、オリジナルと同じ直列にこだわったピックアップも、直列と並列の切り替え可能なシリパラ・スイッチを装備している。
「標準で直列配線のギターって、あまりないんですよ。直列は良くないとも言われているけど、そうじゃないんだよってことを伝えていきたいという思いが最初はあったんです。だから当時は、頑なでしたよね。でも、お客さんとやり取りしていく中で、それがだんだんなくなってきて。いろいろ試してダメだったこともたくさんありますけど、いいなと思ったことは取り込んで進化していった感じです。結果的に、より多くの人に受け入れられる形になってきました。だから去年の3~4月くらいに、このモデルに関するコンセプトが固まったというか、ようやく完成したなっていう感覚ですね」
現在は、StandardにSemi-hollow/Solidの2タイプ、Junior、そして限定30本のシグネチャーAdam Slack Model(税別350,000円)という4モデルがラインナップされている。フラッグシップ・モデルのStandardはカスタム・ギターに近い位置付けで、いくつかのスペックの選択が可能。よりシンプルな仕様のJuniorは、マホガニー・ボディ&ネックにチューン・オー・マティック&ストップ・テイルピースを採用した“3S11 T.O.M”(税別230,000円)と、アルダー・ボディ&メイプル・ネックにシンクロナイズド・タイプのトレモロを搭載した“3S11 Synchro”(税別250,000円)の2種類のモデルが用意されている。近々、それぞれの2ハム・モデルも追加予定とか。都内では渋谷のフーチーズや山野楽器ロックイン新宿、島村楽器ミーナ町田店、その他、名古屋、大阪、四国、九州の一部の島村楽器などに展示されているので、気になる人はチェックしてみよう。
「楽器店でもオーダーできますし、直接ウチにオーダーされる方もいらっしゃいます。工房に足を運ばれる方もいますしね。事前に予約してもらえれば対応可能ですし、実際にお客さんの顔が見れたほうが、作るほうも楽しいですしね。福岡から来られた方もいらっしゃいます。気に入っていただいてStandardを3本購入された方や、Standardを2本とAdam Slack Modelを購入されたお客さんもいらっしゃいます。2本購入された方はもっといますし、本当にうれしい限りです。とにかく、まずは手に取っていただきたいですし、わかりやすいJuniorを弾いてもらったうえで、Standardの良さに気づいてもらえるというのが理想です。将来的には、レス・ポールやストラトキャスターのようなスタンダードになればなと。最初に作り始めた時から、その夢は持っています」
最大の特徴は、オリジナル・ピックアップと充実のコントロール機能、そしてその滑らかさに惚れ込んでいるというケーラーの搭載(チューン・オー・マティック&ストップ・テイルピースも選択可能)だ。ピックアップに関して、当初は英国バーンズ社のピックアップを製造している職人に依頼し、オリジナルで巻いてもらっていたが、その後、デザイン変更でカバーがシルバーに。さらに、職人の引退により、国内での製造を決意。その結果、オリジナル・ピックアップ“KGW”が完成した。プロからの評価も高く、その音色はまさにビンテージ・ブリティッシュ! 現在は両サイドの耳部分がなくなり、ルックス面もさらに向上している。ちなみに単体販売はなく、Kz Oneのみに搭載される特別なものだ。コントロールは、各ピックアップのオン/オフ、フロントとセンターのフェイズ、ハムバッカー・モード(直列)とシングルコイルらしいハーフトーン(並列)を切り替えられるシリパラ・スイッチを装備。これらにより23種類ものコンビネーションを実現している。ボディ材は、好みに応じて5~6種類が用意され、来店しなくてもメールで写真を見て選ぶことができる。カラーリングも自由に選べて、セミ・ホロー・モデルではfホールの有無も選択可能だ。価格は税別430,000円~500,000円近辺とのこと。
【Specifications】
●ボディ:キルテッド・メイプル(トップ)、ホンジュラス・マホガニー(バック) ●ネック:ホンジュラス・マホガニー ●指板:マダガスカル・ローズウッド ●フレット数:22 ●スケール:635mm ●ナット幅:43mm ●ピックアップ:Original KGW Single Coil ●コントロール:ボリューム(フロントPUフェイズ・スイッチ)、トーン(センターPUフェイズ・スイッチ)、2ウェイ・トグル・ピックアップ・スイッチ×3、2ウェイ・トグル・スイッチ(シリーズ/パラレル) ●ブリッジ:Kahler 7300 Tremolo ●ペグ:Gotoh SG301MG-T ●カラー:シースルー・ブルー(Matt See-through Blue) ●付属品:セミ・ハード・ケース、取扱説明書、調整用工具、保証書 ●価格:400,000円(予価)
Juniorモデルは、直感的に使える、持ったらすぐ理解できて弾けるというのがコンセプトなんですよ。一方のStandardモデル(本項掲載モデル)が、頭で考えてじっくり音を作り込むタイプのギタリスト向けなのに対し、Juniorはより実戦向け。ターゲットが違うんです。Juniorはマホガニーのボディ&ネックにチューン・オー・マティック&ストップ・テイルピース(3S11 T.O.M)、もしくはアルダー・ボディ&メイプル・ネックにシンクロナイズド・タイプのトレモロ(3S11 Synchro)のふたつを選択することができます(どちらもソリッド・ボディのみ)。音の想像がつくので、わかりやすいですよね? それによって、よりピックアップの特徴も感じられるんじゃないかなと思います。さらに、5wayレバー・スイッチの組み合わせによるピックアップ・コンビネーションも11種類に絞ることで、操作もわかりやすくしました。Standardは23種類ありましたが、その中から3基同時オンと、フロント+リアの組み合わというパターンを省いたんです。ただ、フェイズとシリーズ/パラレル切り替えはできるので、おいしいサウンドはこの11種類の中にすべて入っていると思いますよ。あとはトレモロが、ケーラーではなくシンクロナイズド・タイプという点もポイントですね。Juniorが完成したことによって、Standardはよりお客さんの要望に対してフレキシブルに応えていこうという風に変わってきています。それによって気づくこともあるし、得るものも多いんですよ。今はハードロック・メイプルが標準のトップ材なんですけど、1月のThe 2018 NAMM Showにはバール材のものを出展しました。今後はさらに、トップのセンターに別の材を挟んだモデルや、その組み合わせもお客さんに選択してもらえるようにしたいと思っています。(Kz Guitar Works代表 伊集院香崇尊)
Kz Guitar Works(ケイズギターワークス)
〒249-0005
神奈川県逗子市桜山3-1-5
046-801-3150
http://kzguitarworks.com/