AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
ハイエンドミュージック
大阪の伝法駅に工房を構える、ハイエンドミュージックが設立されたのは約9年前。代表の八田聡氏は13歳からギターを始め、甲陽音楽学院でジャズを学ぶと、20歳頃からプロ・ギタリストとして活動をスタートさせる(フェイバリットはデヴィッド・T.ウォーカーとのこと)。その後、ギタリストを辞めてウェブ・ディレクターの職に就くものの、ギターへの思いが捨て切れず、24歳で独立。前職での経験を生かしてウェブサイトを立ち上げ、最初の半年は中古ギターの販売のみを行なっていたが、“これじゃ食えんぞ”と一念発起し、リペアの勉強を本格的に始めたそうだ。
「リペアは完全に独学です。ただ、昔からギターをいじるのが好きで、ギタリスト時代の同僚で今もプロで活躍している人たちの楽器の面倒を見させてもらって、それをきっかけに独立したんですよ。最初の2~3年は本当に厳しかったですが、現在の工房に移ってからは仕事も増えて、本格的に忙しくなっていきましたね」
現在はリペアの依頼が9割で、残り1割が自社のモディファイ・コンポーネント・ギター“infinite”の製造だ。自身もプロ・ギタリストとして活動していたこともあって、演奏性を大きく左右するネック周りのリペアには特に心血を注いでおり、信頼も厚い。
「フレット交換や擦り合わせが多いですが、エッジ部分、ラウンド部分の細かいところまで作業します。フレットの打ち替えは、指板の修正とサイドの形成、ナット交換、全体の調整も含めたワンパッケージになっていて、指板が波打っているから追加料金が発生するようなこともありません。フレット仕上げもオリジナルのひとつで、5~6年前からラウンド・エッジ処理を施しています。あと、ネック幅に対して弦のピッチが広くて弦落ちしてしまうようなギターでも、弦落ちしなくなります。普通であればオプション料金を請求される調整ですが、それはナシで(笑)」
良心的な価格設定には頭が上がらない。太っ腹過ぎて心配になってしまうくらいだ。さらに、ネックの調整・加工にも自信があると力強く語る。
「ウチは、ネック折れにもCNCルーターを使うんですよ。普通は手作業で作った補強材を、ギター側も手作業で削って補強材を入れると思うんですけど、僕らは高精度のCNCルーターを使って補強材を作るし、ギター側もCNCルーターで削ります。また、CNCルーターを所有している工房の中でも、CAD(コンピューターを用いて設計すること。コンピューター支援設計とも)を扱えるところは少ないんじゃないかなと。リペアに関しても自分たちでプログラムを作成して削るので、値段も上がることなく高いクオリティで作業することが可能なんです。ネック周りには圧倒的に強いと自負していますね」
自宅の1階部分を活用した工房は決して広いとは言えないが、最小限のスペースに最新鋭のマシンが所狭しと配置されている。今後より注力していきたいのは、オリジナル・ブランド“infinite”のギター製作。受注生産を軸に、スタッフを増やしながら月間20本を目標に製作していきたいという。アーチド・トップ、TLシェイプ、STシェイプのオーダー・モデルも受け付けているというが、オリジナル・モデルの“モダナイズ”はかなり鮮烈だ。ハイ・ポジションへのアクセスは素晴らしく、宮大工の技法を取り入れたジョイント方法を採用している(Modernize bendtop参照)。
オリジナルのボディ・シェイプを採用した“モダナイズ”は、その名の通りモダンなプレイヤーを狙ったモダン・シリーズのフラッグシップ・モデル。マルチ・カラーが目を引くボディ・トップで、ひとつの材をインレイ(アバロン)で色分けするデザインが非常に独創的だ。基本的にピックアップは価格に含まれず、自分で持ち込むか、オススメを組み込むかを選択できるのも特徴のひとつだろう。完全手巻きによってビンテージ・ピックアップを完璧に再現する、K&Tピックアップで知られる高野順氏が、本器に合わせたピックアップを開発しており、こちらはアップ・チャージで実装可能だ。ジョイント部は宮大工の技術から着想を得た独自の製法で、ボディとネックの接地面積が通常の1.5倍ほどあるため、圧倒的なサステインを誇る。また、接合部分が強固なため、ネックのセンターずれがなく常に安定した状態で弾くことができる。ネック・ヒールもオリジナルで“小指で最終フレットを難なく押さえることができます”とのこと。トーンはプッシュ/プッシュのタップ・スイッチで、フロント&リアのハーフトーンなどが出力可能。トップ材、バック材、ネック・シェイプ、指板などは要望に合わせて変更できる。また、同社はバズ・フェイトン・チューニング・システムのライセンスも取得しており、本器をはじめインフィニットのギターに標準搭載されているのも魅力だ。
【Specifications】
●ボディ:キルト・メイプル(トップ)、スワンプ・アッシュ(バック) ●ネック:メイプル ●指板:エボニー ●フレット数:22 ●スケール:628mm ●ナット幅:42mm ●ピックアップ:ピックアップは持ち込み可能。本体価格は原則ピックアップの代金を含んでいない価格。アップチャージで推奨モデルを選択することも可能(フロント/センター:suhr v60、リア:suhr ssv) ●コントロール:ボリューム、トーン、5wayスイッチ ●ブリッジ:ウィルキンソン VS100N ●ペグ:ゴトー マグナムロック ●カラー:デバイデッド・マルチ・カラー ※1色でも、本器のように2種の色に分けて塗ることが可能。カラー・パターンはウェブに複数パターン掲載予定。 ●付属品:ギグバッグ ●価格:288,000円(ピックアップは別料金)
infiniteは2017年から始まった新しいブランドで、完全に自社で製造しています。このオリジナル・シェイプを元に、トップ材をキルトやフレイム・メイプルに変更したり、木材やカラー・バリエーションが選択可能なほか、トップ材を貼らない廉価版も用意しました。写真はインレイを境界に色を塗り分けたデバイデッド・マルチ・カラーで、トップはキルト・メイプル、バックはアッシュという仕様です。もちろん単色もオーダー可能ですよ。
サウンドの狙いとしては、11ミリのトップ材を貼ることで、見た目を追求しつつトーン・エフェクトも獲得しました。従来にないデザインですが、見た目だけに走ってしまったら本末転倒ですからね。また、ジョイント部にはヒール・カッタウェイが入っているので、ハイ・ポジションへのアクセスはかなりいいと思います。ジョイント部の接地面積が非常に広いので、ディープ・ジョイントと同等の効果があり、サステインが圧倒的に長いというのも大きな特徴のひとつです。ボディは、くびれから下が膨らんでいますが、体に当たる面積を広く取るようにデザイン設計しているんです。そのほうが、ロー・エンドがしっかりカバーされるんですよ。ブリッジは、チューニングとサウンドの面でウィルキンソンVS100Nを採用していますが、ユーザーの意向で変更することも可能です。ネック形状も同様で、基本はCシェイプですが、ファットなシェイプやVシェイプも対応します。ピックガードはフレイム・メイプルを着色したものですが、こちらもメイプルやローズウッド、マホガニーなどから選択できます。ハードでヘヴィなサウンドだったり、フュージョンやジャズ、モダンなプレイを追求するプレイヤーに、ぜひ手に取っていただきたいと思いますね。(ハイエンドミュージック代表 八田聡)
ハイエンドミュージック
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大阪府大阪市此花区伝法4-2-8
06-4256-8224
http://shop.12msic.com/