AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
Sago New Material Guitars
2004年創業、尼崎市のJR立花駅から徒歩10分程度の場所に位置するSago New Material Guitars(以下、Sago)。オリジナル・モデルの愛用者も多く、真鍋吉明(the pillows)、戸高賢史(MONOEYES)、和嶋慎治(人間椅子)、杉本恭一(LÄ-PPISCH)、草野マサムネ(スピッツ)、オカザワ カズマ(キュウソネコカミ)などなど、今やすっかりプロ御用達ブランドであるが、その名前は、代表の高山賢氏のあだ名に由来するそう。
「小学校のとき、僕の名前(さとし)を間違えて“さごし!”って呼ばれて、それが短くなって“サゴ”に(笑)。で、ブランドを立ち上げた時、どうせすぐ潰れるからテキトーでええやと思って名づけて今に至ります。でも、けっこう潰れへんなって(笑)」
“Sonia”などのオリジナル・モデルも人気だが、ここ数年は主軸であるオーダーメイドに力を入れている。
「創業当時から、オーダーメイドをメインでやりたいと思っていました。人それぞれ好みがあって、みんなが良いと思う楽器なんてないと思うので、その人に合ったものを作りたくて。ぶっちゃけビジネスとしては、リペアのほうが儲かりますよ。でも、ウチはやっていない。何が良いかではなくて“何をやりたいか”という話で、自分が考えたものが売れるのも嬉しいけど、僕はフルオーダーをやるのがおもしろいし幸せだなって。お客様の意外な発想が僕らの技術の向上やアイディアにもつながるので、ワクワクしますね」
そんな、既成概念にとらわれないSagoのもとには斬新なデザインの依頼も多い。近年では、菊地英昭(THE YELLOW MONKEY)が2017年の東京ドーム公演で使用したLEDギターや、和嶋慎治の“冥王~Pluto”、このページで紹介している“麒麟”などを製作。
「トリプル・ネックとか、ほかにはないようなギターばっかり作ってますよ(笑)。オーダーメイドと言っても幅広いですが、すべて実現できるのがSagoですから。セミオーダーで自分のギターを変えてもいいし、やりたいビジョンがあれば、フルオーダーでそれを形にすることもできます。漠然としていていいので、イメージがあるなら気軽に相談してほしいですね」
また、全モデルにフィンランドの木材加工技術“サーモウッド”を採用。これは人工的に経年変化を施し、ビンテージ・サウンドを得られるというもの。ほかにもオリジナルのヘッド形状や個性的なカラーリングなど、楽器の枠組みを超えてあらゆるところから着想を得ている点も強みだ。
「でも、僕の発想が豊かなわけではなく、いろんな方のおかげなんです。サーモウッドは、ローカルテレビがウチを取り上げてくれて、それを見たサーモウッドの処理をやっている会社が営業に来たんです。それで、楽器で試してみようと。ヘッド形状も評価してもらっていますが、あれも失敗から生まれたもので。間違ってえぐってしまったらそれがカッコよくて、神様ありがとうっていう(笑)。塗装に関しては、昔クルマ業界にいたので、そこからアイディアをもらいました」
今後は海外展開に力を入れるそう。国を越え、ブランドの枠を超え、楽器作りの常識をも超える。そうやって、Sagoはこれからも進化し続ける。
「今年は海外進出にさらに力を入れたいですね。特に台湾では、Sagoを使うミュージシャンも増えてきています。あとは、Sonic(LUMTRIC COMPANYのオリジナル・ブランド)とコラボした新ブランド“Ximera(キメラ)”がおもしろかったので、ああいうのは今後もやりたいですね。また、せっかくNew Materialという名前ですから、新素材をもっと積極的に使っていきたいなと。
高山氏にとって、楽器とは音楽を作る一部。よりよい音楽を作るために、よりよい楽器を日々製作している。
「僕は“楽器を作る”って概念ではやっていなくて。楽器は音楽を表現するための道具で、機嫌よく弾いたら機嫌の良い音が出て、聴いている人も機嫌が良くなる。そのための道具を作っているんですよ」
和楽器バンドやm:a.ture、ソロ活動など、多方面で活躍する桜村眞(和楽器バンドでは“町屋”名義)。そんな桜村があらゆる音色やチューニングをカバーできるよう製作したのがこの“麒麟”だ。7弦ギターの音階を6弦ギターで網羅したという、非常に珍しいモデルである。本人が使用しているモデルは麒麟の象嵌(ぞうがん)が施されているが、こちらは市販されている無地のパターン。さらに写真はプロトタイプであるため、細部のスペックがやや異なっている(本人モデルはブラックのストラト・ノブ仕様で、アクリル・ピックガードを装備。詳細はこちら)。
考え方としては、通常の6弦ギターのヘッド側に5フレット分追加して(Low-B)、839mmの29フレット仕様のロング・ギターに。ただし、麒麟はダウン・チューニング用ではないため、いわゆる7弦ギターにありがちなテンションの緩さはなく、ハリのあるサウンドと安定したピッチを実現している。5フレットにカポをはめるとレギュラー・チューニングになるので、カポをずらすだけで瞬時にダウン・チューニングに切り替えられるのも利点だ。
さらに、コイルタップやブリッジに内蔵されたピエゾ・ピックアップにより幅広いサウンドを実現し、パフォーマンス性や演奏性も考慮した、あらゆる場面で活躍できる画期的なモデルと言えるだろう。
【Specifications】
●ボディ:ウェンジ(トップ)、ウォルナット2P(バック) ●ネック:パドゥーク ●指板:ウェンジ ●フレット数:29 ●スケール:839mm ●ナット幅:42mm ●ピックアップ:L(x) Twin Rail Humbucker(フロント)、L(x) Twin Rail Humbucker(リア) ●コントロール:ボリューム(プッシュ/プルでピエゾ切替)、トーン、ミニ・トグル・スイッチ(オート・タップ)、コイル・タップ・スイッチ ●ブリッジ:シャーラー Lock Meister w/Graph tech ghost pickup ●ペグ:ゴトー SGS510MG-T ●カラー:ナチュラル ●価格:605,220円
桜村さんには和楽器バンドを始める前からSagoを使っていただいていて、麒麟は6本目くらいになりますね。サポートの現場に何本もギターを持って行くのが大変だということで、1本ですべての音を網羅したいというコンセプトから始まったんですよ。最初は34インチのモデルから始まり、そこからどんどん進化していきましたね。桜村さんはギターを回すパフォーマンスをしたりもするのでスケールを短くして、あとはアタック感を得るためにデタッチャブル・ネックにしています。ピックアップはシングル・サイズのブレード・ハムを2基に加えて、アコギっぽい音も出せるようにピエゾも搭載しました。デザインは、桜村さんのデッサンをもとにしています。
そもそもこの麒麟を作ったきっかけは、2014年にウチが“Japan Expo”に出展する際、“和”なモデルを作りたいと思って、象嵌(ぞうがん)を使った楽器を作ることにしたんです。その時に出会ったのが内山春雄先生という象嵌師で、その後、2015年の“サウンドメッセ in OSAKA”に出展する時も内山先生に協力していただきました。そのイベントで、ステージ・パフォーマンスに来てくれたのが桜村さんだったんです。その時、内山先生が桜村さんを気に入って、“彼をイメージした麒麟の象嵌を贈りたい”と言ってくれて。それならウチも、その象嵌を使ったギターをプレゼントしないと!という流れですね(笑)。それがSagoのホームページに載っているものです。その後、市販モデルとして柄のないバージョンを作りました。サウンドに関しては、動画(YouTubeにて公開)でご本人が語っていただいている通り。ピックアップの見た目はシングルコイルですが、コイルを巻き直してハムに近いパワー感になっていると思います。(Sago New Material Guitars代表 高山賢)
Sago New Material Guitars(サゴ ニュー マテリアル ギターズ)
〒660-0054
兵庫県尼崎市西立花町4-15-8
06-6439-6377
http://sago-nmg.com/