AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
Bizen Works
愛知県名古屋市の北部に隣接する春日井市は、名古屋市の中心部から電車で20分足らず。ベッドタウンとして栄えているのはもちろんだが、ものづくりの街としての歴史も古い。そんな春日井市に坂本行宏氏が工房を構えたのは、2016年7月のことだ。
坂本氏は約17年間、国内有名メーカーの工場でギター製作全般から生産ラインの構築、技術開発、材木の仕入れにも携わり、工場長も務めた人物。ギター製作に携わるようになった当初から、いつかはオリジナル・ブランドを……という想いを抱いていたそう。独立に際して物件を探していく中、縁あってこの地でBizen Worksをオープンした。ちなみにネーミングの由来は、坂本氏が岡山県出身であること、また言葉の響きも良かったからというのも決め手になったそう(備前は岡山の地名であり旧国名)。
当初から、リペアやカスタム・オーダーなどを手がけながら、オリジナル・モデルの開発にも着手。改良を重ね、昨年春に“サウンドメッセ in 大阪 2017”で発表、大きな注目を集めた。まさに新進気鋭のブランドだ。その原点は「自分が思うカッコ良いギターと良い音を形にしたい」というもので、具体的には「マホガニーのソリッド・ボディにセットネックのシンプルなギターが一番好き」なのだそう。Bizenのオリジナル・モデルは、それが核となっている。
Bizen Worksの特徴として挙げられるのが、材木の質の高さと在庫の豊富さだ。特にホンジュラス・マホガニーに関しては、ボディ材として一般的な500×360ミリにカットされた板を買うのではなく、長い木材のまま仕入れ、坂本氏の見立てによってボディ用、ネック用などに振り分けられ、さらに寝かせたり乾燥させるといった工程を踏む。材によっては“立米(りゅうべい)買い”という1立方メートル単位で仕入れたり、競りに参加することもあるそう。
「木材は一期一会的なところがあるので、良いものがある時は少し無理をしてでも買うようにしています。お世話になっている木材屋さんからも、良いものや珍しいものが入ると連絡をいただけたり、そういう面では恵まれていますね。また、愛知県は木材屋さんが多いものですから、いろんな材との出会いがあります」
同じ種類の木材でも、個体差がいろいろある中から顧客自身が豊富な選択肢から選ぶことができるというのも格別な体験だ。工房へ足を運び、触りながら選んだ材には思い入れも宿るはず。
「タップ・トーンも、お客さんに実際に叩いてもらって違いを確認しながら、どういう音が欲しいのか一緒に探っていくという楽しさはありますね。そのためには木材の在庫を持っていないと進めることができないので、常にある程度の在庫を用意して、その中から選んでいけるように。そういったスタンスでやっています」
ちなみに、木目の美しさと響きの良さが決して比例するわけではないという点も奥深い。ただし柾目に取った木目の美しいものは、材の種類を問わず総じて響きが良いということだ。そして、このように自ら材を選べる楽しさがありつつ、Bizenオリジナル・モデルはNCルーターによる緻密かつ美しい木工加工も目を引く。そのバランスも魅力だ。
「小型のNCルーターがあるので、木製のピックガードやテイルピース、バック・パネル、ほかにもウッド・ノブやフレット溝など、精密な設計でも3Dデータを作れば正確に製作できます。そうやって攻める部分と、ネック・ジョイントや最終仕上げなどといった手の温もりが感じられる部分。その融合は意識していますね。ブランドとしては、今はまだ始まったばかりで月産3~4本ほどですが、コンスタントに続けていくことで認知度を高めていきたいなと思っています。“Bizen Worksってこういうギターだよね”というところまではいきたいですね」
Bizen Worksのオリジナル・モデルは、フラット・トップ/アーチド・トップとも“Grain”という名称で展開(写真はフラット)。これまで、ネック・シェイプや、ノブを樹脂製からウッド・ノブに変更するなど、数々の改良を重ねてきたが、坂本氏曰く“まだまだ良くなると思っているので、もっといろいろ試しながらやっていきたい”とのこと。全モデルに共通する主要スペックは、ホンジュラス・マホガニーのボディ&ネック。そしてネック・シェイプは、6弦側にピークを持たせた左右非対称のグリップにコンパウンド・ラディアス仕様となっている。写真のこちらは、ボディ・トップに5Aグレードのカーリー・メイプル、指板はマダガスカル・ローズウッドを採用し、ピックアップはオリジナルのビンテージ・カスタムを搭載。ピックガードはキルテッド・メイプル、テイルピース、ウッド・ノブ、トラスロッド・カバーにはマダガスカル・ローズウッドを採用、バック・パネルとヘッド・べニアはボディ・トップ材の共木で製作されている。また、このフラット・トップのモデルは、ボディ・バックのホンジュラス・マホガニーは2ピースだが、左右で同じ木を使っているため、接ぎのラインがほとんどわからないという点も特徴と言えるだろう。
【Specifications】
●ボディ:カーリー・メイプル(トップ)、ホンジュラス・マホガニー(バック) ●ネック:ホンジュラス・マホガニー ●指板:マダガスカル・ローズウッド ●フレット数:22 ●スケール:635mm ●ピックアップ:Bizen Vintage-Custom SET ●コントロール:ボリューム×2、トーン×2、3wayトグル・スイッチ ●ブリッジ:ゴトー GE104B ●ペグ:ゴトー SGL510Z ●カラー:Natural ●付属品:Bizenハードケース、認定書 ●価格:498,000円
僕が一番やりたかったのは、テイルピースやピックガード、ウッド・ノブの使用材、ポジション・マークの有無やヘッド・ベニアなどをお客様にアップ・チャージなしで自由に選んでいただいて、自分だけの1本が作れますよ、という形です。ショップからの発注分もオーダー・シートを記入していただいているので、同じギターは1本もありません。核となるホンジュラス・マホガニーのボディ&ネックという仕様はキープしつつ、トップ材やカラーを選択することができます。材に関しては、カーリー・メイプルやキルテッド・メイプル、ハカランダ、エボニー、マダガスカル・ローズウッドあとはシャム柿やバール・メイプルなどのエキゾチック・ウッドも充実させているところですね。ピックアップは、オリジナル・ハムバッカーのビンテージ・カスタムとモダン・カスタムの2種類を用意しています。
テイルピースは、弦振動を木の鳴りとしてどう伝えるか考えた時に、テレキャスターのように直接ボディ・バックにブッシュを圧入して弦を引っ掛けたほうが伝わるんじゃないかと考えました。ストップ・テイルピースと比べて、よりタイトな音になっていると思います。ボディ・バックのコンター加工は、ヒールレス・ジョイントにしたかったので、バック・コンターから流れるようなラインにして、ネックのほうも落としています。また、機能と同じくらいカッコ良さも追求したいので、ボディ・バックのパネルも、丸いボディ外周に対して丸いデザインのウッドを採用しました。ネック・エンドにはヒール・キャップを貼っていて、それもカーリー・メイプルやエボニー、ローズなど好きなものを選んでいただけますし、ピックガードとバック・パネルを共木で作るといったオーダーも可能ですね。(Bizen Works代表 坂本行宏)
Bizen Works(ビゼン・ワークス)
〒487-0027
愛知県春日井市松本町1-2-8
0568-41-8392
http://bizen-works.com/