AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
FUJIGEN、FGN
有名ブランドのOEM供給を行ない、自社ブランドFUJIGENとFGNを展開するなど、日本でも指折りの老舗ブランドとして世界に名を馳せているフジゲン。ギタリストにとってはお馴染みすぎるほどお馴染みの存在であるが、今回は同社の長野県大町工場にお邪魔した。
大町工場のスタッフは50名ほどで、木工加工や塗装を担う北海道のオホーツク楽器工業では30名ほどのスタッフが勤務し、月間1,700本ものギター/ベースを製造している。到着した取材陣を出迎えてくれたのは、5Aのキルト・メイプルやブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)といった、ギタリストであれば垂涎必至の銘木たち! マホガニーにいたってはアフリカから丸太ごと仕入れており、製材まで立ち会って指示・管理するのはフジゲンだけとのこと。同社の今福三郎氏が工場内を案内してくれる。
「我々には資金力と信頼がありますから(笑)、良い条件の木材を真っ先に大量に仕入れることができます。これほど多種多様な木材を所有している会社は、ほかにないと思いますよ」
感嘆が止まらない取材班をよそに、次はネックの加工現場へと案内してくれた。加工の1/3程度はNCルーターによる作業だが、微調整は人間が機械を操作して行なうという。
「NCルーターがあればすべてお任せという話もありますが、私はその考え方は間違いだと思っています。マシン、オペレーター、プログラムの3つが成り立たないと厳しい。精度の高いネックを作るために、NCルーターの刃もオペレーターが管理しており、研磨屋さんに刃を研磨してもらっています。長年NCルーターを扱うことで培われた技術、そして道具の手入れを念入りに行なうことで、完成度の高い製品が生まれるんです」
大工場のイメージとは裏腹に、加工の段階から繊細な手作業が多く、さながら“巨大な個人工房”という印象だ。さらに、良質な木材と高い技術力とともに、フジゲンの品質を高めているのが乾燥管理。蒸気乾燥や真空方式が一般的だが、フジゲンは世界的にも稀な“バイオ乾燥機”を導入。高さ4メートル、幅8メートルほどの巨大な木製の乾燥機で、下に敷いた石を電熱器で温めることでサウナ状態(40℃くらい)を作り出し、遠赤外線を利用して水分を押し出すように乾燥。真空方式よりも木材への負担が少なく、蒸気乾燥よりも短期間で乾燥させることが可能になるのだ!
「木材の乾燥管理は根幹に関わる部分なので、外部に任せる発想は我々の中にはありません。乾燥管理とひと言で言っても、例えばアメリカのハード・メイプルは東海岸のほうで採れますが、生息域が広いので、採る場所によって質が違うんですね。同じ木材でも蒸気の当てる時間や期間、判断は自社でやっています。素材がいいことは前提で、調理(加工)の腕も大事ですが、乾燥はその素材を調理する前の下ごしらえなんですよ」
ものづくりへの飽くなき追求は、木材や乾燥管理だけではない。スタッフを育てる教育訓練にも力を注いでいる。
「人には適正/不適正があるので、作業日報的なもので判断・指導します。担当する作業を変えると評価がまったく変わりますからね。全体的なスキルが高ければ高いほど、会社の総合力も上がる。それがものづくりの条件だと思います」
フジゲンと言えばネットでのオーダー・システムが爆発的な人気を誇っているが、それによって現代のニーズやトレンドをいち早く取り入れ、製品作りにフィードバックできる点も大きな強み。最後に今後の展望、そしてフジゲン・ギターの魅力について語ってくれた。
「お客様の声を聞いたアイディアをもとに若いスタッフが作り始めたモデルがあるので、今夏を目標に本格的に展開していけたらいいなと考えています。フジゲンのギターは本当に丈夫なんですよ。私は入社して約35年経ちます。昨年、そのお祝いにExpert FLをオーダーしまして、お気に入りで弾いています(笑)。これからも、皆さんが一生付き合える楽器を作っていきたいですね」
発売から10年を経ても鮮烈な輝きを放ち続けるフジゲンのフラッグシップ・モデル、EOS。いわゆるSTシェイプの売れ筋モデルで“E”はエキスパートの意味を持つ。ひとりですべてを作り上げるわけではなく、ボディ、ネック、塗装……それぞれの工程に存在するエキスパートが腕をふるった集大成、そんな意味合いもあるのだろう。モノ作りにおいて経験値は絶対的なものだが、各工程に精通した職人が作り上げることで楽器としての完成度を底上げしているのだ。ボディ・トップはフレイム・メイプル、バックはライト・ウェイト・アッシュ。ネックには剛性の高い柾目の1ピース・メイプルを使用。さらに、コンパウンド・ラディアスのネック・シェイプ、クリアな響きを生み出すサークル・フレッティング・システム、ジョイント部分にはラウンド・カットに加えてヒール・カッタウェイを採用。また、通常のネックよりも仕込み角を1ミリ程度下げたロー・セッティングにより、驚異的な弾き心地を実現しているのも人気の秘密だろう。2基のミニ・スイッチはダイレクト・スイッチとタップ・スイッチで、オールラウンドなプレイ・スタイルを可能にしている。
【Specifications】
●ボディ:フレイム・メイプル(トップ)、アッシュ(バック) ●ネック:メイプル・クォーター・スワン・Uシェイプ ●指板:ローズウッド ●フレット数:22 ●スケール:648mm ●ピックアップ:FGN OS-1n(フロント)、FGN OS-1c(センター)、FGN OS-1b(リア) ●コントロール:ボリューム、トーン、5ウェイ・スイッチ、ミニ・トリッキー・スイッチ×2 ●ブリッジ:ゴトー 510TS-FE1 ●ペグ:ゴトー SD91-05M マグナム・ロック ●カラー:EB(Emerald Blue)、VV(Vintage Violin) ●付属品:オリジナル・ハードケース、フレット・ガード ●価格:232,000円
本器はNeo Classicシリーズの流れにあるモデルで、ネックはコンパウンド・ラディアス、フレットにサークル・フレッティング・システムを施しています。これは、他にはない独自のスペックですね。あとはネックの“仕込み方”も特徴です。一般的なネックよりも1ミリ程度沈む感じで、私たちは“ロー・セッティング”と呼んでいるんですよ。基本的なテンション感、弾いた時のプレイアビリティに直結するセッティングで、ロー・セッティングによってひとつ上のゲージ(.010~.046)の弦を張っています。私たちの考えとしては、弦は太ければ太いほど音色的にも良くなると思っています。また、EOSは、すべてのモデルに良質な柾目の材を使用しています。柾目のほうが狂いにくいですし、剛性という点でも断然強いので、そういったマテリアルの面にもこだわっているんです。2基のミニ・スイッチはリア・ピックアップに対してのもので、レバー・スイッチ寄りのはボリュームやトーンといった回路を介さないダイレクト・スイッチ、その下がタップ・スイッチです。ダイレクト・スイッチは回路を通らないので、その分サウンドがリアルというか、イメージ的には10%ほど出力が高まった感じでハリのある音がします。クリーンの音が素直なので、エフェクターなどでいろいろな音作りをしていくのに最適だと思いますよ。Expert OSはカタログ・スペックもありますが、ウェブのオーダー・システムもすごく人気があるんですよ。制作期間は2ヵ月程度ですが、途中経過の写真を3~4回ほどお客様にお送りしますし、オーダー・ギャラリーでは過去の作例も紹介していますので、そういった部分でもお客様からの信頼もあると自負しています。(フジゲン 今福三郎)
フジゲン
〒398-0004
長野県大町市常盤3680-1
03-4590-7501(東京営業所)
http://mi.fujigen.co.jp/