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- 2024/11/25
Line 6 / HX Effects
ユーザーを拡大し続けるLine 6のHelixファミリーに、マルチ・エフェクターのHX Effectsが加わった。しかしながらこのHX Effectsは、アンプ・モデリングを搭載する既存のHelixファミリーとは異なり、明確にアンプ+ペダル・ボードのシステムを使用するユーザーを意識したデザインに仕上がっている。レビューしてみて感じたことは、このペダルは「ただ単にHelixのエフェクトを抜き出しただけではない」ということ。音色面はもちろんだが、システム面でも非常に使い勝手が良い。例えば現在、オーバードライブやディストーション、さらにはファズといった歪みペダルを何種類も切り替え、同時に空間系などをたくさん使って音作りをしている皆さんは、このHX Effectsの導入を検討したほうが良い。なぜなら、エフェクトの種類も豊富で、その配列も自由に設定でき、外部エフェクト・ループ端子もふたつ装備。さらにMIDIコマンドも送信可能……とくれば、ボード内のさまざまなエフェクトのマスター・コントローラーとして機能するからだ。サイズも大型の空間系ペダル2〜3台分のスペースがあれば収まってしまう。最新マルチ・エフェクター、その実力を探ってみよう。
HX Effectsは、ギター・プロセッサーのHelix、そしてHelix LTの流れを汲むフロア・タイプのマルチ・エフェクターで、Helixと同じオーディオ・エンジンを採用している。HX EffectsにはHelixに搭載されているすべてのエフェクトに加え、うれしいことにLine 6のMシリーズ、及びストンプボックス・モデラー・シリーズで人気を博したエフェクト群も追加されており、これらはLEGACYという名称でエフェクト選択画面で選択できる。つまり、コンパクトな274(W)mm × 200(D)mmのサイズに収められた膨大なエフェクト群を、手持ちのペダル・ボードに追加できるというわけだ。
パワフルなDSPを搭載しており、最大9種類のエフェクトが同時使用可能。つまり、タッチ・ワウ、ディレイを2台、フランジャー、コンプレッサー、ディストーション、ブースター……というようなこだわりのルーティングを簡単に作り出せる。さらにHXモデリングの技術により、非常にリアルなサウンドだけでなく、ビンテージ・エフェクト固有のサーキット・デザインやトランジスタなどの特性をエミュレートすることで、本物のペダルと同じような挙動をも忠実に再現している。
カスタムのインパルス・レスポンス(IR)をロードできるため、ユーザーがサウンドをカスタマイズすることも可能だ。さらに123dBものダイナミック・レンジを持っており、デジタルとは思えない驚異的な音の深みと低ノイズを実現している。各エフェクトのピュアでクオリティの高いサウンドは、プレイヤーの感性に働きかけ、追従性の高いプレイを引き出してくれるだろう。
内部ルーティングの自由度も非常に高い。シリーズ/パラレルの選択で、それぞれにステレオのシグナルを組み込める。ステレオ・ディレイとステレオ・リバーブを並列接続し、ミックスして出力……というアナログ機材では非常に大がかりなシステムも「簡単に」クリエイト可能だ。さらに内部ルーティング内の好きな場所に追加できる2系統の外部エフェクト・ループ端子(ステレオ接続可能)や、2系統のエクスプレッション・ペダルの入力端子も完備。エクスプレッションには、内部エフェクトのパラメーターの数値を記憶させて可変できる。しかも複数のパラメーターをアサインすることができるので、ディストーションのゲインを上げながらディレイのフィードバック量を増やし、コンプレッサーのレベルを下げて……というような、アナログ・ペダルだけでは再現できない「非現実的なコントロール」が行なえる。これにより、自分だけの効果的なエフェクト・パッチも作り出せるだろう。
加えて、アンプのスイッチングを含むコントロールも備えており、お手持ちのペダル・ボードやスタジオのシステムに組み込むことで、システムの「司令塔」=マスター・コントローラーとしても活躍するだろう。昨今では欠かせないMIDIコマンダーとしての役割ももちろんカバーしてくれる。
バイパス時にも楽器本来のトーンが損なわれることのないように、アナログ・バイパスを選択することが可能。これにより、プレイヤーはタッチ・レスポンスを損なわずにプレイすることができる。もちろん、複雑なルーティングやサウンドメイクの内容においてはリレー・バイパスを選択することをオススメする。また、Helixでお馴染みとなったキャパシティブタッチ・フット・スイッチを採用。カラーLEDリング、6つのLCDスクリブル・ストリップを装備した8基のフット・スイッチにより、直感的なエフェクトの選択/編集を実現。フット・スイッチに指先で軽くタッチするだけで、瞬時に目的のエフェクト・パラメーターを選択して編集することが可能である。さらに便利な機能として、ふたつのスイッチを同時にタッチするとエフェクトを入れ替えることができ、さらにフット・スイッチをタッチし続けると全パラメーターがLCDに表示され、ひと目で全体を確認できる。この辺りからもLine 6ならではのユーザビリティとこだわりを感じた。
ギタリストはもちろん、ベーシストにとってもこのうえなく使いやすく、狙った音を作りやすいペダルだ。そしてステレオ環境に強く、センド/リターンを含めた全入出力でInst/Lineのレベル切り替えが可能という点も見逃せない。ぜひ全プレイヤーに、このHX Effectsの素晴らしさをチェックしてみてほしい。
価格:オープン
村田善行(むらた・よしゆき)
ある時は楽器店に勤務し、またある時は楽器メーカーに勤務している。その傍らデジマートや専門誌にてライター業や製品デモンストレーションを行なう職業不明のファズマニア。国産〜海外製、ビンテージ〜ニュー・モデルを問わず、ギター、エフェクト、アンプに関する圧倒的な知識と経験に基づいた楽器・機材レビューの的確さは当代随一との評価が高い。覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。
【使用機材】
使用ギター:James Taylor Japan / STUDIO ELITE
使用ギター:Crews Maniac Sound / Aristoteles V2.
使用アンプ:Marshall / JVM210H
使用キャビネット:Marshall / 1960A
使用エフェクター:Blackberry JAM / Silverberry
使用エフェクター:SMOKY SIGNAL AUDIO / Tubeless
使用エクスプレッション・ペダル:Mission Engineering / EP1-L6