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- 2024/11/16
Fender / NAMM show 2018 New Model
NAMM2018ではAmerican Originalシリーズを筆頭に、限定のスペシャル・モデル、本格参入を告げるペダル・エフェクター、アコースティック・ギターの意欲シリーズなど、伝統を重んじつつも革新に富むさまざまな新製品をリリースしたフェンダー。ギター業界のリーディングカンパニーを束ねるCEOのアンディ・ムーニー氏は、2018年、どのように展開しようとしているのか? 新製品の話を中心にマーケット全体の動きについても聞いてみた。
──今回発表した製品の中で2018年のフェンダーとして、最も中心となる製品はどれだとお考えですか?
個人的にはEric Johnson Thinline Stratocasterがお気に入りなのですが、ひとつだけ選ぶとしたら、American Originalシリーズですね。エリックのギターは、エリックのファンのみならず、フェンダー・ファンにも新鮮な驚きを与えるインパクトのある製品に仕上がっていると思います。
──2018年にフェンダー・ビジネスを拡大していくために、チャレンジングな製品はどれになるでしょうか?
フェンダーは今年、6種類の革新的な高品位エフェクト・ペダルで、ペダル・マーケットという新しいマーケットに本格参入します。私たちがこのマーケットで良い結果を残せる自信はありますが、同時に、このマーケットの競争力の高さと、売れ筋製品の移ろいの早さももちろん理解していますので、計画的に事業展開を進めたいと考えています。
──American Originalをもって、フェンダーUSAシリーズのリニューアルが完成したように思います。この一連のリニューアルはユーザーにとってどのようなメリットがあるのでしょうか?
マーケットの成熟は、強力な製品力を有する新製品と、コンシューマーに強烈な印象を残すマーケティングのコンビネーションによってもたらされると信じています。私たちは2年前に、Eliteシリーズで、製品リニューアルがひとつの会社だけでなく、業界全体を活性化できる力を持つことができることを学びました。
──2018年を成功させるポイントはなんでしょうか?
業界をリードするパワフルな新製品の市場へのスマートな投入と、業界をリードするスマートなマーケティングが要になると思います。
──フェンダーは自社ECサイトを展開していますが、他社ECサイトとの棲み分けについて、どのように考えていますか? また、世界における日本のECサイトの現況をどう分析していますか?
フェンダーの自社サイトに来るお客さんの多くは、左利き用ギターなど、他のECサイトでは手に入りづらい製品を探し求めて来る傾向があるように思います。価格を特別安く設定して収益確保を促進するつもりはありません。ECサイトは日本だけでなく、世界各国で急速かつ確実に成長している事業であることは明白です。
──2018年にアーティスト・モデルが30周年を迎えましたが、同モデルに対する戦略はどのようなものでしょうか?
フェンダーは、70年にわたりアーティストたちと密接な関係を築き上げながら、ともに成長してきた歴史を誇ります。レオ・フェンダーはアーティストの存在を天使になぞらえ、私たちは天使に飛ぶための翼を与えるのが使命だと強く感じていました。今日でも、私たちは彼の理念を受け継いでおり、会社の使命だと考えています。
──コンシューマー・エレクトロニクス製品(イヤフォン、Bluetoothスピーカーなど)においてフェンダーは後発組ですが、一番の競合は? また、さまざまなブランドがひしめくこの市場で、フェンダーはどのようなポジションを狙っているのでしょうか?
IEM/ヘッドフォン市場は、数十億ドルの利益を生み出すポテンシャルのあるマーケットで、非常に強い成長を続けています。この分野において、BeatsやBoseと言った企業に対抗するつもりはありませんが、革新的な技術を注ぎ込んだパフォーマンス性の高い製品群を開発していく過程で手に入れたノウハウを、より幅広いコンシューマー向け製品に適用していくことで、マーケットシェアの一部を勝ち取ることのできる可能性は感じています。
──カリフォルニア・シリーズはフェンダー・ヘッドでカラフル、ボディ・シェイプも女性にも向いていそうな製品です。以前もSonoranなどがありましたが、クオリティは上がっているように思います。プライスも含め、このセグメントの製品を開発するに至った経緯を教えてください。
まぎれもないフェンダーのアイデンティティを受け継いでいるアコースティック製品という意味でも、私はCaliforniaシリーズに対して並々ならぬ愛情と可能性を感じています。Californiaシリーズのユニークなヘッドストック・シェイプは、レオ・フェンダーの“片側にチューニング・マシンが全部ついているほうが、機能面で合理的である”という発想にもとづいて採用しています。またフェンダーは、昔から、鮮明なカラー・オプションを提供するブランドとしても有名です。このふたつの要素は、ウクレレを含む今後のアコースティック製品にも、多く登場してくることでしょう。
──カスタムショップについて、固定ファンは多くいると思いますが、今後、新規顧客の獲得をターゲットにするのでしょうか? それとも既存ユーザー層を掘り下げていくのでしょうか?
カスタムショップ製品のユニークさは、ひと言で括ることのできない、多面的な要素によって成り立っています。そこに惹かれるユーザーがいる限り、カスタムショップはそのユニークさを今後も維持していくことでしょう。ユニークさを維持するひとつの有効方法は、製造本数に制限を設けることだと考えています。
──ペダルについて、フェンダーとしては初めて本格的に力を入れ始めた印象ですが、これまでに出していたペダルと決定的に違うところはなんでしょうか? ゲームチェンジャーとなるポイントがあれば教えてください。
NAMMで発表する6製品は、いずれも革新的な技術が投入されており、パフォーマンス性も優れています。現代のアーティストたちが音作りをするにあたって、コンパクト・ペダルは最も基本的なツールだと言えます。今後もフェンダーは6ヵ月ごとに、アーティスト・モデルを含め、新しいペダルを投入していきます。私たちはこのマーケットに本格的に参入するにあたり、長期的な戦略をもって、計画的にマーケットを拡大していきたいと考えています。
──今度はアンプについて。Rumble Stage/Studioは昨年発売されたMustang GTなどの新時代のアンプ・シリーズのベース版ですが、こうしたデジタルへの挑戦は今後も続くのでしょうか? デジタルに力を入れている理由も教えてください。
私たちは今後もデジタル・アンプの開発研究に対して、大幅なリソースを投入していきます。次世代Rumbleアンプを世界で有数のトップ・ベーシストたちに触ってもらったところ、全員がその柔軟性と可能性に驚愕し、新しいサウンドを作り上げていくためのインターフェイス設計にもすぐ慣れました。デジタル・テクノロジーは、今日のアーティストたちが抵抗感なく、新しい次元で音楽を奏でるために有益なツールとして認識されており、私たちは彼らのために、より優れたデジタル製品を開発していきたいと考えています。
──アクセサリーについてもたくさん新製品がありますが、どのような戦略で市場を広げていくのでしょうか。
私たちが開発する製品は、何かしらのレベルで革新性を追求しています。どんなに小さなアクセサリーでも、私たちはギターやアンプと同等の真剣さと熱意をもって、開発にあたっています。
──ペダルやアクセサリーのみならず、コンシューマー・エレクトロニクス製品まで充実させていることについて、あたかも楽器プレイヤーのライフスタイルを丸ごと“デザイン”しよう、あるいはギター/ベースを中心とした“音楽環境”を創造しようという意思を感じられます。そこには、どんな理念があるのでしょうか?
ギターの年間売上の約45%が、初心者による購入であることが調査でわかっています。しかし残念なことに、その約90%が最初の1年でギターを諦めてしまいます。しかし残りの10%は、ギター・アディクトとして生涯をかけてプレイ・スキルを向上させつつ、コレクターとなります。フェンダーは常にパフォーミング・アーティストたちをサポートすることに重きを置いてきましたが、現在では、同じ熱意をもって、ビギナーが最初の1年を乗り切れるよう、サポートしていく施策を多く打ち立てています。ビギナーが最初の1年を乗り切れたら、市場を倍の大きさにまで成長させることができるのです。
──アンディさんがCEOに就任したのは2015年ですが、これまでにギター・マーケットは大きく変わったことがありますか? またフェンダーが変えてきたことがありますか?
ギター・マーケットは非常に健全な状態と言えます。2018年内に、おおよそ1億5千万人が何かしらの音楽ストリーミング・サービスに登録することが見込まれており、ライブを見に行く来場者数もかつてない勢いで増しています。音楽リスナーが聴いている楽曲や、観に行っているライブの大半は、ギター・ミュージックです。統計に表われるすべての数字が、ギター・マーケットの健康的な状態を示しています。フェンダーは、新製品の発表ペースを促進することや、特にソーシャルメディアにおけるマーケティング活動に投資することで、業界の成長を牽引してきたと思います。Fender Play(※2018年1月現在、英語のみ対応)といったデジタル学習プログラムの認知を広げることで、さらなる市場の成長を見込んでいます。
──2018年発表のAmerican Origialシリーズも、実にセンスフルなビジュアル・イメージになっていると思います。2017年まではもちろんのこと、洗練されたデザイン広告を用いた施策は非常に効果的だったと思いますが、2018年以降はどんなメディア戦略を展開する予定ですか?
私たちは過去2年間、Facebook、YouTube、Instagram、Snapchatといったソーシャル・メディアのグローバル・プラットフォームの活用に注力し、マーケティング活動全体のコストに対して倍以上の投資をしてきました。またデジタル・アセットのディストリビューションにも多大な時間と労力を投資し、ディーラー・ネットワークにおけるコンバージョン・レートを改善してまいりました。今後2年間も、マーケティング活動に対してさらなる投資をしていく予定です。
(2018年1月談)