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  • 遊び心溢れるルックスと本格的なサウンドが同居したコンプ&ファズ・ペダル

6 Degrees FX / Famicomp

6 Degrees FX / Famicomp

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丁寧に組み上げられたPTP基板と上質なサウンドで
玄人も唸らせるコンプレッサー&ファズ・ペダル

 Famicompという名称に、そこはかとなくファニーな印象を持って(1970年代生まれなら仕方ないだろう)撮影に挑んでしまったが、それはとんでもない間違いだった。この6 Degrees FXというブランドはポイント・トゥ・ポイント(以下PTP)で組まれた高品質なアセンブリーを売りにしているブランドで、非常に美しい基板構成が特徴だ。PTPのメリットは「実音がしっかりと聴こえ、なおかつ不要なハーモニクスを生み出さない」こと。実音がモノをいうコンプレッサーに関しては、まさにうってつけの作りだと言えるだろう。ただし、PTPは気をつけないと「飾りっ気のない音色」になることも多い。そういった意味では、非常にバランスの良いサウンドを生み出しているのが好印象。

6 Degrees FX / Famicomp

 このペダルはコンプレッサーをメインとするが、その名称とロゴが象徴するように8-bit風のファズ・サウンドが売りでもある。しかし、コンプレッサーのコントロールが豊富(表面上のコントロール以外に内部にも多数の半固定抵抗を収めている)であることに対して、8-bit風ファズのコントロールは基本的にLEVELだけというシンプルなもの。これは「鶏が先か、卵が先か」的に「このペダルの主軸はどこにある?」という疑問を生むが、今回はなるべくバランス良く双方の機能をレビューしてみる。しかし、やはり特筆すべきはこのコンプレッサー・セクションだろう。

 ICを回路に活用したコンプレッサーは多数あれど、PTPで組み上げた「超アナログ」なコンプレッサーはそれほど多く存在しない。本来、大きく音色に変化を与えずにサウンドをコントロールするコンプレッサーは「上質」が前提になるが、「良い」と思えるコンプレッサー・ペダルは意外と少ない。音色がチープな訳ではなく、コンプレッション効果が派手すぎ&オーディオ・ライクすぎてしまい、性能は良いが、おもしろみがないと感じてしまうモデルも多いだろう。さらにオペアンプの質感が前面に出てくるので、それ次第で音色が決まってしまうペダルも多い。Famicompではオペアンプに缶タイプを採用しているのも特徴で、一般的な黒っぽいフォームに収まったタイプに比べると質感がタイトな印象。オーバードライブなどではこのオペアンプを交換して音色に変化を持たせる風潮があるが、コンプに缶タイプとくればオールドのペダル・コンプを連想させる。この辺りのこだわりも見逃せない。

楽器の音色を損なわないコンプレッサーと
モダン・ミュージックにもバッチリな8-bit風ファズ

 このFamicompは、そういった意味ではかなり上質なコンプレッサーだと思う。その質感はラック・タイプのコンプレッサー(=スタジオ・クオリティ)に近いサウンドで、とにかく楽器の音色を損なわない。深くコンプレッションをかけても音が「引っ込まない」サウンドは貴重。加えて、PTPにありがちなグラッシーな倍音が損なわれることもない。「芯の音」にこだわるとオイシイ倍音が失われてしまう。コンプの圧縮具合やその質感も非常に重要だが、このペダルはそのバランスが良いと思う。ギタリストだけでなく、ベーシストや、DTMでちょっと良い質感のモノラル・コンプをドラムにかけたい場合などにも、ぜひ試してほしいと感じた。なんとなくAOR的解釈で演奏したが、昨今のJ-POPサウンドにもよく合うだろう。

 Famicompの名前に表わされる8-bit風サウンド=ファズ・サウンドも、なかなかおもしろい。これは演奏者の技量(と楽器のピックアップの出力)に依存する点もあるが、独特のゲート感があるファズ・サウンドも興味深い。ジャパニーズ・ビンテージ・ファズのジリジリ・ブリブリした音色にも近いが、どちらかと言えばもっとゲーティでシンセ的なファズ・サウンド。スタッカート気味でプレイすると独特の効果が得られるが、これはシンセ・ポップや人力テクノなどのモダン・ミュージックにも生かせるサウンドだ。個人的にはストラト系のギターで普通にファズとして使ってもおもしろいと思う。また、このペダルの前段にバッファを配置すると音色が変化する。少しトレブルが強調され、ワイルドでジャンクなサウンドも得られる。ペダル・スイッチャーやルーティング・システムに組み込んでみてもおもしろいだろう。

 かわいらしいルックスとは裏腹に、かなりのこだわりを感じる6 Degrees FXのペダル。中でも「キワモノ?」と感じられるこのFamicompに確かな品質を感じた。同社のほかのモデルと同じく、このコンプ&ファズも明確な音色の目的を持って作られているのだろう。ファズ・モードはもちろん、このコンプ・サウンドはかなり“良い”。

PTPで制作された芸術品のような基板

基板内部にはエフェクトのかかりを調節するトリムが搭載されている

ファズは左のスイッチでオン/オフを操作する。オンにした場合は音量を調節するLEVELのみが効く

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製品情報

6 Degrees FX / Famicomp

価格:¥28,800 (税別)

【スペック】
●コントロール:レベル、コンプレッサー、サステイン ●入出力端子:インプット、アウトプット ●電源:9V電池、9Vアダプター ●重量:約540g ●外形寸法:125(W)×68(D)×98(H)mm
【問い合わせ】
池部楽器店 https://www.ikebe-gakki.com/ec/pro/disp/1/507977
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プロフィール

村田善行(むらた・よしゆき)
ある時は楽器店に勤務し、またある時は楽器メーカーに勤務している。その傍らデジマートや専門誌にてライター業や製品デモンストレーションを行なう職業不明のファズマニア。国産〜海外製、ビンテージ〜ニュー・モデルを問わず、ギター、エフェクト、アンプに関する圧倒的な知識と経験に基づいた楽器・機材レビューの的確さは当代随一との評価が高い。覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。

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