AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
国産ジャズ・ギター
1月23日に発売された『Jazz Guitar Gear Vol.1』は、“ジャズ・ギター”の機材情報に特化したムック。創刊号となる本号の特集は、海外からの評価も高く、近年ますます活況を呈している国産ジャズ・ギターだ。注目の4モデルをピックアップし、トップ・ギタリスト3人に試奏してもらった。スタイルのまったく違う3人が同じギターにどうアプローチしたのか。ぜひ動画でお楽しみいただきたい。
【Specifications】
Body:Plywood(Hard Maple/Spruce)/Body Width:16”/Body Depth:3-1/3”/Scale Length:24-3/4”/Neck:African Mahogany 1Piece/Fingerboard:Santos Rosewood/Bridge ASSY:Santos Rosewood(Custom Made)/Pickup:Original Alnico III Humbucker/Control Pots:CTS/Output Jack:Switchcraft/Price:¥148,000(税別)
問い合わせ:ウォーキン渋谷駅前店 3F TEL:03-5467-1625
東京・渋谷に店舗を構え、日本を代表するアーチトップ・ギター専門店として知られるウォーキンが、ハイクオリティな品質(100%国内生産)ながらもリーズナブルな価格設定を実現し、世に送り出したのがArchtop Tributeブランド。その最初のモデルは2010年にリリースされたAT101で、ジャズ・ギターの伝統的なモデル“イチナナゴ”をモチーフとしている。そして、同シリーズの最新モデルにあたるのが、このAT105だ。しっかりとしたグリップのネックは1ピースのアフリカン・マホガニーで、そこに組み合わされた指板はしっとりとした褐色が高級感を醸し出すサントス・ローズウッド。ビンテージ・スタイルを継承しつつも、全域で快適な出音が得られるよう形状加工されたブリッジ・アッセンブリーはウォーキン工房によるオリジナル製品だ。ハムバッカーによるウォームなサウンドは、アコースティックの鳴りも十分に感じさせてくれる王道のジャズ・トーン。カスタム・ラインでのフレッティングののち、ウォーキン工房にて1本ずつ万全のセットアップを施しており、癖のないその演奏性は初心者へのハードルを極限まで下げている。
このブランドのギターを弾くと、実力以上に上手くなった気分になる
- 小沼ようすけ
ギターとベースのデュオのような小さい編成で、バラードを弾きたくなる
- 岡安芳明
ジャズのギグをギター・トリオで、なんていうシチュエーションには最適
- 矢堀孝一
【Specifications】
Body:Hard Maple Top & Honduras Mahogany Back/Neck:Madagascar Rosewood/Fingerboard:Andes Rosewood/Pickup:WIZZ Premium Clone P.A.F.(Front Tap)/Peg:Sperzel 3×3/Tremolo Unit:Wilkinson VS100N/Capacitor:1950s Sprague Bumblebee/Wiring Material:1950s W.E.&G.E./Fret:Jescar #47095/Control:1Volume(Smooth Taper),1Tone(Top),Toggle Switch/Finish:Gross Oil Finish(Body Side & Back),Nitrocellulose Lacquer(Body Top),Matt Finish(Neck)/Price:Open
問い合わせ:Premium Guitar Square TEL:0120-444-342
2016年の楽器フェア登場以来、プロ/アマ問わず数多くのギタリストから絶賛されているのがKigoshi Guitars。家具職人として活動しながらも、神奈川県小田原市でギター・ショップ“Premium Guitar Square”を構える木越孝之氏による完全ハンドメイドのブランドだ。これまでソリッド・モデルであるKJシリーズやKFシリーズとセミホロウのKTシリーズで知られていたが、ここで紹介するのはセミホロウのKTシリーズの進化系KT-001AJ。従来のKT-001にトレモロ・ユニットを搭載した上位機種である。材の選定は、氏のこだわりと経験が活かされたタッピングを経て、それらを組み合わせていく製造方法がとられている。アーミング時の弦の張力を考慮したヘッドの角度(10度)をはじめ、ナットにはTUSQを、ペグにはシュパーゼルを採用することにより、チューニングの狂いを極力抑えることに成功。塗装は極薄のラッカーとオイルのコンビネーションによるグロス仕上げで、薄い塗膜のため材の鳴りが最大限活きる。そのためフォルムからの想像を超えるアコースティックな響きも飛び出す。王道のジャズからハードなフュージョン的なプレイにも完璧に対応できる、新世代の1本だ。
アコースティックな鳴りを活かして、ソロ・ギターなんかに使いたい
- 小沼ようすけ
想像していたほどロック的な音ではなく、“箱モノ”に近いという印象
- 岡安芳明
現代のギタリストに求められる多様なシチュエーションにバッチリ対応
- 矢堀孝一
【Specifications】
Body Structure:Full Hollow/Top:Japanese Kiso Hinoki/Brace: Acoustic-X/Side:Flame Maple/Back:Quilted Maple(Master Grade)/Scale:25" -22F/Fingerboard:African Blackwood with Yoshino Cedar/Neck:Flame Maple 1P/Head Plate:Yoshino Cedar/Color:Natural/Peg:Gotoh 510/Pickup:Kent Armstrong PAF-O(Floating)/Pickguard:Yoshino Cedar with African Blackwood/Bridge Base:African Blackwood/Tailpiece:Yoshino Cedar with African Blackwood/Control:1Volume,1Tone/Price:¥1,000,000~1,300,000(税別)
問い合わせ:Blue Guitars TEL:076-433-0942
日本一の金物の町と言われる兵庫県三木市。当地にて完全ハンドメイドでギターを製作しているのが、“若き天才”と称される西垣祐希氏だ(2018年よりStyle-N Nishgaki GuitarsからNishgaki Guitarsへと改名)。日本の美を取り込んだ製品はまさに世界に誇れる逸品であり、彼の製作活動は日本文化の一端を担うと言っても過言ではない。今回紹介するのは、同ブランドのフラッグシップArcus Style-N。開発の初期段階から小沼ようすけ氏の意見を取り入れ、何年にも渡る試行錯誤の末に完成した珠玉のモデルだ。材に特徴があり、ボディには木曽ひのき、バインディングやピックガードには吉野杉が採用されている。特に木曽ひのきは、シダー系の柔らかさと繊細さ、スプルース系のブライトさと豊かな鳴りの両方が実現した稀有な材として貴重だ。ピックアップはフローティングで搭載され、そのトップの鳴りが最大限に活かされた構造となっている。手にしたときのフィット感、操作性、そして工芸品のような豪華な仕上がりを鑑みれば、高めの価格設定にも納得できる。本個体は、富山から全国へ新しいスタイルを提案している楽器店Blue Guitarsとのタッグのもと製作されたワンオフである。
ギターとともに自分の音楽を創造していこうという人にぜひ使って欲しい
-小沼ようすけ
思わずブルースを奏でたくなりました。そんな気持ちにさせてくれます
-岡安芳明
音から得たインスピレーションを広げていく感じで音楽ができ上がる
-矢堀孝一
【Specifications】
Body:17"/Top:Maple Plywood/Back&Side:Maple Plywood/Neck:Mahogany/Fingerboard:Rosewood(305R)/Bridge:Rosewood/Scale:645mm
Fret:Medium Jumbo/Nut Width:43mm/Tuners:Gotoh SD90-05MA/Pickup:P-90Type/Control:1Volume,1Tone/Pot:CTS 500KA/Capacitor:Orange Drop 0.022μF/Jack:Switchcraft/Finish:All Lacquer Open Pore/Price:¥148,000前後(仕様により若干の変更あり)
問い合わせ:Guitar Shop TANTAN(株式会社TR) TEL:047-144-6802
千葉県柏市にお店のあるギター・ショップ・タンタン(株式会社TR)。同店はジプシー・スウィングで活用されるセルマー・ギターのレプリカの製造や販売でも知られるが、満を持して完成させたのが、1940~1950年代を彷彿させるフルアコ、T50-17(17インチ・ボディ)とT50-16(16インチ・ボディ)の2本だ。ともにノン・カッタウェイで1ピックアップというビンテージ感の漂うモデル。そのフォルムのみならず、サンバースト・フィニッシュの色味と抜け感や、サイド&バックのブラウンの色合い、さらにはスピード・ノブにもエイジング加工が施されるなど、古き良きジャズ・ギターへのトリビュート魂に敬服。ネックは細すぎず太すぎず、またミディアム・ジャンボと呼ばれるフレットをチョイスしたことで、抜群の操作性を実現しつつ、音の太さ・芯の強さが表現できるようになっている。今回、プロのギタリストたちに試奏してもらったのはT50-17。グラント・グリーンやチャーリー・クリスチャンといったギタリストをイメージさせつつも、ギター本来の箱鳴りやアコースティックな響きが存分に活かされ、しっかりと現代的なニーズにも応えてくれる1本だ。
ピッキングの仕方が分かっていればいるほど、いい音が出せる
- 小沼ようすけ
王道ジャズ・ギターが好きな人には最初の1本としても最適
- 岡安芳明
トップの鳴りを活かすためトーンを上げめにして弾くと、さらに良い音がする
- 矢堀孝一
ジャズ・プレイヤーのための機材情報マガジン『Jazz Guitar Gear Vol.1』では、試奏者によるレビューや、企画者/製作者によるインタビューも掲載され、さらに多角的に4モデルに迫っている。
また、カート・ローゼンウィンケル、ジョナサン・クライスバーグ、ラーゲ・ルンドなど現代のジャズを代表する6名のギタリストにマニアックな質問をぶつけた取り下ろしインタビューや、フルアコに太い弦を張る際のメインテナンス方法、トップ・プロのライブ機材アンケート、アンプやエフェクターの使い方レクチャーなど、ジャズを演奏するギタリストが知りたい情報が満載だ!
『Jazz Guitar Gear Vol.1』では、さらにDV MARK、Markacoustic、Gibsonの最新モデルの試奏動画も用意しています。“保守的”に見えるジャズ・ギターも、実は最新の技術やコンセプトが導入され、新しい機材が続々と誕生しています。こちらもぜひお楽しみください!
価格:¥148,000 (税別)
価格:オープン
価格:¥1,300,000 (税別)
価格:¥148,000
小沼ようすけ
2001年に『nu jazz』でデビュー。2004年のリチャード・ボナ(b)とのレコーディングを機に、独自の方法論による指弾きスタイルを確立。ここ数年はワールド・ミュージック要素を自分の音楽に採り入れながら、世界を繋ぐ創作活動を続ける。2010年、フレンチ・カリビアンのミュージシャンとレコーディングした『Jam Ka』発売。2016年、Flyway LABELを設立し、第一弾作品として『Jam Ka Deux』をリリース。
岡安芳明
1962年7月12日生まれ、東京都出身。宮之上貴昭氏にジャズ・ギターを師事し、23歳でプロ入り。1992年、今津雅仁の『STICKY』で初レコーディング。1993年、初リーダー・アルバム『Midnight Groove』を発表。以後、数々のリーダー・アルバムを発表し、不動の人気を得る。
矢堀孝一
FRAGILEで事実上のデビュー、CD、DVDを併せて11枚リリース。ソロ活動の他fazjazz.jp、大高清美、向谷実など様々なプロジェクトで活動。また『すぐ弾けるジャズ・ギター』『ジャズ・ギターの常套句』『ハイブリッド・ジャズ・ギター完全マニュアル』『アウトフレーズの極意』など多数の教則プロダクツを制作・監修。2015年に東京赤坂でジャズ・クラブVirtuoso AKASAKAを開業。