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- 2024/11/16
YAMAHA / HPH-W300、EPH-W53、EPH-200
リスニング、プロ用のモニター等、ヘッドフォン/イヤフォンで数々のベスト・セラーを生み出してきたヤマハ。これまで多くの楽器や音響機器を開発してきた同社のノウハウを結集し生み出された製品たちは、常にプレーヤーやリスナーに寄り添ってきた。それゆえ、これだけ多くのヘッドフォン/イヤフォンが溢れていても、長年ヤマハの製品を愛用し続けるリスナーが多くいる。今回、そんな同社が新たに発表したのが、有線ではハイレゾも楽しめるBluetoothヘッドフォンHPH-W300、評価の高いEPH-100の上位機種となるハイレゾ音源再生対応イヤフォンEPH-200、装着感にこだわったワイヤレス・イヤフォンのEPH-W53だ。その3機種を今回、今年6月に最新アルバム『Clásico[クラシコ]』を、11月には弊社よりDVD付き曲集『沖仁フラメンコ・スタイル・ソロ・ギター』をリリースした、人気フラメンコ・ギタリストの沖仁に試していただきレビューしてもらった。
「心地よく音楽を聴き続けられることと、意識すると楽器一つ一つの質感が感じ取れること」を目指し、電気的なイコライジングに頼らない徹底したアコースティック・チューニングが施された、ワイヤレス・ヘッドフォンのHPH-W300。Bluetoothを搭載しながら、有線で接続した際には再生周波数帯域が20Hz〜40kHzというハイレゾ音源再生に対応した、ハイブリットな密閉ダイナミック型のヘッドフォンだ。
ハイレゾ再生時の音質は40mmドライバーから生み出される、色付けの少ないナチュラルな再生音を実現。この音質はデュアル・チャンバー構造によるL/Rの音質差を排除することなどからも生み出されているという。また、高音質なaptX™コーデックに対応したBluetooth接続時でも、有線時との音の違いが少なくなるように工夫されている。デザイン・機能面では、長時間の使用でも快適に装着できるように、ハウジング部のスイベル機構を人の耳の角度に合わせて15度傾け、イヤーパッドには低反発クッションや通気性の良いファブリックを使うなどの工夫がされている。さらに右側のハウジング部にはタッチセンサーコントロールが内蔵され、Bluetooth接続の際に、スワイプやタップするだけで、再生や一時停止、早送りや巻き戻し、音量のコントロール、さらにはスマートフォンでの通話にも対応する。
シンプルながら高級感の溢れるデザイン、長時間着けていても疲れない構造の工夫は、さすが日本のメーカーといったところだろう。音質面も含め、長時間のリスニングにも向いたヘッドフォンと言えそうだ。
【HPH-W300をamazonで購入】
【ヤマハ製品情報ページ】
──HPH-W300を試聴した印象を教えていただけますか?
音が極上でラグジュアリー感がありながらも、心地良い椅子に腰掛けて暖かな部屋で聴いているような、リラックスできる音質ですね。だから、音にすごく親密さを感じました。それに言い過ぎかもしれないですが、素晴らしいマスタリング・エンジニアが音質を調整して、音楽を最終的に一歩高いステージに上げてくれるのと同じようなことを、このヘッドフォンが行なってくれているように思えました。何かを損なうことなく、音楽を確実にランクアップして聴かせてくれる印象でした。
──有線時にはハイレゾ音源再生にも対応しますが、Bluetooth接続では音質の違いを感じましたか?
両方で試しましたが、大きく変化があるようには感じませんでした。どちらも品の良い音で楽しめます。ヤマハのギターも愛用していますが、いつもニュートラルというか、メーカーの押し付け感がない音作りが一貫していますね。だからヤマハの音作りや製品が好きで、家にはヤマハ製品が溢れています(笑)。
──デザインに関しては?
ヤマハのデザインは、時代に流されない良さがあると思います。だから自宅のオーディオ・システムもヤマハを使っています。音質もですが、デザインが好きで買っているという側面もあります。ヘッドフォンやイヤフォンも、奇をてらった感じのないデザインが、すごくいいと思いますね。長く愛用したくなりますよ。
──装着感に関してはいかがですか?
変な言い方かもしれないですが、電車での移動中には、音楽を聴いていなくてもかけていたい感じです(笑)。本当に疲れることがないですし、すごく心地良いと思います。左右のバランスも良くて、違和感がないですね。
──タッチセンサーの操作性に関しては?
最初はちょっと戸惑うかもしれないですが、慣れるとすごく便利です。音量のコントロールだけではなく、早送りも巻き戻しもできますし。
新開発したスタビライザーを自分の耳に合ったサイズに変更することで、より高い装着感を得ることができるBluetooth対応の密閉ダイナミック型ワイヤレス・イヤフォン。スタビライザーは「装着しやすく、耳から外れにくい点を考慮し、形状や長さを数え切れないほど3Dプリントで試作と装着テストを重ねた」とのことで、かなりの試行錯誤を経て開発されている。それだけに抜群の装着感が得られる。
また本体はかなり軽量に仕上げられているため、散歩や通勤、または野外でのアクティビティの際にも役立ってくれそうだ。ハウジングを繋ぐケーブルには、絡みにくい素材を用い、表面にはセレーション加工も施されているため、衣服などに触れた時のタッチ・ノイズの発生も抑えている。もちろん音質にもこだわり、厳選した高精度の6.4mm小口径ドライバーを採用、歪みが少なくレスポンスの良い自然なサウンドを再生してくれる。長時間、音楽を聴いていても聴き疲れしない優しい再生音だ。
本体の充電時間は約2時間で、約7時間の連続再生もでき、アクティブな環境で音楽を楽しみたいユーザーには、3機種の中では最もお薦めしたいモデルと言える。
【EPH-W53をamazonで購入】
【ヤマハ製品情報ページ】
──EPH-W53の印象はいかがでしょうか?
まずデザインがカッコいいですよね。それに、ひと昔前のワイヤードのイヤフォンよりも最近のBluetoothの方が音は良いなって思いました。すごく違和感なく、自然な音で聴けましたね。それにシンプルで軽量なので、それも魅力だと思いました。例えばランニングや釣りをしている時などにも適しそうですね。僕は、必ずしも良い音だけを求めているタイプでもないので、状況に合わせてイヤフォンも使い分けたいと思っています。
──たしかにイヤフォンだと、用途によって使い分けしやすいですよね。
それが一番の贅沢だと思います。ヘッドフォン/イヤフォンみたいなポータブル機器は、スピーカーで高音質を楽しむよりもコストをかけずに、良い音を楽しめるという点で、かなりお得なアプローチですよね。音楽好きであれば、ポータブル機器にこだわるのはありだと思います。なのでこのEPH-W53も含め、用途に合わせて何個か持ちたいと思いました。
──ちなみにスタビライザーに関してはいかがでしたか?
僕の耳にはミドル・サイズが合っていましたが、これを自分に合ったサイズに変えると、よりしっかりと耳に固定される感じがありました。フィット感がとても良いので、散歩の時にも良さそうです。これはすごいアイデアだと思いますよ。
高音質ながらコストパフォーマンスが高く、多くのユーザーから絶賛され、ロングセラー・モデルとなっているヤマハEPH-100。今回その上位機種として誕生したのが、EPH-100の長所を受け継ぎながら、さらに音質を向上させ、ハイレゾ音源再生にも対応したカナル型密閉ダイナミック・イヤフォン、EPH-200だ。音の繊細さ、レスポンスの良さをEPH-100から受け継ぐべく、ドライバーやハウジングの基本的な構成や材料に同じものが使われている。ただし超小型の6mmドライバーは、新たにカスタマイズが施され、再生周波数帯は20Hz〜40kHzまでカバー。さらに今回、よりハイレゾ音源の再生音を高めるため「筐体のサイズ、材料・構成などを含めて、複数種類の組み合わせを試作し検討した」という。その結果もあり、より繊細な音場の表現が可能となっており、沖もその再生音にかなり衝撃を受けたようだ。
ケーブルが着脱可能なMMCXタイプに変更されている点も大きなポイントだ。万一断線した際、簡単に交換できる点も魅力と言える。また90度単位でケーブルの向きを変えられるため、3種類の装着スタイルから自分に合ったスタイルを選ぶこともできる。イヤフォンで、ハイレゾ音源など高音質な音楽再生を楽しみたいユーザーは、このモデルを選択するのがベストだ。
【EPH-200をamazonで購入】
【ヤマハ製品情報ページ】
──EPH-200の印象を教えていただけますか?
これまで使っていたイヤフォンとは、別物と言えるくらいでしたね。音質的な驚きという意味では、このイヤフォンが一番でした。音のリッチさがヘッドフォンみたいですが、ヘッドフォンほど密閉された箱鳴り感がなく自然で、それがすごく印象的でしたね。音質はクリアーで、音の彫りが深く、音源の陰影がしっかりと聴きとれました。普段使いでは贅沢なぐらいの音質だと思います。昔からイヤフォンの音質というのは、軽自動車に乗っているような感覚がありましたが、このイヤフォンで聴くと、まるで大型車に乗っているような余裕を感じましたね。
──装着感はいかがでしたか?
カナル型のイヤフォンは、鼓膜が押されたり引っ張れるような密閉感がちょっと苦手で、かと言って緩すぎるのもダメですし。このイヤフォンはイヤーピースのサイズが豊富なこともそうですが、僕の耳にすごくフィットする感覚がありました。装着感に違和感がなかったというか。
──ハイレゾ音源はOPPO HA-2SE ポータブル・ヘッドフォン・アンプとiPhoneの組み合わせで聴いたのですか?
そうです。僕の楽曲ではなかったのですが、PCMもDSDも聴きました。これまでとは、すごく違ったリスニング体験でした。福田進一さんというギタリストとバイオリンのデュオを聴いたのですが、もう鼻血が出そうな音だなって。本当にノックアウトされました(笑)。
──特に弦楽器は倍音が複雑に出る楽器だと思いますので、ハイレゾのアドバンテージがよくわかると思います。
そうですね。ハイレゾは、上に伸びつつ音の密度が高いと感じるので、その両方が同時にレベル・アップしている感じですよね。それが、このイヤフォンだとよくわかりました。
──沖さんは、今回のヘッドフォン/イヤフォンと出会うことで、ハイレゾ再生に目覚めたのでしょうか?
そうです。ハイレゾがすごく気になっていたタイミングで取材のオファーをいただいたので、とても嬉しかったですね。それに、ハイレゾ音源を聴く最初のヘッドフォン/イヤフォンがヤマハだったから、もう鼻血が出そうなくらい衝撃を受けました(笑)。
──確かBluetoothのイヤフォンもちょうど探されていたとか。
そうなんです。だから今回の製品は僕のニーズにぴったりでしたね。これまで使っていたのもBluetoothイヤフォンだったのですが、EPH-W53を試してみたところ、もうその音からして違っていて驚きました。
──ちなみにどんな音楽を聴きましたか?
BIGYUKIの新譜のティーザーをiTunesからダウンロードして、Bluetoothで聴きました。すごくピントの合っている音で、リアルでしたね。ハイレゾ音源はECMレコードからリリースされている、ギャヴィン・ブライアーズが教会でレコーディングした作品をEPH-200で聴きました。よくハイレゾは、奥行きが聴こえるとか、音の立体感があるとか言われますが、EPH-100と比べてより高さを感じ驚きました。録音された場所の天井が高いんだなってことまで伝わってきたんです。これは初めての体験でした。
──沖さんがヘッドフォンやイヤフォンに求めることは、どのようなことですか?
仕事だと客観的にシビアに音を聴く必要がありますが、音楽を聴く時は楽しみたいので、それぞれ機器の良さと、自分のリスニング環境を合わせていければ、それが最高だと僕は思いますね。今回のヘッドフォン/イヤフォンは、それぞれに良さがあって、全部揃えても損はないと感じました。
──今回の出会いで、沖さんの音楽の楽しみ方がより広がったということですね。
そう感じています。現代の最高峰の音が手軽に聴けるということが、すごいなと思いましたね。プレーヤーとしても、色んな機器で聴いている人がいるんだなってことを、改めて感じることもできましたし。僕個人は、中学生の頃は音質なんて、どうでも良かったですし、ラジオから流れてくる音楽を、スピーカーにラジカセを近づけて録音した音源を何度も聴いたりしていました(笑)。だから音質なんて考えていなかったけど、そういった初期衝動も大事だなって思うんですよね。それと同時に、今は自分の好きな音楽だからこそ良い音質で聴きたいと思うんですね。僕は、その両方の気持ちを大切にしたいって、改めて思いましたね。それを両方向に極めていくことも、音楽を作る立場としてやらなければいけないって、今回のリスニング体験で感じました。情熱と音質、両面の追求ですね。
──改めて今回試聴した3機種を振り返ってみて、どのようなユーザーにお薦めしたいと思いましたか?
今回、ハイレゾを聴くためにヘッドフォン・アンプを買ったんですが、ハイレゾを聴かないならば、これを通さずiPhoneに直接ヘッドフォンやイヤフォンを繋いで聴くほうが、個人的には好きだったんです。だから手軽に高音質を楽しみたい方には、すごく向いていると思いましたね。
──最後に、楽器を楽しむ方が上達していくために、良い音質で聴くことの大切さを感じることはありますか?
それはすごく大切なことだと思いますね。ただ僕の専門のフラメンコ・ギターに関しては、生楽器ですので生音をどれだけ体感したかというのが、耳の財産になると思います。と言っても、今は加工されていない音を聴く機会が少ないと思いますので、できる限りナチュラルなサウンドに近い音質で聴けることが必要だと感じていますね。良い音や素晴らしい音楽は小さな努力の積み重ねだと思います。プレーヤーだけではなく、メーカーやリスナーも含め、どれだけその意識を高く持って積み重ねていくかということなので、これを機に僕ももっと上を目指していきたいですね。
■【YAMAHA/HPH-W300】ヤマハの新ヘッドフォンは優れた装着感と高音質再生を実現したBluetoothモデル
■【YAMAHA/EPH-200】ヤマハ初のハイレゾ・イヤフォンはピュア音質とケーブル装着角度で勝負!
価格:オープン
価格:オープン
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沖仁(おき・じん)フラメンコギタリスト
1974年生まれ。スペインと日本を往復し20代を過ごす。2007年4月〜NHK大河ドラマ「風林火山」紀行テーマ曲を担当。2010年7月、
スペイン三大フラメンコギターコンクールのひとつ「第5回 ムルシア“ニーニョ・リカルド”フラメンコギター国際コンクール」に出場し、国際部門で優勝、日本人として初の快挙を成し遂げた。2013年、各界のトップ・アーティストを迎えたコラボ・アルバム「Dialogo[ディアロゴ]〜音の対話〜」をリリース。2015年、トップ・ジャズ・ギタリスト渡辺香津美との、2枚組ライブ・アルバム「沖仁 con 渡辺香津美/エン・ビーボ!〜狂熱のライブ〜」をリリースした。同年、フジテレビ系「ヨルタモリ」で常連客役で出演した他、翌2016年、野村不動産「プラウド」TVCM楽曲のプロデュースと演奏を担当、同年O.A.の人気フィギュアスケートアニメ「ユーリ!!! on ICE」で主人公のショートプログラム曲を演奏するなど、幅広い活動で話題となる。2017年はデビュー15周年を迎え、6月にオリジナルアルバム「Clásico[クラシコ]」をリリース、7月には東京オペラシティコンサートホールで「沖仁 デビュー15周年記念公演 15 -QUINCE-」を開催。2018年3月には「沖仁SPRING TOUR 2018」を開催予定。
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