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“現行ビンテージ・ブリティッシュ系ファズ”試奏分析〜Current British Fuzz Analysis

ブリティッシュ・ファズ

エフェクター・ファンのバイブルとして高い人気を誇る『THE EFFECTOR book』(シンコーミュージック刊)。12月13日に発売の最新刊VOL.38では、50年以上にも渡る長い歴史を持つFuzz Faceをフィーチャー。トランジスタ2石を使った極めてシンプルな増幅回路に秘められたサウンド・マジックは今なおプレイヤーを魅了し続けている。ここでは本書と連動してFuzz Face同様、ロック黎明期のビンテージなテイストをその身に宿した現行ファズ・ペダル11機種を紹介する。デジマートでの購入時の参考にしていただきたい。

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プロローグ〜あなたを“ファズ沼”へ誘う運命の1台がそこに

 巷では「“Fuzz Face”系のファズは使いにくい」なんて、まことしやかに囁かれていたりするが、実は完成度の高いビンテージ・ブリティッシュ系ファズほど扱いやすいエフェクターはない。ファズというエフェクターが纏っている扱い辛いというイメージは、「ノイジー」とか「暴力的」とか「爆音」といった、本質とは異なるキーワードとセットで語られることが多いが故の誤解。使い方さえ間違わなければ、ビンテージ・ブリティッシュ系ファズは、プレイヤーの表現力を無限大に拡張してくれる。毛羽立ったサイケデリック・トーンから真空管アンプのナチュラル・ドライブを思わせる洗練されたクランチ・サウンドまで、歪みのキャラクターを自由自在にコントロールすることができるのだ。これは他のどんな歪み系エフェクターでも実現できない、ビンテージ・ブリティッシュ系ファズだけが備える大きなメリットである。しかし、ひとたびそれに気がつき、その魅力にハマってしまったら最後、今度は抜け出せなくなってしまうので覚悟しよう。誰が言ったか“ファズ沼”——それは音作りに熱意を持って取り組む真摯なプレイヤーほど陥りやすい機材探しの“底なし沼”なのである。

01 JHS Pedals / Pollinator V2

JHS Pedals / Pollinator V2

[Specifications]
● コントロール:Volume、 Gain、Bias、Fuzz ●スイッチ:ON/OFF ●端 子:Input、Output ●サイズ:55.9mm(W)× 109.3mm(D)×38.1mm(H) ●電源:9VDC ● 価格:open price

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言うなれば、「ブリティッシュ・サウンド・メイカー」

 確かなサウンドで着実にファンを増やし続けるJHSペダルズのFFインスパイア系モデル。“FuzzFace”の基本回路を再構築し、“GAIN”と“BIAS”という1つのコントローラーをプラスすることで、“FuzzFace”をリアルタイムでモディファイするイメージでのサウンドメイクを可能にしている。“VOLUME”は出力調整用で、結構ワイルドにプッシュできるの でアンプのキャラを選ばない印象だ。“FUZZ”は全体のキャラクター/音色を作るコントローラー。15時くらいまでの挙動はビンテージとは全く異なるが、そこからフルに可変するあたりで“Fuzz Face”感が爆発する。“GAIN”は微妙な調整用で、“FUZZ”が10時〜13時くらいの場合に変化を感じやすいだろう。“BIAS”は電圧をコントロールすると思われ、挙動の安定/不安定をコントロールしたり、倍音を調整することも可能だ。特に目的がない場合はフル位置にセットすれば難しいことはない(“GAIN”も同様)。面白いと思ったのは、JHSならではのロー・ミッドのスッキリしたキャラクターが本機にもしっかりと存在している点。“FUZZ”を半分くらいまで下げると、“GAIN”や“BIAS”の面白さが顔を覗かせる。ファズというより「ブリティッシュ・サウンド・メイカー」という印象で、1台でかなりの種類の歪みサウンドを生み出せるだろう。

【オフィシャルHP】

02 Manlay Sound / Baby Face (Ge)

Manlay Sound / Baby Face (Ge)

[Specifications]
● コントロール:Volume、 Fuzz ● スイッチ:ON/OFF ●端子:Input、 Output ●サイズ:64mm(W )×125mm(D )× 61mm(H ) ●電源:006P(9V 電池) ●価格: ¥28,500(税別)

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1968年型を想起させる安定感抜群のビンテージ・トーン

 マニアックな視点とライブやレコーディング現場での使い勝手を上手くミックスしながら「本物の音」を作り出すのが得意なマンライ・サウンド。本機はゲルマニウム・トランジスタ搭載型“Fuzz Face”をベースとし、オリジナルに敬意を評しつつも「今、現場で使われること」を想定した設計が施されていることが窺われる。トランジスタには2つの“AC125”を搭載。 扱いの難しいゲルマニウム・トランジスタながらそれぞれにマッチングを考慮して配置されているので、“FUZZ”= 12時以下でもキチンとした“Fuzz Face”サウンドが得られる。“FUZZ”=最大位置付近で突然音色やドライブ感が変化してしまうビンテージ機に比べると動作も安定している印象だ。音色の傾向としては1968年あたりのゲルマニウムからシリコンへ移行する年代の“Fuzz Face”を連想させるミッドが濃いめの安定したファズ・サウンド。オリジナル同様に外部DC電源に対応していないし、回路的にもオリジナルのフォーマットから外れていないので、やはり良質なギターと好みの真空管アンプを用意してから、そこに本機を加える使い方が望ましい。むしろそうしないと設計者が狙ったサウンドや、ブランドが大切にしている「オールドの音」が得られないし、伝わらないだろう。シンプル故に弾き手のサウンドがモロに音に現れるモデルだ。

【オフィシャルHP】

03 Mojo Hand FX / Crosstown

Mojo Hand FX / Crosstown

[Specifications]
●コントロール:Tone、Gain、Vol、Body ●スイッチ:ON/OFF ●端子:Input、Output ●サイズ:73mm(W)×121mm(D)×56mm(H) ●電源:006P(9V電池)/9VDC ●価格:open price

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ゲルマ× シリコンのハイブリッドで“新しい使い方”を提案

 “Fuzz Face”直系のサウンドで製品名が「Crosstown」とくれば、「あの音」をイメージするしかないが、どうもそうではないらしい。本機は極めてシンプルに“Fuzz Face”サウンドを研究し、実際の使い勝手を考慮して作られたモデルだと感じた。トランジスタは“AC187” (ゲルマニウム)と“BC109B”(シリコン)を使ったハイブリッド仕様。操作の基本となるコントローラーは“GAIN”と“ VOLUME”の2つで、“VOLUME”はフル、“GAIN”はゼロからサウンドメイクを始めるといいだろう。“TONE”もフル位置から徐々に絞り込んでいくとわかりやすい(個人的にはフルから15時くらいが使いやすいと感じた)。特長的なのが“BODY”コントローラーだ。これはその名の通り、音の飽和感や密度を調整する印象。フル位置が最も“Fuzz Face”らしく、左回りに絞っていくとロー・レンジがスッキリしてくる。そして、実はこの“BODY”がかなり使えるツマミなのだ。皆さんが大好きな「“Fuzz Face”をオンにしてギターのボリュームを絞った音」に近いニュアンスを楽器側のボリュームを弄らずに得ることができるのである。ざっくりと、“GAIN”低め、“BODY”も下げめ、“TONE”上げめ、“VOLUME”上げめ。セッティングはこれだけでOK。その他、プリアンプ的発想など新しい使い方をどんどん発見できそうな、気になる1台だ。

【オフィシャルHP】

Throbak / Fuzz Haze

Throbak / Fuzz Haze

[Specifications]
● コントロール:Level、Fuzz、Bias(内部)、Pre-Gain(内部) ●スイッチ:ON/OFF、Pre-Gain ●端子:Input、Output ●サイズ:73mm(W)×121.5mm(D)×66.5mm(H)●電源:006P(9V 電池)/ 9VDC ●価格:open price( 市場実勢税別価格¥39,000 )

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アービター期“Fuzz Face”のキャラクターに肉迫する個性

 ゲルマニウム・トランジスタを用いたシンプルなファズ・ペダルである本機は、かつてジミ・ヘンドリックスやエリック・クラプトンが愛用したアービター期の“Fuzz Face”をベースにしながらも、独自のこだわりが施されているとの印象。ファズらしくシンプルなコントロール類に纏められているように見えて、実は基板内に半固定抵抗が2つ配置されている。1つは表面にあるミニ・スイッチを左側に倒した際に有効になるプリセット・ボリュームだ。これは“Fuzz Face”愛好家が好む「オンの際にギターのボリュームを絞った時の音」に近い音色を再現するためのもの。「“Fuzz Face”ならではのバイオリン・トーン はあまり使わないけれど、あのクランチ・サウンドが好き」という方にはうってつけの音色が得られる。さらに、本機はビンテージ機に比べてアウトプット・ボリュームが大きく、爆音で鳴るというのもポイントだ。本機が備えるクランチ・サウンドを活かしながら、チューブ・アンプへのブースターとして使用してもかっこいいサウンドになるだろう。肝心のファズ・サウンドは、ゲルマニウムならではの飽和感+低域の力強さが素晴らしく、アービター期“Fuzz Face”のキャラクターにかなり肉迫している。内部パーツにも地味な「ニヤリ」ポイントがあり、オリジナル機を知る人にもぜひ試してもらいたいモデルだ。

【オフィシャルHP】

05 BOSS / FZ-5 Fuzz

BOSS / FZ-5 Fuzz

[Specifications]
●コントロール:Level、Fuzz、Mode[ F、M、O] ●スイッチ:ON/OFF ●端子:Input、Output ●サイズ:73mm(W)×129mm( D)×59mm(H) ● 電源:006P( 9V電池)/9VDC ● 価格:open price

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3モード搭載、オリジナルを超えたサウンドメイクも可能

 ツアー・ミュージシャンが自身のギター・システムにビンテージ・ファズを導入することはあまりない。その理由は簡単で、壊れた時に代わりが見つけにくいからだ。お気に入りのファズが自分の音の“要”になればなるほど、その機種に依存してしまうことになり、それがツアー先で壊れたら、せっかく観に来てくれたファンをガッカリさせてしまうことにもなりかねない。そんなミュージシャンにとっても本機は最高の選択肢になるだろう。本機に搭載された3つのモードは、それぞれ“F”、“M”、“O”と名付けられていて、“Fuzz Face”、“FZ-1A”、“Octavia”を再現したものだ。BOSS独自のCOSM技術が駆使され、現在では入手困難なゲルマニウム・トランジスタの特性を素子レベルでモデリング。実際にオリジナル機に搭載されているパーツの動作も再現しながら、超ロー・ノイズで安定したファズ・サウンドを生み出してくれる。“F”モードはゲルマニウム・トランジスタ搭載型“Fuzz Face”のあの感じをズバリ再現しており、突き抜けるサウンドとヘヴィなボトムが最高だ。また、“FUZZ”つまみは12時までがオリジナル・ゲインで、それ以降はオリジナル以上の歪みを生み出すこともできる。オリジナルを超えるサウンドメイクもできる本機はある意味、最強のファズ・ペダルと言えるかもしれない。

【オフィシャルHP】

06 Black Cat / N-Fuzz

Black Cat / N-Fuzz

[Specifications]
● コントロール:Fuzz、Volume、Bias ●スイッチ:ON/OFF ●端子:Input、Output ●サイズ:70mm(W)×113 mm(D)×51mm(H) ●電源:006P(9V電池)/9VDC ●価格:open price

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和製コンポーネンツで“Fuzz Face”を作るという斬新な発想

 90年代のカスタム・ペダル・ブームを牽引したブラック・キャットが手掛けた“N-Fuzz”は、別名“Nippon Fuzz”とも呼ばれる。その理由は、基板上の全てのパーツ(コンデンサや抵抗、もちろんトランジスタも)に日本製コンポーネンツを使用しているからだ。回路“Fuzz Face”を基本にデザインされていて、パナソニック製“2SC1384”と東芝製“2SC1815Y”トランジス タを採用。古き良き時代のファズ・サウンドをベースにしつつ、新しい試みが施されている。特徴的な動きをする“BIAS”コントローラーを設けることで、かなり幅広いサウンドメイクを可能にしているのだ。といっても、その「幅」は音色面ではない。ファズ・サウンドそのもののキャラクターを多彩に変化させることができるという意味である。例えば、“BIAS”=フル(右側に回し切る)にすると非常にレスポンスの良い“Fuzz Face”的サウンドが楽しめ、“BIAS” =12時程度にセットするとゲート効果がキツくなったマエストロの“ FZ-1”的なサウンドに変化。さらに“BIAS”を下げれば、電圧不足で正常に稼働しなくなるが「でもそれがかっこいい!」という味わい深いテイストのファズ・サウンドが得られる。しかも、どのポイントも使いやすいのだ。小さな筐体でありながら腰の据った音色も見逃せない。老舗ならではのさすがの仕上がりに感服させられた。

【オフィシャルHP】

07 Katanasound / Furious Man 怒漢

Katanasound / Furious Man 怒漢

[Specifications]
●コントロール:Fuzz、Bias、Duty、Volume ●スイッチ:ON/OFF、Buff Kill ●端子:Input、Output ●サイズ:68mm(W)×111mm(D)×51mm(H) ●電源:006P(9V電池)/ 9VDC ●価格:open price

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バンドでファズを使いたいなら本機が絶対にオススメ!

 カタナサウンドの最新ファズは、“Fuzz Face”というよりも、もっとスピード感と切れ感を備えたVOX製ファズをヒントに開発されている。とはいえ、トランジスタ2石のシンプルなファズ回路を持つという意味では“Fuzz Face”の親戚と捉えて間違いないだろう。コントローラーが多い仕様なので、試奏前は音作りが難しそうにも思えたが、実際に音を出してみて驚いた。とにかく音が良いのだ。“VOLUME”=上げ気味、“FUZZ”も12時以降にするというファズの基本さえ守れば、その他のツマミはどの位置にあっても「ファズらしい音の質感」、「爆発的なパワー」、「音抜けの良さ」が体験できる。いずれのコントローラーも非常に的を射た操作感で、いきなり本機を触っても問題なく音作りができるだろう。しかも安定感が抜群。これはビンテージ・ペダルでは絶対に体験できない個性だ。歪みのテイストは“FUZZ”=フル位置で“Fuzz Face”や“Tone Bender Mk1.5”に近い響きが得られ、ロー・ゲインに設定すると別のクランチ・サウンドに早変わり。しかも低域の処理が絶妙で、クランチ〜ファズまで音色がスムーズに可変にする。1台でここまで幅広く音が作れて、なおかつ全ての音に説得力があるというのは秀逸だ。あなたがもしファズ・マニアではなくバンドマンであれば、このモデルは絶対にチェックした方が良い。

【オフィシャルHP】

08 Berkos FX / Third Stone II

Berkos FX / Third Stone II

[Specifications]
●コントロール:Volume、Earth、Sun ●スイッチ:ON/OFF、Axis/Exp、Mid/Bass ●端子:Input、Output ●サイズ:100mm(W)×119mm(D)×50mm(H) ●電源:006P(9V電池)/9VDC ●価格:open price

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出音から滲み出るデサイナーのマニアックなこだわり

 筐体カラーが紫で、モデル名が「Third Stone」とくれば、ジミ・ヘンドリックス・サウンドを狙っているということで間違いないだろうが、ここまでストレートなネーミングだと逆にちょっと心配になってくる。筆者もジミのファンだけに、ガッカリしたくないからだ。しかし、音を出した瞬間、そんな心配はどこかへ消えていってしまった。本機はシリコン・トランジスタを用いて、ヘンドリックスが奏でた「あのサウンド」を再現している。“VOLUME”は音量、“SUN”がゲイン、“EARTH”がトーンを担っていて、フル位置から調整するとわかりやすいだろう。“EARTH”はそれほど派手な変化が得られるものではないが、本機を使いこなす上では本当に便利なコントローラーと言える。ストラトであればフル、テレキャスターなら12〜15時、“P.A.F.”スタイルのハムバッカーなら10〜12時あたりが美味しいポイントだろうか。ミニ・スイッチはファズの質感に微妙な変化を与え、エクスペリエンス風なら“EXP”、後期の雰囲気ならアグレッシブな“AXIS”を選択。“MID”と“BASS”の切り替えはアンプとの相性を計りつつ試してみると使いやすい。出音から推測するに、本機はかなりのマニアが作り込んだものであることは間違いなく、倍音の雰囲気と低域のニュアンスは、ビンテージ“Fuzz Face”を知る人であればニヤリとすること間違いなし。

【オフィシャルHP】

09 Friedman / Fuzz Fiend

Friedman / Fuzz Fiend

[Specifications]
●コントロール:Fuzz、Bass、Mid、Treb、Volume ●スイッチ:ON/OFF、Rage ●端子:Input、Output ●サイズ:114mm(W)×147mm(D)×72mm(H)●電源:9-12VDC ●価格:open price

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設計者の狙いは“アンプライクなナチュラル・ファズ”?

 現代のアンプ界を代表するデザイナーである、デヴィッド・フリードマン氏が手掛けたファズ・ペダル、その名も“Fuzz Fiend”(ファズの鬼)は、“12AX7”真空管を搭載した個性的な仕様を備える。ただしファズ回路を真空管で再現するというものではなく、そこから一歩進め、ファズ+アンプで生まれるかっこいい音を提示するというコンセプトを持つようだ。パッと音を出した瞬間にイメージしたのは、ザ・ラカンターズやニール・ヤングのサウンド。実際にはファズを使っていないものの「ファズっぽいサウンド」を出しているミュージシャンたちだ。つまり、フェンダーのツイードやセルマーのコンボ、スープロ・アンプをフルアップで鳴らした時の高揚感、独特のツブれ感、コンプ感、そういった雰囲気を強く感じるのだ。このユニット(あえてペダルとは言わない)があれば、ソリッドステート・アンプを繋げてもオールド・チューブ・アンプならではのサウンドが得られるだろう。“FUZZ”はフルにしても飽和することなくダーティーな響きを生み出し、3バンドEQはアンプのように動作する。“RAGE”と命名されたスイッチも要注目だ。本機はこのスイッチを踏んでいる間だけ「暴走モード」に突入する。発振やファズ回路を途中でバイパスしたような音の暴れっぷりからも、「やっぱり狙っているのはあの音か!」と思わざるを得ない。

【オフィシャルHP】

10 TC Electronic / Rusty Fuzz

TC Electronic / Rusty Fuzz

[Specifications]
●コントロール:Fuzz、Tone、Volume ●スイッチ:ON/OFF ●端子:Input、 Output ●サイズ:74mm( W )×132mm(D)×58mm(H ) ●電源:006P(9V電池)/9VDC ● 価格:open price

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安価ながら極上のビンテージ・サウンドを放つ本格派

 今でこそ高品質なデジタル機器でおなじみのTCエレクトロニックだが、実は昔から気の利いたアナログ・ペダルを数多く生み出してきていることでも有名だ。お馴染みのコーラスやフェイザーだけでなく、イコライザーやディストーション、ブースターなども含めて同社のアナログ製品は非常に評価が高い。本機はそんなTCエレクトロニックが放つ驚異のエントリー・モデル・シリーズにラインナップされるアナログ回路の1台。“Fuzz Face”をベースにデザインされているということで、爆発的なアウトプット・レベルや独特のザラリとした質感は確かに“Fuzz Face”を連想させるものだ。トーン・コントローラーも使い勝手が良く、右側に回し切った状態からアジャストしてやることで好みの音色がすぐに引き出せるだろう。“VOLUME”の可変幅が広い(高出力)ので、トランジスタ・アンプに繋げる場合は低めにセット、チューブ・アンプにプラグインする場合はぐっと高めにセットすると使い勝手が良い。本機の爆音が備える高揚感はなかなかのもので、デザイナーはビンテージ・ファズ・サウンドにかなり理解がある人だろうと想像させられる。ノイズも極力抑えながら、ファズに必須の質感が全く薄まっていないのも素晴らしい。この価格でこの音は驚愕。“ファズ玄人”を自認する人にこそ試してほしいモデルだ。

【オフィシャルHP】

11 Roger Mayer / Voodoo-AXE Classic

Roger Mayer / Voodoo-AXE Classic

[Specifications]
●コントロール:Gain、Tone、Output ●スイッチ:ON/OFF ●端子:Input、 HW Out 1、BF Out 2、BF Out 3 ● サイズ:116mm(W)×90mm(D)×50mm(H) ●電源: 006P(9V電池)/ 9VDC ●価格:¥39,800(税別)

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後期ヘンドリックス・テイストを狙うなら本機がベスト

 独自の哲学で製品をデザインし続けている巨匠、ロジャー・メイヤーが手掛けるクラシック・シリーズにラインナップされる1台。本機はその名の通り、ジミ・ヘンドリックスが『Axis:Bold As Love』をレコーディングしている際に、ロジャーが製作したカスタム・ユニットをヒントに製品化したものだ。当時は9V駆動ではなく、さらに広いヘッドルームを得るため、別に電源ユニットを設けていたという話だが、本機は電源も含めて現代のニーズに合わせた仕様で再構築。サウンド面だけを当時の雰囲気に近づけてある。それはともかく、このペダルを使いこなすにはコツがある。まず出力は大きいが、“OUTPUT”は頑張ってフルに設定しよう。“TONE”もフルだ。もちろん微調整しても構わないが、基本設定はこの位置だと考えてほしい。その状態から“GAIN”を必要なだけ上げていくと、かなりファットで攻撃的なクランチ〜ファズ・サウンドが得られる。このセッティングは“Voodoo”の名を冠する同ブランドの歪み系に共通するもので(というか、ビンテージ・ファズに共通する方法論)、このやり方で鳴らさないとその真価は理解できない。クリーンでありながらアタックに独特の歪み感があり、さらに倍音も強調される独特の音色。今一度、ジミの『Axis:Bold As Love』を聴いてみてほしい。確かにその音が聴こえるはずだから。

【オフィシャルHP】

THE EFFECTOR book編集者が語る「Fuzz Face特集」後記

 「まず自分が歪まないとファズは歪んでくれねえんだよ!」とは、“渋谷のファズ・マスター“こと村田善行氏が放った金言。一緒に話を聞いていた井戸沼室長はポカンとしていましたが、これはしもも的にはとても腑に落ちる発言なんです。というのも、僕は人間の倍音成分が見える特異体質の持ち主でして。正確に言うと、見えるというよりも知覚できるイメージ。「この人は偶数倍音が多め」とか「4kHz付近に山がある」とか、周りの人が纏っている周波数特性を感じることができるんです。

 そんな僕の目から見て、村田さんはとても良い形で歪んでいる人。「ゼッタイ良い音を鳴らすよね!」という雰囲気に満ちたオーラを放っています。扱いの難しいビンテージ“Fuzz Face”から、良い音をあっさり引き出してしまうのも、さもありなん。基音〜2倍音が太くて高次倍音が綺麗に整った村田さんの周波数特性は、“Fuzz Face”との相性が抜群に良いんでしょうね。

 ちなみにエフェクター・ブック関係者を例に挙げると、井戸沼室長は800Hz付近が厚めで、ヌルっとしたバターみたいに粘っこい音響特性に見えます。コンプでしっかり潰してあげると良い音で鳴りそうですね。細川雄一郎さんは、上の方までしっかり伸びる倍音を備えたイメージ。レンジ感のある立体的な鳴りが得られそうな雰囲気です。4k〜5kHzに鋭いピークを感じるので、少しばかりエッジが強いキャラクターかもしれません。それを考えると、この本にはそれぞれに音楽的な周波数を纏った関係者が揃っているように思えます。こういう仕事に就いているのも何となく納得できる、良い音の持ち主と言えるでしょう。

 とはいえ、音楽雑誌界隈に倍音の乱れた雑音をまき散らしている輩が存在しないわけではありません。そういうヤツの編集記事は、たいてい的外れだったりするんですよね。電圧が足りていないというか、トランジスタのバイアスがズレているというか。妙にゲート感の強いブチブチに乱れた記事を発信していたりします。そして怖いのは、そんな偉そうなことを言っておきながら、僕が自分のオーラを見ることができないっていうこと。それこそ自分こそ状態の悪い“Fuzz Face”みたいな特性の持ち主だったらショックでかいですよね。2kHz〜5kHzがごっそり存在しないとか。そこはみなさんがエフェクター・ブックを読んで判断してみてください。僕、ちゃんと歪んでいない人だったらどうしよう……(泣)。(下総淳哉/THE EFFECTOR book)

[The EFFECTOR BOOK Vol.38] 2010年代のFuzz Face使用術 by Jake Cloudchair

THE EFFECTOR book VOL.38 AXIS:BOLD FUZZ WINTER 2018 ISSUEで詳細をチェック!

 シンコーミュージック刊『THE EFFECTOR book VOL.38 AXIS:BOLD FUZZ WINTER 2018 ISSUE』の特集企画「“現行ヴィンテージ・ブリティッシュ系ファズ”試奏分析〜Current British Fuzz Analysis」では、今回紹介した各機種を内部写真とともにさらに詳細に解説している。

 また本紙の特集では「“ファズ沼”へようこそ!」と題し、ビンテージから現行品まで数々の名機を解剖する“Fuzz Face Gallaery”、Fuzz Faceマスターと呼ばれるエリック・ジョンソン、Fuzz Faceをデザインしてきたジョージ・トリップスへのインタビューなど、Fuzz Faceがもたらすサウンド・マジックの魅力を多角的に紐解いている。また、“ブリティッシュ系ファズが苦手だ”と語る我らがデジマート地下実験室室長(井戸沼尚也)が、「DEEPER’S VIEW」を連載するフーチーズ村田善行氏にFuzz Faceのひき方を学ぶ企画実験は大変興味深い。本記事とあわせてぜひご一読いただきたい。

定価:1,620円(税込)
問い合わせ:シンコーミュージック


『THE EFFECTOR book VOL.38』のページ・サンプル


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Fuzz Face系ファズ

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