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- 2024/11/16
YAMAHA / MONTAGE
プロのミュージシャンたちがヤマハMONTAGEによる音作りに挑戦する本企画。今回登場してくれたのは、キーボーディスト/作曲家/アレンジャーのNOBU-Kだ。ファンクネスあふれるグルービーなプレイで楽曲を盛り上げるNOBU-Kが、ライブでMONTAGEを使うとしたら? 三代目 J Soul Brothersのサポートなど、数多くの現場をこなすキーボーディストならではの、実用性ある音作りを教えてくれたので、デモ動画とともにチェックしていこう。
もとになったのは「80s Layer」という音色で、 普通の生ピアノみたいな音と、キラっとしたエレピっぽい音が重なった、まさに80sの音楽でよく聴いたサウンド。でも古臭さはなく、生ピアノとエレピの両方の要素が入っているので、どんな曲にでも合います。ここでは、その音にストリングス音色の「Back Ground」を重ねています。これも普段から気に入って使っている音色で、目立たないけれど厚みがすごく出ます。ただ、せっかくのきれいなピアノのアタックの音をかき消さないように、ストリングスのアタックはちょっと遅めにしています。それによって、音を伸ばしているときはきちんとかぶって聴こえるけど、速めのフレーズを弾いたときはあまりストリングスが出てこないんです。
そのストリングスのボリュームをスーパーノブにアサインし、曲中に回して上げ下げできるようにしています。曲が盛り上がるとともにストリングスの音量を上げていき、サビでマックスまでいってAメロでまた戻る、というように弾きながら変化を付けるんです。そういうニュアンスを付けた演奏をすると、特にバラード系の曲ではより切なさが演出できます。以前はピアノ以外に、ストリングス用の鍵盤を置いて同じことをやっていたんですが、それを1音色でできてしまうのですごく便利です。
三代目 J Soul Brothersでは、レコーディングでリアルなストリングスのソフト音源を使って細かくバラバラに打ち込んである楽曲もあるんですが、最近それをライブ本番で、MONTAGEを使ってやってみたんです。それがこの音色で、「Medium Large Section」という音色がベースになっています。ストリングスは人数が多いほどゴージャスにはなりますが、その分、定位感が後ろにいくんです。だけど、バンドの中ではもうちょっと手前にきてほしかったので、ほどほどの人数のセクションの「Medium Large Section」は、以前から気に入って使っていました。ただ、高音がちょっと寂しい感じがしたので、2、3番目のパートにバイオリンを、4番目のパートにビオラを足しています。すると、単音で弾いているときでも高音が抜けて聴こえるし、低域についてもより厚みが出て、全体として存在感が出ました。あとは、会場によってもっと低音を出したいときは、EQで100Hzあたりを少し持ち上げたりします。
ミディアムからスロー・バラード系で映える音色です。注意点としては、ボイシングはできるだけオープンにするとより生っぽさが出ます。あと僕は、弦を弾いてるニュアンスをより出すために、ボリューム・ペダルを細かく動かしながら演奏しています。
これは、MOTIF時代からあった「Oh Bee Bass」から作ったものです。まず、もとの音色のリバーブを切ったのと、音がちょっと耳につくので少し全体のボリュームを下げました。あとは曲によって、フィルターを開いたり閉じたりします。ただ、カットオフを上げていくと音量感が上がり耳につくので、逆にボリュームを下げるような設定にしました。また、カットオフを上げると低音が減った感じになるため、マスター・エフェクトのマルチバンド・コンプでロー・ゲインを少し上げるようにします。そこでパートのアサイン1にカットオフをプラスのレシオで、2にはボリュームをマイナスのレシオで設定。スーパーノブには、そのアサイン1と2に加え、マルチバンド・コンプのロー・ゲインがちょっと上がるように設定します。それでスーパーノブを回すと、音質感は変わっても音量感はほぼ同じになります。
スーパーノブをあまり上げない状態だと、ベースとして楽曲を支えられるくらい、目立たず、でもちゃんと低音を支えるようなプレイができると思います。また盛り上がってきたら、思い切りフィルターを開けて、ブリブリのサウンドでアピールもできる。僕は個人的な好みもあって、この音色にはモジュレーションを深めにかけているので、古いファンクなどの雰囲気を出すときも効くと思いますよ。
3つ音色を使っています。まずは「Dance Synth MW DA」。そのままでも十分なんですが、単音で弾いたときにもうちょっと強力に鳴らせるといいなと思って、2番目のパートに「Power Hook」という音色を足しました。さらに抜けが欲しかったので、3番目のパートにオクターブ上の同じ音色をちょっと小さめの音量で加えています。これはよくシンセ・ブラスでもやる手法で、同じ音色のオクターブ違いを重ねるといい具合の厚みが出るんです。もともとの「Dance Synth MW DA」は、スーパーノブでカットオフが上がるように設定されていたのですが、パート2、3の「Power Hook」は、それに伴いボリュームが上がるようにしました。単音で使うときはスーパーノブを上げて、「Power Hook」がより前に出て抜けるようにしています。コード・バッキングをするときは逆に下げて、音量を小さくします。
この音色では、モジュレーション・ホイールと同じことを鍵盤のアフタータッチでできるように設定してあります。両手がふさがっているときに、ホイールを使わなくてもできるのが便利。往年のファンクで聴けるシンセ・ブラスの手法ですよね。でもこの音でやると、同じような存在感は出せても古臭くなく、最近のサウンドの印象があるんですよ。
「Rap Lead 1」がもとになっているんですが、この音色とは全然違う音だったんです。特殊な使い方をするような細い音で、それが逆に抜けるのではないかと考えて、いろいろいじっていきました。まず、もともとポルタメントがかかっていたんですが、それをゼロに設定しました。それから、エンベロープのアタックを速くしてリリースを短くしました。素の波形を使ったというような感覚ですね。あとは、演奏時に使うのがピッチ・ベンド。通常、ベンド幅は±2くらいですが、ここでは±5にしています。ちょっとピッチ・ベンドを触っただけでもすぐ変化が付くし、最大まで動かせば劇的に音が変わります。また、スーパーノブでカットオフとレゾナンスを同時に操作できるよう設定しました。あと、MONTAGEにはテンポ・ディレイが付いているので、曲に合わせて使えるのもいいですね。
ポルタメントを切っているので、メロウな曲で使う想定はしていなくて、どちらかというと攻撃的なプレイに向いている音色だと思います。アタックも速くしているので速弾きもできるし、アッパーな曲なら何でも使えるかな。音の大きいギタリストに対抗しようとすると太い音で弾きがちですが、逆にこういう細い音で耳につくというのもいいのではないでしょうか。
僕は、MOTIFシリーズをずっと使ってきましたが、現在ライブでは、今回の取材のセットのようにMONTAGE 8と7の2台を使っています。MONTAGEには同じ音も入っていますが、アウトプットの性能が進化したので、音がハイファイで、使っていた音色の印象がさらに良くなりました。また、MOTIFのときは音色チェンジをすると音が途切れてしまいましたが、MONTAGEではそれが改善されています。あとやはりFM-X音源が搭載されたのは驚きましたね。やはり世代的に、DXエレピの音には食いつきました(笑)。全部がそれになってしまうと、ただの昔の音のリバイバルになってしまいますが、今の使い方をしたらいいと思うんです。通常のPCMの音源にはないところを補える気がしますね。AWM2音源との組み合わせは無限だと思います。また、音色のエディットに関しては、それなりに理解していたつもりだったのですが、スーパーノブのようなコントローラーをリアルタイムに動かしてやるというのは、新しい発見がありました。基本的にシンセは好きなので、MONTAGEには遊び心があるというか、楽しいですね。好きで触っているうちに分かってくることもあるのでもっともっと追求したいなと思います。
■【製品解説】YAMAHA MONTAGEのサウンドとは?【連載第1回・記事内の製品解説へ】
本記事(製品解説を除く)は、リットーミュージック刊『キーボード・マガジン 2018年1月号 WINTER』の特集記事を転載したものです。本号付録CDにはNOBU-K氏が作成したサウンドに加え、動画のイントロ・アウトロで披露したバック・トラックも収録しています。
本号の巻頭特集(全54P)では、「歌と鍵盤 Playing Keyboards for Songs」と題して、ライブやレコーディングの現場で豊富な経験を持つミュージシャンたちにそれぞれの視点や立場からの"歌と鍵盤"について語っていただき、"歌と鍵盤"の在り方について掘り下げていきます。そのほか、ライブで活躍するキーボードを見つけるための購入ガイド「Keyboard Buyers Guide 2018」や、シンセの名機が写真で楽しめる「ビンテージ・シンセサイザー・カレンダー2018」も付録。ぜひ手に取ってチェックしてください!
価格:オープン
価格:オープン
NOBU-K
4歳からクラシック・ピアノを始め、10代後半でブラックミュージックに傾倒する。1993年にヒップホップ、R&Bプロデュース・ユニット”MASTERS OF FUNK"を結成、楽曲を提供する傍ら、ユニットの名義で『KOOL LIKE OTIS』(ホンダアコードCM曲)をヒットさせた。近年はEXILE、三代目 J Soul Brothers、安室奈美恵をはじめ、数多くのアーティストのライブやレコーディングに参加している。