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- 2024/11/25
Martin / D-18、D-28、000-28 Premium Sitka Spruce
好評連載MARTIN TIMES。16回目となる今回は、マーティンの2017年カスタムショップ・モデルを3本紹介! D-18、D-28、000-28というスタンダードなモデルをベースに、トップ材に特別なスプルースを使用したPremium Sitka Spruceシリーズを斎藤誠氏に弾き比べてもらいました。試奏中、そのクオリティの高さとお求めやすい価格に“これはお買い得!”と何度もビックリしていた斎藤氏。これを見たら、皆さんも欲しくなること間違いなし!
前回(Vol.15)は、きわめて貴重なブラジリアン・ローズウッドを使用した超レアな特別モデルと、オール単板のモデルとしてはお求めやすいストリート・パフォーマーのモデルという、両極端のマーティン・ギターをご紹介した。今回取り上げるのは、それらとはまったく対照的なマーティン・ラインナップの中核をなすスタンダードな機種でありながら、トップ材を最高グレードのものに仕様変更した、カスタムショップ製の特別限定モデルである。カスタムショップでは、マーティン社の腕利き職人たちが顧客の注文に応じて一品もののギターを特別に製作している。通常のラインで生産するモデルとは仕様の異なる、究極の“マイ・マーティン”を作ってくれる部門なのである。
一品ものということで、本来であれば価格もそれなりのものになるが、今回ご紹介するスタイル18および28のモデルは、今年(2017年)6月のマーティン社ファクトリー・ツアーに参加したディーラー向けに企画されたもので、“C.F. Martin”のデカールがオールド・スタイルになっている以外、通常のスタンダード・シリーズのモデルと外観上の違いはない。その代わりに、サウンド面で最も重要と言われるトップ材のスプルースが、通常は最上位のスタイル45にしか使われないプレミアム・グレードのものになっている。また、ネック材も通常は“セレクト・ハードウッド”となっているが、今回のモデルでは“ジェニュイン・マホガニー”を使用している。
装飾の追加などは一切行なわず、ディーラー向けに一定量の本数を製造することで、仕様変更に伴うコストの上昇を可能な限り抑えているわけで、ある意味非常にお得なモデルと言えるだろう。マニアにしてみれば、外観は同じなのに実はトップ材が最高級という、密かな喜びを味わうことができる、なんとも“通な”モデルなのである。外観は通常のスタンダード・シリーズとほとんど変わらないので、ぜひ楽器店で実際に試奏して、そのサウンドを確かめていただきたい。
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マホガニー・ボディを持つスタンダード・シリーズのドレッドノートのD-18を基本に、トップ材のスプルースをプレミアム・グレードに変更したモデル。ブレイシングを始めとする内部構造やネックのグリップなどは変更していない。デカールはゴールデン・エラ・スタイルのオールド・ロゴを使用。価格は通常のスタンダードと比べても3万円ほどの違いに抑えられているので、お買い得感も高い。
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【Specifications】
●トップ:シトカ・スプルース(プレミアム・グレード) ●サイド&バック:ジェニュイン・マホガニー ●ネック:ジェニュイン・マホガニー ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX・スキャロップト・フォワードシフテッド ●価格:オープン
D-18にはピック弾きが中心の曲を選びました。最後の部分ではちょっと指弾きが入りますが、“Gの爽やかストローク”というタイトルで(笑)、やはりこれがピッタリでしたね。“ガン!”というアタックも出てくれるし、毎回言っていますが、マホガニーならではの“干し草の香り”もするし。スキャロップト・ブレイシングというのも効いているんでしょうか。この曲の後半ではスキャットが入っていたり、途中でプリング・オフも入っていたりしますが、そういうこともやりたくなる気持ちにしてくれるんです。弾き手を盛り上げてくれるというか、うしろからプッシュしてくれる感じ。そういうアップグレード感がありましたね。
マーティンと言えば“ディー・ニッパチ”と言うほど人気の高いローズウッド・ボディのドレッドノート。トップ材はプレミアム・グレードのシトカ・スプルース、ネック材はジェニュイン・マホガニーである。基本となるスタンダード・シリーズでは、2017年モデルとしてD-18と同様のビンテージ・スタイルの仕様に変更されたギターが発売されているが、本器は従来の仕様を踏襲している。ただし、今回の28プレミアムの2本は、昔のオーバー・ラッカー・タイプのピックガードを再現するために、周囲にラウンド加工が施されている
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【Specifications】
●トップ:シトカ・スプルース(プレミアム・グレード) ●サイド&バック:イースト・インディアン・ローズウッド ●ネック:ジェニュイン・マホガニー ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 11/16インチ(42.9mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX ● 価格:オープン
僕が通常のスタンダードとの違いを一番強く感じたのが、このニッパチでした。これはお買い得ですね。今回はデモ用に3曲用意してきましたが、このギターはサステインが効いていて音が鳴り続けてくれる感じだったので、指弾き中心の曲を選びました。音がしっかり前に出てくれるから、こういうメロウな曲で小さな音で指弾きしても大丈夫、という安心感がありましたね。もちろん途中のピック弾きも、音にハリがあって弾きやすかったです。5フレットあたりでハンマリング・オンをやった時の音の粒立ちもすごい。3、4弦の音がこんなにキレイに出そろう28というのは、あまりないような気がします。これだと指もピックも両方イケますね。
ドレッドノートと並ぶ人気を持つローズウッド・ボディの“トリプル・オー”。マーティン社では機種(スタイル)によって使用するトップ材のグレードを厳密に管理しているので、スタンダード・シリーズのスタイル28に上位グレードのトップ材のものが“偶然に”紛れ込むということはない。だからこそ、通常はスタイル45にしか使われないプレミアム・グレードのスプルースを使用したスタイル28には、特別モデルとしての価値がある。
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【Specifications】
●トップ:シトカ・スプルース(プレミアム・グレード) ●サイド&バック:イースト・インディアン・ローズウッド ●ネック:ジェニュイン・マホガニー ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:24.9インチ(632.5mm)●ナット幅:1 11/16インチ(42.9mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX ●価格:オープン
000は単純に弾きやすかったというのもあるんだけど、テンポの一番速いジャクソン・ブラウン風の曲を選びました。2本のドレッドノートのインパクトが強すぎたので少し陰に隠れてしまった感じはありますが、Gコードを弾いた時の高音弦の“シャラーン”という鳴り方なんかには、通常のモデルとは違う素晴らしさがありますね。テンションも柔らかいので、ミュートのリフもやってみました。これが非常に気持ち良い。もうガンガン弾きたくなります。激しいロック系にも向いていると思いますよ。いやしかし、この曲、家で作っていた時よりずっと良くなっちゃいました。やっぱりギターが良いと違いますね。トップの色も弾き込むごとにどんどん自分色に染まって行くんだろうなあ。
今回のモデルは、もう絶対にお買い得でしょう。どれも通常のスタンダード・モデルより3~4万円高いだけなのは驚きですね。買う予定じゃなかった人でも買っちゃうかも(笑)。基本的にはトップ材とネックがジェニュイン・マホガニーというだけで見た目では違いがわかりませんが、僕としてはロゴがキンキラキンじゃなく、ヘッドに馴染むオールド・スタイルに本格的で落ち着いたものを感じて、そこがまたいいなぁという印象でした。以前に試奏した、バインディングを銀色にしたギターのように派手なこともできるし、今回みたいにシブいこともできるっていうのが、老舗の余裕みたいでカッコ良いですね。今回はディーラー向けのカスタムショップ製ということで、お客さんの要望もよく反映されているんでしょう。音はもう、弾いてすぐに通常のスタンダードとの違いがわかります。特にD-28では、僕の“ドレッドノート恐怖症”を払拭するぐらいの違いを感じました。見た目が普通なのがまたカッコ良い。弾いてみて初めて音のグレードの高さに気付くところが実にニクいです(笑)。ドレッドノートの弦はミディアム・ゲージが標準ですが、ライト・ゲージも試してみたくなりました。さらに“シャラーン”という倍音が出るかもしれない。
斎藤誠(さいとう・まこと)
1958年東京生まれ。青山学院大学在学中の1980年、西慎嗣にシングル曲「Don’t Worry Mama」を提供したのをきっかけに音楽界デビューを果たす。1983年にアルバム『LA-LA-LU』を発表し、シンガー・ソング・ライターとしてデビュー。ソロ・アーティストとしての活動はもちろん、サザンオールスターズのサポートギターをはじめ、数多くのトップ・アーティストの作品への楽曲提供やプロデュース活動、レコーディングも精力的に行なっている。2013年12枚目のオリジナル・フルアルバム『PARADISE SOUL』、2015年にはアルバム「Put Your Hands Together!斎藤誠の嬉し恥ずかしセルフカバー集」と「Put Your Hands Together!斎藤誠の幸せを呼ぶ洋楽カバー集」の2タイトル同時リリース。そして2017年4月26日には全曲マーティン・ギターによる弾き語り&セルフ・カバーの待望の新譜、『ネブラスカレコード〜It’s a beautiful Day〜』をリリース! また、本人名義のライブ活動の他、マーティン・ギターの良質なアコースティック・サウンドを聴かせることを目的として開催されている“Rebirth Tour”のホスト役を長年に渡って務め、日本を代表するマーティン・ギタリストとしてもあまりにも有名。そのマーティン・サウンド、卓越したギター・プレイを堪能できる最新ライブ情報はこちらから!