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- 2024/11/16
Martin / D-28 Brazilian、D-15M、000-15M
好評連載MARTIN TIMES。15回目となる今回は、なんと稀少なブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)をふんだんに使用したD-28 Brazilian、そして2017 SUMMER NAMMで発表された新シリーズのD-15M StreetMaster、000-15M StreetMasterの3本を斎藤誠氏に弾き倒してもらいました。超レアなブラジリアン・ローズウッド・アコースティックのサウンドと、目を惹く大胆なカラーリングの15シリーズのポテンシャルに要注目です!
多くのギター・ファンにとって、“マーティン”と言われて最初に思い浮かぶのはドレッドノートだろう。イギリス海軍の超大型戦艦に因んで名づけられたドレッドノートは、もともとマーティン社がオリバー・ディットソン社向けのOEMとして1916年に開発したモデルで、マーティン社の正式なラインナップに加えられたのは1931年のことである。当初はマホガニー・ボディのモデルがD-1、ローズウッド・ボディのモデルがD-2と呼ばれていたが、間もなくそれぞれD-18とD-28に変更された。1934年にはネックのジョイント位置が12フレットから14フレットに変更され、現在に至るまで親しまれているドレッドノートの基本形が完成したのだ。
マーティンに限らず、ギターに使われる木材で“ローズウッド”と言えば、1960年代に入るまで日本では“ハカランダ”として知られるブラジリアン・ローズウッドが当たり前だった。しかし、ブラジル政府が森林資源の保護を理由に原木の輸出を禁止して以降、ワシントン条約(CITES)による流通制限が加わるなどして次第に調達が難しくなり、マーティン社でも1969年にはローズウッド材をブラジリアンからイースト・インディアンに切り替えている。以後、ブラジリアン・ローズウッドは最初のオーセンティックD-28や、今回ご紹介する限定生産モデルなどの特別なギターにしか使用されていない。しかも現在では、社長のマーティン四世しかブラジリアンの貯蔵庫を開けられない規則になっているという。
マニア向けの希少モデルを機会あるごとに提供する一方、マーティン社はアコースティック・ギターのファン層の裾野を広げるためのモデル開発も積極的に行なってきた。今回ご紹介する15M StreetMasterシリーズもその一例で、シリーズ名のとおり使い込んだ雰囲気を再現する仕上げを施しながら、モダンな奏法も意識した仕様を採用している。
今回は希少な限定生産のD-28と、親しみやすい15M StreetMasterのドレッドノートと000という両極端の楽器を、お馴染み斎藤誠氏のデモ演奏でお楽しみいただこう。
マーティンで一番人気のD-28のボディ材に、本来使用されていたブラジリアン・ローズウッドを採用した世界限定50本の特別モデル。フォワード・シフテッド・スタンダードXブレイシングや、ニカワをセレクトした接着など現行のオーセンティックに近い仕様だが、ロー・プロファイル、スタンダード・テーパーのネックやドロップ・イン・サドル、アディロンダック・スプルースをトップ材に使用しながら、あえてVTS処理を行なっていないなど、あくまでも“現代の”D-28として作られているところに、マーティンの心意気がうかがえる。
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[D-28 Brazilian取り扱い店舗]
【Specifications】
●トップ:アディロンダック・スプルース ●サイド&バック:ブラジリアン・ローズウッド ●ネック:ジェニュイン・マホガニー ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:フォワード・シフテッド・スタンダードX ●価格:2,600,000円(税抜)
やっぱりブラジリアンは別格ですが、前から見てもそれとはわからないところがカッコ良いですね。でも、これを持っている人は“実はブラジリアンなんだよね”って自慢したくなるんだよ(笑)。音はもう間違いなく良くて、収録している現場から離れた廊下で聴いても楽器の響きが全部伝わるっていうのは、ちょっとやそっとの楽器じゃ真似できないでしょう。もちろん、ブラジリアンを使っただけでそういう音になるわけじゃないだろうから、作業工程も特別なものになるんでしょうね。デモ曲は全方向型というか、ピック弾きも指弾きも混ぜたものを何回も録り直しましたが、このギターにマーティンの歴史が凝縮されていると思うと、より完璧を目指したいという気持ちになりますね。
スタイル15は、ボディ材はもちろん、トップ材にもマホガニーを使用したオール・マホガニーのモデルである。もともとは低価格のモデルとして開発されたが、スプルース・トップの楽器とは異なる個性的なサウンドを持つことから、スタイル18や28などの上位モデルの所有者の間でも興味を持つ人が少なくない。新製品となるこのモデルは、日々音楽活動に勤しむミュージシャンに敬意を表わすべく、肘やピックの当たる部分の仕上げに手を加え、弾き込んだ楽器の風合いを再現している。
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【Specifications】
●トップ:マホガニー ●サイド&バック:マホガニー ●ネック:マホガニー ●指板:カタロックス ●ブリッジ:カタロックス ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 11/16インチ(42.9mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX● 価格:230,000円(税抜)
実を言うと、今回試奏した3本の中で一番ビックリしたのがこれだったんですよ。オール・マホガニーのドレッドノートをあまり弾いたことがなかったということもあるけれど、スプルース・トップのギターとは全然違う印象で、ボディの大きさもとても効果的だと思います。豊かな鳴りが自分の胸やお腹にも伝わってきて、Eコードを一発鳴らしただけで弾く側も気持ち良くなれます。000は単音で弾きたくなりますが、このDは普通にストロークが弾きたいですね。レコーディングでキャラの立つギターが欲しい時にはうってつけでしょう。音の伸びもあるし、ふくよかだし、イントロを弾くには、むしろD-28ブラジリアンよりも効果的かもしれません。
姉妹モデルのドレッドノートと同様、使い込んだ楽器の風合いを再現したオール・マホガニー・モデル。やや小ぶりなボディの000だが、25.4インチのロング・スケールなので実質的にはOMである。スケールが長い分音量も豊かなので、文字どおりストリートで演奏するにもうってつけだ。ドレッドノートもそうだが、弾き込んだ風合いを出す加工の一環か、ボディのエッジが通常の15Mよりも丸みを帯びており、体や腕に優しい仕上げになっている。Dと同様、指板とブリッジにはローズウッドに似た風合いのカタロックス材を採用している。
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【Specifications】
●トップ:マホガニー ●サイド&バック:マホガニー ●ネック:マホガニー ●指板:カタロックス ●ブリッジ:カタロックス ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 11/16インチ(42.9mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX ●価格:230,000円(税抜)
以前に試奏したオール・マホのギターと大分違う印象で、枯れた軽やかさがありますね。作りも違うのかもしれませんが、音量感もあるし、いつも言う“干し草感”のある個性がよりはっきりとしているように思います。それに加えて、僕が最近よく使っているブラック・スモークの000-17の良さも持ち合わせているような感じがします。薄い塗装の良さが出ているのかもしれませんね。あと、ペグのツマミの焼けた感じも良いし、ボディのエッジが色褪せた感じになっているのがバインディングのように見えるのも洒落ていますね。この音なら、エレアコにしてもすごく良いと思います。ネックが細めで、エレキ・ギターと持ち替えるにはありがたいですね。
D-28ブラジリアンは、200年近く昔からやってきたことを今に伝えるギターなんでしょうね。ピックガードなんかもシンプルだし、“そもそもこういうものですから”って新品のギターをサラッと作っている感じがニクいです。言っちゃ悪いけど、そういうところが新興のメーカーがブラジリアンを使う意識とちょっと違うんじゃないかと思いますね。家でデモ曲を作る時に使っている例の赤いリトル・マーティンとは、ものすごいギャップを感じます(笑)。想像していた以上に大きな違いがありましたが、それがまた楽しいんですよね。StreetMasterの2本は、ネットで見て“うわあ、ブルージィだなあ!”と思ったので、シャッフルの曲とブギーな感じの曲にしました。ブラジリアンとは大きな差を感じていたから。でも、それは値段のこと以前に、使う曲が違うし、持った時のマインドも全然違う。ブラジリアンのほうはウィンダム・ヒルのウィリアム・アッカーマンやマイケル・ヘッジズみたいにハイソな感じがして、いつも言うけれどもスタイル15は“干し草の匂い”を感じさせる。ただ、D-15Mは映画のエンドロールのBGMなんかで、“これから有名になるであろう若手のバンド”が使うような雰囲気もあって、ビンテージ風だけれども若者にもぴったりな感じがするんですよ。
2017年10月から、新宿の伊勢丹メンズ館8階にて期間限定のマーティンのポップアップが開催されている。まるでMartin Timesのセットがそのまま移動してきたようなウッディな空間の展示オフィスには、代表モデルや貴重なシグネチャー・モデルがズラリと並べられており、もちろんそれらの試奏/購入が可能! マーティン・ファンはもちろん、普段ギターに触れる機会の少ない方にもマーティン・ギターの魅力を体験できたことだろう。さらに10月の各週末には、斎藤誠氏を始めとする国内のマーティン・ギタリストによるトーク&アコースティック・ライブも行なわれるなど、ポップアップは大盛況となった。
オフィス入り口前に展開しているギャラリーは10月いっぱいで終了するが、オフィス内での展示は開催期間が2017年11月15日(水)まで延長されることが決定。貴重なD-200 Deluxeや代表モデルがズラリと並んだ会場に足を運んで、マーティン・ギターの魅力を感じてみてほしい。
【伊勢丹メンズ館8階】
住所:〒160-0022 東京都新宿区新宿3-14-1
お問い合わせ:03-3352-1111(大代表)
営業時間:10時30分〜20時
斎藤誠(さいとう・まこと)
1958年東京生まれ。青山学院大学在学中の1980年、西慎嗣にシングル曲「Don’t Worry Mama」を提供したのをきっかけに音楽界デビューを果たす。1983年にアルバム『LA-LA-LU』を発表し、シンガー・ソング・ライターとしてデビュー。ソロ・アーティストとしての活動はもちろん、サザンオールスターズのサポートギターをはじめ、数多くのトップ・アーティストの作品への楽曲提供やプロデュース活動、レコーディングも精力的に行なっている。2013年12枚目のオリジナル・フルアルバム『PARADISE SOUL』、2015年にはアルバム「Put Your Hands Together!斎藤誠の嬉し恥ずかしセルフカバー集」と「Put Your Hands Together!斎藤誠の幸せを呼ぶ洋楽カバー集」の2タイトル同時リリース。そして2017年4月26日には全曲マーティン・ギターによる弾き語り&セルフ・カバーの待望の新譜、『ネブラスカレコード〜It’s a beautiful Day〜』をリリース! また、本人名義のライブ活動の他、マーティン・ギターの良質なアコースティック・サウンドを聴かせることを目的として開催されている“Rebirth Tour”のホスト役を長年に渡って務め、日本を代表するマーティン・ギタリストとしてもあまりにも有名。そのマーティン・サウンド、卓越したギター・プレイを堪能できる最新ライブ情報はこちらから!