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- 2024/11/16
MARK KENDRICK DESIGN / Advancing Drive
Mark Kendrick──その名を聞いてピンとくる方はかなりのギター・マニアだろう。フェンダー社に在籍中は、マスタービルダーの中でも数少ないシニア・マスタービルダーとしてエリック・クラプトンのギターを作り、ほかにも多くの名作を世に出したレジェンド級のビルダーである。自身の名を冠したブランドMARK KENDRICK DESIGNを立ち上げた氏が待望の来日を果たし、来場者に対し自ら解説を行なうイベントが2017年10月15日、東京・秋葉原のPlayer's Club IkeBECKにて開催された。ここではその模様をレポートする。
この日のイベントはMARK KENDRICK DESIGN注目の新製品であり、日本初上陸となるエレクトリック・ギター「CORSAIR」を含む、オーバードライブ・ペダルの「Advancing Drive」、「Furnace Bass Drive」、「MARK KENDRICK DESIGN Signature Pick Up Set」の展示およびサウンドチェック、そしてMark Kendrick氏自身による解説が行なわれた。
まずゲスト・プレイヤーのベーシストの浅倉高昭氏がFurnace Bass Driveをチェックする形でイベントはスタート。氏の卓越したテクニックと、Furnace Bass Driveのチューブライクなサウンドが会場を満たす。
このペダルについて、Mark Kendrick氏は「Advancing Driveを完成させた後、70年代からの友人であるベーシストのルディ・サーゾからベース用のペダルのリクエストが来ました。そこでルディの求めるサウンドを出すためにAdvancing Driveの回路を少し変更しました。これを彼が気に入って使い始め、今ではニッキー・シックスも使用しています。Advancing Driveをもとにしていることもありギタリストが使うのも良いと思います。現に元ガンズ&ローゼズのギルビー・クラークもこれを気に入って使っていますよ」と述べた。
デモ演奏を務めた浅倉氏は「トランジスタ・アンプでハイ・ポジションを弾くと、どうしても音が弱くなってしまいます。このペダルを使うとチューブ・アンプのようなニュアンスが出せて、ハイ・ポジションの音がバンド・アンサンブルの中でも馴染むと思います。プレベを使用した際にも、特有の暴れ感をしっかり再現しつつ音が前に出て、とても良いペダルだと感じました」とコメントした。
次に、Advancing Driveをゲスト・プレイヤーのギタリスト、寒河江康隆氏がチェックし、素晴らしいサウンドを聴かせてくれた。氏は「セッションの現場では、まわりのメンバーやスタッフから音量が大きいアンプは好まれないのですが、ギター・アンプはボリュームを上げないと良い音がしないのが難しいところです。このAdvancing Driveを繋ぐと、実際の音量は小さくてもドライブしたアンプ特有の“音が飽和した感じ”がうまく出せます。また、音が太くなっても高域がしっかりと残り、音がこもらないのが良いですね」とコメント。
Mark Kendrick氏からは「かつては、ギター・アンプから歪みを得るためにはボリュームを上げるしかありませんでした。しかし、本当に大切なのは音量ではなく、音質です。先ほどのFurnace Bass Driveのコンセプトは“チューブ以外のアンプでもチューブ・アンプの音を出せる”というものですが、このAdvancing Driveのコンセプトは“大音量のチューブ・アンプの音を、小さな音でも出せる”というものです」と説明があった。
続いて、このイベントで初登場となるCORSAIRのこだわりポイントについて Mark Kendrick氏本人による演奏と解説があった。「私は約40年間、MusicmanやG&L、そしてもちろんFenderとレオ・フェンダーの設立した会社で働いてきました。そのエッセンスは私の身体に染み付いており、それらに対するリスペクトが今もあるのはCORSAIRを見ていただければ感じていただけると思います。このギターの最大のポイントは、“ナチュラルなサウンド”です。さらにセクシーで快適な演奏性を持つ楽器を作りたかった。ピックガードの真ん中部分の素材が違うのは、PUへの影響を避けるためです。またPUに関しては、フロントとセンターにはフォームバー・コーティングのワイヤーを使用しています。トラディショナルなストラトのリアはハイのピークが私にはキツイように感じるので、リアPUのみ多くのテレキャスターと同様のエナメル・コーティングのワイヤーを選択しました。またポジションごとに巻き数を変えており、それぞれの特性を生かせるように設計しています。ネックに関しては、3日間かけてビリヤードのキューのように引っかかることのない手触りに仕上げています」
そのほか、一般的にはネック材にはクォーターソーン(柾目)のものが好まれるが、Mark Kendrick氏自身が好むビンテージにはフラットソーン(板目)のものが多いため、CORSAIRではフラットソーンを採用していること、またCORSAIRは完全にハンドメイドで1本1本仕様が異なること(例えば、サンバーストのネック材はイースタン・ハード・メイプル、ブルーのネック材はビッグリーフ・メイプルを使用している)などが明かされた。
イベントは、最後に質疑応答の時間を設けて終了。参加者の質問にMark Kendrick氏が熱心に耳を傾けていた姿が印象的だった。
──自身の名を冠したブランドを立ち上げた経緯を教えてください。
実は私自身、レオ・フェンダーになぜフェンダーを辞めたんですか?と尋ねたことがあります。レオの答えは“これまでとは違うことをやるべき時がきた”というものでした。そして今、私自身も同じように感じて、自身のブランドを立ち上げたのです。
──ブランドのコンセプトは?
“自由を創造すること”です。私自身は長い間フェンダー社にいたので、そのスタイルが体に染み付いています。しかし、ポール・マッカートニーがソロ活動を始めた時に、最初はビートルズのカラーが残っていましたが徐々に自由な表現をしていったように、私もフェンダー・スタイルにこだわることなく私自身の自由な表現をしていきたいですね。プレイヤーの方に対しても“何々スタイルの方に向けて作りました”といった限定はしたくありません。
──新登場のギター、CORSAIRのポイントについて教えてください。
例えば、高域のピークを抑えたピックアップ、双方向に機能するトラスロッド、手触りを良くしながら最低限の下地を残して耐久性や湿度を保ったネック裏の塗装など……ポイントはたくさんあります。それらによって生まれるナチュラルなサウンドと、快適な弾き心地がポイントです。しかし、1番のポイントは、CORSAIRは私自身が1本1本をひとりで作っており、そのため特定の仕様を持たないこと、つまり自由であることです。
例えば、今日に限って言えば、いま思い浮かぶベスト・ピックアップはP-90です(笑)。明日には変わるかもしれませんよ(笑)。これをCORSAIRに取り入れたらどうなるかということを、私も皆さんも楽しむことができる。CORSAIRは1本1本異なる部分があり、それを自由に楽しむことができるギターなのです。
──あなたが作るAdvancing Driveは、どのようなサウンドを狙っているのでしょうか。
私がギターを始めた頃に使っていたアンプは、親戚からもらったフェンダーのバンドマスターのヘッドとショーマンのキャビネットでした。わかると思いますが、家で使う音量ではこれが歪まないんです(笑)。後に最初期のエレクトロ・ハーモニックスのLPB-1を手に入れてようやく……というのが私の原体験です。今でもお気に入りのアンプとして、フェンダーのバイブロラックス、ブラウン・トーレックスのコンサート、マスター・ボリュームなしのマーシャルと素晴らしいアンプを弾いていますが、どれもボリュームを上げなければロックな音がしません。でも欲しい音色が出るまでボリュームを上げると、みんなから音が大きすぎるって言われるんです。そこでAdvancing Driveを作りました。要するに小さな音でもチューブ・アンプの美味しいところを引き出せるものです。
──Furnace Bass Driveの開発は、どのような経緯で実現したんですか?
ある時ルディ・サーゾが電話をしてきて“ツアー先でアンペグのSVTが用意できないことがあるんだよ、持ち歩けるサイズでチューブ・アンプのようにホットな音が出せるペダルは作れないか?”と言ってきたんです。そこでAdvancing Driveにアレンジを施して送ったところ“コレだよコレ!! これ以上手を加えちゃダメだ!!”と強く言われました(笑)。それがFurnace Bass Driveです。こちらは、チューブ・アンプ以外のアンプをチューブ・アンプのように鳴らすのに最適なペダルです。ぜひ、皆さんも試してみてください。今ではルディは小さなアンプとFurnace Bass Driveでロックな音を出していますよ。“もうこれでアンプの心配をする必要がない!!“って(笑)。
スーパー・リバーブのブースト・サウンドを小音量で再現!
実はアっと驚くような有名ミュージシャンがユーザーリストに名を連ねるAdvancing Drive。バッファー的な使用方法からブースターとして、また、コンプ感のあるドライバーとしても使用することができるペダルだ。もともとはフェンダーのスーパー・リバーブをブーストしたような音を、小音量のアンプでも再現できないかというコンセプトで開発された。下のFurnace Bass Drive同様に、1台1台Mark Kendrick氏の手によって丁寧に作られている。ハンドペイントのため、まったく同じモデルは存在しないのも魅力だ。 [この商品をデジマートで探す]
チューブ・アンプライクなサウンドを持つベース・ドライブ
Furnace(炉)の名のとおり、サチュレートしたチューブ・アンプのサウンドを思わせる、ワイドレンジで倍音豊かなベース・ブースター/ドライブ・ペダル。最大+26dBのゲインをブーストし、ダーティにドライブさせることもできる。回路はシンプルで、それゆえにダイナミック・レンジが広く、ローが軽くならない。実はギターに使っても良い音がする逸品。 [この商品をデジマートで探す]
ポジションごとの個性が明確なビンテージ・トーンを実現
氏がよく使う表現に“アイスピックのような音”という言い回しがある。固く、突き刺すようで、耳障りな音のことだ。自身の名を冠したピックアップでは、そのような音を避け、より豊かで太いサウンドを目指している。オリジナルPUの素材、違う種類のワイヤーと磁石を自分が納得する音になるまで組み合わせを試し、それに加え個々のピックアップのポジショニングから計算されたワイヤー巻きとキャパシタンスとレジスタンスに調整を加えて、ポジションごとに最適なビンテージ・サウンドを蘇らせることに成功した。 [この商品をデジマートで探す]
Mark Kendrickが提示する新しいSTタイプ
海賊を意味するという「CORSAIR」。独創的なデザインのピックガードは、帆船の帆をイメージしているという。1本1本がハンドメイドであり、同じ仕様、同じサウンドのものは存在しない。“仕様で選ぶのではなく、音で選んでほしい”という言葉は氏の自信の表われでもある。また、ギター本体だけではなくピックアップに関してもオリジナルとなっており、ネック、ミドル・ピックアップでは60年代前半のストラトキャスターを、リアでは54〜55年のテレキャスターのサウンドをモチーフとしながらも、ポールピースの高さなどに独自の工夫が施されている。
※今回はプロトタイプの展示。詳細に関しては順次下記ページに公
http://www.ikebe-gakki.com/web
価格:¥29,000 (税別)
価格:¥29,000 (税別)
価格:¥54,800 (税別)