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- 2024/11/16
ATV / aDrums
今年急逝したMIDIの父、梯郁太郎氏が2013年に立ち上げた電子楽器メーカー、ATV。昨年リリースされた同社初のドラム製品=“aD5”は、そのこだわりのサウンドとリアルな演奏感で絶賛を浴びたが、今年満を持してエレクトロニック・ドラム・セット“aDrums”を発表。日本初となる“アコースティック・ドラム・シェル・タイプ”で、同社が培ってきた技術とアイディアを集結。そのルックス&サウンドはアコースティック・ドラムに迫る完成度を誇っている。リズム&ドラム・マガジン 2017年11月号では日本のファースト・コール、玉田豊夢を試奏者に迎え、aDrumsの全貌を徹底検証。今回はその内容を一部抜粋して紹介しよう。
電子ドラムはこれまでにも叩いたことはあるんですけど、正直ちょっと苦手だったんです。特に細かい音符を叩いたときに、電気信号的な音になるのが苦手で、今回もその点を一番意識して試奏したんですけど、自然に音がつながっていて、ビックリしました。リム・ショットしてるときと、してないときの音量の差もすごくリアルでしたね。そういう細かい表現に関して電子ドラムは、やっぱり厳しいのかなと思っていたんです。でもaDrumsはそういう細かい部分の再現が、僕の想像を遥かに上回っていました。驚かされましたね。
音がリアルっていうのはもちろんですけど、見た目がとても“ドラム”っていうところが自然で良いですよね。ヘッドの面積も広くなって、自分がいつも使っている生ドラムと同じ配置で、同じ感覚で演奏できる点が今までの電子ドラムと大きく違うところだと思います。リアリティがありますね。
シンバルも音のつながりが良くて、生のシンバルを叩いているような感覚がありました。一番進化を感じたのはハットですね。今までの電子ドラムはハットがやっぱりネックで、クローズ、ハーフ・オープン、オープンの幅がかなり大雑把だったと思うんです。でもaDrumsはかなり繊細なプレイにもついてきてくれて驚きました。表現の幅は相当細かくなっていると思います。
このルックスならステージ上に置いてあっても違和感がないですよね。セットはaDrumsで、シンバルは全部生とか、そういった使い方も面白そうです。もちろん自宅での練習にもバッチリだと思います。電子ドラムで練習しても、それを生ドラムでやるとなると、どうしてもギャップがあると思うんですけど、aDrumsはその差がほとんどないんじゃないかと思いました。ここまで生の形をしていながら、あれだけの消音性があれば、練習もかなり静か、かつリアルにできるんじゃないかと思いますね。
ATVが昨年発表した音源モジュール“aD5”は、こだわりの手法で丁寧にサンプリングされた生々しい音色の素晴らしさ、叩いてから発音されるまでのタイム・ラグを感じさせない低レイテンシー性能、さらには叩き手の特性に合わせたパッドごとの感度調整が行えるなど、ドラマーが心地良く演奏できるための機能が極めて高いレベルでバランスした製品でした。そして今回、そのモジュールのポテンシャルを最大限に発揮できる電子ドラム“aDrums”が満を持して完成しました。
その特徴はアコースティック・ドラムと同じ“シェル”を採用していることでしょう。このシェル・タイプの電子ドラムは日本では初めてだそうです。素材もバーチが使われているということで、装備されているメッシュ・ヘッドを通常のヘッドに張り替えれば、小口径の生ドラムとして立派に機能するであろう、本格的な造りになっています。シンバル類もリアルなサイズ設定で、叩いた感触も実にナチュラル。実際に座って叩いてみると、生ドラムと同じような気分で演奏に入り込める効能を強く実感できて、ドラマーにとって視覚的な要素が大きなウエイトを占めていることを再確認しました。
その他にも非接触式センサーを採用したハイハットや、各パッドに配置されたマルチ・センサー、さらにサイド・スティック専用のリムを装備するなど、画期的なアイディアを多数取り入れて、リアルな演奏性に徹底的にこだわった究極のエレクトロニック・ドラムが“aDrums”です。
(Text : Yusuke Nagano)
リズム&ドラム・マガジン 2017年11月号では、引き続きaDrumsのスペックを細かく検証し、開発秘話や玉田豊夢の試奏レビュー完全版も掲載。さらに付録DVDには、玉田がaDrumsを本気で叩くスペシャル・パフォーマンス映像を独占収録しているので、是非チェックしてほしい。
本記事は、リットーミュージック刊『リズム&ドラム・マガジン 2017年11月号』の特集記事を一部転載したものです。本誌記事には、ここでは紹介できなかったaDrumsの詳細なスペック検証や開発秘話、玉田豊夢の試奏レビュー完全版を掲載。そして付録DVDには玉田によるaDrumsスペシャル・パフォーマンス映像が収録されているので、ぜひチェックしてみてください。
また本号の表紙飾るバディ・リッチの生誕100周年を記念して、超貴重な生前のインタビュー本誌初掲載! さらに創刊35周年記念特集の第6弾では、「“ポピュラー音楽の原点”を振り返る〜the JAZZ DRUMS」と題してジャズにフォーカス。約50ページに渡る保存版、要注目の内容となっています!
玉田豊夢
たまだとむ●1975年生まれ。20歳の頃からサポート活動をスタート。中村一義、小谷美紗子、斉藤和義、いきものがかり、レキシ、角松敏生、つじあやの、椎名林檎、絢香、フジファブリックなど数多くのアーティストのライヴ/レコーディングに参加。2010年には松原秀樹(b)、田中義人(g)、森俊之(key)と共にC.C.KINGを結成。さまざまなジャンルを越えた、幅広い活動を展開中