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- 2024/11/16
Martin / OM-28、OM-42、OM-18E、OM-35E、OMJM John Mayer
好評連載MARTIN TIMES。14回目となる今回は、前回好評だった0シリーズ弾き比べ企画の続編として、OM(オーケストラ・モデル)シリーズの弾き比べを行ないます! 今回プリアンプを搭載したOM-18EとOM-35Eの2モデルが新たに加わり、そこにスタンダードなOM-28とOM-42も交えて、普段からOM-28を使用している斎藤氏に弾いてもらいました。どのモデルも個性が強く、必ずマッチする音楽がありますので、OM好きの方も、まだ弾いたことのない方も、ぜひチェックしてみて下さい!
マーティンのOM(オーケストラ・モデル)は、同社のラインナップが大きく変化するきっかけとなった歴史的なモデルである。1833年創業のC.F.マーティン社がもともと作っていたのはガット弦ギターで、スティール弦ギターが標準モデルとしてカタログに掲載されたのは1922年のことだった。発売されてすぐに成功を収めたスティール弦のモデルは1928年には標準仕様となり、ガット弦ギターのほうが特注扱いとなった。とはいえ、楽器そのものはテンションの強いスティール弦に合わせて構造が強化されたものの、12フレット・ジョイントのデザインは基本的に変わらなかった。
しかし翌29年になると、当時大人気だったギター/バンジョー・プレイヤーのペリー・ベクテルが、“スケールが27インチで15フレット・ジョイントのギターは作れないか?”とマーティン社に問い合わせてきた。この頃、リズムを刻む楽器の主役がバンジョーからギターに移行しつつあったのだが、長いネックのバンジョーに慣れたプレイヤーにとって、12フレット・ジョイントのギターは物足りなかったのである。しかし、ベクテルが求めた仕様では構造的に無理があるということで、12フレット・ジョイントの000ボディのアッパー・バウトを短くし、Xブレイシングをサウンド・ホールに近づけることで、ドレッドノートと同じロング・スケールの14フレット・ジョイント・モデルを完成させた。このギターは当初000-28ペリー・ベクテル・モデルと呼ばれたが、翌30年にはOM-28へと変更。同年にはマホガニー・ボディのOM-18がラインナップに追加され、1934年には、既存のモデルのほとんどが14フレット・ジョイントに設計変更されることになる。
現在では、ボディ材や装飾の違いでスタイル18から45まで、さまざまなOMが用意されている。今回は2017年のニュー・モデルとしてエレアコ仕様のOM-18Eと35Eが発売されたのを機に、これら2本に加えてOM-28と42をそろえ、お馴染み斎藤誠氏の演奏でスタンダード・シリーズのOM限定の聴き比べをしてみようという企画である。木材の種類やグレードによる音の違いを、じっくりと確かめてみていただきたい。
上記でも述べたとおり、史上初のオーケストラ・モデルであるOM-28は、マーティンのOMの中で最もスタンダードなギターだと言えるだろう。25.4インチのロング・スケールによる高めのテンションの弦がドライブするトップの振動を、ローズウッドのボディがしっかりと受け止めることで生み出されるダイナミックなサウンドは、“オーケストラ・モデル”ならではの醍醐味を味わわせてくれる。ネックのグリップも2本のエレアコと同じモダンなタイプで、現代の奏法にピッタリだ。
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【Specifications】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:イースト・インディアン・ローズウッド ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX・スキャロップト ●価格:490,000円(税抜)
同じローズウッド・ボディでも、28と35ではバックが2枚か3枚かという違いだけで、鳴りもずいぶん違ってくるんですね。ボディ本体の音がモロに出ている感じがするのは、この28のほうだと思います。OM-18の音が優しく聴こえるぐらいアタックが太いというか、ガリッとはっきり聴こえてきてうれしいですね。ガリッといったまま大きな音で鳴るほど強いレスポンスがあって、単音弾きの音が良いので、リードが弾きたくなります。指先が生っちょろくなった時には、OMで鍛え直すと良いですよ。僕は自分のギターでそれをやっています(笑)。2日ぐらい経つと指先が出来上がって、どんなギターを弾いても大丈夫な指になるんですよ。
スタンダード・シリーズのOMでは最高峰のモデルとなるスタイル42は、今回の試奏器の中ではトップ材のグレードはもちろん、アバロンによるスノーフレイクスのポジション・マークやボディのパーフリング、ヘッドのロゴなどのインレイ、ゴールドのペグなど、装飾も上位モデルにふさわしいものとなっている。ネックのグリップもこのモデルだけがやや太めのスタンダード・テーパーで、あえて標準仕様の演奏性を提供しているところにも最高峰の貫禄が感じられる。
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【Specifications】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:イースト・インディアン・ローズウッド ●ネック:ジェニュイン・マホガニー ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX・スキャロップト ●価格:840,000円(税抜)
これはテンションが強いまま、高域の“シャリーン”という豊かな倍音が乗っかってゴージャスになった感じの音がします。ドレッドノートのように音が散らばらなくて、音に芯がある分、中音域もより豊かに響きます。ネックがやや太いのも効いているんでしょうね。ストロークでコードを弾くと、“シャリーン”が乗っかっているのがすぐわかります。デモの曲の最後にストロークを入れたのも、そこを確かめてもらおうと思ったからです。ただ、それでいて、今回の4本の中では指弾きみたいに繊細なことを一番やりたくなるギターでもあるんですよ。
マホガニー・ボディのOM-18は1930年に発売されて間もなく、カントリー・バンドのサンズ・オブ・ザ・パイオニアズのギタリスト、カール・ファーが使い始めて広く知られるようになった。2017年のニュー・モデルは、べっ甲柄のピックガードやバインディング、トップのエイジング・トナー仕上げなどでビンテージ感を表現する一方、ハイ・パフォーマンス・テーパーのネックやドロップ・イン・サドルなど、演奏性やサウンドに関わる部分にはモダンな仕様を採用。
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【Specifications】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:ジェニュイン・マホガニー ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX・スキャロップト ●ピックアップ・システム:フィッシュマン・オーラVTエンハンス●価格:450,000円(税抜)
何回も言っていますが、マホガニー・ボディというと“干し草の匂い”を感じるようなサウンドが好きで、それを強調するドロップDの曲を選びました。ウィッシュボーン・アッシュのファンがニヤッとしそうなフレー
2017年のSUMMER NAMMでOM-18Eとともに発表されたローズウッド・ボディのOM-35Eは、マーティンの中でもスタイル35のみの特徴である3枚合わせのバックを採用。バインディングやロゼッタなどの装飾、トップ材のグレードはスタイル28と同じだが、指板にバインディングが施されており、これだけでもより華やかな印象となっている。ネックはやはり、ハイ・パフォーマンス・テーパーとモダンな仕様だ。
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【Specifications】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:イースト・インディアン・ローズウッド ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX・スキャロップト ●ピックアップ・システム:フィッシュマン・オーラVTエンハンス ●価格:510,000円(税抜)
この35Eは、18Eよりもテンションが強いような印象がありました。世の中の人たちは、これと000がお店に並んでいたら000を買っちゃうだろうなぁと思いましたが(笑)、僕は自分のギターと似た、このテンション感が好きです。バックが3ピースということで、音をしっかりと反射するという効果もあるのかもしれません。ドレッドノートと比べて、ローの出方とか、いろんなところを引き算してくれて、まとまりやすい音ですね。それと、指板のバインディングの白が目にパーンと飛び込んでくる。この色が焼けてくるとまた良い感じになるんですよね。エレアコはこの35Eも18Eも、フィッシュマンのラウドボックスとの相性がすごく良いですね。
アメリカで絶大な人気を誇り、大の親日家でもあるSSW、ジョン・メイヤーのシグネチャー・モデル。限定生産だったOM-28 John Mayerの好評に応え、仕様の大部分を受け継ぎながら、よりお求めやすい価格でレギュラー化したのがこのモデルである。トップのスプルース材はシトカよりも繊細なサウンドが特徴のイングルマン/イングルマン・スプルースで、ネックはやや厚みのあるスタンダード・テーパーを採用。ヘリンボーンのパーフリングとべっ甲柄のピックガードがビンテージの雰囲気を醸し出し、ロゼッタのアバロン・インレイが華やかさを添えるお洒落なギターだ。
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【Specifications】
●トップ:イングルマン/イングルマン・スプルース ●サイド&バック:イースト・インディアン・ローズウッド ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 11/16インチ(42.9mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX・スキャロップト ●ピックアップ・システム:フィッシュマン・ゴールドプラス ●価格:650,000円(税抜)
僕も普段からOM-28を使っているので、今回のギターはどれも接しやすかったですね。僕のはネックのグリップがビンテージVという違いがあるだけですから。000はOMと同じボディだけれど、弦の張りが柔らかいので、強く弾くと弦がフレットに触れやすいという印象があるんですよ。その点、OMは同じ弦高でも張りが強い分フレットに触れずにいてくれるので、単音もすごくキレイに出ますね。今回はOM-18Eだけボディがマホガニーですが、マホガニー・ボディのOMって、000ともまた違うバランス感が良いなぁと思いましたね。普段はあまり弾いたことのないボディ材のOMということもあって、今日ずっと弾いていたいと思ったのは18Eでした。それに対してローズウッドのボディだと、OMの力強さがより強調されて、プリング・オフでも音がハッキリと出ますね。000の42や45みたいなギターが横にあると、そっちへ行っちゃう人が多いと思いますが、OMは音がデカくて太いから、ひとりで弾き語りをやるにはとても良いと思います。OMを選んだ人には本当、拍手を送りたいですね。エレアコとラウドボックスの相性が良かったのは、ピックアップも進歩しているということなんでしょう。それにしても、これだけの種類のOMが一堂に会する機会は、なかなかないですよね。
斎藤誠(さいとう・まこと)
1958年東京生まれ。青山学院大学在学中の1980年、西慎嗣にシングル曲「Don’t Worry Mama」を提供したのをきっかけに音楽界デビューを果たす。1983年にアルバム『LA-LA-LU』を発表し、シンガー・ソング・ライターとしてデビュー。ソロ・アーティストとしての活動はもちろん、サザンオールスターズのサポートギターをはじめ、数多くのトップ・アーティストの作品への楽曲提供やプロデュース活動、レコーディングも精力的に行なっている。2013年12枚目のオリジナル・フルアルバム『PARADISE SOUL』、2015年にはアルバム「Put Your Hands Together!斎藤誠の嬉し恥ずかしセルフカバー集」と「Put Your Hands Together!斎藤誠の幸せを呼ぶ洋楽カバー集」の2タイトル同時リリース。そして2017年4月26日には全曲マーティン・ギターによる弾き語り&セルフ・カバーの待望の新譜、『ネブラスカレコード〜It’s a beautiful Day〜』をリリース! また、本人名義のライブ活動の他、マーティン・ギターの良質なアコースティック・サウンドを聴かせることを目的として開催されている“Rebirth Tour”のホスト役を長年に渡って務め、日本を代表するマーティン・ギタリストとしてもあまりにも有名。そのマーティン・サウンド、卓越したギター・プレイを堪能できる最新ライブ情報はこちらから!