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- 2024/11/16
Kz Guitar Works / Kz One Solid 3S11 T.O.M
2001年に創立したKz Guitar Works(ケイズ・ギター・ワークス)は、2007年〜2010年にかけてブライアン・メイの愛器“レッド・スペシャル”のオフィシャル・シグネチャーを手がけるなど、確かな技術と独創性に溢れるアイディアを持ったブランドだ。今回は2015年からスタートした同社オリジナル・ギターのフラッグシップであるKz One Standard(ホロー・ボディ)、そして今秋新たに発売となる新モデル=Kz One Solid(ソリッド・ボディ)の両器を、名手・稲葉政裕(まさひろ)氏とその子息、喬之(たかゆき)氏の両名を迎えてチェックしていこう!
Kz Guitar Worksらしさ、それは多彩なサウンド&コントロール、オリジナル・ピックアップのレンジが広く芯のあるトーン、パワフルでありながらノイズが少ない点、635mmスケール(25インチ)を採用している点などによく表われている。この Kz One Solidは、上位モデルKz One Standardで培ってきた同社の持ち味をしっかりと継承しつつ、ステージでの扱いやすさにフォーカスしたニュー・モデルだ。ブランド初のソリッド・ボディ構造により、サウンドもタイト&ソリッドなものとなっている。ブリッジ部はチューン・オー・マティック&ストップ・バー・テイルピースとシンクロナイズド・トレモロの2タイプを用意。その特性を最大限に生かせるよう、チューン・オー・マティックのモデルはマホガニー・ボディ&ネック、シンクロナイズドのモデルはアルダー・ボディ/メイプル・ネックを組み合わせており、外観以上に異なるサウンド・キャラクターに驚かされるだろう。チューン・オー・マティックは言わばギブソン系、シンクロナイズド・モデルはフェンダー系のキャラクターとも言える。
特筆すべきは、5ウェイ・スイッチとシリーズ/パラレル・スイッチ、そしてトーン・ポットのプル・スイッチという、比較的シンプルなコントロールまわりで11種ものピックアップ・コンビネーションを実現できる点だ。シリーズ/パラレル・スイッチとは、ハムバッカー・ライクな直列と、シングルコイルらしい鈴鳴りするハーフトーンを生み出せる並列の切り替えスイッチ。さらにトーン・ノブのプッシュ/プルで、ミドル・ピックアップの位相が反転し、特徴的なフェイズ・サウンドを得ることができる。特にフロントとミドルでのフェイズ・アウト・サウンドは、往年のブリティッシュ・ロックで聴くことができる独特なサウンドだ。ネック・グリップは弾き疲れしないやや薄めのモダンCシェイプで、ステージでの使用を前提としたモデルらしい設計だ。
こちらはチューン・オー・マティック&ストップ・バー・テイルピースという王道のブリッジ構成。さらにマホガニー・ボディとネックの組み合わせはギブソン系ギターを連想させるが、独自のピックアップとコントロールにより本モデルならではの個性を確立しているのがポイントだ。
Specification
●ボディ:マホガニー ●ネック:マホガニー ●指板:ローズウッド ●フレット数:22 ●ピックアップ:KGW Original Pickup×3 ●コントロール:1ボリューム、1トーン(プッシュ/プル)、5ウェイ・セレクター、シリーズ/パラレル・スイッチ ●ブリッジ:ゴトー・チューン・オー・マティック&ストップ・バー・テイルピース ●ペグ:ゴトーSG301 ●スケール:635mm ●カラー:マット・アンティーク・マホガニー、ほか
シンクロナイズド・トレモロを搭載したこちらはアルダー・ボディにメイプル・ネックと、ストラトキャスターを彷彿させる材構成。しかし、ピックアップをシリーズ配線にすることでかなりパワフルな音も作れるうえ、本器ならではのフェイズ・アウト・サウンドも魅力的だ。
Specification
●ボディ:アルダー ●ネック:メイプル ●指板:ローズウッド ●フレット数:22 ●ピックアップ:KGW Original Pickup×3 ●コントロール:1ボリューム、1トーン(フェイズ・スイッチ)、5ウェイ・セレクター、シリーズ/パラレル・スイッチ ●ブリッジ:ゴトーNS510TS-FE1 ●ペグ:ゴトーSG301MG-T ●スケール:635mm ●カラー:マット・3トーン・サンバースト、ほか
フェイズ・アウト・サウンドは我々の世代にはグッとくる。
5ウェイ・スイッチとシリーズ/パラレル・スイッチの組み合わせがとても使いやすいですね。例えばシリーズ/パラレル・スイッチをシリーズにしておいて、5ウェイでフロントを選択すると、シングルの甘い音がします。次に5ウェイをフロントとミドルのハーフトーンの位置にすると、ふたつのピックアップが直列でミックスされて、一気にレッド・ゾーンに入る感じでハムバッキングのような太い音が得られます。これはライブでも使いやすいと思いますね。それから、私は独特のフェイズ・アウト・サウンドもお気に入りです! 我々の世代にはグッとくる、かつてはブルース・ギタリストがよく使った音なのですが、最近はこの音を出せるモデルがないんですよ。若い世代には新鮮に聴こえるでしょうし、ライブで人とは違う音で勝負したい時にはオススメのサウンドです。
ピックアップをシリーズ配線にした時のパワフルな音が好きですね。
Kz One Solidは2種類のモデルがありますが、僕はチューン・オー・マティックのモデルが好きですね。最初に手にした時に、作りがしっかりしていることに驚きました。スケールが長すぎず楽に押さえられますし、当然チョーキングで音がつまるところもないです。ロー・コードの握りやすさやハイ・ポジションの弾きやすさ、すべてにストレスがなくて、とにかく弾いていて気持ちが良い。ヘッドの形状やオリジナルのピックアップも、スゴくかっこいいと思いました。サウンド的には、特にピックアップをミックスしてシリーズにした時のパワフルな音が好きで、歪ませた時の気持ち良さは最高です。僕がやっているバンドでも“バッキングはシングル的な音で、ソロはパワフルな音が欲しい”という要望が多いんですよ。このギターなら、スイッチの操作で簡単に要望に応えられるなと思いました。ライブで使うには最高ですね。
Kz Guitar Worksのフラッグシップ・モデルであるKz One Standard。Kz One Solid以上に多彩なサウンドを持ち、なんとこれ1本で23種ものピックアップ・コンビネーションを楽しめる。ボディ材には美しいハードロック・メイプルとホンジュラス・マホガニーを組み合わせ、ネックもホンジュラス・マホガニー、指板はマダガスカル・ローズウッドと厳選された材を採用。ボディがホロー構造になっている点も本器ならではで、エアー感溢れる豊かなトーンを生み出す。fホールは有り/なしの各バージョンをラインナップ(写真はfホールなしのモデル)。ミディアム・ファットなネック・グリップは、安心感のある握り心地だけではなく、ミッドとローが豊かなサウンドにも一役買っている。ブリッジにはケーラー・トレモロを搭載し、操作性、チューニングの安定性ともに抜群だ。オリジナル・ピックアップの採用、635mmスケールの採用、シリーズ/パラレルの切り替えスイッチ、フェイズ・スイッチなどはKz One Solidと同じだが、さらに多彩なサウンドを楽しめるモデルという位置付けだ。
Specification
●ボディ:フレイム・メイプル・トップ、ホンジュラス・マホガニーバック ●ネック:ホンジュラス・マホガニー ●指板:マダガスカル・ローズウッド ●フレット数:22 ●ピックアップ:KGW Original Pickup×3 ●コントロール:1ボリューム(プッシュ/プル)、1トーン(プッシュ/プル)、ピックアップ・オン/オフ・スイッチ×3、シリーズ/パラレル・スイッチ ●ブリッジ:ケーラー7300 ●ペグ:ゴトーSG301MG-T ●スケール:635mm ●カラー:シースルー・ブラック・バースト、ほか
好きなポジションをひとつ見つけて、それを基準に操作すれば複雑ではありません。
非常に美しいトップ材が印象的なギターですね。さすがフラッグシップ・モデルだけあって、良い材が使われていることが一目でわかります。手にした時の少しファットなネックのグリップ感も安心感があっていいですね。チェンバード・ボディは不自然な鳴り方をするものもあるんですが、これはソリッド的な反応の良さに加えて、ネックとボディが一体になったようなリッチなトーンが出せます。これがピックアップの音とよく合いますね! ピックアップ・バリエーションは23種類とKz One Solid以上に多彩なので、コントロールが複雑なのではと思う人もいるかもしれませんが、好きな音/好きなポジションをまずひとつ見つけて、それを基準に操作すればいいだけなので、何も複雑なことはありません。私が基準にしたのはセンターとリアのシリーズ配線の音で、メチャクチャ気に入りましたね。大好きな音です。
オリジナルピックアップ“KGW”は、ビンテージ・ブリティッシュ・トーンを持つ、非常に扱いやすいシングルコイル・ピックアップだ。意図的に減磁したセラミック・マグネット、一般的なシングルコイルに採用されているものより細いワイヤー、金属カバーと同様の効果が得られるシールディングされたボビン、シールド効果を持つスティール製アンダー・プレート(U字ヨーク)などのこだわりのパーツで構成され、60’s UKサウンドの再現とノイズの低減を両立させた。コイルのターン数は基本的には少なめだが、ポジションごとにターン数が変えられ、出力が調整されている。コイルはワックスポッティングしたあとにエポキシ樹脂で全体をコーティングしているため、ハウリング対策も万全だ。ミドル・ピックアップのみ逆巻き・逆磁極で、ミックス時にハム・キャンセル効果が得られる。機能的にも素晴らしいピックアップだが、何よりもその独自性が高いサウンドを楽しみたい逸品である。
ピックアップの音と見た目が最高!
──稲葉政裕
どちらのギターもサウンド・バリエーションが豊富ですが、まずは自分の好きな音を見つけて、それを基準に音を作り込んでいくのが良いと思いました。ピックアップの音と見た目が最高で、単体売りはしていないそうですが、このピックアップだけでも欲しいくらい良かったです。通常のシングルとしてはとてもレンジが広く、ミックスしてシリーズで使うとミドルが豊かになって、普段ハムバッカーを弾いている人でも納得のサウンドが出せると思います。
音もプレイ面も新しい可能性を感じました。
──稲葉喬之
音の良さはもちろん、チューニングの安定性、ピッチの良さもメイド・イン・ジャパンのモデルらしく、素晴らしいですね。設定によってはかなりパワフルな音も出せますし、ギター1本で本当に多彩な音が出せるのが良かったです。今回、既存のギターとはまったく異なるKz Guitar Worksのギターと出会って、サウンド面でもプレイ面でも新しい可能性を感じることができました。その意味では、自分の成長につながるギターだなと思います。
Kz Oneシリーズを“見て、聴いて、弾いて”楽しむ入場無料のインストア・イベントが9月24日(日)、渋谷フーチーズにて開催決定! 今秋一般販売開始予定のKz One Solidの全ラインナップを先行販売するほか、旧仕様のKz Oneスペシャル・プライス・セール、低金利ローン、購入後
【イベント内容】
第一部:14:00~15:30/デモ演奏ライブ&トー
さまざまなジャンルの名曲をプロ・ギタリストの清水一雄氏&高橋
第二部:15:30~17:00/試奏体験・展示即売会
9月13日(水)発表のKz One Solidを全ラインナップ用意し、どこよりも早く試奏できるチャンス。また、旧仕様のK
詳細はKz Guitar Worksの公式HPまで。
本記事はリットーミュージック刊『ギター・マガジン2017年10月号』の特集「稲葉政裕&喬之親子が弾くKz Guitar Works」を転載しています。
価格:¥230,000 (税別)
価格:¥250,000 (税別)
価格:¥500,000 (税別)
稲葉政裕
いなば・まさひろ◯1960年生まれ。幼少から洋楽系ギタリストを好んで聴き、コピーする日々を送る。加山雄三、吉田拓郎、甲斐バンド、渡辺美里、山崎まさよしらのライブ/REC、また小田和正プロデュース“Far East Club Band”の2作品に参加。ブルース・フィール溢れた情熱的なプレイが特徴。ビンテージ・ギター・マニアでもある。
稲葉喬之
いなば・たかゆき◯1992年生まれ。4人編成のバンドAwesome Handsomesのギタリストであり、稲葉政裕氏の子息。2017年10月、『Cities and Girls』をTrucks Recordから発売。同時に全国ツアーもスタート。父・政裕氏直系のブルージィなプレイはもちろん、バジィ・フェイトンやヌーノ・ベッテンコートなどから影響を受けたプレイ・スタイルが武器。