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- 2024/11/16
KORG / Grandstage
高品位なピアノ音色を新たに搭載し、ステージでのパフォーマンスに便利な機能を多数装備したコルグGrandstageが登場した。快適な演奏、操作が可能となっている本機は、多様化する現代の音楽シーンにおいて、ピアノを中心に活動するプレイヤーたちの強力な味方になるだろう。今回は、アコースティック・ピアノ、エレクトリック・ピアノに精通し、普段からKRONOSを愛用するJazztronikの野崎良太がGrandstageを試奏。お気に入りのプリセット音源でデモ演奏を披露いただき、そのサウンドや、機能、操作性についてコメントをいただいた。
2017年11月19日(日)12:00より、KORG主催による一日限りのスペシャル・ライブ「KORG SUPER SESSION」が開催されます。出演アーティストには、1978年に「みずいろの雨」が大ブレーク、近年本格復活を果たし精力的に活動するシンガーソングライターの八神純子、そしてキャッチーなメロディーと圧巻の楽器プレイでオーディンスを沸かせるガールズ・ロックバンドのCYNTIAがラインナップ。本特集で紹介している最新ステージ・ピアノ「Grandstage」もライブ・ステージに登場します。当日は会場でしか買えないオリジナル・グッズやアウトレット販売、そしてコルグの最新機材が当たる大抽選会も開催! 白熱のライブ・パフォーマンスと最新KORG製品を堪能してください。詳細はイベント・特設サイトにて!
■日時:2017/11/19(日)OPEN 11:30 / START 12:00 / CLOSE 14:30
■場所:日テレらんらんホール(よみうりランド内)東京都稲城市矢野口4015-1(地図)
■チケット:¥3,000(前売り/自由席)
※よみうりランド入園料込み ※再入場可 ※3歳以上チケット必要 ※すべて自由席(整理券の発行はありません)
いろいろなメーカーのステージ・ピアノを使ってきましたが、どれもピアノのサウンドがリアルに感じられず、いまいちピンとくるものがなかったんです。そこで出会ったのがコルグのKRONOSでした。音がすごくいいので最近はずっと愛用していますが、Grandstageもライブ用にすごく欲しいなと思いました。音の系統はKRONOSと同じですが、さらにライブに特化したステージ・ピアノですね。現場でやっている人が“こうしてほしい”と思う機能がたくさん付いていて、かゆいところに手が届く、素直に欲しいキーボードです。深い階層に入ることなく手元ですぐに音色が調整できますし、音色やエフェクトが自然な状態のまま、音が途切れることなく音色チェンジできるのがいいですね。それから僕はバイオリンやビオラなどの生楽器とライブをすることが多いので、生楽器と見た目が合うかというところも重要なんです。このGrandstageはそこまで強く主張せず、アコースティック楽器のような佇まいも気に入りました。
Grandstageは、ピアノからシンセまであらゆる音色の本格的なエンジンを搭載したコルグのモンスター・シンセKRONOSが、ステージ・ピアノとして直感的なパフォーマンスに対応できるよう再構成されたような印象の製品だ。とは言え、単純にコンパクト化されたわけではなく、ピアノ演奏に特化した機能や、KRONOSにはない新しいエンジン・音色も追加されており、ピアノを主軸にするプレイヤーにとってはかなり完成度の高いスペックとなっている。
まず、Grandstageの音色セクションはメインの“KEYBOARDS”と、それ以外またはレイヤー・スプリットなどに使用する“ENSEMBLE”の2セクションで構成されている。KEYBORDSセクションのグランド・ピアノのバンクには、KRONOSでハードとしては桁外れの大容量サンプリングで素晴らしいリアリティを実現した「SGX-2」のエンジンを搭載。ドイツ(ハンブルグ&ベルリン)、日本、オーストリアのグランド・ピアノのスタンダードとなっている名機はもちろん、今回イタリアの名ピアノが新規サンプリングで収録されたのが目玉の1つだ。柔らかく芳醇な音色を楽しむことができ、ほかのピアノ音色に比べ濁りが少なく、品のいい室内楽のようなシチュエーションにすごくはまりそうだ。鍵盤とのマッチングも良い。グランド・ピアノ界の名機たちが1台のGrandstageで選びたい放題になってしまったとは、なんとも贅沢な話だ。
また、アップライト・ピアノのバンクも用意されている。これも新規サンプリングということで、とても質の良いものが内蔵されている。この立体感と量感があれば、ライブでも違和感なく使用でき、グランド・ピアノとはまた違う風合いが演出できるだろう。
エレクトリック・ピアノは、KRONOSで多くの高評価を得ている「EP-1」を搭載。Grandstageのピアノ鍵盤でも非常に弾きやすい。オルガンは、トーン・ホイール・オルガンのモデリング音源「CX-3」に加え、サイケなロックなどには欠かすことのできない、トランジスターのオルガンをモデリングしたエンジン「VOX」「Compact」が新たに搭載されていることに興奮するファンも多いだろう。ピアノと並んで使用頻度の高いオルガン音色だが、これまでのステージ・ピアノではPCMであることがほとんどだった。こうして本格的なモデリング音源で演奏できるのは、プレイヤーにとってかなり嬉しいポイントだと思う。
そのほか、エレクトリック・グランド・ピアノやFMエレピの音色が、新規サンプルで存在感のある良い音で収録されている。
Grandstageのリアルタイム・コントロール面で特筆すべき機能は、何と言っても“DYNAMICS”ノブだ。ここで打鍵の強弱に対する音量や音色の変化具合を、リアルタイムで、しかも無段階でコントロールすることができる。例えば、ノブを左に回すとダイナミクスが広くなっていき、強弱を効かした生々しいピアノ演奏が必要な際に、自分のフィールにあったカスタマイズができる。右側に回すとフラットなダイナミクスになっていくので、打ち込みで作られた楽曲などで均一なタッチが必要となるときや、バンド・アンサンブルの中でピアノを際立たせたいときに効果的だ。さまざまなステージ、アンサンブル環境に置かれるプレイヤーにとって、なくてはならない機能になるだろう。
SW1/SW2ボタンには、各音色でよく使用しそうなパラメーターが設定してある。例えばエレピであれば、トレモロのオン/オフ、コーラスなどのエフェクトのオン/オフが割り当てられており、使いやすい設計になっている。
そして、Grandstageの音色エディット用パラメーターは、各音色に対してよく使用するであろうポイントだけに絞られているため、EDITボタンを押す→VARIATIONノブでパラメーターを選択→LEVELノブで値を調節という3つのステップだけで操作できる。これは機械操作が得意でない人にも分かりやすい設計で、操作に気が削がれることなく音楽に集中できるだろう。逆に操作が限られていることに不安を持つ人がいるかもしれないが、例えばピアノであれば、String Resonance(弦の共鳴)が用意されているなど、演奏者がこだわりたいポイントはちゃんと押さえてあり、ユーザーのニーズをしっかり汲んでいる印象だ。
鍵盤部はコルグのフラッグシップであるRH3鍵盤が採用されている。適度な重み感が心地いい。あくまで個人の感覚だが、同じピアノの音色、鍵盤でもKRONOSの方は出音により重量感があってその分タッチも重めに感じるのに対し、Grandstageは出音が若干すっきりめで、ピアノ系に特化して言えば滑らかに弾けそうな印象だ。ここは個人の好みの差が大きく出るところなのでぜひじっくり試奏してみていただきたい。
GrandstageではENSEMBLEセクションでキーボード系以外の楽器音色を出したり、レイヤー/スプリットすることが可能だ。驚いたのはその操作性の良さ。ENSEMBLEボタンをオンにし、同じ要領で音色を選ぶだけでレイヤーされる。2つのセクションのLEVELノブを使えば音量調整も一瞬でできるのだ。ノブのタイプがLED表示式のため音量バランスがひと目で分かり、またプリセットを変えたときに呼び出されたレベル値とノブの位置が違うというストレスもない。SPLITボタンを押すだけで瞬時にスプリットもできるし、ボタンを押しながら鍵盤を押せばスプリット・ポイントの変更ができるという手軽さ! SWAPボタンでUpperとLowerの入れ替えもでき、この一連の操作が実に簡単で、操作面で気が散らないのがとても良い。
これまでのステージ・ピアノでは、ピアノの音はすごく良くてもほかの楽器音色が全然ダメ……ということが正直少なくなかったが、GrandstageではPCMの音色もKRONOSからの高品位なものが収録されているし、何よりシンセサイザーに関しては、アナログ・モデリング音源「AL-1」が搭載されており、ステージ・ピアノでありながら本格的なシンセサイザーと同じ品質の音が出せる。臆することなくシンセ・ソロなどもできそうだ。また、ENSEMBLEセクションでKEYBOARDSセクションの音色も呼び出せることができるので、アコピとエレピを重ねるなんて技もできる。
Grandstageのマスター・エフェクト部はREVERB/DELAYセクションで種類を選び、DEPTHノブでかかり具合を、TIME-TAPでリバーブの長さやディレイ・タイムをタップして設定する。非常にシンプルで分かりやすく、直感的に操作しやすい設計になっている。リバーブ、ディレイそれぞれ4種類ずつタイプが選べるが、中でも新開発のiVerb(HALLとROOM)とSPRING(スプリング・リバーブ) が非常に高品質で、弾き心地が格段に良くなる印象があった。
EQはLOW/MID/HIGHの3バンドとなっており、効きも良く、EQ操作に慣れていない人でも的確に扱えそうだ。
作った音色は、FAVORITEに保存しておくことができる。WRITEボタン1つでできるのでこれも簡単で、ライブでよく使う音色を並べておくと便利だろう。また、演奏中に誤ってボタンやノブを触ってしまったときに音色が変わってしまわないよう、PANEL LOCKボタンが備わっているのも安心だ。
さらに、Grandstageにはスムーズ・サウンド・トランジション機能も搭載されている。これは、音色チェンジの際に音切れを起こさず、音色やエフェクトが自然なまま切り替わっていくというものだ。地味なことにも思えるが、音色切り替え時の音切れは音楽的に不自然で興ざめだし、弾いているプレイヤーにもストレスを与えてしまう。こういった、演奏者の気持ちを遮ることなく、音楽的に演奏を聴かせてくれる配慮は嬉しい。これならば、例えば静かな場面でパッド・サウンドを出し、途切れることなくピアノ演奏につながっていく……といったような演出も可能になるのだ。
本記事は、リットーミュージック刊『キーボード・マガジン 2017年10月号 AUTUMN』の特集記事を一部転載したものです。本誌記事には、ここに掲載されていない野崎氏によるサウンドや機能、操作性についてのコメントを掲載しているので、ぜひチェックしてみてください。
また本号の巻頭では「映画音楽の技法 Technique of Movie Soundtrack」と題して、近年盛り上がりを見せる日本の映画シーンに重点を置き、映画のサウンドトラックはどのように作られるのか、さまざまな角度から映画音楽の技法を探る特集記事を78ページにわたり掲載。そのほか小室哲哉&浅倉大介による新ユニット「PANDORA」のスペシャル・レポートや、X JAPAN 横浜アリーナ公演のライブ・レポートなどを収録した注目の1冊となっています!
価格:オープン
野崎良太(のざき・りょうた)
Jazztronikとしてアーティスト活動をする傍ら、ピアニスト/作編曲家としてプロデュースや劇伴を手がける。クラシック、ジャズ、クラブ・ミュージックだけにとどまらない独自の音楽性は国内外から評価が高い。2016年には『Keystone』『Private Edits』の2枚のアルバムを発表。2017年、新バンド“野崎良太 with GOODPEOPLEを結成、6月に1stアルバム『GOODPEOPLE』をリリースした。