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- 2024/11/16
コンパクト・リバーブ
ギタリストやベーシストに身近なコンパクト・エフェクターは、楽曲制作においても大いに活用されてる。中でも高品位なモデルが拡充しつつあるコンパクト・リバーブは、プレイヤーだけでなくクリエイターからの関心度も高いようだ。今回はトラックメイカーのKoyasに、デジマート売れ筋のコンパクト・リバーブ4機種を使用しデモ・トラックを制作していただいた。これらを導入する際の参考にしていただきたい。
定番の「Spring」「Plate」「Room」「Hall」に加え、洞窟の中で演奏しているような残響の「Cave」、複雑な反響パターン設計によって、反射する音域帯にも変化が生じる「Serane」の6種類のリバーブを装備。シンプルな操作でありながら、32ビットCPUデュアル・コアチップと32ビットDSPを搭載し、独自のアルゴリズムにより複雑な残響を生み出すことができる。
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強力なSHARCプロセッサーと32ビット浮遊演算プロセッシングにより12種類のリバーブを装備。また、キャビネットをエミュレートした周波数特性が得られる“キャビネット・フィルター”や、フットスイッチを長押しするとエフェクトをホールドできる“無限サスティン/フリーズ”などユニークな機能も搭載している。
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空間系エフェクトに定評のあるEventideの“全部入り”と呼ぶにふさわしいモデル。EQ、コンプまでも収録し、今後登場するアルゴリズムも無償でアップデートができる。ギタリストにとってこれ1台ですべてが賄えるといっても良いだろう。また、Bluetooth経由でiOSデバイスのアプリ(無償)からエフェクトのパラメーターをコントロールすることができる。
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入力から出力まで、32ビット浮動小数演算/96kHz処理による高音質を実現。同社の往年の名機から最先端なものまで非常にバラエティに富んだ合計12モード21タイプのリバーブを搭載。さらに2つのパッチを同時に使用できるA/B Simulモードや、リバーブと独立して使用できる内蔵ディレイを駆使することにより、さらに自由度の高いサウンドを作り出すことができる。
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DAWソフトはAbleton Live、オーディオ・インターフェースはRME FireFace UCXを使用。コンパクト・リバーブ各種はFireFace UCXの入出力端子経由でAbleton Live内の外部エフェクト・デバイスとして使用できるように設定しています。(※参考ページ:『コンパクト・エフェクターをDAWに取り入れよう!』)
デモ・トラックはハードウェアのリズムマシンやシンセをメイン音源として使用し、エフェクトのタイプ別に3つ制作しました。シーケンサーを走らせながらリバーブのトーンやディケイなどのパラメーターを変えていますので、響き方の変化も感じていただけると思います。
1曲目(トラック1)は定番の“Hall系”、2曲目(トラック2)は残響が美しい“Shimmer系”、3曲目(トラック3)は“Delay系”のテーマにした楽曲を試聴できます。また機種ごとのサウンドを比較できるように、1つのデモ・トラックに対して5バージョン(ノン・エフェクト+4機種)を用意しました。なお、最終的にオンライン・マスタリング・サービスLANDR(https://www.landr.com/ja)でマスタリングを行ない、音量感をそろえています。
主な使用機材
・Roland TR-8(リズム)
・Pioneer DJ TORAIZ AS-1(ベース)
・そのほか素材ファイル
使用プリセット
・Ambi Space AS-1R「Hall」
・BigSky「13A Trashy」
・H9 Max「F6 Carnegie Hall Algorithm:Hall」
・RV-500「10A Arena」
TR-8の各パートのセンド量をオートメーションを使ってコントロール。リバーブのパラメーターは演奏中に操作しています。TR-8はビンテージ・リズムマシンTR-808の独特な揺らぎが再現されているのですが、残響でその揺らぎが強調されているのがわかると思います。
今回は4機種ともトーンを操作していますが、Ambi Spaceはディケイも変化させています。H9 Maxは曲の最後だけ空間のサイズを変化させたところ、残響音の音程が上がっていくというユニークな効果が現れていますので、その辺りも注意深く聴いてみてください。
主な使用機材
・YAMAHA TG33(パッド・シンセ)
・REON Driftbox R(リード・シンセ)
使用プリセット
・Ambi Space AS-1R「Serene」
・BigSky「40A Articulate」
・H9 Max「F1 Shimmer Algorithm:Shimmer」
・RV-500「29A Chathedral」
クリエイターに人気の高いShimmer系リバーブをREON Driftbox Rのみにインサートして使いました。H9 Maxはピッチ・ディケイを操作しましたが、それ以外の機種はパラメーターは変えていません。なお、Ambi Space はShimmerのプログラムがないので似たプログラムを使用しています。
主な使用機材
・XLN Audio Addictive Drums 2(リズム)
・Ableton Live 9 Suite内のOperator(ベース)
・KORG monotron Delay(リード・シンセ)
・そのほか素材ファイル
使用プリセット
・Ambi Space AS-1R「Cave」
・BigSky「03A Echo Space(Magneto)」
・H9 Max「F3 Space Cathedral Algorithm:Space Time」
・RV-500「07B Cheesy Tape」
各機種にDelay系のエフェクトも搭載していたのでダブ・サウンドを試してみました。Delayが搭載されていないAmbi Spaceは、ダブっぽいプリセットを使いトーンやディケイを操作しています。トーンを絞るとDelayっぽく聴こえて良い感じになりますね。そのほかはTape Echo系のプリセットを選び、RV-500は、名機RE-201をほうふつとさせる実に良いテープ・エコー感が出ています。逆にBigSkyやH9 Maxはハイファイなでモダンなサウンドの印象を持ちました。
シンプル指向で操作が分かりやすいので、おそらくギタリストに人気なモデルだと思います。トラック2で使用した中では1番透明感がありましたね。またトーン・コントロールによって響き方の変化が顕著にみられました。この機種はトーンを絞った方が良い効果が得られると思います。
デモトラックでは使用した以外にも秀逸なエフェクトが多く「Cloud」や「NonLinear」などは、打ち込みやクラブ・クリエイターに向いているのではないでしょうか。さらにギター・スピーカーをエミュレートするキャビネット・フィルターをONにすると高域が落ちてやや硬めのギターっぽいサウンドになって面白いです。トラック2の制作時にYAMAHA TG33に通したところ、別物のシンセみたいに一皮むけた音になりました。
H9シリーズのハイエンド・モデル。空間系エフェクト全部入りと考えれば妥当な価格帯だと思います。1度に複数のパラメーターを操作する場合は、エクスプレッション・ペダルやMIDIコントローラーを使用した方が良いでしょう。Shimmer系などのピッチ・シフトを使用するエフェクトは特に良くできています。
何と言ってもRoland/BOSSの過去の名機から最新の空間系エフェクトまでがそろっているのが魅力的。リバーブに求められている標準的なサウンドは一通り網羅していて、トラック3で使用したテープ・エコー系も秀逸でしたね。また、高域と低域でそれぞれ独立して操作できるトーン・コントロールは単純な高域と低域の上げ下げでない音の変化が感じられて面白かったです。
私の音楽制作で使用するリバーブはプラグイン中心なので、今回のようなハードウェアのコンパクト・リバーブ4機種をそろえての検証はとても面白かったです。やはり、プラグインのようにコントローラーにアサインすることなく、ノブやボタンを使って直感的にパラメーターを操作できるのは大きなメリットだと思います。
ただし、リアルタイム操作に向いていないパラメーターもあるようで、いくつかの機種でプリディレイ(原音に残響音が追加されるまでの時間)のツマミを触ると一瞬音切れする場合がありました。そのため、ライブ・パフォーマンスなどで使用する場合は、そういった仕様もチェックしておいた方が良いでしょう。
とは言え、これほどのコンパクトさでありながらラック版エフェクターの名機に匹敵する高品位なサウンドが手に入るというのは、とても魅力的です。それぞれの質感がプラグインよりキャラ立ちしているのもAD/DAを含めてトータルで設計されているハードウェアならではだと思います。
価格:¥38,000 (税別)
価格:オープン
価格:オープン
Koyas
東京を中心に活動しているアーティスト・プロデューサー。DJ Yogurtと共に数々の作品をリリースし、フジロックフェスティバルをはじめとする数々の舞台に出演、曽我部恵一BAND/奇妙礼太郎/ケンイシイ等幅広いジャンルのリミックスを手がけた。2013年に電子音楽における演奏の要素にフォーカスしたレーベル、”psymatics”を設立し、翌年にはCD HATA(from Dachambo)との即興セッションユニットで作品を発表。2015年にはイギリスの伝説とも言えるアーティストThe Irresistible ForceのリミックスEP ”Higher State of Mind”を12インチヴァイナル限定でリリースした。音楽機材や制作に深い造詣を持ち、雑誌やwebメディアに音楽制作や機材についての記事を寄稿・翻訳するなど文化的な活動。2014年に日本人として初のAbleton認定トレーナーの一人となり、東京のAbletonユーザーグループ“Ableton Meetup Tokyo”の発起人として定期的にミートアップを開催している。