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- 2024/11/16
ギター・マガジンが本気で教えるこだわりの愛器撮影テクニック
ギター専門誌『ギター・マガジン』がギター・ファンに贈る、『ギターの撮り方』をテーマにした写真ノウハウ本『ギター・マガジンが本気で教えるこだわりの愛器撮影テクニック』が好評発売中です。本書にはさまざまなシチュエーションで、できるだけ手軽にカッコよくギターを撮影する方法について紹介されていますが、ここではその一部、『製品写真のように緻密&メカニカルに撮るテクニック』を特別公開いたします!
『ギター・マガジン』が、本誌で活躍中の一流カメラマンとタッグを組んでお届けする、ギターを上手に、カッコよく撮影する本。ネット・オークションなどでも有効な精緻で美しい商品撮影的なものから、思わず自慢したくなるような色気あるショットの撮影方法を細かく伝授。さらにギター・マガジンが過去に撮影してきたグラフについて、カメラマンからの解説付きで紹介しています。
価格:2,700円(本体2,500円+税)
著者 田坂 圭(著)/菊地 英二(監修)/星野 俊(監修)
仕様 A4変形判 / 160ページ
発売日 2017.08.04
ギター・マガジンの製品紹介記事や広告でもよく見る「真正面」のギター写真は、楽器本来の姿を緻密かつメカニカルに描写する際に有効です。大切な1本を美しくもありのまま記録したり、またオークションに出品したりする時にもこの撮り方は活用できるのではないでしょうか。
製品写真は無機質で面白みに欠ける……なんて思っている人もいるかもしれませんが、実はギター撮影のノウハウが詰まった基本でもあり、ストレートな表現であるがゆえに、こだわると非常に奥深いことも事実。
「手軽に撮れる」という本書のテーマに即し、なるべく自宅などでも再現しやすい簡潔な手法を紹介しますので、ぜひトライしてください。
いわゆる製品写真っぽくギターを撮るためには、まず背景を整理することが大切です。当たり前のことですが、自宅などで撮影する場合もゴチャゴチャした棚や家具の前は避けるべきでしょう。白壁のようなスッキリした部屋壁は許容範囲だと思いますが、柄や装飾入りの壁ではギターの存在感は薄れてしまいます。その場所の雰囲気を生かすことが目的ならそれもアリですが、ギターだけを見せるうえではギター以外の情報を排除できる無地の背景が基本。
むしろ撮影用の背景紙を部屋の一角にセッティングして、理想的な環境を作ってしまうほうが手っ取り早いとも言えます。背景紙はパーマセルやガムテープなどで壁に貼っても良いですが、専用スタンドがあれば自由度の高い製品写真風撮影が行なえるので、本書としては導入をオススメしたいところです。
なお、背景紙の色は汎用性に優れたホワイトかグレーが良いでしょう。サイズはギター1本を撮影するのであれば、幅1.35m×長さ5.5mのものが使いやすいと思います。これより大きい分にはスペースさえ確保できれば問題ありませんが、これより小さいと撮り方によっては背景が足りなくなる可能性があるため、避けたほうが無難です。
製品写真のようにギターだけを見せる場合、一般的なギター・スタンドに立てて撮るのもアリですが、それ自体が目立って少々邪魔かもしれません。そこで役立つのが、通称「三角スタンド」とも呼ばれる小型タイプのスタンドです。ご存じのようにフェンダー・ジャズマスター/ジャガーや、ギブソン・フライングVのような変形ギターは立てられませんが、ストラトキャスターやレス・ポール、セミ・アコースティック系にはだいたい使えます。
さらに裏技として、小型スタンドの前部に設けられたボディをホールドするためのツメを外側に折り曲げてしまう方法があります。これによってギターの前面に被るものが何もなくなり、スタンドの存在感はさらに薄まるというわけです。ただし、ギターの安定感は低下するのであくまで自己責任で ! ギター・マガジンの撮影でもツメを折ったスタンドを多用しますが、万が一の転倒に備えて楽器の横にアシスタントがひとり立つなど、万全を期しています。
なお、小型スタンドの注意点としては、普通にギターを置くと後方へ反り気味の状態になるため、真正面から撮影するうえではやや角度が付き過ぎてしまうことです。これを解消するには、スタンド後方のボディ・バックが接触する部分に布やスポンジなどをかませると良いでしょう。ギターを立て気味にすることができ、真正面からの撮影に適した角度が得られます。
前項を踏まえて、次はギターとカメラの配置を見てみましょう。まずギターですが、当然ながらカメラから見た時にビシッと垂直になるように置くのが基本です。これが左右どちらかに傾いていたりすると、それだけで見栄えが悪くなります。
それと同時に、ボディ・トップとカメラが平行に正対するように置くことも重要です。例えばカメラから見て1弦側が後方へ下がった状態だったり、その逆だったりすると、ギターの形まで何だか歪んだように見えてしまいます。基本中の基本とも言える事柄ですが、製品写真のように緻密な写真を撮るうえではギターの置き方は非常に大事。逆に言えば、カメラに対してギターが完璧に垂直/平行に設置されているだけで写真が締まってきます。
なお、ギターと背景紙の距離は撮りたい写真のイメージや光源によっても変わってくるのですが、ストロボ光で撮る場合を基準に考えると、背景の白を生かしつつ影も出にくい位置としては約1 ~ 1.5m程度が妥当でしょうか。
ギターを真っ直ぐ立てたら、カメラを三脚にセットして配置します。ギターをきちんと置いていてもカメラがいい加減では元も子もありませんから、細心の注意を払いましょう。なお、製品写真のように撮る際は正確な位置決めと緻密な構図設定が求められるので、三脚は必須です。
カメラとギターの距離はレンズの焦点距離に応じて変わりますが、ギターの形を忠実に写すならレンズの焦点距離は50~85m程度の中望遠域が理想的。特に製品写真ではシェイプを正確に捉えることは大切なので、見た目に近い形で撮れる70m~それ以上を確保したほうが良いかもしれません。カメラとギターの距離は、それに応じて決まってきます。部屋の広さや奥行きなどの撮影環境に制限される部分もあるかと思いますが、状況が許せば90mのマクロレンズを使うのもアリです。
カメラの位置が決まったら、次はカメラの高さを調整します。ギターの形を忠実に捉えるにはカメラ(=レンズの中心)がボディ・トップ面と平行に正対したうえで、かつファインダー内に表示されるフォーカスポイントの中心が12フレットと重なる位置にセットするとちょうど良いでしょう。ストラトやレス・ポールの場合、こうすると1弦側カッタウェイ内側のボディ・サイドが少しだけ見えるはずですから、それを目安にしてください。
カメラとギターの位置が決まったら、いよいよ撮影開始!……ですが、ここで大事なお話。薄々感づいていたとは思いますが(?)、製品写真のような撮り方をテーマとする場合は、ストロボの使用が前提になってきます。もちろんギター撮影は自然光でも可能ですし、現在のデジタル・カメラであれば蛍光灯や電球のような室内光の下でもホワイトバランス(WB)調整によってある程度はナチュラルに撮ることができます。
しかし、より緻密に美しく撮るにはストロボ光のほうが良い結果を得られる場合が多いうえ、何より自然光や環境光のように状況に左右されずに好みの光を「作れる」という点が最大のメリットです。
ストロボという言葉を出した途端、難しそうでついていけない……なんて声が聞こえてきそうですが、恐れるに足らず。実のところ、それほど難易度は高くありません。ここで紹介するライティングを覚えてしまえば、その他のシチュエーションにも応用できます。思い切って一歩踏み出せば、ギター撮影の楽しさが一挙に広がること間違いなしです。
というわけで、実際に「真正面」からギターを撮る際の基本ライティングを説明していきますが、まずはお手本カットを見てください。
全体にしっかり光が回って細部まで緻密に描写できているうえに、単にフラットなだけではない「質感」も表われています。それに貢献しているのは、6弦側ボディ・エッジと1弦側ホーンの内側に写り込んだハイライトや、ボディの立体感が伝わるコンター部分、ギラリと光る金属の表現などではないでしょうか。
製品写真というと、どこか無機質なイメージもあるかもしれませんが、ギターに関してはさにあらず。その楽器が持つムードまで捉えることが大切なのです。
Fender Custom Shop
2005 '56 Stratocaster NOS(Black)
では、このお手本カットにいたるライティングの過程を追ってみましょう。作例を手がけた菊地氏はギター撮影のエキスパートですから、実際には一発で完成形のセットを組みますが、あえて手順を分解してお見せすることでライティングのポイントをわかりやすく説明していきます。
また、ここではモノブロック・ストロボを使っていますが、クリップオン・ストロボや定常光ライトでも基本的な考え方は同じです。
なお、ギター全体をシャープに見せるため、絞りはf8〜f11程度かそれ以上に設定します。ただ、カメラやレンズの特性によってはあまり絞り込むと解像力が落ちる傾向もあるため(回折現象)適度にとどめましょう。ストロボ撮影においてはシャッタースピードは1/60〜1/125秒で固定。そのうえで露出計や背面モニターで確認しながらストロボの光量を決定し、露出が不足する場合はISO感度を上げることで補います。
撮影環境が白い天井であることが条件ですが、ストロボ・ライティングの中でも汎用性が高く手軽なのが天井バウンスです。この時のストロボはソフトボックスやアンブレラといった光の拡散器具は付けないリフレクター(本体前方に装着するフード。これが付いている状態がストロボのデフォルトと考えて良いでしょう)のみで、それを被写体よりも高い位置から真上の天井に当てて反射させることで広い範囲に光を落とす、という手法です。
まずは、通称「天バン」とも呼ばれるそのライティングで撮ってみました。光が均等に回っている点と、床まで伸ばした背景紙の白が写ることでコンターがある程度は表現できた点は悪くないですが、室内全体が明るくなることで光沢のある黒いボディに余計なものもいろいろ写り込んでしまいました。光沢の少ないギターであれば天バンでも問題ないかもしれませんが、このギターには向いていないようです。
次は、大幅にライティングを変えてみましょう。内側が白い傘にリフレクター付きのストロボを当てることで、光を反射(バウンス)させて柔らかくするアンブレラというアイテムを使います。このアンブレラ・ライトをギターから約2mほど離れた左斜め前から光らせて撮ってみました。
写真を見てみると、サイド方向からの光によって6弦側ボディ・エッジにハイライトが入ったことがわかります。また、天井バウンスの時のように部屋全体に光が回りすぎないこともあって、ボディ・トップに嫌な写り込みも出ていません。
ただ、左からの光の影響でペグ・ポストやコントロール・ノブの右に強めの影が出てしまいました。
②で気になったペグ・ポストやコントロール・ノブのシャドーを抑えるために、ストロボとは逆サイドに白いレフ板を置いてみます。ここでは、ヘッドからボディ・エンドまでカバーできる180cm×90cmの大きなものを使いました。これによってシャドーが弱まると同時に、1弦側ボディ・エッジにうっすらと白が映り込んで立体感が出てきました。
なお、レフ板はギターの側面から約60~70cm程度に配置しましたが、近づけたり離したりすることで効果が変わるので、ほど良い距離を探ってみると良いでしょう。
続いては、アンブレラからソフトボックス・ライトに変更してみます。こちらはアンブレラよりも光の指向性を狭められるため、さらに写り込みなどを少なくすることができます。また、アンブレラは白い傘に光を反射させるバウンス光であるのに対して、ソフトボックスは前面に張られた白幕で光を拡散させるディフューズ光であり、似て非なるものです。
この例では③と比べて大きな違いは出ませんでしたが、ボディ・エッジのハイライトは太くなり、それと同時に長さは少々短くなっています。このハイライトがもっと長くなり、ホーンからコンターあたりまでつながると、より美しくなりそうです。
そこで、ソフトボックスの前にブームスタンドで垂らしたディフューザーを置いてみることにしました。いかがでしょう? 6弦側ボディ・エッジのハイライトが見事につながり、ストラトならではの曲線美が一挙に強調されました。
また、ソフトボックスで拡散させた光をディフューザーによってさらに拡散させることで光質が柔らかくなり、ヘッドからボディ・エンドまで均一かつキレイに光を回すことができました。ペグ・ポストやコントロール・ノブ類のシャドーがほど良く弱まっている点にも注目です。
⑤の状態から、さらにギターの手前にグレーのカポックを置いて金属パーツに写し込み、メタリックな質感を強調したのが、【お手本カット】です。黒っぽく沈んでいた金属の色合いが、より自然な見え方になりました。
本書では、ここから『応用編:「真正面」からギター本来の姿を捉える』へと続き、フェンダー・ストラトキャスター、ギブソン・レス・ポール、マーティンD-28という定番モデルをサンプルに、さらに写真のクオリティを上げるためのこだわりポイントを紹介しています。以下のお手本がどのように撮影されたのか、本書『ギター・マガジンが本気で教えるこだわりの愛器撮影テクニック』をご確認ください!
Fender Custom Shop 2005
'69 Stratocaster Closet Classic (Olympic White)
Gibson Custom Shop 2002
Historic 1960 Les Paul Reissue (Washed Cherry)
Martin 2010 D-28 (Natural)
さらなる撮影テクニックが満載!
そのほかにも身近な背景&シチュエーションの中でギターをカッコよく撮る方法や、カッコよくムーディにギターの魅力を引き出す撮影方法など「魅せる」ギター写真のツボと技法が満載です!ぜひ本書を参考に素晴らしい写真を撮ってみてください!
Fender Custom Shop 2008 '51 Nocaster Relic (Blonde)
Fender Custom Shop 2013 '56 Stratocaster Heavy Relic (Sunburst)
Fender Custom Shop 2011 '63 Jazzmaster NOS (3 Color Sunburst)
Fender Custom Shop 2011
Time Machine Series 60 Stratocaster NOS (Sonic Blue)
Fender Custom Shop 2011
Time Machine Series 60 Stratocaster NOS (Sonic Blue)
Gretsch 1991 #7593
White Falcon (White)
【CONTENTS】
●第1章:カメラ機能&ギター撮影の基礎知識
Part 1:ギター撮影に必要な「露出」の基礎知識
Part 2:光の色=ホワイトバランス
Part 3:ギター撮影におけるレンズ選び
Part 4:楽器撮影の必需品と、あると便利なツール
●第2章:製品写真のように緻密&メカニカルに撮る
Part 1:「真正面」からギター本来の姿を捉える【基礎編】
Part 2:「真正面」からギター本来の姿を捉える【こだわり編】
Part 3:製品写真風に撮るその他のアングル&見せ方
Part 4:スペックをマニアックに見せる細部撮影
Part 5:アンプを緻密にカッコよく描写する
Part 6:エフェクター撮影のバリエーション
●第3章:身近な環境で「ギターのある風景」を切り取る
Case 1:カーテンを背景にウッディな質感を見せる
Case 2:あえて無機質な玄関ドアを生かして重厚感を出す
Case 3:ギターの魅力をぐっと引き立てる"ケース"活用術
Case 4:アンティークな家具と組み合わせてブルージィに
Case 5:複数のギターを「カッコよく」並べて撮る
Case 6:大きな背景を利用して"ギターのある景色"を切り取る
Case 7:「ギター+自然」という異質感をボケや色味で演出
Case 8:ありきたりな風景の中でギターを浮き立たせる
Case 9:車やバイクと絡めてクールなムードに仕上げる
Case 10:広角レンズ+フィルターでスケール感たっぷりに
●第4章:カッコよくムーディにギターの魅力を引き出す
Case 1:横たわるギターを雰囲気重視で捉える
Case 2:ダークな背景に際立つヘヴィな存在感
Case 3:光と影を生かしたモノクロ表現
Case 4:傷をクローズアップして「凄み」を見せる
Case 5:陰影によって強調する重厚感
Case 6:奥行きを生かす構図でダイナミックに
Case 7:金属パーツをギラリと光らせて貫禄をアピール
Case 8:ボディの「くびれ」と「アーチ」を艶やかに
Case 9:ギターをドラマチックに見せる背景の演出
Case 10:曲線美を表現する半逆光のライティング
●第5章:厳選フォト・アーカイブ! 「魅せる」ギター写真のツボと技法
Vintage Guitar Cafe、The Instrumentsなど、ギター・マガジンに掲載された名シーンを撮影カメラマンが解説。
Special Graph
Eiji Kikuchi presents
京浜工場地域でギターを撮る!
価格:¥2,500 (税別)