AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
アナログ・ターンテーブル
レコードを楽器のように演奏するDJをターンテーブリストと呼びます。レコードをこすって表現するスクラッチや、2枚の同じレコードを交互に演奏するジャグリングなどを習得するためには毎日の練習が欠かせませんが、機材選びも重要なポイントです。今回はターンテーブリスト定番の機材や最近のトレンドについて紹介しましょう!
DJプレイのテクニックと音楽性を競うさまざまなDJ大会が存在しますが、日本でも良く知られているのが、1985年から始まった歴史の長い“DMC WORLD DJ CHAMPIONSHIPS”でしょう。6分間の構成を採点して順位を決めるシングル部門とトーナメント形式で勝敗を決めるバトル部門、2〜4人のチームでのパフォーマンスを競うチーム部門がありますが、この大会で日本人のターンテーブリストが大いに活躍していることはご存じでしょうか?
Webサイト:http://dmc-japan.jp/
DMC WOLRD DJ CHAMPIONSHIPSで世界一になった日本人ターンテーブリスト
その中でも2002年のシングル部門で優勝したDJ KENTAROのパフォーマンスは、その後のターンテーブリストに多大な影響を与えたと言っても過言ではありません。
また、2010年から始まったRed Bull Thre3styleは、3種類以上のジャンルを織り交ぜながら15分の独創的なパフォーマンス競う新しいタイプのDJ大会です。使用機材がターンテーブルに限らず、DJ用CDプレーヤーやMIDIコントローラーなどを選ぶことができるところも特徴的です。この大会でも日本のターンテーブリストDJ SHINTAROが2013年に世界を制覇しています。
Webサイト:http://www.redbull3style.com/
ほかにも日本には高いスキルを持つターンテーブリストが多く存在していて、日本は有数のターンテーブリスト大国なんですよ! このようなスキルを身につけるにはどのような機材を選んだら良いでしょうか?
そもそもの構造を説明しますと、ターンテーブルにはレコードを乗せる“プラッター”と“モーター”が直結している“ダイレクト・ドライブ方式”と、“プラッター”を“ベルト”でつないで駆動させる“ベルト・ドライブ方式”があります。DJで使用するのはダイレクト・ドライブ方式です。
そしてターンテーブルのトルクはとても重要です。トルクの弱いターンテーブルを使うとレコードの滑りが悪くなり、イメージ通りのスクラッチやジャグリングができません。なるべくプレイに集中するためも、機材面でのストレスはなくしたいものです。ターンテーブリストを目指すのであればトルクの強いターンテーブルを選びましょう。
トルクの強いターンテーブルの一部を紹介します。
元々はリスニング用のレコード・プレーヤーとして製造されていましたが、ターンテーブルがモーターと直結しているダイレクト・モーターを採用しているためトルクが強く回転速度が安定している点や、耐久性の良さやDJに評価され、クラブ・カルチャーにとって欠かすことができないターンテーブルとなりました。デザインをほとんど変えることなく改良され、2010年にSL-1200MK6をもっていったん生産終了となりましたが、アナログ・レコード・ブームやTechnicsブランドの復活に伴い、2016年に高級オーディオ用ターンテーブルとしてリニューアルしました。最新モデルはSL-1200GRです。
DJ用CDプレーヤーや、DJミキサーなどを世界中のクラブ・シーンに浸透させたPioneer DJによるターンテーブル。多くのDJからの要望に応えるべく、操作感や機能面は定番ターンテーブルに限りなく近づけながらも、CDJを想起させる円形START/STOPボタンが特徴的です。テンポ可変幅は±8、±16、±50%の3段階で切り替えできます。
価格:オープン・プライス(市場予想税別価格:73,000円)
ReloopのDJ用ターンテーブル。START/STOPボタンは、縦置きにした場合にも同じ位置で操作できるように2ヵ所に設置されています。トルクの強さ、再生時の立ち上がりのスピード、停止ボタンを押した後に完全に回転が止まるまでのスピードを自分好みに調節することが可能。また、リバース再生ボタンも搭載しています。
トルクの強さに定評のあった150シリーズのリニューアル版です。S字アームを採用したモデルST.150MK2と、ストレート・アームを採用したSTR8.150MK2があり、アーム以外の仕様は共通。見た目はシンプルですが、START/STOPボタンをダブルクリックするとリバース再生したり、リア・パネルのツマミでブレーキの長さを調節できるなど便利な機能も搭載しています。また、フォノイコライザーがなくてもオーディオ機器と簡単に接続できるLINE出力も可能です。
プラッターの周りにLEDイルミネーションが施された視覚的にも楽しめるターンテーブル。明るさや色は好みで調節ができます。高トルクと標準トルクの2種類切り替えが可能。基本性能もしっかり押さえられています。また、端子や調節ツマミ類は縦置きで設置した時に奥と手前で操作できるようなレイアウトになっているところや、新設計のプラッターの縁のデザインがユニークです。
DJはレコードとプラッター間の滑りをよくするためにスリップマットを使用します。スリップマットはターンテーブルに付属していますが、ターンテーブリスト専用スリップマットやその下にスリップシートを敷くと、さらにレコードの滑りを良くすることができます。これはトルクが強くないターンテーブルに使用しても効果的です。
カートリッジは針の振動を電気信号に変える部品で、ギターでいうところのピックアップに相当します。ヘッドシェルはカートリッジとターンテーブルのアームをつなぐ役目と、針を移動させるための指かけの機能も兼ねています。
ターンテーブルにはヘッドシェルは付属しますが、カートリッジはユーザーの用途によって使い分けるため、付属していないことが多いです。ターンテーブリストは、針飛びに強く丈夫なカートリッジを選ぶことが重要です。
リスニング用カートリッジはレコード針が極細で、DJで使うと早い段階で確実に折れます(^^;)。DJ用として売られているカートリッジを使いましょう。中でもSHURE M44G、M44-7、Ortofon OMシリーズや、ヘッドシェルと一体型のOrtofon Contordeシリーズがよく使われています。ターンテーブル全盛期に比べてラインナップが少なくなってきましたが、Pioneer DJ PC-X10やSTANTON 750 Cartridgeなどの新商品も登場しています。
レコード針は消耗品なので、使用頻度によって劣化しますし、スクラッチやジャグリングで酷使するなら寿命は短くなります。その場合は、わざわざカートリッジを買い直す必要はなく、交換針だけを付け替えれば大丈夫です。
スクラッチ・ネタだけを集めたレコード、それが“バトルブレイクス”です。バトルブレイクスの多くは、レコードの中心からの直線上に針を置けばスクラッチ・ネタの再生が始まるような加工がされているので、針飛びしても音が出なくなることはありませんし、そのポイントにシールを貼ってマーキングしておけば、ヘッドフォンで音を確認しなくても瞬時に音を出すことができます。ターンテーブリストは鳴らしたい音を目で確認しているのですね。
また、バトルブレイクスの中には、いったん針を置けば、溝の位置を変更するまでエンドレスで繰り返し音が鳴り続けるループ溝になっているタイプもあります。フレーズを多く収録したバトルブレイクスに採用されていることが多いです。
バトルブレイクスの中で一番ポピュラーなのがズバリ「Super Seal」です。これにはスクラッチで定番の「Ahhhh」や「Fresh」のほかドラム・スクラッチ用のネタや、リズム・パターンなどバラエティに富んでいます。スクラッチの練習するならマストです!
これらのレコードを使ってスクラッチを極めるとこんなに多彩な表現ができるようになるんですね。
このように、ターンテーブリストにとってレコードは重要な要素であることがお分かりになったかと思います。あとはスクラッチに対応するDJミキサーがあれば、ターンテーブリストにとっての必要な機材がそろうわけですが……
実は、コンピューターが最近のターンテーブリストにとって欠かせないツールになっているんです!
ちなみに前述のDJ KENTAROのパフォーマンス動画にもコンピューターが使われていたんですが、気づきました?(^^)プロの現場ではターンテーブルを使ってDJソフトをコントロールできるシステムが定番になっているんですよ!
DVSとは、時間の情報が記録されたコントロール・レコードを使ってコンピューター内の音楽ファイルをコントロールできるシステムのことです。これらはオーディオ・インターフェース、コントロール・レコード、DJソフトが一つのパッケージになっていることが多いです。
コントロール・レコードの音声は、ターンテーブルからオーディオ・インターフェースを経由してコンピューターへ送られます。DJソフトはタイムコードと音楽ファイルを同期させ、音楽ファイルの音声はオーディオ・インターフェースを経由してDJミキサーへ送られます。この仕組みからDJソフト内の音楽ファイルをターンテーブル上で操作できるので、アナログ・レコードに慣れ親しんだ人でもスムーズにデジタルDJへ移行できるというわけです。
以前はターンテーブル・セットから始めてDVSを導入する傾向が多かったのですが、最近はDJアプリやDJソフトから始めて、その後ターンテーブル・セットとDVSを一緒に導入するという傾向が増えてきています。そのような方にはオーディオ・インターフェースとDJミキサーが一体型したDVS対応ミキサーがオススメです。コンピューターとDJミキサーをUSBケーブルで接続するだけで簡単にセッティングすることができるからです。さまざまな機種が発売されていますが、ターンテーブリストに人気の現行販売機種は以下の2つです。
またリーズナブルなDVS対応ミキサーも登場しています。DVSを見据えたターンテーブル・セットの導入するならこちらもオススメです。
ターンテーブリストがDJソフトを使うメリットはかなり大きいです。レコードでジャグリングする場合は、同じレコードを2枚用意する必要がありますが、DJソフトであれば同じ音楽ファイルを各デッキにロードすればOK。またオリジナルの曲や自分で使いやすく編集したスクラッチネタも、音楽ファイル化してすぐにパフォーマンスで取り入れることができます。つまり、録音した音声すべてがスクラッチネタになってしまうのですね。
そしてDVSを使えば、DJソフトならではの多くの機能をパフォーマンスに取り入れることができます。拡張コントローラーやDJミキサー内蔵コントローラーを使ったトリッキーなプレイは、レコードだけのパフォーマンスではもはや不可能です。
それではここで DMC WORLD CHAMPIONSHIP 2016 FINALのシングル部門チャンピオンに輝いたDJ Yutoのパフォーマンスをご覧ください。卓越したレコードさばきはもちろんのこと、DJソフトの機能をNATIVE INSTRUMENTS TRAKTOR KONTROL Z2の内蔵コントローラーで駆使しています。
いかがでしたでしょうか? このように最近のターンテーブリストはデジタルもアナログも柔軟に使いこなしてテクニックを磨いているんですね。これからもあっと驚くようなパフォーマンスをするターンテーブリストが出てくるはず。それはこれからDJを始めようとしているあなたかもしれませんよ!(^ー^)
ターンテーブリストのパフォーマンスを間近で体験できるDJ大会DMC JAPAN CHAMPIONSHIPS 2017 FINALが開催されます。百聞は一見にしかず! 今回のコラムで興味を持った方は是非会場に足を運んでみてください!
DMC JAPAN DJ CHAMPIONSHIPS 2017 FINAL
supported by Technics
2017.8.26 (SAT) 16:00 – 21:00 at WOMBLIVE www.womb.co.jp
当日3300円 前売2800円 学割2000円 ※別途ドリンク代500円
前売取扱 : 楽天チケット、clubberia、HMV Record Shop
- SINGLE –
DJ RENA (東海地区)
DJ SkYATCH (北海道地区)
DJ WA-TA (東北地区)
DJ FUSE (関西地区 1位)
DJ REIKO (関西地区 2位)
ANONYMOUS (関東地区 1位)
DJ 松永 (関東地区 2位)
DJ SHUNSUKE (九州地区)
DJ BUCK$ (中四国地区)
- BATTLE -
DJ FUMMY (ディフェンディング)
DJ 諭吉,
DJ DOM-AUTO
DJ Makoto
PACHI-YELLOW
DJ Doon
SENSE BEATS
SATOYON
MORE INFORMATION : http://dmc-japan.jp
DMCは世界最大のDJの大会です。誕生から30年以上の歴史を持ち、日本でも数多くの才能を世界に輩出してきました。ターンテーブルに魅了されたDJたちは数分の輝きの為に、膨大な時間を費やし魂を削りながらルーティンを作りあげます。その熱量は現場でしか体感できません。
今年も8/26(土)に開催されるJAPAN FINALで、また新しいチャンピオンが生まれます。デジマートをご覧の皆さんも是非とも会場へ足を運んでみてください。きっとターンテーブリズムの魅力にハマるはずです。
DMC JAPAN 代表 大山陽一
いっちー
元楽器販売店。楽天市場内の店長Blogを毎日10年以上更新し、2008年ブログ・オブ・ザ・イヤーを受賞。学生のころから作曲やDJ活動、バンド活動などの経験を積む。得意ジャンルはクラブ・ミュージック