AQUBE MUSIC PRODUCTS
- 2024/11/16
Gibson / Shinichi Ubukata ES-355 Vintage Ebony VOS
Nothing's Carved In Stoneのギタリストであり、国内屈指のES-355の使い手としても知られる生形真一氏のシグネチャー・モデルが発売されました。この新しいギターは、ES-355をベースに細部にまでこだわったオリジナリティ溢れるモデルです。今週は、本人による演奏・解説動画も交えて、Gibson Shinichi Ubukata ES-355 Vintage Ebony VOSの魅力に迫ります。
海外ではキース・リチャーズ、そして国内では生形真一氏が愛用することで、近年は“ロックなセミアコ”のイメージが確立された感があるES-355。ESシリーズの中でも一際ゴージャスなルックスと、セミアコの代名詞であるES-335以上に明瞭なアタックを持つES-355は、ブルースやソウルはもちろん、ロックするにも最高のギターです。長らくES-355を愛用してきた生形氏ですが、自分自身、そして自身のバンドNothing's Carved In Stoneが進化し続ける中で「ES-355に満足しているんだけど、新しいことにもチャレンジしたい」と考えたそうです。それが形になったのが、初のシグネチャー・モデルであるGibson Shinichi Ubukata ES-355 Vintage Ebony VOS。ES-355との相違点をあげてみましょう。
まず、一目で違いがわかる外見上のポイントは、ES-355のfホールに対して、トリニ・ロペス・モデルなど一部のモデルで知られるダイヤモンド・シェイプfホールを採用している点です。しかもVOSのアンティーク・エボニー・フィニッシュに映えるようホール周りにはバインディングが施されており、ES-355とは“ギターの表情が大きく違う”ことに気がつくでしょう。次に、ES-355はピックアップ・カバーやブリッジなどの金属パーツがゴールドで統一され、それがゴージャスさを高めていますが、このニュー・モデルはVOS仕上げのニッケル・パーツで統一されています。ES-355のゴージャスさに比べると、ニッケル・パーツが醸し出す雰囲気はより精悍な印象を受けます。
さらに、本器にはバリトーン・スイッチが搭載されている点も大きな特徴です。バリトーン・スイッチ自体はビンテージのES-355などにも搭載されているものですが、近年はよりストレートなサウンドが好まれることもあり、現在のギブソン・レギュラー・ラインナップのES-355にはバリトーン・スイッチは搭載されていません。生形氏が愛用しているES-355にもバリトーン・スイッチは搭載されていませんが、今回初めて、バリトーン付きを選択したという点が興味深いところです。
そして、生形氏のモデルと言えば、トレード・マークのビグスビーB7テイルピースは外せません。これは、氏独特の低音のゴリッとしたニュアンスを生む、重要なファクターになっています。また、目には見えない部分ですが、太めのネックを好む生形氏のリクエストで、本器にもしっかりとした握り心地のネックが採用されています。これもより太いサウンドを生み出すための、重要な要素となっています。
──初めて自身のモデルに触れた時の印象は?
生形 制作の段階で、当然仕様についてシートでのやり取りはしていたんだけど、実器を手にしてみたら想像以上のものになっていたんで、本当に嬉しかったですね。
──具体的には、どのあたりが?
生形 このかっこよさ! 普通、バリトーン・スイッチはES-355とかの高級機種に付くからゴールドでしょう? それもゴージャスでかっこいいんだけど、バリトーンがニッケルだとこんなにクールになるのかと驚きました。VOSのちょっと使い込まれたようなフィニッシュと、ニッケル・パーツ、それとダイヤモンド・シェイプfホールが思っていた以上にマッチして、精悍な印象を受けましたね。
──サウンド面はいかがですか?
生形 これまで使ってきたES-355は弾きこんであるんで、ちょっとビンテージっぽい鳴り方になってきているんですよ。でもこれは元気があって、ジャキッとした鳴り方です。ただ、ギブソンには歴史があって、独自のサウンドがあるでしょう? いろいろと細かいオーダーはしているけど、元々その音が好きで使っているので、ES-355と大きく音が変わるようなことはしていません。
──弾き心地についてはいかがでしょう?
生形 そこについては完璧にオーダーしているので、全く問題ないですね。ポイントは、太めのグリップです。その点は、太い音にも影響していると思います。とにかく、このギターが到着してすぐにメインで使っているけど、何の問題もないくらい弾きやすいですよ。もちろん今でもES-355も使っているけど、それはチューニング違いやピエゾの音(生形氏はステージ上でアコースティック寄りの音が欲しい時に備えて、ピエゾPUを後付けしたES-355を所有している)が欲しい時に登場する感じで、もうメインは完全にこれですね。
──このモデルを、どんな人にお薦めしたいですか?
生形 これは自分のシグネチャーではあるんですけど、ギブソンという世界的なブランドのモデルである以上、いろいろな人が使えるギターにしたいという思いがありました。だからバリトーン・スイッチを付けたというところもあります。元々、ギブソンの2ピックアップ/4コントロールのモデルは、セッティング次第で多彩な音が出せるんですけど、バリトーンを付けたことでさらに多彩な音が出せるので、ジャズの人、ブルースの人、いろいろな人に使ってもらえたら嬉しいですね。元々、ES-355がロックンロールやブルースに使えるギターだってことは歴史が証明しているし、もっと攻撃的な音やオルタナティブな音も出せるってことは、俺のギターを聴いてもらえばわかるんじゃないかな。
リットーミュージック刊『ギター・マガジン 2017年8月号』では本記事には掲載していない生形氏とギター・マガジン編集長による対談インタビューを掲載予定です。ここでは語られていないシグネチャー・モデル誕生の裏側にも触れていますので、そちらもぜひご期待ください!
※次回の週刊ギブソン〜Weekly Gibsonは7月7日(金)更新を予定。
価格:¥655,000 (税別)
生形真一(うぶかた・しんいち)
1998年ELLEGARDEN結成。ELLEGARDENの活動として10年間の間に5枚のフル・アルバムをリリース。2008年9月7日新木場STUDIO COASTのライブにてELLEGARDEN活動休止。2008年5月活動休止発表後、Nothing's Carved In Stoneを結成。現在までに8枚のフルアルバムをリリース。独自の演奏スタイル、緻密なサウンド・メイキング、高度なアレンジ・スキルにより、熱心なファンの間ではもちろん、音楽業界内でも高い評価を得ており、近年はトップ・アーティストのサポートまで活動の幅を広げている。琴線に触れるエモーショナルなライブ・パフォーマンスで定評のある自身のツアーの他、各地のイベントやフェス等に精力的に出演中。