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- 2024/11/16
BOSS MS-3
近年プロ/アマ問わず身近になりつつあるスイッチング・システム。しかし、ギター・テックやローディが付かない一般のギタリスト/ベーシストにとって、多数のエフェクターをスイッチャーでコントロールするような巨大なペダル・ボードは運搬やセッティングもひと苦労。そんな悩みを解消してくれるのがボスから登場したMS-3だ。112種のエフェクトを有するマルチ・エフェクターと、3系統の外部ループを持つスイッチャーが融合した本機は、今までにないシステム作りを可能にし、音へのこだわりと利便性を高いクオリティで両立する。さっそくその魅力とその活用法について探っていこう。
日本を代表するエフェクター・ブランドであるボスは、オーバードライブやコーラス、オクターバーなどのコンパクト・エフェクターばかりでなく、マルチ・エフェクターにおいても、1989年に登場したME-5以来の長い歴史を持っている。今回新発売となったMS-3は、言うまでもなく、長年のマルチ・エフェクター開発で培ってきたノウハウに、ユニークなアイデアをクロスオーバーさせた、ボスからの新しい提案だ。
MS-3には、ディレイやリバーブなどの空間系、モジュレーション系、ハーモナイザーなどのピッチ・エフェクト系、ディストーション系など、合計112種類のエフェクトを内蔵し、同時に6台まで使用できる。それに加えて、外部エフェクターが接続できるループも3系統用意されており、それぞれのオン/オフを一括してコントロールできるので、お気に入りのペダルをシステムに追加すれば、実質的に9台のエフェクターを同時使用できることになる。MIDI対応エフェクターを接続し、MS-3とMIDIケーブルでつなげば、MS-3からMIDI対応エフェクターのパラメータをコントロールしたり、テンポ情報を連動させることも可能だ。
また非常にユニークな設定が可能で、例えば、メモリー・モード時に既にパッチ選択しているナンバー・ペダルをもう一度踏むと、複数のエフェクターを同時にオン/オフしたり、タップ情報の入力に使用したりなど、一般的なスイッチャーやコンパクト・エフェクターで構成されたシステムでは不可能なコントロールもフット・スイッチ1つで行なうことができる。この機能はユーザーの間でも高い評価がされており、ツイッタ―などのSNSで驚きの声が確認できる(気になる人は“MS-3 Current Number“というキーワードで検索してみよう)。さらに外部エクスプレッション・ペダルは最大2個、フット・スイッチは最大4個まで接続が可能となっており、拡張性の高さもMS-3の特長といっていいだろう。また、本体をUSB経由でコンピューターに接続すれば、専用のエディター・ライブラリアン・ソフトで内蔵エフェクターの音色や各パラメータの設定がより簡単にできるばかりでなく、設定を一括して保存しておくことも可能だ。
このように、かなり柔軟で多様な機能を持ったペダルであるにもかかわらず、275mm(W)×97mm(D)×68mm(H)と、非常にコンパクトなサイズにまとまっているのも魅力で、外部のペダルと合わせて1台のエフェクト・ボードにまとめても、それほど大きなシステムにならずに済む。したがって、ボードの重量も軽くなるので、手持ちで機材を移動するプレイヤーにはかなり大きなメリットになるだろう。昨今のマルチ・エフェクター/スイッチャーは多機能化にともないかなり大型化した製品も少なくないので、MS-3はサイズにおいても個性を発揮するに違いない。[この商品をデジマートで探す]
多くのコンパクト・エフェクターを組み合わせたボード・システムは、操作が煩雑になってくる。また、それを解消するためにスイッチャーを導入すると、今度はシステムの大型化/重量の増大という悩みが付きまとう……。そこで、MS-3の導入を考えてみよう。
まず注目したいのは、MS-3自体のサイズが横275mm×縦97mm、重量が1.1kgとなっており、非常にコンパクトかつ軽量な設計だということ。さらに112種類の高品位なエフェクトを内蔵しているため、楽曲中で使用頻度の低い空間系エフェクトなどは内蔵エフェクトを使用するようにすれば、圧倒的な小型化&軽量化が可能だ。もちろん、3系統あるループに自分の音作りに絶対に欠かせないペダルを組み込めば、こだわりを活かしながらシステムが組めるというのも大きなメリット。大きく重たいエフェクト・ボードの持ち運びにうんざりしているギタリストはぜひ導入を検討してみよう。
新たな種類のエフェクトを複数追加したいと考えている人にも、ぜひ本機の導入をオススメしたい。例えば“基本的にはこだわって選んだ歪みペダルだけでも支障はないが、コーラスやフェイザーなどもいろいろ試してみたい”と考えているギタリストには本機がうってつけだ。
お気に入りのエフェクターをMS-3のループに組み込めば、内蔵されている112種類のエフェクト・タイプから、相性の良い組み合わせを試行錯誤できるため、自身のプレイにも新たな彩りを加えられるだろう。しかも、内蔵エフェクトの配置を外部ループの前後にフレキシブルに設定できるため、お気に入りのペダルを基準に、さまざまなタイプのエフェクトを仮想的に並び替えて音作りすることも可能。
もちろんBOSSが厳選したエフェクト・エンジンを搭載しているため、マルチ・エフェクターとしても1台で十分活用できるほど、クオリティの高い音色だということも忘れてはならない。
今時のアンプで複数のチャンネルを持つものには、それらの選択をフット・スイッチで行なえるものがある。MS-3には、このフット・スイッチの機能を果たす外部コントロール(CTL OUT)端子があるので、アンプのフット・スイッチ端子(チャンネル切り替え端子)を接続すれば、エフェクトの組み合わせとアンプのチャンネル選択をひとまとめにしたパッチを組んで、それらをMS-3のフット・スイッチで切り替えることが可能(CTL OUT端子との互換性については、アンプの取扱説明書を確認)。
また、MS-3の内蔵イコライザーを利用すれば、アンプのチャンネルごとに内蔵エフェクトのパラメータをアジャストしたパッチを組むなど、より精密なサウンド作りも可能になり、コンパクトで多機能なシステムが構築できる。加えて、MS-3はMIDI OUT端子を使用して、DD-500などの対応機器へパッチ・チェンジ(PC)やコントロール・チェンジ(CC)情報を送れるので、緻密なプログラミングも可能だ。
MS-3には3系統(L1~L3)のループ群があり、内蔵エフェクトはこのループ群の前にもうしろにも置くことができる。ベースの場合、それぞれにこだわりのプリアンプやコンプがあり、それらを基本としたノン・エフェクトの状態がノーマルになることが多いので、L1にコンプ、L2にプリアンプをそれぞれ接続し、L1とL2をオン、内蔵エフェクトをオフにしたパッチを“ノーマル”としておく。そして、ディストーションやオート・ワウなどをループ群の前、コーラスやディレイ・リバーブなどをうしろにそれぞれ配置して、必要なエフェクトをオンにするようなパッチを作る。こうすると、外部のプリアンプとコンプを中心にしつつ、その前後に適切なエフェクターを接続したシステムを構築することができるわけだ。
こちらはMS-3の魅力である内蔵エフェクトのクオリティの高さとコンパクトなサイズを活かし、ループを使用せずにマルチ・エフェクターとして導入する(!)という大胆な導入例。スイッチャーを導入しコントロールしていた多数のエフェクターを集約してMS-3に置き換えて使用している。MS-3はチューナーも内蔵しているので、完全に1台へと移行することが可能だ。これでは普通にマルチを導入しただけじゃないか、と思われるかもしれないがMS-3が有利なのは、仮に将来的に追加したいプリアンプなどが出てきた場合も、ループを使用すれば拡張ができる点。この汎用性はMS-3ならではだろう。一度自身のボードを整理するきっかけとしてMS-3を導入してはいかがだろうか。
本記事はリットーミュージック刊『ギター・マガジン 2017年8月号』、『ベース・マガジン 2017年7月号』の記事を転載しています。ぜひチェックしてみてください!
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