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- 2024/11/16
Gibson / EB Bass 2017
ギブソンは1956年に初めてのエレクトリック・ベースであるバイオリン・シェイプの「EB-1」をリリース、以降もセミ・アコースティック構造の「EB-2」、いわゆるSGシェイプの「EB-3」など、立て続けに「EB」の名を冠した名器をリリースし、数多くのレジェンドを作り上げてきました。それからしばらくの時を経て、2013年に満を持してリリースされた「Gibson EB Bass」は、過去のイメージを一新するスペック、個性的なデザインを持つ革新的なベースでした。そして2017年、全く異なるボディ・デザインで装いも新たに登場したニュー・モデルが今回ご紹介する「Gibson EB Bass 2017」です。新たなレジェンドの始まりとなる最新の「EB」を細かくチェックしていきましょう。
歴代のギブソンEBシリーズはボディ形状こそ様々ですが、多くの共通点があります。それは、ヘッド角が付いていること、セットネック構造であること、ハムバッキング・ピックアップを搭載していること、などです。一方で、往年のEBシリーズでは同じだったものの、EB Bass 2017には継承されていないスペックに、マホガニー・ネック、ショート・スケールなどがあります。詳細は後述しますが、本器の特徴は、まさにこれらの「継承されたスペックと継承されていないスペック」に現われているように思います。
セットネック構造はギブソンらしさを感じるポイントです。今回試奏した5弦モデルのボディはサンバースト・フィニッシュですが、ネック裏は着色のないサテン仕上げとなっていて、ボディとネックの接合部分で綺麗に塗り分けられています。角度の付いたヘッドとサンダーバードなどで見覚えのあるヘッド形状もギブソンらしさを感じますね。一方、マテリアルはボディがスワンプ・アッシュ、ネックがメイプル、指板がローズウッドで、一般的なエレクトリック・ベースであれば標準的ですが、ギブソンのオールド・ファンからすればやや意外と感じるスペックかもしれません。
ハードウェアはブリッジに重厚なBabicz Full Contactを採用し、オリジナルのハムバッキング・ピックアップを2基搭載するパッシブ仕様で、コントロールには一般的な2ボリューム、1トーンの他に、それぞれのピックアップのコイル・タップ・スイッチを備えており、こちらもかなり現代的なスペックだと感じます。ルックスを除いてEB Bass 2017のマテリアルやハードウェアは先代とほとんど変わらないのですが、フレット数が4つ増えて、24フレットのロング・スケールとなっている点が見逃せません。
本器を手にして最初に感じたことは、とても軽量であるという点です。楽器全体の重量バランスが良く、ヘッド落ちすることもありませんし、適度なコンター加工が施されたボディはほど良く身体に馴染み、取り回しがしやすい楽器という印象があります。先代の20フレット仕様に対して本器は24フレット仕様ということで、かなり深めのカッタウェイ形状を確保しており、ハイポジションの演奏性も問題ありません。むしろボディ・デザインを変更した主な目的は24フレット化と演奏性の確保なのかもしれません。
往年のギブソン・ベースには、ショート・スケール特有のテンション感とピッチの緩さがあり、良くも悪くも弾きこなすのにコツのいる楽器という印象があるのですが、ロング・スケールの本器にはそれがありません。サドルとブリッジ本体の接触面積を大きくすることで弦振動のロスを低減させるBabicz Full Contactブリッジやヘッド角、セットネックなどの相乗効果か、サステインが良好で楽器の剛性感も高いと感じます。適度なテンション感があり、スラップを含むどのような奏法でも弾きやすいですね。
音を出してみると、パッシブながらレンジが広くスッキリとしていて軽快な音色だと感じました。こちらもマホガニー特有の太く甘い中音域が特徴的な往年のギブソン・ベースとは相反する印象です。ピックアップのセレクトやコイル・タップによる音色の幅は広く、ハムバッキングらしいガッツのある音色ではあるのですが、ピックアップの特性なのか一貫してコンプ感が強い印象で、最初は違和感がありましたが慣れるととても弾きやすいと感じました。繊細なタッチが必要なテクニカルなプレイにも、ピック弾きによる荒々しいロックなプレイにも柔軟に対応してくれるでしょう。
5弦ベースの音色の傾向は、4弦ベースとほとんど変わらない印象です。各弦とのバランスも良く、繋がりがスムーズで音色的な破綻がありませんし、ローB弦のテンション感も良好でタイトな音色は、高い剛性によるところも大きいでしょう。ネックのシェイプはネック裏の底面がやや平面なU字型形状で、握り込みフォームでも通常の運指フォームでも違和感の少ないスムーズな演奏が可能です。
24フレット化することで現代的なスペックがさらに進化し、レンジが広くスマートな音色で、どんなジャンルにも柔軟に適応できそうな楽器という印象の本器ですが、永年培ってきたギブソンらしさを失っているのか?というとそうではありません。モダンな音色の中にも、いかにもギブソンらしいガッツのあるアタック感、芯の通った骨太な中低域は絶えず感じ取れましたし、個人的にはやっぱりこのベースでガツンとロックを演奏したいと思いました。いずれにしても、多くのプレイヤーが様々なジャンルで本器を演奏することで、また新しいギブソン・ベースのレジェンドが生まれていくでしょう。
ここでは過去に週刊ギブソンでご紹介したギブソン・ベースのサウンドを改めてチェックしてみてください。EB Bass 2017が生産されている圧巻規模のギブソンUSA工場ツアーも必見です!
※次回の週刊ギブソン〜Weekly Gibsonは6月23日(金)更新を予定。
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