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- 2024/11/16
ビンテージ・マーシャル系ペダル
エフェクター・ファンのバイブルとして高い人気を誇る『THE EFFECTOR book』(シンコーミュージック刊)。最新刊のVOL.36のテーマは、60年代〜70年代にかけて正にロック・ギター・サウンドを形作ったビンテージ期のマーシャル。貴重なプレキシ・アンプの試奏・解説を皮切りに「ビンテージ・マーシャル系ペダル」を徹底的に掘り下げている。ここでは本書と連動して、人間椅子のギタリスト、和嶋慎治によるビンテージ・マーシャル系ペダルのレビューをお届けしたい。熱心なブリティッシュ・ロック好きにして50Wマーシャルの愛用者として知られる“マーシャル・マスター”和嶋のコメントから各ペダルの個性を知って、自身が求める“ビンテージ・マーシャル・サウンド”を見つけてほしい。なお、モノホンのプレキシ・サウンドはこちらで聴けます。
60年代後半〜70年代のハード・ロックに多大なる影響を受け、日本語歌詞のオリジナル曲を演奏するロック・バンド、人間椅子。同バンドでSGスタンダードとマーシャル・アンプというトレードマークとも言える組み合わせにより、往年のハード・ロックを彷彿とさせるブリティッシュ・エッセンス溢れる歪みを轟かせているのがギター・ヴォーカルの和嶋慎治である。しかも和嶋は、『和嶋慎治 自作エフェクターの書「歪」』(シンコーミュージック刊)を出版するほどエフェクター回路への造詣が深く、自身もマーシャル系ペダルを設計したことがあり、その難しさを充分に把握しているという。まさに今回の試奏記事に最適なギタリストだと言える。試奏に用意したモデルは全10機種。ブランドによって“ビンテージ系マーシャル”の定義は様々にして、完全にプレキシを意識したものもあれば、広くビンテージ系マーシャルのテイストを抽出したもの、JCM期の歪みまで守備範囲に入れたものなど、色々なタイプが存在する。果たして、マーシャル・マスター=和嶋の琴線に触れたのはどのモデルだろうか?
[Specifications]
●コントロール:Loud、Gain、Treble、Bass ●スイッチ:ON/OFF ●端子:Input、Output ●サイズ:59mm(W)×104mm(D)×47mm(H) ●電源:006P(9V電池)/9VDC
音を出した瞬間、ビンテージ・マーシャルっぽい響きだと感じました。昔、弾いたことのあるJTM45のサウンドを思い出しましたね。“45”というモデル名とおりの歪み方です。“TREBLE”を上げ目にセッティングすると音に“バリバリ感”が現れてきて、すごく近いニュアンスになりますね。今回の試奏では“GAIN”をマックスに設定して弾いてみましたが、それでも歪みすぎずに荒い感じの倍音が纏わり付いてくる。ビンテージ・マーシャルの雰囲気を上手く捉えてますね。実はJTM45って思ったほど歪まないアンプなんですよ。このモデルもそれに合わせて歪みを抑えめにした設計が施されているんでしょう。おかげで“GAIN”を上げてもピッキングのタッチがしっかりと出ます。トーンの効きもアンプっぽいですし、ギター側のヴォリュームを絞ってクリーンからクランチまで歪みをコントロールする使い方に対応してくれるあたりも、真空管アンプを彷彿とさせる感覚ですね。セッティングに関しては、アンプ側の歪みは抑え気味にした方が美味しい音が得られると感じました。良い感じでいなたい雰囲気の音が作れるモデルなので、ビンテージ風味がほしい人にはバッチリでしょう。
[Specifications]
●コントロール:Loudness 1、Presence、Loudness 2 ●スイッチ:ON/OFF ●端子:Input、Output ●サイズ:117mm(W)×95mm(D)×55mm(H) ●電源:006P(9V電池)/9VDC
まずは見た目がすごくマーシャルを思わせますね。フォントやツマミ形状が“マーシャル感”を演出していて、弾く前から“マーシャル気分”にさせてくれます。こういう部分も意外に大事なんですよ(笑)。音色に関しては、低域が主張する太い音に仕上がっていると感じました。トーン・コントローラーが“PRESENCE”だけで、エフェクター側で自由な音作りができないのは、設計者の自信の現れでしょう。音作りは既に完結していて、この音しか出ませんという。その幅の狭さが潔く、作り手の心意気を感じます。それでも音色を調整したい場合は、アンプ側のEQでセッテ ィングしてあげれば問題ありません。歪みは激しくドライヴするタイプではなく、僕がサブで持っている1959ヘッドのサウンド・ニュアンスにも近いですね。ジミ・ヘンドリックスの音かと問われれば、それっぽさを感じます。ヘンドリックスの音ってそれほど激しく歪んでいなくて、僕にはロー・ミッドが強調されているように聴こえるんですよ。試しにSGからメイプル指板のストラトキャスターに持ち替えてみたところ、シングルコイル・ピックアップの方が相性良く感じました。JC-120でも試しましたが、これはトランジスタ・アンプで使ってもいい感じですね。
[Specifications]
●コントロール:Level、Drive、Presence ●スイッチ:ON/OFF、Deep/Tight ●端子:Input、Output ●サイズ:66mm(W)×121mm(D)×56mm(H) ●電源:006P(9V電池)/9VDC
すごく弾きやすさを感じました。それほど歪みすぎないチューニングが施されていて、まるでアンプに直結したようなニュアンスが得られます。ビンテージ・マーシャルに喩えるなら、JTM45や1959(100W)というよりも、1987(50W)のテイストに近いかもしれません。特にハーモニクスの出方、肌理の細かい歪み方にそれを感じました。キラキラした倍音成分こそ異なるものの、僕が所有している1987の響きにも近いものを感じます。とはいえ、何か特定のマーシャルを狙っているというより、むしろ“みんながイメージするマーシャルの音”を上手く総括してある印象ですね。ゲイン量やコントローラー類も含めて、いろんな人が使いやすいように親切な設計が施されているのも特徴です。“PRESENCE”コントローラーもアンプに搭載されているものと同じような効き方でとても使いやすい。セッティングに関しては、繋げるアンプの特性が反映されやすいと感じました。“DEEP/TIGHT”スイッチで音色を切り替えて、使用するアンプやピックアップの個性を補正するような使い方もアリなんじゃないでしょうか。足下にこれ1台あれば、様々なシチュエーションに対応してくれそうです。
[Specifications]
●コントロール:Level、Drive、Treble、Middle、Bass、Presence(内部) ●スイッチ:ON/OFF、Mids ●端子:Input、Output ●サイズ:60mm(W)×110mm(D)×50mm(H) ●電源:006P(9V電池)/9-18VDC
第一印象としては、ものすごく“裸の音”という感じですね。しっかり弾いてあげないと、プレイ・ニュアンスがそのまま出音に現れてしまう感覚があります。真空管アンプのようにコンプ感があるので、全裸ではなく肌襦袢を1枚だけ着た音と形容した方が正しいかもしれませんが……(笑)。歪みの感触からは、JTM45っぽさを感じました。深い歪みではありませんが、荒々しくて乾いたバリンバリンという響き方が特徴ですね。ハーモニクス成分も多く、音はかなり抜けてきます。トーンの効き幅も広いので、ギターを選ばずに音作りができるでしょう。アンプも真空管、トランジスタを問わず、どんなアンプにでも合います。基本的には9V動作ですが、18Vにまで対応していて、給電圧を上げてやると音にハリが生じて、印象が変わるのも特徴ですね。できれば高い電圧で動かしたいところ。その方がより響きが良く、裸感が少し払拭されて、弾きやすくなる印象があるので。電圧を上げると、不思議とバランスが良くなるようにも感じました。より真空管アンプっぽいニュアンスに近づくというか。出音に個性と主張がありますし、手軽にビンテージ感を出したい人にはうってつけのモデルでしょう。
[Specifications]
●コントロール:Treble、Vol、Dist、Midrange ●スイッチ:ON/OFF ●端子:Input、Output ●サイズ:47mm(W)×100mm(D)×48mm(H) ●電源:006P(9V電池)/9VDC
個人的にはかなりモダンな響きに感じます。今回試したモデルの中では、歪み量が一番多いかもしれません。すごく弾きやすいディストーション・ペダルとの印象を抱きました。モデル名が連想させるビンテージ・マーシャルっぽさは意外にも少し希薄で、個人的にはむしろJCM 900やJCM2000といった現代的なモデルが宿している歪みに感じますね。ハイ・ゲイン・アンプの弾き心地に近いものがあるかもしれません。滑らかで、荒々しさが抑えられていて、誰が弾いても弾きやすいと感じるサウンドというか。ギター好きが大喜びするツボを的確に捉えた音色とも言えるでしょう。コントローラー類もシンプルで、セッティングする上でも迷いようがありません。変化幅に極端な味付けが施されているわけでもないので、サウンドメイクの方向性が掴みやすく、初心者でも簡単に良い音を作れるのではないでしょうか。誰もが楽に弾けるサウンドにチューニングされている分、ビンテージ・アンプっぽい頑固な個性はあまりないので、そういうサウンドを求める人には向かないかもしれませんが、組み合わせるアンプを選ばないので、多くの人にお薦めしやすいモデルですね。
[Specifications]
●コントロール:Hi、Mid、Lo、Level、Drive、Gain、Mod(内部) ●スイッチ:ON/OFF、Vint/Mod(内部) ●端子:Input、Output ●サイズ:73mm(W)×123mm(D)×59mm(H) ●電源:006P(9V 電池)/ 9VDC
すごくパワーがあって、わかりやすくマーシャルの音がします。基本的なテイストは僕が使っているようなビンテージ・マーシャル(1987)に近く、それをさらにゲイン・アップした領域までカヴァーできる印象、100Wというよりは50Wマーシャルが備えたクリーミーな歪みが基本ですね。プレキシ感を備えつつ、かなり歪ませることもできるこの感触は、まさに“ブラウン・サウンド”。自分が知っているビンテージ・マーシャルの感覚にとても近い。よく研究した上で設計されているとの印象を抱きました。ギター側のヴォリュームを絞っても本物のマーシャル・アンプっぽく追従してくれるので、これ1台でビンテージ風のいなたい響きから、やや現代的な歪みまでを作り出せますね。マーシャル・アンプがない場面でも好みのマーシャル・サウンドが得られるのではないでしょうか。EQはパッシヴながらアンプのトーン・コントローラーよりも効きが良い。内部に搭載された“MODERN/VINTAGE”の切り替え、トリマーなどコントローラーもマニアックで、好きな音色を細かく探すこともできます。音に色気があって艶も感じるので、個人的にはギター・ソロで使いたくなる歪みと言えますね。
[Specifications]
●コントロール:Bass、Mid、Treble、Gain、Volume、Boost ●スイッチ:ON/OFF、Boost、Bright/Boost、Bass/Boost ●端子:Input、Output ●サイズ:88.9mm(W)×114.3mm(D)×38.1mm(H) ●電源:006P(9V電池)/9-18VDC
セッティングにもよるでしょうが、良い意味で響きに荒っぽさがあってかなりゲインも高いので、ビンテージ・マーシャルのみならず、JCM800にまで対応する幅広さを感じました。設定によっては現代的なハイ・ゲイン・サウンドに近いドライヴすら得られます。このサウンドは弾いていて楽しいと思いますよ。響きがハイファイなのも特徴で、これはパーツが厳選されていたり、凝った作りが施されているからでしょう。そのおかげかノイズ耐性も非常に強いように感じました。これはレコーディング等でも使いやすい個性だと思います。セッティングにあたっては、コントローラー位置を適当に合わせて鳴らすよりは、しっかりと煮詰めていく方が良いかもしれません。ツマミの数が多い上、効きも良く、それぞれにしっかりとした役割が与えられているので。また、アンプの特性が素直に出やすいので、真空管アンプで鳴らした方がマーシャルらしい感触を得やすいとも感じました。その際、歪みはアンプ側ではなく、ペダル側で作り込むのが良いでしょうね。“BASS BOOST”を入れると音圧感が増して、スタック・アンプから出る音の雰囲気に近づくのもポイントです。
[Specifications]
●コントロール:Level、Tone、Punch、Drive、Hot ●スイッチ:ON/OFF、Hot ON/OFF ●端子:Input、Output ●サイズ:95mm(W)×120mm(D)×50mm(H) ●電源:006P(9V電池)/9VDC
かなり歪みが強いモデルですが、最大まで歪ませても現代的なハイ・ゲイン・アンプのようなディストーション・サウンドにはなりません。歪みにいなたい成分が備わっていて、それが常にプレキシっぽさを保ってくれるという印象です。強く歪むもののピッキング・ニュアンスへの反応は敏感だし、むしろ僕が使っている1987よりも古いマーシャルのような弾き心地を覚えました。クラシック・ロック向きのモデルと言えそうです。とはいえ、“TONE”のセッティングで印象はかなり変化します。ビンテージ・マーシャルっぽさを主張させたいのであれば、少し上げめに設定すると“バリバリ感”が出て良い感触になるのでは。“PUNCH”もワイドに効きますね。これで中域を厚くしたり薄くすることができますが、個人的にはセンターぐらいが好み。よって、12時位置を基本に繋ぐ機器との相性で調整していく形が良いと思います。JC-120でも鳴らしてみましたが、上手く調整することでちゃんとマーシャルっぽさを出せますね。アンプを選ばずに使えるのも魅力の1つと言えるでしょう。あと“HOT”チャンネルをオンにすればブーストされるので、1台でソロとバッキングの使い分けも可能です。
[Specifications]
●コントロール:Level、Bass、Treble、Sound ●スイッチ:ON/OFF ●端子:Input、Output ●サイズ:73mm(W)×129mm(D)×59mm(H) ●電源:006P(9V電池)/9VDC
これは男らしさを感じる響きですね。かなりヘヴィに歪ませられますが、ビンテージ風の味付けが施されているのか、同じBOSSのディストーションでも“MT-2 Metal Zone”のような響きではありません。マーシャルに喩えるなら、JCM800の感触に近いと感じました。ユニークなのが“SOUND”コントローラーです。ゲイン量を変化させても、音の質感が変わらないのが実に不思議。個人的には“ULTRA”側へ寄せたヘヴィ・ディストーションが好みですが、“CRUNCH”方向に回しても音のコシが失われないので、ロー・ゲイン・サウンドでも充分に使えそうです。EQの効き幅は敢えて狭くしてあるように感じました。“BASS”を少し上げめにセッティングすると音圧を稼げますが、音をもっと細かく練り上げたいのであれば、アンプ側のEQと合わせて複合的にサウンドメイクした方がいいかもしれませんね。繋げるアンプに関して言うならば、もちろんJC-120との相性が抜群です。この組み合わせの場合、狙ったサウンドが作りやすいでしょう。コンボ・タイプのアンプからスタックのような音圧のある響きを鳴らすことができます。誰にでも使いやすいペダルで、さすがBOSSと言える高い完成度を感じました。
[Specifications]
●コントロール:[Ch A]Gain、Volume、Bass、Treble [Ch B]Gain、Sweep、Volume、Fusion、Bass、Mid、Treble ●スイッチ:Ch A ON/OFF、Ch B ON/OFF、Cold/Hot、Spkr Sim、Gnd/Lift ●端子:Input、Thru、Output、Send、Return、MIDI In、MIDI Out、DI Out、Phones ●サイズ:124mm(W)×189mm(D)× 50mm(H) ●電源:12VDC(専用アダプター付属)
コントローラーが多彩で、ルックスもモダンなイメージですが、音の感触としてはJTM45を彷彿とさせるビンテージ・マーシャルに近い響きに感じました。むしろ現代的なハイ・ゲイン・サウンドは出ません。あと、このモデルはしっかりと説明書を読んでから使い始めることをオススメします。仕組みを理解せずにいじり始めると、魅力に気づけない可能性が大いにあるので。実際、今回の試奏ではいきなり弾き始めてしまい、好みの音を作れるようになるまでかなり試行錯誤をする事態に陥ってしまいました(笑)。まずは2つのチャンネルの意図と関係性をきっちりと認識するのが重要。チャンネルBでベースの音を作って、チャンネルAの音を足していくような感覚ですね。BとAの関係は直列(HOT)と並列(COLD)が選べますが、直列の方が歪み感が増します。プレキシっぽさという意味では並列の方が作りやすいかもしれません。“FUSION”モードをチョイスしてコントローラーを操れば、チャンネル・リンクをしたような感覚で使うこともできます。MIDIやDIの出力があったりと、これはレコーディングの現場もしっかり見据えた、かなり奥深いプリ・アンプと言えるのではないでしょうか。
最初に謝っておきますね。実は「ビンテージ・マーシャル系ペダルが大好き」とか公言してた割には、“プレキシ・マーシャルの音”を全然わかっていなかった、というのが率直な感想なんです。薄々感じてはいたんですよ。これまでプレキシ・サウンドを謳ったペダルを試しても、どこか納得し切れない想いがあって。今まではそれをエフェクターのせいにしていたんですが、どうやらそれは完全なる言いがかりでした。僕にはいわゆる“ディーパーズ・ビュー”……“経験と考察”が足りなかったようです。この度、実は「僕の“プレキシ観”が間違っていただけだった」という事実が判明いたしましたので、この場を借りて、読者並びに関係各位にお詫びさせていただきます。申し訳ありませんでした!(泣)
やっぱり実機を試すのは重要ですね。ズラっと並べられたビンテージ・マーシャルを弾き比べると、1960年代に作られた黎明期のロック・アンプたちが宿しているオーラがクッキリと浮かんできます。低音の締まり具合、中域の厚み、高域の鋭さ、歪みの粒子など、どれも正しくマーシャルでありつつ、それぞれに違う個性。「プレキシ」という言葉が如何に乱暴な括りであったか、それがよくわかりました。実はプレキシの中にも多彩な個性が存在するんです(詳しくは本誌の特集記事でご確認ください)。
それを踏まえた上で“プレキシ系ペダル”に触れると、ペダル・デザイナーたちの“経験と考察”が見えてきます。例えばメナトーンの“The King”、BOSSの“ST-2”は、一般的なプレキシのイメージを超えたゲイン量を備え、幅広い音色設定が可能です。これは、1960年代後半〜1970年代中頃までに作られた個体を広く表現できるようにした仕様と読み取ることもできるわけです。それに対して、マンライ・サウンドの“The Sound”、ウェーボの“JTM Drive-2”、J.ロケットの“.45 Caliber”といったモデルは、狙いがピンポイント。リファレンスとした個体があったことが窺われます。低音の処理や歪みの感触を鑑みるに、それぞれ1964〜1967年ぐらいに作られた特定の個体が備えた響きを表現したかったのではないでしょうか。SHINOSの“Naughty Brain”から伝わってくるのは、それらとは全く異なる設計思想。むしろマーシャルのイメージに捕われ過ぎることなく、単純に使いやすいドライヴ・ペダルを目指したとの印象です。これはこれで非常に実戦向きのチューニングだと言えるでしょう。
ユーザーとしては、端的に「どれが一番似ているのか教えろ!」というのが正直なところでしょうが、敢えて言うなら「全部が正解」。要するに、どのモデルもデザイナーそれぞれが抱いている“プレキシ観”を具現化してあるといったところ。それに対して、「これって1968年後期の個体を狙ってるよね」とか、「イメージしたのは1967年の100Wモデルなんじゃないかな?」とか、「ツイード・ベースマンの影響を色濃く感じるから、目指したのは1964年頃のJTMでしょう」とか……そういうマニアックな妄想を働かせるようになったら、機材マニアとしては超一流の域でしょう(笑)。もちろん、そうした細かい差異は本物の音を体験しないことには手がかりさえ掴めないので、なかなか難しいでしょうが。
そこまで言われると、その「本物の音」がどういうものか試してみたくなるのが人情ってもんですよね。どの個体もかなり努力しないと出会うことがないものです。運良く弾く機会があったとしても、状態の悪い個体だったらミス・リードに繋がります。しかしなんと近々、絶好の機会が設けられるのだとか。記事の制作にも協力してくれた村田善行氏と魚頭圭氏がビンテージ・マーシャルを始めとするレアなアンプやペダルを持ち寄り、その音色をとことん味わい尽くす贅沢な会を6月23日に開催するようなんです(詳細はココをクリック)。みなさんもこの機会に“経験と考察”を深めてみてはいかがでしょうか。きっと僕と同じように、今まで抱いていた“プレキシ観”を180度ひっくり返されると思いますよ。ちなみに参加するにあたっては、エフェクターブックの最新号でしっかり予習してから臨むと、さらに効果的なのは間違いありません(笑)。 (下総淳哉/THE EFFECTOR book)
本記事はシンコーミュージック刊『THE EFFECTOR book VOL.36 SUPER LEAD SUMMER 2017 ISSUE』での特集企画「“現行ビンテージ・マーシャル系ペダル”試奏分析」の中でより詳しく紹介している。
項数:112P
定価:1,620円(税込)
問い合わせ:シンコーミュージック
・「THE EFFECTOR book VOL.36」のページ・サンプル
▼プレキシ・マーシャルを音出しチェックするリアルな取材風景もどうぞ!