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- 2024/11/16
Gibson / 1966 J-50
1960年代後半のギブソン・アコースティック・ギターの仕様である14度ヘッド角、ナロー・ネック、そしてアジャスタブル・ブリッジ。この仕様を忠実に再現しながら、さらにビンテージの深みを与えるサーマリー・エイジド・トップを組み合わせたJ-50が現代の技で実現しました。本器でしか出せないサウンドをじっくりとお楽しみください!
数あるギブソン・アコースティック・ギターの中で、ナチュラル・フィニッシュのギターと言えば? そう、J-50です。1947年にJ-45のフィニッシュ違いモデルとして登場し、ジェイムス・テイラーなどのシンガーソングライターや、テキサスの伝説的なブルースマン、ライトニン・ホプキンスらに愛用されてきました。今回紹介するのは、そんなJ-50の中でも、国内外問わず多くのミュージシャンに使用されている60年代後半のビンテージ器を現代の技術で蘇らせた、日本限定生産モデルです。
トップ材には、Thermally Aged(サーマリー・エイジド)という、ビンテージ・サウンドを追求する熱処理加工が施された、シトカ・スプルース。サイド&バックはマホガニー。60年代後半の仕様である14度(現行では通常17度)に設定されたヘッド角、ナロー・ネックと呼ばれる40mmナット幅のマホガニー・ネック、ジャンボ・フレットの載ったローズ指板に、60年代中後期のビンテージのJ-45から採寸したラージ・ピックガードと、細部の趣向のそれぞれがビンテージの風格漂う美しいたたずまいで構成されています。
特筆すべきポイントは、同じく60年代後半の仕様であるアジャスタブル・ブリッジと、サーマリー・エイジド加工されたトップ材の組み合わせは、ギブソン史上初めての製品化ということ。しかも、本器にはあえてピックアップが搭載されていないところに、生音へのただならぬこだわりが感じられ、ますますそのサウンドに期待が高まります。
実際に手にとってみると、40mmナット幅のナロー・ネックは、吸い付くような握りやすさ。ロー・ポジションは、まるで女性の細い手首を握っているようです。手の大きな人にはもちろん、他の人よりも指が短かく思える人にも、きっとその手のひらにこのネックは馴染むでしょう。14度のヘッド角は、通常の17度とは数字の上ではわずかな違いですが、ボディに伝わる振動そのままに、テンション感だけを少し和らげたような感覚。ネックのどのポジションで演奏するときでも、プレイアビリティに大きく貢献していることを感じられるでしょう。
E7から始まるコード・ストロークでは、アジャスタブル・ブリッジならではのザクザクとパーカッシブな音色が溢れ出し、噛み付くように前に出てくるミッドと、程良く枯れたハイが交わった極上のトーンを堪能することが出来ます。また、サーマリー・エイジド加工の恩恵か、新品のギターから出ているとは想像出来ないような、ギター全体がビリビリと鳴る程の大きなサウンドが作り上げられている印象を受けました。
カポを4フレットにつけてジェイムス・テイラー風のアルペジオをしてみると、歌の伴奏に完璧にマッチするサウンドが。人の声の美味しい帯域を後押しするような、“仕事の出来る“ギターです。思わずJT特有のフィンガリング・フォームまで再現してみたくなってしまいました。
程良く枯れたトーンはマイクのノリもとても良く、レコーディングにも即戦力の1本となるでしょう。だれもが一度は聴いたことがあるであろう、“あの”トーン。このギターを選んだ人にしか出せない音色をぜひ、あなたの腕の中で奏でてください。
今回ご紹介した1966 J-50よりも前に、同年代の仕様を再現したJ-45も2015年に登場していました(1967年・下写真左と1968年・下写真右)。この年代のギブソン・アコースティック・ギターが気になる方は、こちらもチェックしてみてください!
特殊な処理により、ビンテージのように経年した材の性質を再現するサーマリー・エイジド加工。週刊ギブソン読者には馴染み深い仕様だと思いますが、ここで改めてサーマリー・エイジド・トップを採用しているJ-45をご紹介しましょう。その深みあるビンテージ・サウンドをじっくり聴いてみてください。
※次回の週刊ギブソン〜Weekly Gibsonは6月16日(金)更新を予定。
価格:¥497,000 (税別)
エバラ健太
えばら・けんた●1983年、東京都出身。地元と第2の故郷徳島を拠点に、全国各地を旅する弾き語りシンガー/ソングライター。作詞・作曲だけでなくアレンジ・録音・ミックスまでを自ら手がける。的確なギター・ワークと歌唱によるオーガニックなサウンドを、デジタルマシンで即興的に加工しながら情緒的に歌い上げるライブは、既存のジャンルにカテゴライズされない新しい音楽シーンの幕開けを予感させる。自身の活動の他、CM、TVなど、さまざまなレコーディングにも参加。Morris FingerPicking Contest 2015にて最優秀賞、オリジナルアレンジ賞を受賞。最新ソロ・アルバムは初のフィンガー・ピッキング・アルバムとなる『7』。